ミカサ「この長い髪を切る頃には」 (933レス)
ミカサ「この長い髪を切る頃には」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/
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910: 進撃の名無し [] 控室に戻ってわいわい言いながら、メイクや衣装を外して制服姿に戻る。 大道具の私達は次の学校の手伝いがあるのでまだ仕事が残っているが、役者達はここで自分の役目は終わったようなものだ。後はそれぞれの係に戻るだけである。 エレン「あーしんどかった。まじで心臓止まるかと思った……」 ジャン「同感だ……仮面外れた時、やばかったな……」 マーガレット「にしても変ですね。仮面の留め具、入念にチェックしてたのに」 スカーレット「………留め具じゃなくて、紐の方がなんか怪しい」 マーガレット「え?」 スカーレット「まさかと思うけど……誰かに悪戯されたのかな」 ペトラ「えええ? 嘘?! 誰に?!」 マーガレット「考えられるのは他校の生徒じゃないですか? うは! まるで硝子の仮面みたいな展開ですね〜」 ペトラ「笑ってる場合じゃないわよ! もしそうだとしたら許せん! 犯人捜しちゃる!」 オルオ「やってる場合か! もう、舞台で仮面が外れるのを見せちまった以上、もし勝ち上がったとしても、この流れのまま行くしかねえぞ」 ペトラ「うっ……そうね。アレはアレで確かにいい演出にはなったけど」 ペトラ「にしても、ごめんね。エレン……結局、顔出ししちゃった」 エレン「あーもう、しょうがないっすよ。ま、美少女設定に説得力がなくなったとしても、そこはそこで」 ミカサ「そんな事はない。エレンは美少女だった」 マーガレット「そうよ! エレンは綺麗だった。だからきっと大丈夫よ」 ジャン「これが本当に女だったら、まあ、オレも放ってはおかなかったかもな」 ………………。 その発言後、マーガレット先輩の目が光った。怖い。 マーガレット「やだ、ジャン。ちょっと目覚め始めてる? もしかして、そうなの?」 ジャン「ちょっと……その目やめて下さい! あくまで「女」だったらって話ですからね?!」 マーガレット「隠さなくてもいいのにーうりうり♪ 先輩、そういう話が大好物なのよ?」 エレン「………(冷たい目)」 ジャン「エレンもそんな目で見るな! 悪かったよ! 今のは無しだ!」 と、控室でわいわいおしゃべりしながら(でも手は休めない)ドウランを落としたり、掃除をしたりする。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/910
911: 進撃の名無し [] そんなこんなで私達の出番は終わり、大道具の私は他校の公演を手伝った。 全ての公演が終わり、結果発表までしばし時間が空いた。 その間、舞台裏の後片付けをしていたら、大道具の先輩と思われる他校の生徒に声をかけられた。 大道具3年「ねえねえ、君、講談の1年だよね」 ミカサ「…………(無視)」 作業中だ。無駄話をしている場合ではない。 大道具3年「もう公演は終わったんだし、そう急いで片付けなくてもいいだろ? 後で、メルアド……」 リヴァイ「おい、そこの3年」 大道具3年「は、はい!」 リヴァイ「さっさと終わらせろ。場見の外し忘れをするなよ」 大道具3年「は、はいー(くそー)」 よしよし。遠足も帰るまでが遠足である。後片付けもちゃんとしないといけない。 そんな中、私の耳にある噂話が入ってくる。 観客女子1「ねえねえ、集英の演劇ってさ。どっかで似たような話、見た事ない?」 幕は下ろしたままでも、観客の声がこっちまで聞こえる事はある。 恐らく前列のお客さんが話しているのだろう。 観客女子2「入れ替わりネタだからじゃない? よくあるじゃん。その手の話」 観客女子1「いや、そういう次元の話じゃなくて……ああもう、はっきりと思い出せないんだよね」 観客女子2「でも集英って「創作脚本」でしょ「既存脚本」の方じゃないから、ちゃんと誰かがオリジナルで書いてるんじゃないの?」 観客女子1「うーん、でも、どっかで見覚えあるんだよねー。どこでだったかなー?」 観客女子2「え? それってまさか、既存の脚本をパクッて創作って言い張ってるかもしれないってこと?」 観客女子1「え? あー……もしそうなら、やばくないかな? バレたら失格になるんじゃないの?」 観客女子2「ええ?! 集英に限ってそれはないでしょ……多分」 観客女子1「そ、そうだよね。私の勘違いかな? あはは」 今の話の半分くらいしか理解出来なかった私は、特に気にも留めずに手を進めていたが、マーガレット先輩の目の色が変わった。 マーガレット「…………」 ミカサ「先輩?」 マーガレット「確かに、私も見覚えがある。あれと似たような話をどこかで……」 マーガレット「!」 マーガレット「ミカサ、ごめん! 後、お願い!」 ミカサ「え?」 マーガレット先輩が仕事を放棄して駆け出してしまった。 リヴァイ「おい、チーフ! どこに行く気だ!」 マーガレット「クソしてきます!」 リヴァイ「ならよし!」 ならいいんだ。ちょっとびっくりした。それもそうか。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/911
912: 進撃の名無し [] にしても、一体どうしたんだろう。何かあったのだろうか。 スカーレット「………いや、まさか。でもねえ」 ミカサ「スカーレット先輩、どうしたんですか?」 スカーレット「いやね。集英が既存の話をパクッて創作だと言い張ってるかもって話。幕の外で話してた子、いたじゃない?」 ミカサ「その、既存と創作の違いって何ですか?」 スカーレット「ああ、劇はね、既存の話。つまり既に世の中に発表されている作品を舞台化するパターンと脚本を自分で書く場合と二種類の舞台があるの。私達がやったのは「創作脚本」の方ね。今は創作脚本の方が多いのかな? 既存のやつだと、舞台化する時に、著作権料を支払う場合もあるのよ」 ミカサ「タダで舞台化してはいけない…という事ですか?」 スカーレット「そう。だからもし万が一、世に出ているお話を勝手にパクッて、舞台化したら、それは著作権の違反になるのね。だから、その辺の審査は厳しいはずだけど…集英高校、限りなくクロに近いシロ、なのかもしれないわ」 ミカサ「そ、それは卑怯なのでは……」 スカーレット「ええ、卑怯よ。でも、審査員が気づかなかった場合はシロよ。その確認に行ったんじゃないかな? マーガレットの家には、週刊少年ジャンプーのバックナンバーが1年分、山積みされてるし」 ミカサ「1年分?!」 それはすごい量だ。でも、そんなのを今から確認して間に合うのか? スカーレット「大丈夫。うちらには、OBとOGという、強い味方がいるから。今頃応援を頼んでいるはずよ」 何だかとんでもない事になってきたような気がする。 そしてマーガレット先輩が汗だくで帰ってきた。そしてぐっとサイン。 マーガレット「イザベル先輩達に連絡とってきた。うちの家に寄って貰って、怪しい号をこっちに持って来てくれるって。役者組の方に確認作業任せてみる。もし黒だったら、絶対訴えてやる!」 ミカサ「ほ、本当にパクってるんですか?」 マーガレット「話の大筋はかなり。設定も似てる。審査員の人達は年配の方が多いから、気づかないとでも思ったのかしら。うふふふ……オタクなめんなよ」 と、マーガレット先輩の顔が怖い。 そして後片付けを済ませて控室に戻ると、エレンとジャンが「確かに似てるかも?」と頷いた。 エレン「あーそう言われれば、この漫画の金魂の話に似てるかもな。でも、設定そのものはかなり弄ってなかったか?」 ジャン「微妙なラインだなー…パクリと言われればパクリにも見えるが、違うと言い張られたら、認めざる負えないような…」 マーガレット「でも台詞の独特の言い回しとか、似てなかった? 絶対これ怪しいよ!」 ガーネット「そうねえ……でも一番の違いは「あまんと」が出てこなかった点じゃない?」 スカーレット「そうね。SF要素は全部カットされていた。というか、ノリには金魂の同人みたいな?」 ガーネット「オマージュですって言い張られたら、こっちはどうにもならないわよ」 マーガレット「うぐっ……」 マーガレットが非常に悔しそうだ。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/912
913: 進撃の名無し [] マーガレット「悔しいいいいい! プロの漫画のネタを舞台脚本化したら面白いに決まってるじゃない! そんなの勝てる訳ないわよ!」 スカーレット「まあまあ……でもこれって、審査員の中で誰かが気づく可能性もあるよ?」 マーガレット「でも審査員の人達、年食ってる人ばっかりだったわよ。ジャンプー読んでいる世代がいるとは思えないけど」 オルオ「そこは読んでいる審査員がいると信じるしかねえだろ。……賭けだが」 ペトラ「……そうね。ここで私達がうだうだ言ってても仕方がない。このジャンプーをもって直訴しても、私達では……」 リヴァイ「ふむ。だったら俺が一応、提出しておこう」 その時、ひょいっと戻ってきたリヴァイ先生がジャンプーを持って行った。 リヴァイ「これが証拠なんだろ? 俺たち教員は劇の点数をつける訳じゃないが、一応、出すだけ出してみる」 マーガレット「先生!」 リヴァイ「まだ審査中の筈だ。間に合えば、空気を変えられるかもしれん」 と言ってリヴァイ先生が出て行ってしまった。 残された私達は、審議の時間、ただ待ち続けるしかなかった…。 チクタク。チクタク。 全ての審査が終わり、いよいよ結果発表の時間になった。 私達はやれるだけの事はやった。後は祈るしかない。 会場は生徒達で埋まっている。神聖な空気が漂っていた。 審査員『では、審議の結果を発表させて頂きます』 ドクン……ドクン……ドクン…… 審査員『小学館高校………優良賞』 優良賞はまあ、努力賞のようなものだ。 A会場の中で一番良かった、つまり1位のみが九州大会へ行ける。 A会場、B会場でそれぞれ1校ずつ。それを2日間行うので、計4校が九州大会へ行けるのだ。 審査員『竹書房高校………優良賞』 審査員『集英高校………優良賞』 ざわっ……。 空気が動いた。観客の予想は恐らく集英高校だったのだろう。でも集英は予選敗退だ。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/913
914: 進撃の名無し [] 審査員『岩波高校………優良賞』 審査員『偕成高校………優良賞』 審査員『講談高校………最優秀賞』 聞き間違いではない。 勝った。 私達の、勝ちだ。 審査員『更に講談高校には舞台美術賞の方も同時に贈られます。では、壇上へどうぞ』 パチパチパチ…… トロフィーを受け取った先輩達だ。ペトラ先輩は信じられない顔をしている。 席に戻ってからもまだ、顔色が戻っていなかった。 審査員『では続きまして、総評に移らせて頂きます』 審査員『審査委委員長から、お願いします』 マイクを受け取って審査委委員長が話し始めた。 審査委員長『えー今回の演劇大会ですが、非常にバラエティに富んだ物を見せていただきました』 審査委員長『ギャグ、シリアス、恋愛、ミステリー、悲恋、ファンタジー。あらゆる要素を見せてもらったといえるでしょう』 審査委員長『ただ、まだまだ彼らにも未熟な部分もあります。特に基本的な発声がまだ、出来てない高校もありました』 審査委員長『しかし後半、総合的に良くなっていった高校もあり、弱点を克服していく様も見せて貰いました』 審査委員長『演劇は総合芸術であり、ひとつの芸に秀でていればそれで完成するものではありません』 審査委員長『役者、裏方、衣装、音響、照明、そして演出。どれを欠いても劇としては成り立ちません』 審査委員長『そういった意味では、チームワークが問われる球技スポーツと通じる物があるでしょう』 審査委員長『今回、審査員の中でも、意見がかなり分かれました』 審査委員長『テニスで言うならば、完成された熟年のオールラウンダーと、若いサーブアンドボレーヤーの戦いに似ていました』 審査委員長『戦況は、オールラウンダーの方が優勢ではありました。