くーちゃん「しょくぶつさんとおはなししてたらびょういんにつれていかれました」 (425レス)
くーちゃん「しょくぶつさんとおはなししてたらびょういんにつれていかれました」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/
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265: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:04:22.15 ID:RYXcxsNH0 くーちゃんは目を開きます。 いつの間にか船から降りていたハナちゃんが、トンネルの絵を畳んで、手に持ったまま隣に立ってました。 くーちゃんは体を起こします。 ほっぺについていた砂が、ぱらぱらと落ちましたが、まだ何粒かくっついたままです。 でもかまいません。 ほっぺにいくら砂がついてようと、くーちゃんの目的に関係ありませんから。 そして、その小さな島の全貌を確認します。 驚きました。 島の中央から、大きな幹と葉が見えたんです。 枝葉は、島全体を覆うほど広がってました。 くーちゃん「きっとあります」 くーちゃん「この島の中央に、とても大きな木が」 くーちゃん「そこが、ごーるです」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/265
266: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:06:57.10 ID:RYXcxsNH0 くーちゃん「ハナちゃん、ききたいこと、あります」 くーちゃん「その絵、どうして描いたですか?」 くーちゃん「どうして、描けたですか?」 ハナ「・・・・・・・・・・・」 くーちゃん「大丈夫です。変なこと、ちがいます」 くーちゃん「ハナちゃん、にんげんじゃない存在の気持ち、わかる人なんですね」 くーちゃん「だからハナちゃん、この木の思い、受け取ったです」 くーちゃん「この島、見える町で住んでて」 くーちゃん「海の男の船に乗って、あの島、見て、受け取ったんじゃないですか?」 ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 くーちゃん「ごめんなさいハナちゃん」 くーちゃん「無理に言葉、しなくて大丈夫です」 ハナ「」ぶんぶん くーちゃん「じゃあ」 くーちゃん「行きましょう」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/266
267: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:10:01.17 ID:RYXcxsNH0 島の中 くーちゃん「しょくぶつ、ずいぶんのびてますね」 ペタペタ くーちゃん「虫さんもたくさんです」 くーちゃん「秋にこれなら、夏はもっとすごそうです」 くーちゃん「…ハナちゃん?」 ハナ「はあ…はあ…」 くーちゃん(運転でくたくたになってしまったでしょか) くーちゃん(さすがにペース、おそめです) http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/267
268: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:11:17.29 ID:RYXcxsNH0 くーちゃん「ハナちゃん、だいじょぶですか!」 ハナ「…大丈夫、おい、つく」 くーちゃん(…ハナちゃんも、必死です) くーちゃん(きっとハナちゃんも、くーちゃんと同じように、トンネルの呼び声に応えたいのでしょう) くーちゃん(あの絵を描いて、ここまでついてきてくれたです) くーちゃん(きっとこの旅の終着に、ハナちゃんは必要なのです) くーちゃんはそう信じて、ハナちゃんに手を伸ばしました。 くーちゃん「行きましょう! 一緒に!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/268
269: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:12:32.49 ID:RYXcxsNH0 ハナ「」プルプル ガシッ ハナちゃんを引っぱりながら、くーちゃんはずんずん、島の中を進んでゆきます。 途中でぼろぼろになった木造のお家や、昔使われた階段のようなものがありました。 もしかしたらこの島も、昔、人でにぎわってたのかもしれません。 小さなお墓みたいなものも、たくさん埋められてました。 くーちゃんもこの島で生まれて、生きて見たかったです。 そしたら、もっと早く、大きな植物さんの気持ちに、気づけたかもしれないのに。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/269
270: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:13:52.87 ID:RYXcxsNH0 一歩一歩、踏みしめてると、森の香りが強くなってきます。 時折、くーちゃんは地面にまた顔をすりつけ、トンネルの片鱗を感じました。 くーちゃん「もう、ちょっとです」 長い長い階段を登って、今度は下りに差し掛かりました。 階段を一段、一段と降りてると、違和感がありました。 あんなににぎわっていた植物さんたちの気配が、一気に消えてしまったんです。 まるで、人ごみから抜け出したような感覚で、とても心細くなりました。 ハナ「あ、あれ、?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/270
271: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:14:28.12 ID:RYXcxsNH0 ハナちゃんが久しぶりに声をだして、指をさしました。その方向にそれはありました。 大きな木でした。ただ、大きいだけじゃありません 見上げると首が痛くなるほど、とても、とてもとてもとても 高く、静かに、そびえたっていました。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/271
272: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:15:59.21 ID:RYXcxsNH0 くーちゃん「…ハナちゃん、しゃべりたいこと、あります」 ハナ「」コクリ くーちゃん「今までくーちゃんはいろいろな御神木さんで感じたことを、歌や舞にしてました」 くーちゃん「ですが、この木は、今までの御神木さんとは全く違います」 くーちゃん「楠だと思います。大きな楠なので、大楠さんです」 くーちゃん「この、方です。きっと、この方です」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/272
273: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:17:25.99 ID:RYXcxsNH0 くーちゃんは走って近づきました。 とても太い幹は、蜘蛛の足みたいに枝分かれしてます。 柔らかい地面には、深く深く、長い根っこが伸びていることでしょう。 大楠さんの伸びてしまった枝を支えるため、古びた鳥居が何個か作られています。 くーちゃん「…大楠さんだけで、体、支える、たいへんです」 くーちゃん「骨が弱くなったおじいちゃんやおばあちゃんが、杖や車いすを使うのと同じです。 土の奥から匂いがしました。 木の匂いです。大楠さんと似てますが、 少し違います。それに、たくさんです。 たくさんの木の香りがするんです。 もしかしたら、土の中には、大楠さん以外の誰か、まだいるのかもしれません。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/273
274: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:18:59.03 ID:RYXcxsNH0 ゴロゴロ ポツンポツン くーちゃん「…あめ、ですね」 くーちゃん「別にもう関係ありません」 くーちゃん「くーちