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【腐女子カプ厨】巨雑6498【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net (316レス)
【腐女子カプ厨】巨雑6498【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/
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284: 名無し草 (ワッチョイ b785-kq03) [sage] 2016/12/10(土) 09:21:03.64 0 女王は冬コミ予約本もそこそこ出とるけどほんまにほしい本の予約可販売始まるまで買い控え続いとるな とらと違うて1注文ごとの発送やからサークル側も他サークルの動向待ちやねんな 進撃3(ジリ2、リジ1) ちな全年齢・18禁別200冊中に進撃本は7冊ランキンで、ジリ3、リジ3、ルリ1 14 ジリ 38 ジリ 71 リジ 女王は進撃本ランキンなしや http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/284
285: 名無し草 (ワッチョイ b785-kq03) [sage] 2016/12/10(土) 09:21:37.46 0 何やこっち昨日貼るの忘れとったは 進撃3(リジ3) ちな全年齢・18禁別200冊中に進撃本は7冊ランキンで、リジ4、ルリ2、ジリ1 35 リジ 71 リジ 97 リジ 女王は進撃本ランキンなしや http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/285
286: 名無し草 (ワッチョイ b785-kq03) [sage] 2016/12/11(日) 09:24:21.20 0 この時期の週間で進撃本最高位が90位て物悲しいで ルリはカテゴリ別200冊以内にもおらんやん下痢は金出して本買えや 12月第1週週間ランキング 進撃3(ジリ3) ちな全年齢・18禁別200冊中に進撃本は7冊ランキンで、ジリ4、リジ3 90 ジリ 97 ジリ 98 ジリ 女王は進撃本ランキンなしや 2016/12/11 進撃5(リジ2、ジリ2、ルリ1) ちな全年齢・18禁別200冊中に進撃本は9冊ランキンで、リジ5、ジリ2、ルリ2 20 リジ 30 ジリ 71 ルリ 79 ジリ 96 リジ 女王は進撃本ランキンなしや http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/286
287: 名無し草 (ワッチョイ b785-zwFm) [sage] 2016/12/12(月) 09:08:52.66 0 昨日は進撃各カプ冬コミ・インテ本がそこそこ予約開始しとったけどルリだけ100位圏外やな 下痢は別マガとコミックスと薄い本に少しは投資したれや 進撃5(リジ3、ジリ2) ちな全年齢・18禁別200冊中に進撃本は11冊ランキンで、リジ6、ジリ3、ルリ2 62 リジ 75 リジ 79 リジ 97 ジリ 97 ジリ 女王 48位にリジ本ランキンや http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/287
288: 名無し草 (ワッチョイ b785-kq03) [sage] 2016/12/13(火) 09:21:23.62 0 ランキング眺めとるとリジだけやなくどのカプからももれなく海鮮が他ジャンルに流れとるの明白やんな リジだけ移動しとると主張する下痢には何が見えとるんや草 進撃8(リジ6、ジリ1、ルリ1) ちな全年齢・18禁別200冊中に進撃本は13冊ランキンで、リジ8、ルリ3、ジリ2 39 リジ 60 ジリ 65 リジ 65 リジ 65 ルリ 65 リジ 77 リジ 79 リジ 女王 20位・75位・92位にルリ本、72位・87位・88位にリジ本 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/288
289: 名無し草 (ワッチョイ b785-kq03) [sage] 2016/12/14(水) 09:25:30.19 0 下痢コピバは人稲の早朝6時にバレスレでリジ晒しコピペ連投しとるけど通報されたくなくてビビっとるんか 下痢の逆神のおかげでルリ本は今日も下位率高いは 進撃5(リジ3、ジリ1、ルリ1) ちな全年齢・18禁別200冊中に進撃本は10冊ランキンで、リジ5、ルリ4、ジリ1 25 リジ 45 ジリ 51 リジ 73 ルリ 88 リジ 女王 41位にルリ本、90位にリジ本 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/289
290: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:05:37.65 d 【リヴァエレ】泣きたくなるほど貴方じゃなきゃ、嫌 1 by らいむぎ 第一話 エレンが目を覚ました時、視界にぼんやりと映った天井が真白であると認識したのと、体が鈍い痛みを覚えたのはほぼ同時だった。 独特の静けさと、室内のじんわりとした暖かさ、そして何より消毒液の匂い。病院か、とエレンは自分の身に起きていることを徐々に覚醒してきた頭で考えた。 寝たまま視線を体に向ければ、足と腕に包帯が巻かれている。どちらも左側だった。頭を締め付ける感覚から、おそらく頭部にも包帯が巻かれているのだろう。 何でこんなことに。 いや、覚えていないわけではない。エレンは道路を渡ろうとして、車と接触した。あの瞬間に感じたのは明らかに“死”だった。 「……生きてる」 動く右手を持ち上げて、掌、手の甲と順番に見る。何ともなかった。 病室は個室のようだった。しかし、起きてすぐに誰もいないことが少し不満だった。 エレンは溜息をつきながら右手で頭の上をごそごそと探り、目当てのものを見つけると力を込めて押した。 『はい。どうしました?』 「あー……、イェーガーです。目を覚ましたので父を呼んでもらえますか? 手が空いたらでいいので」 スピーカーからは「あらあら」と驚く女の声が聞こえた。 あの日からどれくらい眠っていたのだろう。それほど長く眠っていたような気はしないから、長くても一日か二日といったところだろうか。 しばらくして、病室のドアをノックする音が聞こえたが、返事をする前にガラリと開けられた。 「エレン、目を覚ましたのか」 「父さん」 この病院が自分のよく知るところだということは最初から見当がついていた。父がここの院長だからだ。それ故、父が忙しいことも、息子一人よりも何十人といる患者の方が大事なのもわかっていた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/290
291: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:06:18.29 d 父は簡単に体の様子を診ると、一息ついた。 「体に問題はないだろう。この後検査をいれたから診てもらいなさい。頭の方も」 然して興味がなさそうな口ぶりだった。それなのに最後に付け加えられた言葉は暗に頭がおかしいと言われているようで少し腹が立った。 父とは昔から不仲だった。 幼い頃は仕事ばかりで全く相手にしてもらえなかったことに何度も文句を言った。 そんなエレンに母は「パパは私たちのためにお仕事を頑張っているのよ」と宥めたが、母に抱えられその様子をこっそり見に行った時、余所の子どもの頭を撫で、笑いかけているのを見てからは、 エレンの中で父へのいくつかの感情が抜け落ち、今では確執のようなものだけが残ってしまった。 父の探るような視線が不快で、エレンは顔を背ける。 「お前がここまで馬鹿だとは思っていなかった」 「は……? 息子が怪我して言うのはそれかよ」 「相手の方には話はつけた。……母さんを悲しませるようなことはするな」 「……わかってるよ。心配させたことはちゃんと謝る」 「お前……。いや、母さんも店を閉めたら来ると言っていたから付き添ってもらえ」 父は仕事に戻るつもりなのだろう。すぐに白衣を翻して背を向け病室を出て行った。 体は大丈夫か?何ともないか?心配した、などという身を案じるような言葉は何一つ出なかった。息子であっても患者の一人のように扱う。むしろ、患者よりもひどい扱いだ。エレンは、は、と乾いた笑いを漏らした。 母は花屋を経営していた。それほど大きくないとはいえ病院の院長を務める父の稼ぎだけで生活は充分賄えるので、花屋は母の趣味だった。 きっとすぐには来ないだろうな、そう思っていた矢先、バタバタと慌ただしい音が聞こえて勢いよくドアが開け放たれた。 「エレン! よかった! 目を覚ましてくれて…!」 仕事用のエプロンにカーディガンを羽織っただけの母が息を切らして抱きついてくる。うお、と声が漏れたが、やっと自分でもホッと安心したような気がした。 「私のことがわかる?」 「もちろんわかるよ、母さん。体は痛いけど、頭は何ともない」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/291