しかし……』 審査委員長『後半、若きサーブ&ボレーヤーの、サーブだけではなく、ボレーの方も活きてきた』 審査委員長『結果は、紙一重でした。しかし今回はその紙一重が明暗を分けました』 審査委員長『そういう意味では、ヒロインをあえて男が演じるという劇も少なくなっていると思います』 審査委員長『私達は今回、演劇の原点に還り、彼の演技力を評価し、彼の今後に期待して、今回は特別に彼に主演特別賞を与えたいと思います』 審査委員長『エレン・イェーガー君、壇上にどうぞ』 ざわざわざわ…… すっぴんのエレンが壇上にあがると、ざわめきが更に広がった。 「え? 男?」「嘘だろ?!」という悲鳴に近い声がひそひそと聞こえる。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/914
915: 進撃の名無し [] 審査委員長「私は本気で女性が演じていると途中まで勘違いしていたよ」 エレン「え?」 審査委員長「『エレン』という名前は女性に多いじゃないか。まあ、男性にもいなくはないが。君の演技は大変素晴らしかった。これからも頑張って下さい」 エレン「あ、ありがとうございます……(照れる)」 パチパチパチ……… 審査委員長『そして講談高校は、舞台美術に関しても一切、手を抜かなかった。背景セットは当然だが、小道具に対する愛情は他の高校の群を抜いていた。その点も評価したいと思います』 マーガレット先輩達は顔を赤くしていた。褒められ慣れてないらしい。 審査委員長『勿論、他の学校も素晴らしかった。しかし、勝負は紙一重の世界です。その一歩先の評価を得るには、多くの時間を犠牲にする事でしょう。しかしその経験は、皆さんの血となり肉となり、更なる今後に繋がっていく事になります。敗退した側も、勝ち上がった側も、今後も弛まぬ努力を続けて下さい。では今回はこの辺で総評とさせて頂きます』 パチパチパチ……… 大会が終わって気合が抜けた。 皆、ぼーっとしながら会場を後にしている。 ペトラ「…………」 トロフィーを持ったまま、まだ実感の沸かない様子の先輩達だった。 ペトラ「………結局、脚本賞は、集英が持って行っちゃったわね」 そう。舞台美術とは別に、脚本賞というものもあるそうで、そっちは取れなかったのだ。 ペトラ「ま、そらそうよね。素人が書いた脚本だもの。粗があって当然よね」 マーガレット「というか、パクリ疑惑があるのに脚本賞って……」 リヴァイ「ああ。会議では一応提出したが……そもそも「入れ替わりネタ」自体が古くからよくある手だという事になってな。あの程度でパクリだとか何とか言ってたら、他の劇も似たような要素があるから、という話になったんだ」 マーガレット「そうですか……」 一番残念そうなのはマーガレット先輩である。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/915
916: 進撃の名無し [] ちゃららら〜らら〜らら〜らら〜♪ リヴァイ「ん?」 電話だ。リヴァイ先生の携帯電話のようだ。 リヴァイ「ああ、そっちも終わったか。B会場は……白泉高校か。分かった」 ぴっ。 リヴァイ「ファーランから連絡があった。B会場は白泉高校が勝ち上がったそうだ」 オルオ「今年もやっぱりきましたね」 ペトラ「強いわね。さすが古豪」 ミカサ「確か、白泉は女子高でしたよね」 記憶を引っ張り出す。確か白泉は古くからあるお嬢様女子高校だった筈。 制服がすごく可愛らしかったのを覚えている。 リヴァイ「ああ。あそこは大女優、チグサ・ツキノカゲを輩出した演劇の名門校だ」 今は往年の女優だが、60歳を過ぎてもなお、20代の役をやったりする通称「お化け女優」の異名を持つ。 あの女優さんの出身の高校なら、確かにライバルとしては手ごわいかもしれない。 リヴァイ「九州大会では今回の失敗の反省点を踏まえていろいろ調整するぞ」 一同「「「「はい!」」」」 リヴァイ「今日は全員、疲れただろう。早めに帰って休………」 と、言いかけたその時、 ハンジ「やっほー! リヴァイお疲れー!」 エルヴィン「お疲れ、リヴァイ」 ニファ「お疲れ様です」 女子体操部員「「「お疲れ様でーす」」」 男子体操部員「「「お疲れ様でーす」」」 リヴァイ「お前ら……何でこっちに」 ハンジ「今から打ち上げやるんでしょー? カラオケ店押さえておいたから、皆で行きましょうか!」 リヴァイ「ちょっと待て。こっちは疲れ切ってるんだぞ。早めに帰って休ませて……」 ハンジ「ええ? ダメだよーもう予約しちゃったし。いいじゃん、引率いるんだし」 リヴァイ「よくねえよ……こっちは一日中、フル稼働で動いて………」 ぐう………。 リヴァイ先生の(恐らく)腹の虫が、鳴った。 リヴァイ「……ちっ」 ハンジ「リヴァイ、素直じゃないねえ。お腹減ってるじゃない。ほらほら、カラオケ店でご飯食べればいいじゃない! 皆もすぐ、お腹に何か入れたいでしょう?」 エレン「まあ、本音を言えば……」 ジャン「弁当だけじゃ足りなかったのは事実です」 ハンジ「じゃあ決まりだね! 体操部と合同だけど、いいよね?」 オルオ「別にいいですよ。でも金は出しませんよ」 ハンジ「おっと、奢られる気満々だね! いいよ! 今日はエルヴィンいるし」 エルヴィン「慰労会だ。遠慮はいらないよ」 一同「「「あざーっす」」」 という訳で、私達はそのまま会場を後にして、団体でカラオケ店で打ち上げをする事になってしまった。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/916
917: 進撃の名無し [] わいわいわい。ええっと、何人いるんだろう。 演劇部と体操部の合同打ち上げ会なので、………数えるのが面倒だ。 多分、30人くらいはいるだろう。部屋を二つに分けて、適当に分かれて、ご飯を食べながら、カラオケ大会だ。 演劇部員はとにかく先にご飯を食べた。歌は体操部が殆ど歌っている。 リヴァイ先生もお腹が減っていたようだ。ガツガツ食べている。 私も遠慮はしない。このポテト、うまい。から揚げとか、摘まみやすいものをどんどん注文して食べていった。 ニファ「リヴァイ先生、差し入れです(すっ)」 手作りのクッキーを差し出してきた。ああ、アルミンによく似た彼女だ。 ニファ「先生の好きなアールグレイも持って来てますよ。どうぞ」 リヴァイ「ああ、ありがとう。頂く」 おおっと、ペトラ先輩の目が一気に険しくなった。オルオ先輩は心配そうに見つめている。 ペトラ「ちょっとニファ?! こんなところで得点稼ごうなんてずるいわよ?!」 ニファ「あら? 何の事ですか?」 ペトラ「わざわざ差し入れを持参する辺り計算してるでしょ!」 ニファ「そんな……計算、だなんて。たまたまですよ(ニコッ)」 おおっと、女の戦いが勃発している。席を離れて逃げておこう。 関わらないのが一番である。うむ。 エレンはまだ、ぼーっとしているようだ。 ミカサ「エレン、食べた?」 エレン「ああ、食べた食べた」 ミカサ「今日はお疲れ様。舞台、大変だったでしょう?」 エレン「あ? ああ………」 エレンはこっちに体を向き直して私に言った。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/917
918: 進撃の名無し [] エレン「ミカサ、ありがとうな」 ミカサ「え?」 エレン「あの時、オレの質問に答えてくれて」 ミカサ「あの時………ああ!」 舞台袖で問われたアレか。 ミカサ「別に。あの時は、素直にそう思った事を言ったまで」 エレン「ま、そうなんだろうけど……アレがオレにとってのターニングポイントだったんだ」 ミカサ「そうなの?」 エレン「ああ。アレがなかったらきっと、劇の辻妻をうまく考え出せなかった」 と、ジュースを飲みながら言っている。 エレン「仮面外れた時は本当、ひやっとしたけどな。でも、アレはアレでかえって良かったのかもな」 ミカサ「そうね。