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艦これSS投稿スレ (1002レス)
艦これSS投稿スレ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1380039074/
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573: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage] 2014/02/09(日) 00:52:33.85 ID:m9hAvWq0o 艦これでクトゥルフ神話「アウトサイダー」 ※独自解釈、クトゥルフネタ多量。内容も多少歪曲 深い深い海の底。そこに私は居た。 いつからそこに居たのか、ここがどういった場所なのか、そもそもここはどこなのか。 私はその疑問への解答を持っては居ないし、どうでもいい。 暗い暗い闇の中。そこに一人たたずむ私。 私は何者で、どういった存在で、何故こんな───世界から忘れ去られたかの様な場所───に居るのか。 どうでもいい。 その疑問に対する解答を一つだけ持っているのだから、それ以上は必要ない。 神々さえ産声を上げていないかのような遥かな昔───最も、私がそう感じるだけなのか、 本当に永劫をこの深海の空間で過ごしたのかは私には知りえないことなのだが───に、私は艦娘として、一人の提督に忠誠を 誓っていた。それ以外の事は記憶から掻き消されてしまったかのように思い出せないのに対し、艦娘としての戦いの日々、喜び、怒り、哀しみ、楽しみだけは 未だ私の中で鮮明に色彩を放ち、この世界で私という存在を繋ぎ止めてくれる。私にとってはその記憶だけが私のすべてである。 この空間に鏡など無いので私がどんな姿をしているかは確かめられないし、あえて確認しようとも思わない。 そもそも私の容姿を確認しようなど、全くの無意味な行為に他ならない。私はあの提督の右腕のような存在であり、 皆から頼られる存在であり、───に他ならないのだから。 深い深い、暗い暗い水の檻。 深海に位置するこの場所は薄暗い。太陽の光も海水の城壁に阻まれてここに辿り着く頃には既に、 その輝きの大半を失ってしまうのだ。 なので普段の私は目を閉じて揺り篭のような暗闇に身を委ね、殆どの時間を睡眠の無意識で過ごすのだが、その時ばかりは違った。 自分の位置する遥か上方を突如として黒い影が突き抜けていったのだ。1つではない。一度に6つもの影が私の聖域を侵す。 6体もの影の軍勢はまるで必死に何者かを捜し求めているかのような慌しさで私の認識できる領域から消え去っていった。 そして、その影の一つから何かが沈んでくる。普段をヒキガエルの如き獣と同様に怠惰に過ごす私にとってもその異物には 何故か興味が沸いた。まるで呪いを掛けられた哀れな狩人のように、私はそれを手に取った。最も、この薄暗い世界では私がそれを 引き寄せたのか、私がそれに引き寄せられたのかは定かではないが。 今にして思えば、これが全ての始まりで、同時に、私の平穏の永遠の終わりでもあった。 この空間にとっての「部外者」、静謐な場所にとっての「異物」これがすべての始まりだった。 この部外者、この異物、この「本」が今も尚私を苛み、狂わせ、責め上げる! このようなものは海底の底に永遠に沈み、いつか目を覚ますct───huに踏み潰されでもしていれば良かったのだ。 これに興味を抱くことなく眠り続けていれば私は暗闇と静寂と無知に守られて世界の終わりまで憩うことができたものを! http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1380039074/573
574: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage] 2014/02/09(日) 00:53:46.93 ID:m9hAvWq0o そう、それは「本」だった。 本と言っても小難しい教本や戯曲、劣悪な紙で作られた三流パルプ雑誌でもなければ、世界の外からやって来た少女と恋愛を育むような漫画でもない。 神をも呼べる魔道書などもっての外だ。 そう、その本はそんな特別な代物ではない。どこの家庭にも一冊はあるだろう。 ───アルバムだった。 その表題には「○○新任提督鎮守府日誌」と大きく書かれていた。 暗い空間では流石に細かい字まで目を通すことはできなかったが、中に収められている写真くらいならば朧に視認できる。 懐かしい。本当に懐かしい。 艦砲と装甲を身に纏う少女たち。 