292: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:06:34.35 d 父に言われたことに反抗するようなことを敢えて言ったのは無意識だった。 動く右手で母の背中に触れると、微かに震えている。ああ、泣いているのか。心配をかけて悪いことをしてしまったな、と申し訳なく思った。 「二日も目を覚まさなかったのよ、エレン。お父さんは心配ないと言っていたけれど、気が気じゃなかったわ。だから目が覚めたって聞いてミカサに店番をお願いして慌てて来たの」 「っはは、そんなの見ればわかる。店のサンダルのままだし、髪もぐちゃぐちゃ」 笑いながら言うと母はもう一度「急いでいたのよ」と少し恥ずかしそうにしながら言った。 「ずっとついていてあげたかったんだけど、お父さんには帰れと言われたし、いつも来てくれるお客様がどうしてもお花を用意して欲しいって……。言い訳になっちゃうけど、目が覚めた時誰もいなくて不安だったでしょう、本当にごめんね」 「いいよ、気にしてない。オレこそ心配かけてごめん」 そう話しているうちに検査に呼ばれた。 検査をしてくれるのは父ではなく、エルヴィン・スミスという父よりも若い医者だった。 父と同じように体を軽く診た後に隅々まで検査していく。結果的に足も腕も骨に罅が入った程度で済み、頭は打っていたけれど脳に異常はみられないということだった。 「いくつか質問に答えてもらってもいいかい?」 「はい」 母には外で待っていてもらい、診察室でエルヴィンと向き合う。 体が大きい。顔は優しそうだと思ったが、笑顔がいくらか嘘くさく見えて、何を考えているかがわからないなと思った。 「事故があった時のことを説明できるかい?」 「えっと、すごく急いでいたような……それで……確かどこかに行く途中で、ええっと、」 「ああ、ゆっくりでいい」 エレンは記憶を呼び起こす。すぐには思い出せないこともあったけれど、ああだったかな、こうだったかな、と思考すればだんだんとその場面が頭に思い浮かんできた。 「友達……友達と約束があって……なのに寝坊、しちゃって。時間に間に合わないと思ったから走ったんです。そしたら信号に止められて、青に変わった瞬間に駆けだしたらクラクションが聞こえて……やばい、死ぬって思ったら足が動かなくなって 」 「そうか。その時誰かに手をひかれたのは覚えているかな?」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/292
293: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:06:50.26 d 「え? 手を?」 「君を助けてくれた人がいたんだ」 「そうなんですか……いや、あの時は頭の中が真白になってしまって、よく覚えてないです」 あの時エレンは大きなクラクションの音に聴覚も視覚も支配されて、足の感覚さえも失った。ああいう時、人の体は本当に動かなくなるんだなぁ、なんて今になって考える。とにかく生きていてよかった。 「あ、だからオレ比較的軽傷で済んでるんですね」 骨の一本や二本、折れていてもおかしくはなかったと思う。それでもこれくらいで済んでいるのは、まさしく助けられたからだ。 「それで、その……助けてくれた人は……」 まさか亡くなったり…と、エレンは顔を青くする。しかし、エルヴィンはにこりと笑って無事だよ、と言った。 「かすり傷で済んだよ。彼は超人的な体の持ち主だからね」 「超人的って……」 「むしろ君のその腕の怪我は彼が抱き締めすぎたからっていう可能性もなくはない」 「え!? そんなに!? か、怪力……」 エレンが僅かに戦慄すると、エルヴィンは口を開けて笑った。からかったのか。 この口ぶりからすると、もしかしたらエルヴィンとその人は知り合いなのかもしれない。 「先生の知り合いなんですか?」 「ああ、実は友人なんだ」 すごい偶然だな。自分の友人が病院に運ばれてくるなんてさぞ驚いたことだろう。聞けば軽傷だと言うが、エルヴィンにも申し訳ない気持ちになった。 「後でこっそり君の様子を見に来ると言っていたから、捕まえて少し話をしてみるといい」 「つ、捕まえて……」 「顔は少々怖いが優しい奴だ」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/293
