ミカサ「この長い髪を切る頃には」 (933レス)
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885: 2014/04/29(火)22:53 ID:rXT.0elc0(21/21) AAS
カツーン……

仮面が舞台に落ちる音がこだました。静寂が、辺りに波紋のように広がる。

ペトラ先輩は顔面蒼白だった。誰もが、言葉を出せなかった。

ここから先はエレンがどうにかするしかない。

エレンが劇を進めなければ、ここで全てが終わってしまう…。

エレンとジャンが見つめあう。

長い長い間のように感じたが、実際は10秒にも満たなかったそうだ。

とにかく劇中の私達はこの時、頭の中が真っ白で、何も考えられなかった。

ただ、エレンを除いて。

レナ(エレン)『あ! (指を適当にさす)』

タイ王子(ジャン)『え? (視線逸らす)』

レナ(エレン)『そ、そうですよね。ごめんなさい。私とした事が、はしたない真似をしてしまって。妻の領分を超えるところでしたわ(仮面をさっと拾って顔を隠す)』

タイ王子(ジャン)『え? え?』

レナ(エレン)『では後で、この油だけ買ってきて頂けませんか? 必要な物なので。お願いします。(メモを渡す)それでは、失礼致します! (ダッシュではける)』

タイ王子(ジャン)『れ、レナー?』

タイ王子(ジャン)『………触ってしまった』

タイ王子(ジャン)『この自分が、か?』

タイ王子(ジャン)『……………(真っ赤になる)』

タイ王子(ジャン)も逃げる。早歩きでレナ(エレン)とは反対側にはける。

戻ってきたエレンがペトラ先輩に小声で謝り倒していた。

エレン「すんません、まさか仮面が途中で外れるなんて思わなくて……大幅に台詞を変えたら減点対象になるし、あれ以上の事は出来なかったです(小声)」

ペトラ「上出来よエレン! 良く劇を止めなかった。本当にありがとう……(小声)」

オルオ「おい、でもこの後どうするんだ。台詞を替えずにこのまま話を進めたら、矛盾する箇所が出てくるぞ(小声)」

ペトラ「そそそそそうよね。タイ王子はレナの顔を見て惚れる訳じゃない。あくまで研究を通じて好きになっていくのに、こんなシーンがあったら、あの時素顔を見ちゃったから、好きになったように観客に思われる(小声)」

エレン「細かい部分は流れに任せましょう。今は、とにかくこのまま続けますよ! (小声)」

エレンの汗が凄かった。それはそうだ。ずっと仮面をつけていたのだ。

仮面のせいで顔は余計に蒸し暑く感じていたはずだ。

今は、その汗をタオルで軽く押さえてあげるくらいの事しかできない。

エレン「……サンキュ、ミカサ(小声)」

ミカサ「頑張って(小声)」

もうこの劇の行方はエレンのアドリブ力にかかってしまった。

乗り込んだ船だ。エレンの舵に任せるしかない。
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