女が土の中に埋まってた (118レス)
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1: 2014/12/14(日)02:49 ID:NgK(1/117) AAS
女は目を開いたが、目の前の景色は相変わらず真っ暗だった。
口の中に広がる土の味で自分が土の中にいると知った。
何とかもがいて地上に出ると、一面に海が広がった。
夕日の中で自分の体を見ると、服を着ていないことに気づいたが、
それ以上にへその隣にある親指くらいの大きさの穴のほうが彼女の関心を引いた。
2: 2014/12/14(日)02:50 ID:NgK(2/117) AAS
女は何も思い出せなかった。
なぜ、自分が埋められていたのか。なぜ、自分に穴が空いているのか。
そして、女は分からなかった。なぜ、それでも自分は生きていられるのか。
3: 2014/12/14(日)02:51 ID:NgK(3/117) AAS
「っくしゅんっ」
吐く息が白いことに気づいた女は、
掘り起こした土に埋れていた服を着て、
少し遠くに見える明かりを頼りに、ふらふらと歩いて行った。
4: 2014/12/14(日)02:52 ID:NgK(4/117) AAS
暗いレストランの個室の中、フゴーは
葉巻をふかしたスキンヘッドの隣で
退屈な話に適当な相づちを打っていた。
目の前のスクリーンには、ドレスやタキシードを着た、
古めかしい男女の集合写真が映されていた。
5: 2014/12/14(日)02:54 ID:NgK(5/117) AAS
「結局、こいつらは俺のひいじいさんに食い尽くされたんだがな!」
そう言うとスキンヘッドは下品な高笑いをした。
「君のひいおじいさまには悪魔だって敵うまいよ。」
月に一度のスキンヘッド一族の自慢話に辟易しながらも、
フゴーは相づちを続けた。それが顧客付き合いというものだ。
6: 2014/12/14(日)02:54 ID:NgK(6/117) AAS
しかし、フゴーの意識はスキンヘッドには向いていなかった。
彼の見せたスライドの中の1人の女が彼の興味を引いたからだ。
「(美しい女だ。どことなく母の面影を感じる。)」
7: 2014/12/14(日)02:55 ID:NgK(7/117) AAS
フゴーは幼い日に亡くした母のことを思い出していた。
食事を終えるとスキンヘッドは車を呼び、付け足すように言った。
「それじゃ、次の裁判も頼りにしているぞ。先生。」
スキンヘッドの黒塗りを見送ると、フゴーは帰路についた。
8: 2014/12/14(日)02:55 ID:NgK(8/117) AAS
街灯の明かりを残して、すっかり暗くなった街を歩いていると、
目の前からふらふらと近づいてくる人影を見つけた。
「浮浪者め。」
フゴーがそう言い捨てると、それが聞こえたのか、人影は顔を上げた。
9: 2014/12/14(日)02:56 ID:NgK(9/117) AAS
さっき見た古めかしい写真の美女によく似た顔がそこにあったからだ。
「何か食べ物をくれませんか?」
普段なら物乞いの頼みなど、耳も貸さないフゴーだったが、
目の前で起きた不思議な現象のせいか、それとも女が美しかったからか、
彼女を自宅に招き入れることにした。
10: 2014/12/14(日)02:57 ID:NgK(10/117) AAS
「随分大きな屋敷に住んでいらっしゃるのね。」
家に着くと女は驚嘆した様子で言った。
「こんなものは犬小屋だよ。俺はもっとでかい屋敷を建てるつもりだ。
そんなことより、その土まみれの体を何とかしてくれ。
シャワーなら奥の部屋にある。」
11: 2014/12/14(日)02:58 ID:NgK(11/117) AAS
家の玄関でコートを脱ぎながらフゴーは
浮浪者に親切をする自分に違和感を覚えた。
しかし、その違和感を覆うような現実があった。
シャワーを浴びた女に着替えを渡す際に、
彼女の腹にある穴に気づいてしまったのだ。
12: 2014/12/14(日)02:58 ID:NgK(12/117) AAS
女の裸を見てしまったこと以上に、
彼の頭は腹にある穴でいっぱいだった。
食事の席でも、フゴーは食べ物の味が分からないほどに混乱していた。
13: 2014/12/14(日)02:59 ID:NgK(13/117) AAS
「シャワーから出る時に、君の裸を見てしまったんだが、
そのことは謝る。だが、君の腹に空いている穴は何だ?
なぜ、そんな傷を負っていながら平気でいられる?」
混乱しながらも、フゴーは女に問いただした。
14: 2014/12/14(日)03:00 ID:NgK(14/117) AAS
しかし、女の答えはフゴーを満足させなかった。
「見られたことは気にしませんが、
私にもよく分からないんです。
それどころか、自分の名前さえ思い出せなくて…」
15: 2014/12/14(日)03:00 ID:NgK(15/117) AAS
フゴーはにわかに信じられなかったが、
目の前で起きた現実離れした現象にすっかり感覚が麻痺していた。
16: 2014/12/14(日)03:01 ID:NgK(16/117) AAS
「それでこれからどうするつもりなんだ?」
「どうするって?」
「記憶がないのでは生活の手段も無いのだろう。」
「言われてみれば…。」
17: 2014/12/14(日)03:01 ID:NgK(17/117) AAS
女はそう言って、俯きながら
フゴーを期待するような目で覗き見た。
「 わかっている、中途半端に拾っただけでは解決にならん。」
そう言いながら、フゴーは女に隠された秘密に関心を抱いていた。
18: 2014/12/14(日)03:02 ID:NgK(18/117) AAS
「 (こいつが死なない理由を何とかして突き止めたい。)」
フゴーには小さな頃から現実離れした夢を持っていた。
不老不死の夢である。
19: 2014/12/14(日)03:02 ID:NgK(19/117) AAS
フゴーは何かをする時に必ず、
それは金を稼げるのかと考える癖があった。
女を置くことは金を稼ぐことにはならないが、
それ以上に不老不死という幼い頃からの
夢を叶えられるかもしれない、と思うと心が躍った。
20: 2014/12/14(日)03:03 ID:NgK(20/117) AAS
「 まず、君の名前を考えなくてはいけないな…
ソーマという名前はどうだ。」
「 ソーマ…。わかりました。」
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