294: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:07:42.33 d 「はあ……お礼も言いたいですし、頑張ってみます」 エルヴィンはカルテに何かを書きこむと、うん、と頷いてにっこりと笑った。何となく含みがあるような気がして、途端に居心地が悪くなった。 「あ、そうだった。一応聞いておくが、自分の名前、年齢、職業はわかるかな?」 今さらな質問だ。これは最初に聞いておくべきものなのでは。 「エレン・イェーガー、十九歳……あ、いやこの間誕生日が来たから二十歳、マリア大学経営学部三年です」 「うん。そこまでわかっていれば、脳には異常なさそうだ。恋人はいる?」 「こっ、恋人?いませんよ。それ何か関係あるんですか?」 「いや。いるならば心配しているだろうし、お見舞いに来るなら気を利かせてあげたほうがいいかと思ってね」 「いないのでその必要はないです」 嫌味か、とエレンは少し膨れた。 「……からかってすまないね。今日はもういいよ」 「はい。ありがとうございました」 頭を下げると、足に巻かれた白い包帯が目に入った。 検査に向かうためにわざわざ借りてきた車いすを、看護師の女性が押してくれる。 「ああ、エレン。最後に一つ聞いてもいいかい?」 「はい、何ですか?」 「君は事故を起こしたのが何時頃だったか覚えているかな?」 「ええっと、何時かってのははっきり覚えてないですけど、昼間でしたよ。明るかったですから 」 これは断言できた。そもそも、友達と約束していたのだから昼間だろう 。エルヴィンは笑顔で頷いていたが、一方でエレンは何故そんなことをきいたのだろうと、腑に落ちずにいた。 明日また来るから、と言って母が帰った後、静かな病室で一人、エレンは何もすることがなくてただ窓の外を見ていた。 今日は念のため病院に泊まり、明日の夕方には退院していいことになっている。やることがないから早く家に帰りたかった。何よりも父が仕事をするこの病院にはあまりいたくないというのが本音だった。 エレンは大学に入って一人暮らしをしているが、しばらくの間は実家に世話になるつもりだ。実家からも大学は近いので通うのは問題ない。電車には乗れないので松葉杖なしでも歩けるようになるまでは母に車で送っていってもらうしかないが。 コンコン、と静かなノックの音が聞こえてハッとする。慌てて「はい」と言えば、ゆっくりドアが開かれた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/294
295: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:08:11.51 d 「……入ってもいいか」 「あ、は、はい……!」 現れたのは身長が低めの、スーツを着た男だった。初めて見る顔だと思ったが、すぐに先ほどエルヴィンが言っていた人物だということに気がついた。 彼は静かにドアを閉めるとゆっくりとした足取りで近づいてくる。 「起きていたんだな……。怪我の具合はどうだ? 異常はないと聞いたが……」 窮屈そうなネクタイを少しだけ緩める。その大人の仕草に何故か胸がドキリとしたが、その手に巻かれた包帯が目に入ったからかもしれない。 「大丈夫です、何ともありません。……あの、貴方が助けてくれたんですよね? オレ、エレン・イェーガーって言います。本当にありがとうございました。貴方のおかげでこれくらいで済んだんだと思います」 「……いや、俺の方こそ、悪かった」 「? どうして貴方が謝るんですか?」 綺麗に頭を下げた彼は本当に己が悪いと思っているらしかった。どちらかと言えばエレンが巻き込んだ身で、むしろこちらが謝るべきだというのに。 「飛び出すお前を、止められなかった」 「ええ? そんなの……オレの方こそ、貴方にまで怪我をさせてしまってすみませんでした」 「これくらい問題ない」 彼は首を振った。随分と自分を責めているようだが、エルヴィンが言った通り本当に優しい人のようだ。 「あの、座ってください。少しお話しませんか?」 話してみたいと思ったのだ。彼と。 彼は少し迷った様子だったが、すぐ側にある椅子に腰を落ちつけた。捕まえることに成功したようだ。 「よかった。名前を聞いてもいいですか?」 「……リヴァイ・アッカーマンだ」 「アッカーマンさん、助けてくださって本当にありがとうございました」 もう一度礼を言えば、リヴァイと名乗った男は首を振った。そうしてようやく目が合う。心臓が、歓喜に震えたような気がした。途端に恥ずかしくなって、あわあわと視線を彷徨わせる。 「あ、あの、その、エルヴィン先生に腕に罅が入ったのは貴方が強く抱きしめすぎたからだーなんて、言って、からかわれて……っ」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/295
