古本屋のつぶやき2 (398レス)
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370: 栖雲居士 ◆dqam8SqGUPdm 10/11(金)08:51 ID:AnfRjoyY(1/2) AAS
また香厳智閑禅師、かつて大潙大円禅師の会に学道せしとき、大潙いはく、
「なんぢ聡明博解なり、章疏のなかより記持せず、父母未生以前にあたりて、わがために一句を道取しきたるべし。」
香厳、いはんことをもとむること数番すれども不得なり。
ふかく身心をうらみ、年来たくはふるところの書籍を披尋するに、なほ茫然なり。
つひに火をもちて年来のあつむる書をやきていはく、
「画にかけるもちひは、うゑをふさぐにたらず。われちかふ、此生に仏法を会せんことをのぞまじ。ただ行粥飯僧とならん。」
といひて、行粥飯して年月をふるなり。
行粥飯僧といふは、衆僧に粥飯を行益するなり。このくにの陪饌役送のごときなり。
かくのごとくして大に潙まうす、
「智閑は心神昏昧にして道不得なり、和尚、わがためにいふべし。」
大潙のいはく、
「われなんぢがためにいはんことを辞せず、おそらくは、のちになんぢわれをうらみん。」
かくて年月をふるに、大証国師の蹤跡をたづねて、武当山にいりて、国師の庵のあとに、くさをむすびて爲庵す。竹をうゑてともとしけり。
あるとき、道路を併浄するちなみに、かはらほとばしりて、竹にあたりてひびきをなすをきくに、豁然として大悟す。
沐浴し、潔斎して、大潙山にむかひて焼香礼拝して、大潙にむかひてまうす、
「大潙大和尚、むかしわがためにとくことあらば、いかでかいまこの事あらん。恩のふかきこと、父母よりもすぐれたり。」
つひに偈をつくりていはく、
一撃に所知を亡ず、更に自ら修治せず
動容古路を揚ぐ、悄然の機に堕せず
処々蹤跡無し、声色外の威儀なり
諸方達道の者、咸く上上の機と言はん
この偈を大潙に呈す。
大潙いはく、
「此の子、徹せり。」
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