あの瞬間、物凄く、劇の中に引き込まれた」 静寂が広がった瞬間、ドキドキしたのだ。 あんなドキドキ、なかなかそう味わえるものではないと思う。 ミカサ「凄く綺麗だった。エレンも、ジャンも。素敵だった」 エレン「そっか……」 ジャン「オレはミカサと演技する方が良かったけどな……」 と、エレンの隣に座っていたジャンが急に話に入ってきた。 ジャン「最後の姫様抱っこ、本当重かったんだぞ。女子の方が軽いし、そっちの方がオレは楽だったが……」 ミカサ「私、エレンより重いけど………」 ゴーン……。 気まずい空気が流れてしまった。だって本当の事だ。 ジャン「そ、そうだとしても! 女子を抱える方が心理的に楽というか……」 と、慌ててフォローを入れるジャン。もう、別にいいけど。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/918
919: 進撃の名無し [] エレン「ははは! ミカサが演じてれば、最後のシーンはもっとリアルな声になったかもな!」 ミカサ「エレン、酷い……」 ジャン「そ、そうだぞエレン! レディに失礼だぞ!」 ミカサ「ジャンも酷い…」 ジャン「すまん……」 ああもう。拗ねるしかない。 エレン「でもさ、今回もし、男女で演じてたら、勝ち上がれなかったと思うぞ」 ジャン「うっ……」 エレン「審査委員長が言ってただろ? 演劇の原点に還って評価したって。オレ、女役、ちゃんとやれたって事だよな。観客を騙せてたって証拠だよな?」 ジャン「ああ。悔しいが、お前の女役の演技はうまかった。ミカサを真似してたって言っても、それでも限界があるだろ。よくやれたよな……」 エレン「んー……」 エレンは頬を掻いた。言いにくそうに。 エレン「いや、オレよりも、もっと頻繁に女に間違われる身近な親友がいたのも、勝因のひとつかもな」 ジャン「…………あ、あああ!」 手をポンと打って納得するジャンだった。 ジャン「アルミンか! そうだな。確かに。言われてみればその通りだ」 エレン「女として間違われるくらいの演技って、実際そうなってる奴を見た方がいいだろ? まあ、複合的に観察していろいろ要素を混ぜこぜにしたんだけどな」 ジャン「いや、それにしてもすげえな。お前……そう割り切ってたとしても、実際やれるか否かは別だろうが」 エレン「そうか? うーん、まあ、あの時はもう、やるしかねえって感じだったけどな」 と、ジャンとエレンは話し続ける。 エレン「でも、ジャンの演技も良かったと思うぞ。なんていうか、ヘタレなところ。ヘタレ王子って感じだった」 ジャン「うぐっ………」 エレン「明日からヘタレ王子と呼んでもいいか?」 ジャン「やめろ。広まるだろうが」 エルド「お、ヘタレ王子ー」 グンタ「お疲れ、ヘタレ王子ー」 ジャン「早速、広めないで下さいよ! 先輩!」 笑いが起きた。皆、ようやくリラックス出来たようである。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/919
920: 進撃の名無し [] そんな中、ハンジ先生が何やら怪しげな顔で、リヴァイ先生のグラスと自分のグラスを入れ替えていた。 ミカサ「あ」 ハンジ「しっ!」 ミカサ「?」 何で入れ替えたんだろう? 何か悪戯する気かしら? ああ、だとしたらいい気味なので、スルーしてやる。 エレンの腹ゲシゲシの件をまだ、私は許していない…ので。 リヴァイ(ごくごくごく) おお、飲んでる。飲んでる。激辛とか? 激甘とか? リアクションをわくわくして待つ。さあ、吹き出せ。 リヴァイ「……………」 あれ? ノーリアクション? リヴァイ「………(赤くなってる)」 あれ? でも、顔は赤い。 リヴァイ「………暑い。脱いでもいいか?」 ハンジ「いいよー! どんどん脱いじゃってー!」 リヴァイ「マイクを貸せ」 ハンジ「はいはい、ライク・アンド・シェル、入れといたよー」 リヴァイ『ああ? それを歌えばいいのか? ふん……聞かせてやる。俺の歌声を』 ペトラ「?!」 