296: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:08:43.56 d 抱きしめる、抱きしめられた。 ぶわぁ、と顔が一気に熱くなる。羞恥を誤魔化すために言ったはずだったのに、墓穴を掘ってしまった。リヴァイは体を張って助けてくれただけだというのに、抱きしめられたという事実に何故か盛大に照れた。 「そ、そんなわけないですよね! すみません、助けてくれたのに……」 お互い怪我をしたというのに不謹慎なことを言ってしまったと自分の未熟さに落ち込んだ。絶対子どもだと思われた。 「……いや、そうでもねぇかもな。確かにお前を助けるために必死だったから力加減がわからなかった」 「え、えー……?」 そこを肯定してしまうのか、とエレンは戸惑った。だが、その口元に少しだけ笑みが浮かんでいたので、なんとなく嬉しくなる。 「アッカーマンさん、今度ちゃんとしたお礼をさせてください。それで、あの、良かったら連絡先を教えてもらえませんか?」 「お礼なんていい。……本当に俺が悪かったんだ、全部」 リヴァイは頑なだった。どうしてそんなにも自分が悪いと思っているのかがわからない。信号が変わってすぐに周囲を見もしないで渡ったのは自分なのだから、完全にエレンの不注意なのに。 しかしこうまで頑なだと、逆に無理にでもお礼をしたくなってしまうではないか。 「じゃあ、悪いと思うなら……連絡先、教えてください……」 「……」 我ながらずるいと思う。でもリヴァイとはこれっきり、助けてくれてありがとう、だけで済ませたくはなかったのだ。 しばらくして溜息と共にわかった、とリヴァイが言った。それは観念したというような響きが混じっていた。 スーツの内側のポケットから名刺入れを取り出したリヴァイはそこから一枚引き抜くと、裏側に電話番号を書いて渡してくれた。 「ありがとうございます! 絶対に連絡しますね! あ、でもオレのスマホどこに……」 「お前の荷物」 リヴァイが差し出したのは大きめの紙袋だった。そこにはいつも大学に持っていっているリュックが入っていた。 「アッカーマンさんが持っていてくれたんですね。ありがとうございます」 「汚れは全部落ちたと思う」 「え! まさかアッカーマンさんがやってくれたんですか? 本当に何から何までありがとうございます……エルヴィン先生の言う通りの人ですね」 「何……?」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/296
297: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:08:58.46 d 最後に小さく呟いた言葉にリヴァイはわかりやすく眉を顰めた。何か失礼なことを言ってしまっただろうかと慌てるエレンにリヴァイは鋭い視線を向けてくる。 「エルヴィンから何か聞いたのか?」 「え、えっと……貴方とは友人で、顔は怖いけど優しい人だって……」 「他には?」 「ちょ、超人的な体の持ち主だって……それくらいです」 本当にそれだけか?と、すごい剣幕で尋ねられ、ガクガクと首を縦に振った。じゃあいい、とリヴァイが息をつくまで、エレンは息ができていなかったように思う。 良く分からない人だ。 その後、帰ると言ったリヴァイは背を向けた後でもう一度「本当に悪かった、エレン」と言って病室を後にした。 名を呼ばれたことに、不思議と胸が弾んだ。 +++ 翌日の夕方、母に車で迎えに来てもらったエレンは荷物をまとめて、一刻も早くここを離れたいという思いで病院を出た。帰りにエレンが借りているアパートへと寄って、必要なものをとりにいかなければならない。 たった数日ぶりの自分の部屋はずいぶんと懐かしく感じた。 「これは持っていく?」 「あ、そっちの袋にいれて」 必要な物は、大学で使う教材に、数日分の着替え。それくらいでいいだろう。 「あれ、あの服どこ置いたんだっけ 」 独り言のように呟けば、知らないわよ、と母が言う。まぁいいかと他の服を適当に鞄に詰めて、早々にアパートを出発した。 実家へと帰ってくるのはもっと久しぶりだった。とは言っても冬休みに一度帰って来てはいるので、四か月ぶりといったところだ。冬には少しだけ淋しそうだった店先も、今では鮮やかな色で装飾され、春らしさを感じた。 「エレン……!」 バタバタと慌ただしい音と共に顔を出したのは幼馴染のミカサだった。その顔には心配したと書いてある。いつもはあまり表情を変えないミカサの顔が今にも泣き出してしまいそうな程歪んでいた。 「心配した、エレン……」 「何ともねぇよ。ありがとな、ミカサ http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/297
