[過去ログ] 太一「俺は永瀬の事が好きだ」 (412レス)
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156: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)17:56 ID:deCIdAjN0(1/22) AAS
【稲葉】

伊織が来てから、一時間程経っただろうか。

アタシが思っている事をぶつけ、少しだけすっきりと出来たかもしれない。

でも、それは本当に少しだけ。

口を開けば、ろくでも無い事を言ってしまう。
省3
157: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)17:57 ID:deCIdAjN0(2/22) AAS
稲葉「勝負はどうやら、お前の勝ちだったみたいじゃないか」

稲葉「だろ? 伊織」

伊織「勝負って……稲葉ん、それって……太一の事、でいいよね?」

稲葉「ああ、そうだ」

こんな事言って、自分でも最低だとは思う。
省2
158: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)17:57 ID:deCIdAjN0(3/22) AAS
伊織「稲葉ん……それ、本気で言ってるの?」

そのまま胸倉を掴まれる。

まあ、そりゃそうだ。 怒るよなぁ、こいつは。

稲葉「本気だ」

これで終わる。
省2
159: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)17:58 ID:deCIdAjN0(4/22) AAS
伊織「だったら」

伊織「だったら何で、そんな悲しそうな顔をしているの?」

何を言っている? アタシは別に……

稲葉「どこがだよ」

稲葉「アタシよりお前の方が、悲しそうに見えるぞ」
省2
160: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)17:58 ID:deCIdAjN0(5/22) AAS
伊織「私が今悲しんでいるのは分かってくれるのに、自分の事は分かってない」

稲葉「はあ? 自分の事だぞ。 一番アタシが良く理解している」

伊織「……言い方が、悪かったかな」

伊織「稲葉んは、理解しようとしていないんだ」

はっきりとアタシの目を見ながら、伊織はそう言った。
省5
161: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)17:59 ID:deCIdAjN0(6/22) AAS
伊織「じゃあ、何で太一を諦めるみたいな事、言ったのさ」

稲葉「だって、そうだろ」

稲葉「あいつは伊織の事を好きって言ったんだぞ、アタシの前で」

稲葉「なら、そんなの諦めるしかないだろ」

そうだ、それしかない。
省2
162: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)17:59 ID:deCIdAjN0(7/22) AAS
アタシは一体、どんな顔をしているんだ。

ごちゃごちゃとした感情が、胸の奥で回っている。

自分に優しくなる? したい事をしろと、そう言っているのか?

もし、仮にそうしたとして……全てがうまく行く訳ないだろ。

伊織「何で諦めるのさ」
省1
163: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:00 ID:deCIdAjN0(8/22) AAS
稲葉「お前がもし、アタシの立場だったら……どうやって振り向かせようと思うんだよ!」

好きな人に、付き合っていた人に、目の前で違う人が好きだと言われた。

ギャグだろ、これは。 そんな奴、世界中探したってそんなに居ないぞ。

あぁ、なんか笑えてきたな。 ホントに。

伊織「やっぱり、稲葉んは凄い」
省2
164: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:00 ID:deCIdAjN0(9/22) AAS
稲葉「何が、どう凄いんだよ」

伊織「だって、逆の立場だったら私は……」

伊織「太一の事が好きって気持ちは、無くなってしまうだろうから」

伊織「でも稲葉んは、振り向かせるにはどうしたらいいかって聞いたよね」

伊織「それってつまり、太一の事がまだ好きって事でしょ?」
省1
165: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:01 ID:deCIdAjN0(10/22) AAS
言われて、分かった。

アタシは、好きだ。 太一の事が。

捨てようとしたけど、まだ残っているんだ。

しかし、それでどうしろって言うんだよ。

稲葉「でも、どうすればいいんだよ」
省2
166: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:01 ID:deCIdAjN0(11/22) AAS
伊織「それでも、それでも諦めないのが稲葉姫子でしょ」

稲葉「……でも、またあの時と一緒じゃないか、これじゃ」

そう、これは一緒だ。

【欲望解放】の時と。

伊織「それが何? 振り出しに戻ったから何?」
省2
167: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:02 ID:deCIdAjN0(12/22) AAS
伊織「稲葉んは私に勝ったじゃん、あそこから勝ったじゃん」

伊織「私が負けたのが、今の稲葉姫子だとは思いたくないよ」

伊織「一回大逆転したんだよ。 ならもう一回しても、良いんじゃないかな」

稲葉「伊織……」

こいつはここまで、思ってくれているのか。
省2
168: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:02 ID:deCIdAjN0(13/22) AAS
稲葉「……分かった、分かった」

稲葉「もう一度、してやるよ。 大逆転」

稲葉「けど、二回も逆転されて、自身を失うんじゃねえよ。 伊織」

伊織「えへへ、ご安心を!」

伊織「って、言っても……正直な話」
省4
169: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:02 ID:deCIdAjN0(14/22) AAS
言った後、少し恥ずかしくなった。 何言わせるんだこいつは。

伊織「えへへ、稲葉んは本当に、太一の事が好きなんだね」

稲葉「まあ、な」

何だよこの会話。

伊織「でも、そこまで行くとひょっとして……将来はストーカー?」
省7
170: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:04 ID:deCIdAjN0(15/22) AAS
稲葉「この話はここまでだ。 そろそろ切り替えないと、な」

あまり恥ずかしい所は見られたくないのもあり、気持ちを切り替える。

伊織「うーん。 私が思うに」

どうやら伊織も、その気持ちを汲み取ってくれたらしい。 正直助かった。

これ以上あの話を続けていたら、どんな恥ずかしい事を言うか分かった物ではない。
省2
171: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:04 ID:deCIdAjN0(16/22) AAS
稲葉「確かに、そう思うが」

伊織「う〜ん」

いくら考えても、答えなんて出ないだろうに。

だが、折角だし伊織に付き合ってやるか。

ゆっくりと、思い出す。
省4
172: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:05 ID:deCIdAjN0(17/22) AAS
伊織「どしたの、稲葉ん。 何か分かった?」

稲葉「いや、そうだな」

稲葉「もしかすると、ってのは一つある」

稲葉「だけど、少し希望的観測過ぎるかもな」

伊織「……私はいくら考えても、その「もしかすると」さえ出てこなかったんだけど」
省3
173: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:06 ID:deCIdAjN0(18/22) AAS
稲葉「いや、何でもない」

伊織「ふうん、そっか」

言わずとも理解したのか、伊織はいつもの笑顔でアタシの顔を覗き込んでいた。

伊織「それより! その「もしかしたら」って奴、教えて欲しいな〜」

稲葉「それはいいが、どうせなら唯も一緒がいいな」
省3
174: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:06 ID:deCIdAjN0(19/22) AAS
丁度その時、電話が振動する。

発信者は、唯か。 なんともタイミングが良い奴。

稲葉「唯か? どうした」

唯「……稲葉、大丈夫?」

ああ、こいつもアタシの事を気に掛けていたのか。
省4
175: ◆t8NYdLxivU 2013/01/24(木)18:07 ID:deCIdAjN0(20/22) AAS
稲葉「それより、お前こそ大丈夫なのか?」

唯「うん、私は大丈夫!」

いつもと同じ声、同じ強さの唯だった。

稲葉「そうか、それとなんだが」

稲葉「今から会って話しておきたい事がある、今伊織とは一緒なんだが」
省1
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