何故かリヴァイ先生がステージに上がった。そしてかかる曲は…… ああ、『自由への招待』だ。リヴァイ先生が一人で歌い始めてしまった。 しかも何故か上半身裸で、なおかつ、マイクは逆手持ちで。 ハンジ「エルヴィン! 撮影OK?」 エルヴィン「ああ、ばっちりだ。明日、このネタでリヴァイを憤死させよう」 ハンジ「本当、アルコール入ると、ノリノリだよね。後で我に返って憤死するけど」 なるほど、先程、ハンジ先生はリヴァイ先生にアルコールをこっそり飲ませたのか。 それはいいことを聞いた。私も写真に取って、ネタにしていじめてやろう。 ペトラ「いやあああああ! (連続撮影中)」 ペトラ先輩がスマホでリヴァイ先生を撮影しまくっている。 後日が楽しみだ。うふふ。うふふふふ。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/920
921: 進撃の名無し [] リヴァイ『ふっ……他に歌ってほしい曲はあるか? お前ら』 ニファ「次はザ・リレクテッド・ヒーローズをお願いします! (シュバッ)」 リヴァイ『あ? 良く分からんが……適当に歌ってやるぞ(ヒック)』 ああ、酔っぱらってる。ダメだ。マイクを独占されてしまった。 ペトラ「ちょっと、次はフラワーでしょ!?」 ニファ「ライクばっかり嫌ですよ! あ、フォーエバーもお願いします」 ペトラ「絶え間なく注ぐ愛の歌は歌わせない!」 喧嘩? のような言い争いだ。あーあ。知らない。 エレン「…………んーどうする? オレらも何か歌うか? 隣の部屋で」 ジャン「そうだな。こっちはリヴァイ先生に支配されちまったし」 ミカサ「そうしましょう」 そんな訳で隣の部屋に私達は移動して、体操部のメンバーと合流して順番に歌った。 ミカサ『おーとこにーはーおとこのー♪』 エレン「ナカジマ派かよ?!」 ジャン「淡々と歌いこなしてるな…」 古い歌で申し訳ない。けど、歌いやすいので好きなのだ。 ジャン『ラブ♪ ソースィーッ♪』 エレン「ラブソングばっかりかよ!」 ジャン『うるせえな! いいだろ別に』 そしてエレンの番になると、 エレン『いらなーい、なにも〜すててしまおう〜♪』 ミカサ「まさかのラブファントム」 ジャン「ラブ繋がりか。よし、受けて立とうじゃねえか!」 その後は「ラブ」縛りで何故かジャンとエレンの歌合戦。 ネタが出なくなったら負け、という勝負に発展した。 結果はジャンが勝った。 ジャン「よっしゃー! どうだ! ミカサ!」 ミカサ「うん、うまいうまい」 エレン「くそー! もうさすがに分からん! ラブソング! でねえ!」 何でこう、この二人はすぐ張り合うのか。意味が分からない。 という訳で、皆で楽しくわいわいやっていたらあっという間に時間が過ぎた。 るるるる……カラオケ店からの「終了」の電話だ。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/921
922: 進撃の名無し [] ハンジ「はいはい。10分前ですねー了解です」 何故かハンジ先生がこっちに来ていた。電話を応対している。 ハンジ「はい。延長はなしでーす。すぐでまーす」 という訳でカラオケはお開きになりそうだった。 ハンジ「はい! もう時間だから店出るよ! 片付け片付け! 撤収!」 撤収はお手の物である。私達はさっさと片付けて店を出た。 リヴァイ先生は………うわあ。酔い過ぎてエルヴィン先生におんぶされてる。 エルヴィン「では今日はここで解散だ。皆、気を付けて帰るように」 一同「「「「はい!」」」」 エルヴィン「寄り道するなよ。この辺は不審者や痴漢も多いからな。男子は女子を送ってあげるように。いいね」 男子「「はーい」」 エルヴィン「では、解散!」 という訳で、各自、それぞれ帰る事になった。 リヴァイ「すまなかった……削り過ぎた………むにゃむにゃ」 ハンジ「あらら……珍しく愚痴ってる。何か失敗したのかな?」 エルヴィン「ふふっ……次の店で吐かせてやろう。いろいろあったようだからな」 ハンジ「だねー♪ リヴァイの愚痴を聞くのがいい酒の肴だもんねー♪」 と、先生達は笑いながらリヴァイ先生を運んでいた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/922