298: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:09:38.37 d 服の袖を控えめに掴むミカサは俯きながらぶんぶんと首を横に振った。 ミカサは昔からエレンに対して過保護なところがあった。一人暮らしを始めると言った時も「私も一緒に行く」と言ってきかなかった。 母が心配だから母についていてやってくれと頼めば渋々ながらも了承してくれて、今は講義を終えた後、バイトとして毎日店を手伝ってくれている。 「無理はしないで、エレン。……やっぱりエレンには私がついていないと駄目」 「なんでそうなるんだよ」 呆れたように言えば、ミカサは苦虫を噛み潰したような顔をして黙った。 自室に荷物を運び終えた後、エレンはベッドに座って長い溜息を一つついた。自由に動かせない体が鬱陶しい。効き手が無事だったのは不幸中の幸いといったところだろうか。 エレンは鞄の中から名刺を取り出す。リヴァイのものだ。 そこに書かれている会社は誰もが知っているような大手の会社で、加えて課長と言う文字にエレンは思わず「おお……」と呟く。すごい人に助けられてしまったようだ、と。 お礼がしたいと言いはしたが、そんな暇もないのかもしれない。昨日だって仕事の合間に来てくれたのだろうから、引きとめてしまって悪かったな、とエレンは反省した。 連絡するのはもう少し後にしよう。どちらにせよ、怪我が治らなければまたリヴァイにも迷惑をかけてしまう。 「あー……早く治んねぇかな」 エレンはリヴァイに会えるのを待ち遠しく感じていた。 今日は朝から病院に来ていたが、もう大丈夫だね、とエルヴィンに完治の言葉をもらうとすぐエレンはリヴァイにメールを送った。 最近はメッセージアプリばかり使っているからメールの画面を起動するのすら久しい。だが、メッセージアプリはあまりにも気軽過ぎて、まだ一度しか会ったことのないリヴァイとはやり取りできそうにないなと思った。 「はぁ……」 緊張しないわけがない。何度も文章におかしい所がないかを確認して、消しては打ちこみ…を繰り返し、満足するものになるまで三十分はかかった。 相手は大人だ。エレンも成人はしているものの、これだから学生は、と思われるのだけは嫌だった。 意を決して送信を押す。その後数秒もしないうちに『送信しました』という文字を見て、本当に送ってしまったのかと今さらになって不安になった。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/298
299: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:09:59.60 d すぐに返信が来るとは思っていない。きっと仕事中であろうし、こう言っては失礼かもしれないが、こういうことにまめな人には見えなかった。 「き、期待はしないでおこう」 エレンはスマートフォンを上着のポケットではなく、鞄の中へとしまった。 期待しないようにしよう。それはもう、どうしようもなく期待しているのと同意だったけれど。 病院へ寄った足で大学へと向かう。午後の一コマくらいには間に合いそうだ。 「エレン!」 「アルミン、ミカサ」 幼馴染二人が駆け寄ってくる。怪我が治るまでの間、二人には本当にお世話になった。 「良かった。包帯はとってもらえた?」 「ああ。もう完治したって」 エレンはそう言って左足でトントン、と地面を叩いた。もう違和感も何もない。 「そっか。じゃあ他にはもう何も問題ないんだよね? ほら、頭も打ったって言っていたから」 「そっちは最初から何ともないって言ってるだろ。もう本当にどこも悪いところはねぇよ」 「そう。ならいいんだ……けど、」 アルミンは意味深に言い淀む。本当に心配をかけてしまったようだ。 「……エレン、何か忘れていることがあるんじゃない?」 「は? 忘れてること?」 聞き返すと、何故かミカサが顔を歪めた。エレンにはなんのことだかわからなくて、ただ首を傾げた。 「アルミン。その話は……」 「でも……」 二人は何やら深刻な顔をして気の毒そうな視線を向けてくる。そんな目で見られていい気分なはずはない。エレンは少しの苛立ちと違和感のようなものを感じた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/299
