[過去ﾛｸﾞ] 【◆IW7Wtsk.jU】遠月学園汐見ゼミ２【◆TPDFc9K83M 】 (238ﾚｽ)
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233: 葉山アキラ◆TPDFc9K83M 2014/10/28(火)06:59 AAS
――おはよう、潤。…まさか俺と黒木場の勝負はあんな事になるとはな。しかも来週は巻頭カラー…――この先が楽しみだ。
（枕元に腰掛け、愛する人の髪に手を伸ばす。そっと持ち上げればさらさらと指の間を髪が流れて）
（それが愛しくて愛しくてたまらなくて…意識する事なく、自然と表情が緩んだ）
…実はずっと後悔してた。別れなきゃよかったって。
本当はさ、格好よくお別れするつもりだったんだぜ？未練なんて全然ないって心から思ってた。
でも改めて向かい合ってみれば、楽しくないとか熱が下がったなんて事はなくて――今でも、大好きだった。
もっと甘えたい、甘えさせてあげたい、他愛のない話をしたい…その体を抱きしめたい。
だからやり直そう！格好悪いかもしれないけど知った事じゃない！いくらでも待つ！時々でもいい！好きなんだ！――そう言おうか悩んでた、だけど。
今まで俺は、勇気を持てなかった。
離れるのが怖くて、何より忘れる事が、忘れられる事が怖かった。
あんなに楽しかった事も、苦しかった事も全部思い出になって…その思い出すらいつかは忘れてしまうのが辛かった。
他の人を好きになったら、ずっと一緒にいたいと思った過去の気持ちは嘘になってしまう気がして、それに耐えられなかった。
なあ、潤。誰かと付き合ってて一番辛い事って何か知ってるか？
俺は嫌われる事、離れてしまう事――それが一番辛いと思ってた。けど、それは違ったんだ。
あんなにも大好きだった人が、本当は価値のない存在だと知るのが…一番辛かった。
（身を乗り出して寝息を立てる幼い顔を眺めた…この表情を、気持ちを…刻みつけておこうと）
だから会えない日々で一番辛かったのは「ああ、この人は嘘ばかりだ。俺はこの人の事を好きじゃない」って、そう思った瞬間だった。
でも、それも違った。最後の最後で俺はお前の事が大好きだったって、改めて知る事ができた。
（ぎゅう…と肩を抱きしめた。逞しい腕が小さな体を包み込む。彼女と体を触れ合わせれば思い出すのは楽しいことばかり）
（――非難するような事も言った、だけどそんなのはもうどうでもよくて、辛かった事なんて思い出せなくて――ただただ、愛しくて仕方がなくて）
（大好きだよ――いつかは消えてしまうかもしれない気持ちを、それでも今はまだ…消えない気持ちを言葉に込めた）
それに比べればもう二度と会えないなんて大した事じゃないさ。
会えなくても、思い出になっても、思い出さえ消えそうになっても――この世界のどこかには、自分が大好きだった素敵な人がいる。
だから…それだけで、ずっと幸せだ。
それでも、俺は弱いから辛いものはやっぱり辛いけど…今度こそ勇気を持ってきちんとお別れだ。
お前が帰って来る頃にはこの場所も綺麗になくなってる。
出発が朝か昼か夜か分からない、もしかしたらもうすでに機上で、このメッセージを見る事はないのかもしれない。
それでも俺は心配してないぜ。お前は強い奴だから…きっと、俺はもう思い出になってるんだろう。
お前は王子様なんて求めてないって言ってたけど、お前を必要としてくれる人はどこかにいる。
お前にとって他人の温もりは必要ないのかもしれないけど――お前の温もりを必要としている奴と、これから必ず出会う。
だからその人のために――元気で。
行ってらっしゃい。帰ってくるのは俺の腕の中じゃないけど――お前には素敵な未来が待ってる。
幸せな時間をありがとう。
さようなら――大好きだったよ。
（今度こそ最後――涙を堪え唇にキスを落とせば、迷いを振り切るように部屋を後にした）
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