[過去ログ] 刑法の勉強法■59 (1002レス)
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(1): 2022/10/21(金)18:38 ID:DipvzEay(1) AAS
お題:法益侵害説と行為無価値論は果たして結びつくのか?

違法性の本質につき、
行為無価値→(社会倫理)規範違反説、結果無価値→法益侵害説
と解するのがこれまでの一般的な見解であった。

ところが、増田豊門下は、行為無価値一元論に立ちながら、法益侵害説を採用する。
曰く、行為規範は法益保護という規範目的を達成するために発動される。
すなわち、法益侵害を志向する行為のみが違法とするのである。
増田は人に不可能を強いる結果無価値論は法益保護という規範目的とは相容れないという。

しかし、行為無価値論と法益侵害説は本当に結びつくのだろうか?
被害者の推定的承諾ケースを素材に考えてみよう。
雨が降ったのでAが好意で隣人Bの洗濯物を取り込むため隣地に侵入した事案。
かりに隣人がAの立入りを許さない特異な嗜好を持つ法益主体Bであったと仮定すると、
上記Aの隣地立入行為につき建造物侵入罪が成立し得ることになるはずだが、
行為無価値一元論からはAは法益侵害を志向しているわけではないので、
事前判断としてAの違法性は阻却されることになるだろう(行為価値衡量説)。
とすると、結果的に特異な嗜好を持つBの法益は守られないことになる。
ここでは、行為無価値一元論と法益侵害説が一致しないことが明らかである。

もし特異な嗜好を持つ法益も保護されるべきであるなら、
Aの立入り行為は違法であるが、Aには故意がない(Bの承諾を予期していたから)
ので非犯罪と解すべきではないか(結果無価値論からの帰結)。

そう考えると、行為無価値一元論と法益侵害説はやはり結びつかないのではないか?
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