[過去ログ] 勇者「王様が魔王との戦争の準備をしている?」 (970レス)
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714: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2012/12/19(水)03:32 ID:k2Vwk+xV0(1/9) AAS
「お前ら、生きていたのか」
声のする方向を向けば、そこには上半身裸、衣類はふんどし一枚の男が、剣を振るう兵士の後ろで脂汗を流していた。
彼らに呪いをかけた偉丈夫その人である。
少女「あ、あんた――!」
偉丈夫「待て。我はもう呪術を解除した。いや、解除せざるをえなかった」
老婆「魔物か」
省5
715: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2012/12/19(水)03:35 ID:k2Vwk+xV0(2/9) AAS
偉丈夫はそこで一度会話を打ち切り、黒い光に包まれた両の手を、胸の前で勢いよく合わせた。
黒い波動が両手を中心に迸り、生物の体を貫通していく。
ぐらり、と魔物たちの体が揺れた。見れば体中が抉れに侵されている。
倒れた魔物の上を後方から来た魔物が踏みつけて進んでいく。それに合わせて銀色の甲冑を身に着けた偉丈夫の部下たちが迎え撃った。
密集した長槍の穂が無計画に突っ込んでくるゴブリンを串刺しにするが、さらにその後ろからの圧力に、じりじりと後退を迫られている。
兵士「聖騎士様! このままでは埒があきません!」
偉丈夫「何としてでも耐えろ! 全身全霊を振り絞れ! 今本隊と交信を行っている最中である!」
兵士たちが一斉に「はい!」と答え、唸った。
偉丈夫はそれを険しい表情で見つめている。彼は交信など行っていなかったからだ。
省3
716: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2012/12/19(水)03:36 ID:k2Vwk+xV0(3/9) AAS
兵士「右前方で一部防衛ラインが決壊、一部の魔物が漏れ出しています! あそこから崩されます!」
少女「アタシたちが――!」
偉丈夫「行くな!」
偉丈夫が手を向けたその先に紫色の杭が撃ち込まれる。大人一人はあろうかという杭は、兵士たちをなぎ倒しながら進む魔物の進路を塞ぎ、それだけではなく鼓動も止める。
杭から放たれる毒素の霧を吸い込んだ魔物は、ばたばたと倒れ伏していく。
偉丈夫「我はこの場を離れられん。なんとかして、食い止めなければ」
省4
717: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2012/12/19(水)03:38 ID:k2Vwk+xV0(4/9) AAS
とはいえ畢竟勇者たちも同じではあるのだ。だけでなく、自国の兵士もまた。このまま際限なく魔物が湧き続ければ――そんな怖気もよだつような思考はどうしても頭から離れない。
愛する者のため、家族のため、命を賭しても成し遂げなければならないことがあるのだった。
偉丈夫「お前ら、我が道を開ける。塔へと突っ込め」
狩人「……いいの?」
勇者「そんな大役……」
偉丈夫「怖気づくか? 団長を倒したお前らなら、あるいは、な」
省2
718: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2012/12/19(水)03:40 ID:k2Vwk+xV0(5/9) AAS
偉丈夫「裂ける地、割れる空、静謐なる澱み、ぬかるみの恍惚! 心の拒絶千里を走り、その道程に敵は無し!」
偉丈夫「マヌーサ!」
魔物の頭上で黒い粒子が拡散していく。数秒後、周囲の魔物は一斉に、あるものは同士討ちをはじめ、またあるものはその場でぐるぐると回りだした。
初歩的な眩惑呪文である。しかし、それを数百数千という対象のかけて見せるとは、さすが聖騎士の一員と称賛できよう。
勇者「今のうちに、ってことかい」
老婆「あとは任された」
省5
719: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2012/12/19(水)03:41 ID:k2Vwk+xV0(6/9) AAS
光の矢が最後のぶちスライムを粉々にしたとき、勇者たちはすでに魔方陣の上に立っていた。
淡く光る六芒星と、それを取り囲む三重の円。円と円の間には細かなルーン文字が書かれている。あくまで一般的な召喚魔法陣ではあるが、ただそれが塔をぐるりと囲んでいるとなると、結果として途方もない召喚魔法陣と呼べるだろう。
入り口はあったが先は暗闇で何も見えない。時刻は昼で、太陽の光は確かに差し込んでいるはずなのに、薄暗いという次元を超越している。
老婆「魔法的な処理が施されている。空間転送か、遮断か……」
少女「入れないってことは?」
老婆「それはない。そういう処理はされていない」
勇者「誰でもウェルカム状態ってことか。逆に怪しいな」
省2
720: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2012/12/19(水)03:42 ID:k2Vwk+xV0(7/9) AAS
制止をする間もなく塔の中へと歩いていく少女。それを勇者たちは慌てて追って、漆黒の中へと体を埋めてゆく。
気が付けばそこは四角い空間であった。三十メートル四方の、正方形の空間。茶色い土壁のような印象を受けるが、その実どこもかしこも魔法的な障壁が張られている。
部屋の隅に丸く魔方陣があって、薄く光っている。転移用のポータルとして起動しているそれ以外は、出入り口がない。たった今四人が入ってきたはずの入り口でさえもなくなっていた。
四人はとりあえず寄り添って一塊になる。どこから何が襲ってきてもいいように。
「もし。お前ら、元気か」
虚空から声が響いた。彼らにとって聞きたくのないであろう――そしてしばらくぶりの声だ。
勇者の顔が歪む。老婆もまた、「やはりか」といった表情で、眉根を寄せた。
省5
721: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2012/12/19(水)03:43 ID:k2Vwk+xV0(8/9) AAS
九尾「魔方陣を止めたければ――世界を救いたければ、この塔の最上階まで登ってこい。以上だ。健闘を祈る」
老婆「待て!」
老婆の声が響くよりも先に、彼らが感じていた九尾の気配が消失する。そしてそれと入れ替わり形で、部屋の隅に害悪的な存在感が、重みをもって現れた。
桃色の髪の毛と光彩。燃えるように赤い唇。絶世の美貌。そして恐ろしいまでに蠱惑的な表情。恐怖が不思議と彼女にスパイスとなって降りかかり、老若男女を問わずに死地へと追いやる。
魔王軍四天王、序列四位、夢魔・アルプ。
彼女は壁にもたれかかるように立って、にやりと笑った。
省1
722: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2012/12/19(水)03:43 ID:k2Vwk+xV0(9/9) AAS
遅くなりましたが、今回の更新はここまでとなります。
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