300: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:10:17.59 d 「おい、二人して何だよ。オレが何か忘れてるって言うのかよ。そんな記憶喪失になったわけでもあるまいし……」 「概論のレポート。十二時ぴったりまでだよ」 「は?」 アルミンはエレンの腕を掴んで、時計を見せるように持ち上げる。今は十一時……と、脳が読みとった瞬間に全身から血の気が引いた。 「もう手遅れ」 憐みを含んだミカサの声に生きた心地がしない。あの講義の単位は必須だ。教授は厳しくて、レポートを毎回課すうえに一度でも提出できなかったものがあると単位をもらえないのだと先輩から聞いたことがある。 「ばっ……! 早く言え!」 エレンは完治した足で駆けだした。目的地は学生に開放しているコンピュータールームだ。頭の中で、レポートの課題は何だっけ、データは持ち歩いていたっけ、と慌ただしく考えた。 その後ろ姿を見てアルミンは少し困ったような顔で笑った。 「本当に忘れてるなんてね」 「……仕方ない」 「仕方ないって顔してないよ。ミカサだって心配なんだよね」 「……一緒に卒業できないのは、困る」 ミカサは赤いマフラーで口元を隠した。 +++ レポートは三十分遅れで教授の元へ持って行った。途中まで進めていたのは幸いだったが、締め切りの時間に間に合わなかったというだけでアウトと言ってもいい。 けれど、教授に「正直忘れていました」と言えば、その素直さが良かったのかレポートは受け取ってもらえた。この際評価はどうでもいいから単位だけでも、という気持なのでエレンは少しホッとした。 実家へ帰ってくると、エレンはすぐさまアパートへ帰るために荷物をまとめた。母には明日ゆっくり帰ればいいのに、と残念そうに言われたけれど、父の帰ってくるこの家にいるのが嫌だった。 「あ、何もない……当たり前か」 アパートへ戻って来て適当に荷物を片付け、腹が減ったのでエレンは冷蔵庫を開ける。しかし食べられるようなものは何も入っていなかった。入っているのは開いていないミネラルウォーターのペットボトルが二本だけだ。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/300
301: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:10:46.59 d 面倒だがコンビニに行くかと立ち上がる。どうせなら実家で夕飯も食べてきてしまえばよかったのだろうけれど、今日は父の帰りが早かった。だからエレンは鞄も下ろさずに荷物をまとめて出て来たのだ。 鞄から財布を取り出して、ついでにスマートフォンも上着のポケットに突っ込む。そういえば鞄に入れていたんだった。何で入れてたんだっけ?と考えたけれど、まあいいやとすぐに脳を滑っていった。 コンビニはアパートから歩いて五分のところにある。その先をもう五分も歩けば駅だ。エレンはこの立地を気に入っていた。 夜道の暗さにコンビニの光は強すぎる。目の奥に少し痛みを感じて目を細めながら店内へと入ると、やる気のないバイトの声が聞こえた。 「いらっしゃいませ……んだよ、てめぇかよ」 「おい、客だぞ。歓迎しろ」 居酒屋じゃねぇんぞ、と言ったのはジャン・キルシュタイン。大学は別だが、同い年らしい。コンビニでしか顔を合わせないのに相性が悪い。 適当に弁当と飲み物を選んでレジへ持っていく。この時間はジャンだけのようで、嫌でも彼にやってもらわねばならなかった。 「……久しぶりだな 」 「そうか?」 「ああ。彼女でもできたのかと思ったぜ」 「はあ? いねぇよそんなの。事故って色々大変だっただけ」 何てことないように言って、財布を取り出す。あ、やべ、金がない。ぎりぎり足りるくらいしか入っていなかった。 「事故っただあ? 大丈夫だったのかよ」 「大丈夫だからここにいる」 「……ああそうかよ。心配してやったんだけど損したわ。ま、お前みたいな奴が簡単にどうにかなっちまうとは思えねぇけどな」 「うるせぇよ」 その時だ。財布とは反対側のポケットに入れていたスマートフォンがブルブルと存在を主張する。ジャンが釣銭を用意する間に片手でそれを操作した。 メールが届いていた。いつもはメルマガだろうと後回しにするが、登録していないメールアドレスは送信者が誰なのかを明確に表示はしていないが、エレンには確かに見覚えがあった。 同じメールアドレスの未読メールは全部で三件。エレンは慌てて今来たばかりの一番上のメールを開く。 『悪い、急だったな。空いている日があったらまた連絡してくれ』 エレンは顔をサッと青くした。唐突な謝罪で始める内容に、エレンはさらに下のメールを開く。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/301
