ミカサ「この長い髪を切る頃には」 (933レス)
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897: 2014/04/30(水)18:51 ID:sBfH9T620(1) AAS
コンコン。

レナ(エレン)『? 何かしら』

レナ(エレン)『タイ様、何か忘れ物でも…』

しかしドアの前に居たのは、あの時の召使い(エーレン)。

レナ(エレン)『こんな夜分にどうしたの? 何かあったのですか?』

召使い(エーレン)『いえ、その……あの……』

レナ(エレン)『あの、そのじゃ分かりません。貴方の主人は? ライ王子のところの召使いよね、あなた』

召使い(エーレン)『………………』

レナ(エレン)『?』

召使い(エーレン)『お、』

レナ(エレン)『お?』

召使い(エーレン)『お慕い申して、おります! レナ様。どうか、無理を承知でお願いしたい。この私を、貴方様の物にして頂けませんか!』

レナ(エレン)『え?』

召使い(エーレン)『この国の法律では、階級の下の者は、上の者同士の金銭のやりとりで所有権を移動させる事が出来るのです。どうか、私を……そちらの宮付きにさせて下さい』

レナ(エレン)『ちょっと待って頂戴。そんな大事な話を夜中にするものではありませんよ。それに貴方、一人でこんなところに来ては、もしそれが主人にバレたら、罰せられるのは貴方の方でしょう?』

召使い(エーレン)『レナ様であれば、きっと、ご内密にして下さると思い、ここに来ました。私も覚悟の上でございます』

レナ(エレン)『………参ったわね』

レナ(エレン)『そんな事は私の独断では決められません。この宮の主人はタイ様であり、私ではありません。貴方を買う権利を有するのは私にはないのですから』

召使い(エーレン)『では、タイ様にどうかお話を御通し下さい。それまでは宮の外で待たせて頂きます』

レナ(エレン)『旦那様はもう、お休みになられました。無理を言わないで下さい。どうか、お引き取りを』

召使い(エーレン)『……………』

レナ(エレン)『…………』

召使い(エーレン)『では、せめて』

召使い(エーレン)『そのご尊顔を拝見させて下さいませんか』

レナ(エレン)『は?』

召使い(エーレン)『レナ様の本当の御顔をどうか……』

レナ(エレン)『………………(はあ)』

レナ(エレン)『私の事情を知った上でおっしゃるのであれば、それは不敬罪として訴える事も出来るのですよ?』

召使い(エーレン)『…………』

レナ(エレン)『…………』

タイ王子(ジャン)『おい、一体何の騒ぎだ』

タイ王子(ジャン)が戻ってきてしまった。

召使い(エーレン)(ビクン)

タイ王子(ジャン)『君は……兄上のところの召使いだったな。何か火急の知らせか?』

召使い(エーレン)『…………』

タイ王子(ジャン)『また、アレか? 兄上の悪戯か? 全く。人の家の中をこそこそ嗅ぎ回らないで欲しいんだが…』

タイ王子(ジャン)『仕方がない。ほら、これで今夜のところは帰れ』

と言って、タイ王子(ジャン)は召使いに小銭を握らせて宮を追い出した。

レナ(エレン)『また? とは…』

タイ王子(ジャン)『ああ、たまに兄上が悪戯で、用もないのに自分の召使いをこっちの宮によこして、人の家の中を嗅ぎ回ったりするんだよ。やめろって前から何度も言ってるんだが……今の子は、前にも何度かうちの宮に来た事がある。面倒だがその度におっぱらうしかないな』

レナ(エレン)『…………』

タイ王子(ジャン)『びっくりさせてしまってすまない。レナも今度から、対応しなくていいからね』

レナ(エレン)『分かりました』

しかしレナには一抹の不安が残るのであった。
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