女が土の中に埋まってた (118レス)
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1: 2014/12/14(日)02:49 ID:NgK(1/117) AAS
女は目を開いたが、目の前の景色は相変わらず真っ暗だった。
口の中に広がる土の味で自分が土の中にいると知った。
何とかもがいて地上に出ると、一面に海が広がった。
夕日の中で自分の体を見ると、服を着ていないことに気づいたが、
それ以上にへその隣にある親指くらいの大きさの穴のほうが彼女の関心を引いた。
99: 2014/12/14(日)03:50 ID:NgK(99/117) AAS
「不老不死じゃなかったのかよ!ちくしょう!
なんで大切な人はみんな奪われるんだ。」
ハンドルを叩きながらフゴーは叫んだ。
そして、自分が不老不死を求めた理由を思い出した。
母が死にゆく日に、不条理に奪われる命の儚さを呪い、
母が永遠に生きることを強く祈ったのだ。
100: 2014/12/14(日)03:50 ID:NgK(100/117) AAS
「永遠に生き続けたら、きっと人は孤独よ。」
彼女の顔色はフゴーが見る度に白さを増していった。
フゴーは彼女を励ますために手を握っていたが、
握り返す力の弱さが彼女の終わりが近いことを告げていた。
101: 2014/12/14(日)03:51 ID:NgK(101/117) AAS
「どうせなら、朝日が見たいな。」
力なく彼女が呟くと、フゴーも観念した。
病院に向かうのをやめ、フゴーは車を海岸へと走らせた。
102: 2014/12/14(日)03:51 ID:NgK(102/117) AAS
助手席を海岸線に向けて車を停めると、
フゴーは運転席を降りて外からソーマの乗る助手席のドアを開けてやった。
水平線の向こうでは、空が紫色に輝き出していた。
103: 2014/12/14(日)03:52 ID:NgK(103/117) AAS
「私ね、あなたに言っていなかったことがあるの。
初めて私たちがあった日のこと覚えている?」
「そう言えば君は土まみれでお腹を空かせていたっけ…」
104: 2014/12/14(日)03:52 ID:NgK(104/117) AAS
「それに裸足で…でも、あなたは私を受け入れてくれた。
あの日ね、私ここの海岸にいたの。だからなのかな。
最後はここに帰らなければいけない気がする。」
フゴーはソーマの言っていることがよく理解できなかったが、
彼女が望むことなら何だって叶えようと思った。
105: 2014/12/14(日)03:53 ID:NgK(105/117) AAS
「だからね、私が死んだらここに埋めて欲しいの。
もし、生まれ変われたら、また会いに行けるように、服と靴も一緒に…」
フゴーは最後まで彼女が本気で言っているのか分からなかった。
106: 2014/12/14(日)03:53 ID:NgK(106/117) AAS
しかし、彼女に残された時間の少なさから、
自分の思いを伝えなければいけないと考えた。
「君が望むのならどんな願いだって叶えよう。君は俺の生きる理由だ。」
107: 2014/12/14(日)03:54 ID:NgK(107/117) AAS
それを聞くとソーマは満足そうに小さく笑い、
フゴーの肩越しに射し込む朝日に眩しそうに目を細めると、
そのままゆっくりと瞼を降ろした。
降ろした瞼は彼女の膝に雫を垂らし、
それっきり動かなかった。
108: 2014/12/14(日)03:54 ID:NgK(108/117) AAS
それ以来、フゴーは金のためではなく、
何が大切なのかを考えながら仕事をするようになった。
きっと、ソーマがいたら、そうするように言われる気がしたからだ。
109: 2014/12/14(日)03:54 ID:NgK(109/117) AAS
気づくと彼の周りには、大切な人が増えていった。
「(これもソーマのおかげだな。)」
彼がソーマのことを忘れることはなかった。
フゴーは遂に誰とも結婚をしなかった。
110: 2014/12/14(日)03:55 ID:NgK(110/117) AAS
月日は流れ、退職したフゴーは隠居生活を満喫していた。
毎日の日課通り、花壇に水をやり終えると、
ハンモックに揺られながら読書を始めた。
111: 2014/12/14(日)03:55 ID:NgK(111/117) AAS
いつもなら本に集中できるはずが、昨日のスポーツ中継のせいか、
どうにも眠くなった彼は、開いた本を顔に被せ、昼寝をすることにした。
112: 2014/12/14(日)03:56 ID:NgK(112/117) AAS
女は目を開いたが、目の前の景色は相変わらず真っ暗だった。
口の中に広がる土の味で自分が土の中にいると知った。
何とかもがいて地上に出ると、一面に海が広がった。
113: 2014/12/14(日)03:57 ID:NgK(113/117) AAS
夕日の中で自分の体を見ると、服を着ていないことに気づいたが、
それ以上にお腹にある親指くらいの大きさの
三つの穴のほうが彼女の関心を引いた。
114: 2014/12/14(日)03:57 ID:NgK(114/117) AAS
掘り起こした土の中には、袋を被せた服と土と地図が入っていた。
女は服と靴を身につけると地図を頼りにふらふらと歩いて行った。
115: 2014/12/14(日)03:57 ID:NgK(115/117) AAS
フゴーはふと寒さを感じて目を覚ました。
「こんな時間まで、寝てしまったか。」
本をたたみ、辺りを見回した。
116: 2014/12/14(日)03:58 ID:NgK(116/117) AAS
その中に見慣れないような、どこか懐かしい人影を見た気がした。
人影は女だった。女は近づいてきて、彼に話しかけた。
「大きな屋敷を建てなくても、私はこの家の方が好きよ。」
117: 2014/12/14(日)03:58 ID:NgK(117/117) AAS
おしまい
118: 2016/05/03(火)02:20 ID:jqY(1) AAS
保守9
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