女が土の中に埋まってた (118レス)
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96: 2014/12/14(日)03:48 ID:NgK(96/117) AAS
車を走らせると、ソーマが振り絞るような声で語りかけてきた。
「私、結局自分のこと思い出せないままだったけど、
短い間だったけど、幸せだったよ…
あなたのこと、悪魔のようだなんて、思ったこともあったけど、
放っておけなかったの。何だか昔の自分を見ているようで…
記憶が無いはずなのに、おかしいよね?」
97: 2014/12/14(日)03:49 ID:NgK(97/117) AAS
「 無理しなくていい。喋るな。そんなこと…
まるで、死ぬみたいじゃないか。」
フゴーはもう涙を抑えようともせずに、
ぐしゃぐしゃの顔で言った。
「死ぬのかな?死んだらもう会えなくなっちゃう。
あなたに朝ごはんも作ってあげられない。
あなたのスケジュールも組んであげられない。」
98: 2014/12/14(日)03:49 ID:NgK(98/117) AAS
「 もういいから!頼むから、そんな悲しいことは言わないでくれ。」
フゴーは悔しかった。
目的を見失った人生で、ようやく見つけた生きる理由は、
目の前で無慈悲にも消えようとしていた。
99: 2014/12/14(日)03:50 ID:NgK(99/117) AAS
「不老不死じゃなかったのかよ!ちくしょう!
なんで大切な人はみんな奪われるんだ。」
ハンドルを叩きながらフゴーは叫んだ。
そして、自分が不老不死を求めた理由を思い出した。
母が死にゆく日に、不条理に奪われる命の儚さを呪い、
母が永遠に生きることを強く祈ったのだ。
100: 2014/12/14(日)03:50 ID:NgK(100/117) AAS
「永遠に生き続けたら、きっと人は孤独よ。」
彼女の顔色はフゴーが見る度に白さを増していった。
フゴーは彼女を励ますために手を握っていたが、
握り返す力の弱さが彼女の終わりが近いことを告げていた。
101: 2014/12/14(日)03:51 ID:NgK(101/117) AAS
「どうせなら、朝日が見たいな。」
力なく彼女が呟くと、フゴーも観念した。
病院に向かうのをやめ、フゴーは車を海岸へと走らせた。
102: 2014/12/14(日)03:51 ID:NgK(102/117) AAS
助手席を海岸線に向けて車を停めると、
フゴーは運転席を降りて外からソーマの乗る助手席のドアを開けてやった。
水平線の向こうでは、空が紫色に輝き出していた。
103: 2014/12/14(日)03:52 ID:NgK(103/117) AAS
「私ね、あなたに言っていなかったことがあるの。
初めて私たちがあった日のこと覚えている?」
「そう言えば君は土まみれでお腹を空かせていたっけ…」
104: 2014/12/14(日)03:52 ID:NgK(104/117) AAS
「それに裸足で…でも、あなたは私を受け入れてくれた。
あの日ね、私ここの海岸にいたの。だからなのかな。
最後はここに帰らなければいけない気がする。」
フゴーはソーマの言っていることがよく理解できなかったが、
彼女が望むことなら何だって叶えようと思った。
105: 2014/12/14(日)03:53 ID:NgK(105/117) AAS
「だからね、私が死んだらここに埋めて欲しいの。
もし、生まれ変われたら、また会いに行けるように、服と靴も一緒に…」
フゴーは最後まで彼女が本気で言っているのか分からなかった。
106: 2014/12/14(日)03:53 ID:NgK(106/117) AAS
しかし、彼女に残された時間の少なさから、
自分の思いを伝えなければいけないと考えた。
「君が望むのならどんな願いだって叶えよう。君は俺の生きる理由だ。」
107: 2014/12/14(日)03:54 ID:NgK(107/117) AAS
それを聞くとソーマは満足そうに小さく笑い、
フゴーの肩越しに射し込む朝日に眩しそうに目を細めると、
そのままゆっくりと瞼を降ろした。
降ろした瞼は彼女の膝に雫を垂らし、
それっきり動かなかった。
108: 2014/12/14(日)03:54 ID:NgK(108/117) AAS
それ以来、フゴーは金のためではなく、
何が大切なのかを考えながら仕事をするようになった。
きっと、ソーマがいたら、そうするように言われる気がしたからだ。
109: 2014/12/14(日)03:54 ID:NgK(109/117) AAS
気づくと彼の周りには、大切な人が増えていった。
「(これもソーマのおかげだな。)」
彼がソーマのことを忘れることはなかった。
フゴーは遂に誰とも結婚をしなかった。
110: 2014/12/14(日)03:55 ID:NgK(110/117) AAS
月日は流れ、退職したフゴーは隠居生活を満喫していた。
毎日の日課通り、花壇に水をやり終えると、
ハンモックに揺られながら読書を始めた。
111: 2014/12/14(日)03:55 ID:NgK(111/117) AAS
いつもなら本に集中できるはずが、昨日のスポーツ中継のせいか、
どうにも眠くなった彼は、開いた本を顔に被せ、昼寝をすることにした。
112: 2014/12/14(日)03:56 ID:NgK(112/117) AAS
女は目を開いたが、目の前の景色は相変わらず真っ暗だった。
口の中に広がる土の味で自分が土の中にいると知った。
何とかもがいて地上に出ると、一面に海が広がった。
113: 2014/12/14(日)03:57 ID:NgK(113/117) AAS
夕日の中で自分の体を見ると、服を着ていないことに気づいたが、
それ以上にお腹にある親指くらいの大きさの
三つの穴のほうが彼女の関心を引いた。
114: 2014/12/14(日)03:57 ID:NgK(114/117) AAS
掘り起こした土の中には、袋を被せた服と土と地図が入っていた。
女は服と靴を身につけると地図を頼りにふらふらと歩いて行った。
115: 2014/12/14(日)03:57 ID:NgK(115/117) AAS
フゴーはふと寒さを感じて目を覚ました。
「こんな時間まで、寝てしまったか。」
本をたたみ、辺りを見回した。
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