302: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:10:57.21 d 「おい、釣り!」 「ちょ、ちょっと待って」 ジャンが苛立ちを隠さずに金を差し出してくる。ちょっと待ってくれ。今はそんなことをしている暇はない。 『仕事が終わった。ローゼ駅西口で待ってる』 さらに一番初めにきていたメールを開く。受信したのはエレンがメールを送ってそんなに時間は経っておらず。おそらく必死でレポートを作成している時だ。 『今晩でいいか? 仕事が終わったら連絡する』 「おい! エレン!?」 「それお前にやる!」 「はあ!?」 ジャンの声にも構わずコンビニを飛び出した。足が治っていてよかったと、心底思った。 駅までは五分。走れば二分。指定されたローゼ駅はそこから三つ目の駅だ。最後のメールがきたのはたった今だから、もしかしたらまだどこかにいるかもしれない。 エレンは速度を落とさずに財布に入っていたICカードを叩きつけるようにして改札を通る。ICカードにお金をいれておいてよかったと思った。 締まる寸前のドアに駆けこむ。乗客に驚いたような顔で見られてしまったが、気になんてしていられなかった。 「はぁ、はぁ……っ」 ろくに動いていなかったから息切れが激しい。いや、それだけじゃない。失礼なことをしてしまったと申し訳なく思う気持ちと、まだ居てくれと焦る気持ち、それと、また会えるという期待で心臓が忙しなく騒いでいる。 エレンは息を整えるように大きく深呼吸をした。 最寄りの駅よりも人の多いローゼ駅を走る。きょろきょろと周りを見ながら外に出れば、立ち話をしている人や待ち合わせをしている人達が思っていたよりも多かった。 見る限りではリヴァイの姿はない。やはり帰ってしまったのか、と肩を落とす。怒っていたっておかしくない。いるわけぇよな、とエレンはスマートフォンを取り出して謝罪のメールを作成しようとした。 「あ……」 その画面に重なるように『メールを受信しました』の文字。タップすると、画面が切り替わる。 『後ろのカフェにいる』 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/302
303: 名無し草 (スププ Sdb8-AUQK) [] 2016/12/15(木) 04:11:24.60 d ハッとしてエレンは勢いよく振り返る。駅を出てすぐのカフェは一つしかなかった。その外向きに並ぶ窓側の席に、リヴァイがいた。 彼を見つけた瞬間の気持ちは何と言えばいいのだろう。ホッとして、嬉しくなって。胸がぐっと締め付けられるような感覚に泣いてしまいたいとすら思った。 すぐにでも駆けつけて謝るべきだと思うのに、体が動かなくてただリヴァイを見て途方に暮れた。 しかし、リヴァイが立ち上がり店を出ようとするのがわかると、エレンは慌てて彼の元へと走った。 「あ、あの! すみませんでした……!」 「良かった。……何か、あったのかと思った」 頭を下げたエレンにリヴァイは咎めるような言葉は言わなかった。それどころか心配してくれていたようで、なかなか頭を上げられないエレンの髪をさらりと撫でて、もういい、と優しい声で言ってくれた。 「本当に、ごめんなさい……。ずっとスマホを見ていなくて、気付きませんでした……それで、えっと……」 何を言っても言い訳になってしまう、とエレンは後に続く言葉が思いつかなかった。 「それで、そのまま来たのか」 ふ、とリヴァイが笑ったような気配がして自分の格好を改めて見下ろせばひどいものだ。 コンビニだから別にいいかと出てきたから、中に着ているTシャツとは色の合っていないカーディガンに、下はスウェット、足元は適当にひっかけてきたサンダルだ。これではスーツを着ているリヴァイの隣にいるのは恥ずかしすぎる。 「ご、ごめんなさい! 恥ずかしいですよね! ……っう、」 慌ててもう一度頭を下げて赤くなった顔を隠すと、タイミングがいいのか悪いのか、エレンの腹の虫が可愛く声を上げた。全身が真っ赤になっているんじゃないかと思う程恥ずかしい。 「ごめん、なさい……」 謝ってばかりで、声が小さくなった。 「……何か食いに行くか」 「えっ!? で、でも……」 「ああ、その格好じゃ嫌か 」 「いや、そうじゃなくて……!」 「だったら俺の……。 いや、いいところがある」 ついてこい、とリヴァイが身を翻して歩き出す。エレンは慌ててそのあとを追う。 「アッカーマンさん! あの、オレ……っ」 「もう謝罪は何度も聞いた。もう気にしなくていい」 「そうじゃなくて……そうじゃないんです!」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1480265818/303
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