工廠や格納庫。 しかし私の穏やかな時間は一枚の写真を目にした時、終わりを告げる。 若々しく若干覇気に欠けるものの、瞳に強い意志と精気を宿す優しい笑みを浮かべた男。 そうだ、この男。 私はこの男を知っている……ような気がする。 少なくとも知らない者ではない。この男は私にとってとても大切な存在だったことは間違いない。 だが、この男は私にとって何者だったかを考えた途端に思考に靄がかかり、霧に覆い隠されてしまう。記憶の底を覗き込むことができなくなる。 この男。そして私。この二者を繋ぎ止めていた力強く、愛情ある何か。 この疑問は長良く私を苦しめることになる。 あのアルバムを拾ってからどれくらい経っただろう? もしかしたら少しの間目を閉じただけかもしれない。月が夜空に躍り出て、虚空に去っていくほどだったかもしれない。 いや、あるいは全ての生命が死に絶えてこの星が永遠の静寂に静まり返った頃かもしれない。 その間、私は最早まどろむ事を許されなかった。 あの男の顔が脳裏に焼きついて離れない。眠りについても世界の果てまで見渡してもアルバムを開いても閉じても、それは 呪いのように私を離れようとしない。私という存在は今や、あの男の謎と深く結びついてしまったのだ。 私はある一つの決断をする。 そのアルバムが置かれていた場所に行く。最早これ以外に私の平穏を取り戻す手段は存在しない。 私は長らく私を覆ってきた暗闇と沈黙と無関心のヴェールを脱ぎ捨て、海面へと向かう。死期の迫る蛍のように儚げだった月の明かりが段々と、 私を包むように、私を見守るように、私を見張るように、私を監視するように強くなっていく。 永らく関わりを持たず、そして再び関わりを持つことが永遠になかったであろう海面に、澄んだ空気へと顔を出す。 恐らく以前の何も知らない私にとってこの開放感と心地よさは至福に至れるようなものだったのだろう。 だが夜の海の美しい光景は最早私の渇きを一滴も満たすことはできない。 私は全てを見透かしているような月を、自分自分の醜い部分まで映しそうな、鏡のように澄んだ海面になど見向きもせず、目的のものを探した。 そしてそれはすぐに見つかった。視界の遥か彼方に光が見える。恐らく自然のものではない。建物の窓から洩れた光だろう。 ───あれだ、あの建造物だ。 あそこに入り込むことができれば私を悩ませるこの謎を全て屈服させられるだろう。 そして私は、城壁の如く威風堂々と聳え立つ建物へと進むのだった。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1380039074/574
575: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage] 2014/02/09(日) 00:55:21.15 ID:m9hAvWq0o その建物に近づいたとき、最初に聞こえたのは歓声だった。 世界は幸福に満ち溢れていて、この世には善い神様しか居ない。そんな事を疑いもなく信じているような、本当に愚かで楽しそうな声だ。 そして、どこか懐かしい光景と匂いと音と……ありとあらゆるフラッシュ・バック。 一歩、また一歩と歩を進めていく内に私は使命を忘れ、代わりに幸福感と本当の記憶で満たされていく。 歩を進めるごとに今までの暗闇がむしろ異常で、ここが私の本来の世界だったのだと気付かされる。 一歩。また一歩。歩を進め、その度に古い私は塗り替えられ、新しい私が作り出されていく。 いや、新しい私はずっと昔の私だ。ならば新しい私を塗りつぶし、古い私を生み出すのだろうか? どうでもいい。私の中の現実味さえ奪いつつある幸福感。今はひたすらそれに酔いしれた。 そして、建物の中に入り込んだときには、私は既にとある事を理解していた。 私はかつてここに居て、暮らし、戦い、騒ぎ、そしてあの男に仕えていたのだ。 今までの暗闇の牢獄は?何故私はここを追われたのか? そんなことは最早どうでもいい。私は世界一幸せな場所へと戻ったのだ。 きっと世界は幸福に満ち溢れていて、この世には善い神様しか居ないのだろう。今ではそれを疑いなく確信できる。 今や私は彼らの───正しくは、彼女らの───艦娘達の一員だ。今はとにかく浮かれ騒ごうじゃないか。 「我々は永らく行方不明となっていた赤城の捜索に総力を費やしてきた。上からの指令など無視してな。 ともすれば銃殺されかねない程の危険な綱渡りだったが、我々はついに赤城の所在について決定的な手がかりを得た!」 「最早彼女は我々に救助されるのを待つばかりであり、我々は全力を持って赤城救出に向かう所存である!」 「彼女とその救助の無事を願い、ここに乾杯の音頭を取りたい!」 