タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part8 (713レス)
上下前次1-新
578: [saga] 07/08(月)20:27 ID:UdB39gfM0(2/2) AAS
>>11「グリーン・マイケル」
膝くらいの高さの草むらのなかを、マイケルは駆ける、駆ける、なだらかに傾斜する、どこまでも同じような青さがつづく草原を走り抜ける。
とうにヘルメットは捨てた。通信機器も、役に立たないし邪魔だから手放した。
護身用の武器も、ナイフを除いてすでに彼の手元にはない。
あとは軍のユニフォームと水筒、そしてマイケルの肉体のみが残る。
朝焼けがどんどん薄くなり、空は青に変わっていく。
湿度も上がってくる。
「操作利きません! 制御不能、制御不能!」
森林地帯での訓練中、マイケルの乗る訓練機がコントロールを失った。彼はひとりで乗っていた。
無線をとった教官は怒鳴って報告を求めた。
「各種計器!」
「異常なし!」
「燃料!」
「異常なし!」
「油圧!」
「異常なし!」
「密閉!」
「異常なし!」
「回路!」
「異常なし!」
教官が苛立ちながら言った。
「じゃあ何が異常なんだ!」
「何ら以上ありません!」
マイケルは報告した。
「一切のアラートも、数値の異常も異音も振動もありません!
だめなのは、ただ操縦不能なことだけです!」
教官は檄を飛ばし、マイケルは何とか体勢を立て直そうと努力した。
しかし訓練機はどんどんバランスを崩し、深い森のなかへ消えてしまった。
マイケルからの通信が途絶すると、教官および同じグループの訓練生たちは絶望に似た感情を覚えた。
マイケルが消息を絶った森は深い。いちど迷いこめばまず出られない、広大で暗い森だ。
調査隊も入る気配のない、世界最大の陸の孤島。そこにマイケルは消えたのだ。
もうあいつは帰ってこない、そう全員が確信していた。
しかしマイケルは気丈だった。訓練機は巨木の間に突っ込んで壊れたが、奇跡的にコックピット部分はほとんど無傷だった。
そこからマイケルは転げ落ちると朽木の根に頭をぶつけ、しばらく昏倒していた。
目を醒ますと、彼はすぐ立ちあがった。そして、薄暗い森のなかをすたすた歩きはじめた。
諦めたから、そうしたのではない。むしろ、なんとしてでも生き延びてやるぞ、と信じていたから、早々に歩きはじめられたのだ。
彼は水のにおいを頼りに歩いた。しかしなかなか水源は見つからない。
だんだんと、携帯食料と水筒の中身が減ってきた。懐の軽くなるのを、彼は汗をかきながら感じていた。
このままおれは死ぬのか、と何度か頭を予感がよぎった。しかしそのたび、彼はわずかに感じる水のにおいを希望にした。
きっと、この先に、水が、生きる希望があるんだ。そこには生き物もいる、食えそうなものもたぶんある。そこに至るまでは死ねない。
一昼夜、二昼夜、さらに何日も歩いた。
もう自分の身体に、自由があると思えなくなってきたころ、彼はようやく開けた場所に出た。
そこには無限の曠野があった。青々と、草の群叢が風に揺れる。まだ夜は明けきっていなかった。
だから相当暗い。だが、彼の目はかつてないほどらんらんと輝いていた。というのも、草原のなか、
正確に測れないが結構な距離のところに、植物とは違う、粘り気のある光を放つエリアがあったからだ。
水だ! あそこに水場があるぞ!
マイケルは疲労も忘れて駆けだした。朝露が脛にかかった。背の低い草を蹴散らしながらマイケルは草原を突っ切る。
近づくごとに、その水場の様相が察せられるようになる。びっしりと苔が繁茂しているらしい。
柔らかい線上のものが、そのなかで揺れている。
しかし知ったことか! 墜落してからおれはずっと、あれを求めてきたんだぞ!
マイケルはさらに力を振り絞った。スピードをあげ、なだらかな草原を駆け抜ける。
希望などもう彼の頭から吹き飛んでいた。すべてこれで解決だ、危機は過ぎた、
もはや何も異常はない、おれはオール・グリーンだ!
延々と続く森と草原を、緑の深いカーキ色の迷彩服のマイケルが、一心不乱に突き進んでいる。
ちょっと長いな
上下前次1-新書関写板覧索設栞歴
あと 135 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル
ぬこの手 ぬこTOP 0.006s