923: 進撃の名無し [] ペトラ先輩は物凄くぽーっとしている。 ペトラ「我が生涯に一片の悔い無し……」 マーガレット「ダメですよ! 昇天したら!」 オルオ「………気持ちは分からんでもないが、やれやれ」 オルオ先輩はペトラ先輩を送っていくようだ。 オルオ「女子は一人では帰るなよ。男子が送ってやれ。いいな」 一同「「はーい」」 私は当然、エレンと一緒に帰る。 電車を乗り継いで自宅にたどり着くと、すっかり夜も深まっていた。 エレン「あー……」 ミカサ「?」 玄関に入る前に、エレンが家の前で、立ち止まった。 ミカサ「エレン? 入らないの?」 エレン「ミカサ」 エレンは私を見上げて、笑っていた。 その笑顔は普段と同じもので。 だからこの時、私は想像もしていなかった。 まさか、エレンがあんな事を言い出すなんて。 エレン「オレも隠すの、やめにする」 ミカサ「え?」 エレン「だから、オレも、レナと同じく、自分を隠すの、やめる事にする」 ミカサ「……………」 急に何の話だろうか。 エレン「つっても、いきなり言われても、困るかもしれんが……」 ミカサ「うん?」 エレン「オレ、たぶん、いや………」 そして、エレンは私に言ったのだ。 レナを演じている時よりも、もっと素直な表情で。 エレン「オレ、ミカサの事、好きだ」 …………………と。 エレン「この長い髪を切る頃には」に続く(予定) http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/923
924: 進撃の名無し [sage] 次はエレン視点で話が進む予定です。 何か、レス足りないかも…やばいやばいやばい…… とか焦って書いてたら実際は意外と余裕あった。 でも、レス足りないかもと思いながら書くのは心臓に悪いので、 次も残り100レス超えたらレス自重のお願いを勧告するかもです。 新スレは出来れば早く建てたいけど、 たまに立てられない場合もあるので、その時は待ってみます。 あんまり乱立すると、新しいスレ立てにくくなるみたいだしね。 では、次のスレでまたお会いしましょう。それでは。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/924
925: 進撃の名無し [sage] とうとう言ったのか!あんだけイチャイチャしてたもんなww とりあえずおつかれ 次の楽しみにしてる http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/925
926: 流星 [] これはどう?あれから10年後のミカサのプロポーズ編 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/926
927: 進撃の名無し [sage] エレンやるじゃん! 益々楽しくなりそうだな 乙でした! http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/927
928: 進撃の名無し [sage] 演劇部の追体験させてもらったよ 翌日憤死のリヴァイ先生ww しかしいいところで終ったな〜 次も期待! http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/928
929: 進撃の名無し [] >>927 あの…残り73ですよ…まだいけるではないんですか? http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/929
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