「乾杯!」 「「「乾杯!!」」」 私の───提督のその一言で場は乱痴気騒ぎと化した。 鎮守府の中心的存在だった赤城が失踪してから今まで、ここには陰鬱とした雰囲気が空気に瘴気と粘性を持たせ、場を澱ませていたかのようだった。 だが今やその空気は取り払われ、活気と希望に満ちている。 例えば天龍。 赤城が失踪してからの天龍は彼女の妹分とも言える駆逐艦達を気にかけ、必死に彼女達を支え続けた。 それは自己犠牲に似ていて傍から見ればとても危なっかしいものだったが、今は心からこの場を楽しんでいるように見える。 例えば金剛。 赤城失踪の前後に関わらず私に絡んできた彼女だったが、赤城が居なくなってからは目に見えて空回りが増えた。 金剛は私を気にかけてくれたようだが、その姿はさながら手が擦り切れるまで地獄の底から這い出そうとする罪人のようで、とても痛々しいものだった。 金剛も今は3人の妹達に囲まれて、今この場を満喫しているらしい。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1380039074/575
576: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage] 2014/02/09(日) 00:56:07.64 ID:m9hAvWq0o そして、 「……提督。その、ありがとうございます」 そう。 赤城の失踪で一番堪えていたのは姉妹の加賀だ。 赤城が消えてからの彼女の有様については……私の拙い語彙と想像力では上手く表現することはできない。 元々加賀は感情を表にあまり出さない艦娘だった。それも赤城や隊の皆に囲まれて少しずつ感情豊かになって行ったのだ。 そんな彼女の中で赤城はどれだけ大きな存在だっただろうか?それを失った悲しみはそれこそ私には想像もつかない域だ。 あの時───撤退時に殿を引き受けた赤城が帰還していない事を聞かされ、加賀はその場に崩れ落ちてしまった。 それ以来、加賀は演習にすら出していない。精神と神経に限界が来ているのだろう、 誰かが肩を貸さないと一人では歩けないほどに衰弱しているのだ。今も提督の肩を借り、壁に寄りかかってなんとか倒れこまずに済んでいる。 正直なことを言うとこの催し自体、半分は彼女への慰安のためにあるようなものだ。 「提督……」 「どうした、加賀?」 「明日……赤城の事をよろしくお願いします。赤城は……私のたった一人の……」 最後まで言わせず、加賀の頭を子供にするみたいに、くしゃくしゃに撫でる。 そして、告げる。 「ああ、任せておけ。そしたら二人まとめてサボってた分の訓練を覚悟しておけよ?」 加賀はくすりと笑って、「はい」と返事をしてくれた。 それからは酒に酔い私に絡んできた足柄を加賀が口先だけで大破轟沈させたり、何故か脱ぎだした愛宕を片足の足払いで沈黙させたり、 相も変わらず瑞鶴を挑発して翔鶴と二人係りで鎮火したり、と楽しい時間が続いた。 そう、侵入者を知らせる警報がけたたましく鳴り響くまでは。 流石にこっそり戻ってきて堂々と騒ぎの中に入っていくほど私も肝が据わっては居ない。 だからお酒やご馳走などを手に取ったりすることもなく、ただ廊下から浮かれ騒ぐ皆の声を聞くだけ。 それでも長い長い時間を静寂のうちに過ごしてきた私にとって、それは両手に納まりきらないほどの、世界にも匹敵する幸福だった。 楽しい。嗚呼、楽しい。こんなに幸せでいいのだろうか?世界中の幸福を独り占めしてしまってもいいのだろうか? 今この瞬間、この地上で一番幸福なのは間違いなく私だろう。今この瞬間だけ、世界は私を中心に回っているのだ。 私は頬を伝う涙を指で拭おうとするが、やはり指を引っ込める。 こんな幸せに直面して流した涙だ。拭う気にはなれなかった。 むしろ、どんどん涙よ出ろ、涙よ溢れろと思いながら一人呟く。 「こんな時間が、今度こそずっと続くといいな……」 しかしそんな無垢なる願いは無情にも叩き斬られる。人々の崇高な感情を知らぬ、無垢なる刃によって。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1380039074/576
577: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage] 2014/02/09(日) 00:56:42.06 ID:m9hAvWq0o ≪当施設に深海棲艦が侵入した模様!繰り返す!当施設に深海棲艦が侵入した模様! 認められたのは単機だが、相当の戦闘力を持っていると推測される!指令官及び全艦娘は綿密な作戦の元、これを撃破せよ!≫ その警報に真っ先に反応したのはやはり提督だった。 「戦艦、空母1に巡洋艦2、駆逐艦3で編隊を組み、6隊は主要施設の警護、6隊は敵の撃破に当たれ! 残りは私と共に加賀の撤退を援護しろ!」 提督の指示の元に彼女たちは散会し、警護に、敵の撃破に、撤退の護衛に従事する。 そして、加賀を入渠させに提督は急ぐ。 しかし、提督と加賀の護衛をしている艦隊達は見てしまった。 幸福を噛み締めていた時になった侵入者の警報。 私は確かに自分の強さには自信があるが、今は単機だ。 それが戦場では如何に無謀かは今までの経験で理解している。 敵が単機と言っていたが、施設に直接乗り込んでくる程の実力となると戦艦か空母クラスは下らないだろう。 それに敵の増援が来ないとも限らない。 それならばどうすべきか?この際細かい事を言っては居られない。提督の所に行き指示を仰ごう。 何と言っても私は提督の右腕として活躍してきた─── そして、彼らは巡り合ってしまった。 運命の神、と言うのが存在するのだとしたらその神は人間を激しく憎んでいるか、人間をオモチャにしているに違いない。 そう、かの貌無き三つの瞳の────────────の様に。 まず、異変に気付いたのは五十鈴だった。 「提督!敵艦を確認!どうやらこっちに来たみたい!」 その声を聞いて提督は振り返る。そして、ここを襲撃してきた敵艦を睨み付け……そこで何か違和感を感じた。 その敵艦は深海棲艦の空母ヲ級だ。初めて見る敵艦では無いが、それとは違うまったく別の形でその敵を知っているような、そんな感覚に襲われたのだ。 向こうも心なしか敵意を感じられない。何処か動揺しているように見える。 「提督!指示遅い!早く砲撃許可して!」 島風が焦り、提督に指示を仰ぐ。 他の艦娘達も指示が出ると同時に砲撃を浴びせることができるように身構えていた。 提督は島風の怒号で我に帰り、違和感を感じつつも思考を巡らせる。 (元々は海戦専門の艦娘が無理に地上で戦っても戦力は大幅に落ちるし、魚雷の類は一切使えなくなる。 しかし深海棲艦に地上戦でのデメリットの様な常識が通用するとは思えない……どうする!?どうすればいい!?) しかし、提督の指示が発せられ、この空間が砲弾が飛び交う戦場と化すことはなかった。 その深海棲艦は廊下に取り付けてある窓を見た途端、脱兎の如く逃げ出したのだ。 まるで窓に巨大な怪物を見て恐怖に陥ったかのように、狂乱した様子で逃げていく。 その後、スピーカーから敵艦の撤退を伝えられ、一同は安堵の息をついた。 提督と加賀、ただこの二人を除いて。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1380039074/577
578: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage] 2014/02/09(日) 00:57:46.75 ID:m9hAvWq0o そして、「私」は鎮守府から逃げ出した。 深い深い海の底。そこに私は居る。 いつからそこに居たのか、ここがどういった場所なのか、そもそもここはどこなのか。 私はその疑問への解答を……、どうでもいい。 暗い暗い闇の中。そこに一人たたずむ私。 私は何者で、どういった存在で、何故こんな───世界から忘れ去られたかの様な場所───に居るのか。 どうでもいい。 その疑問に対する解答は完璧に持っているのだから、それ以上は必要ない。 神々さえ産声を上げていないかのような遥かな昔───最も、私がそう感じるだけなのか、 本当に永劫をこの深海の空間で過ごしたのかは私には知りえないことなのだが───に、私は艦娘として、一人の男に忠誠を 誓っていた。それ以外の記憶は地獄の拷問の責め苦の様に私を苛むのに対し、艦娘としての戦いの日々、喜び、怒り、哀しみ、楽しみだけは 未だ私の中で鮮明に色彩を放ち、この世界で私という存在を繋ぎ止めてくれる。私にとってはその記憶だけが私のすべてである。 この空間に鏡など無いので私がどんな姿をしているかは確かめられないし、あえて確認しようとも思わない。 そもそも私の容姿を確認しようなど、全くの無意味な行為に他ならない。私はあの男、提督の右腕のような存在であり、 皆から頼られる存在であり、空母「赤城」に他ならないのだから。 ───いや、この言い方はもう通用しない。 今の私は最早空母「ヲ級」なのだから。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1380039074/578
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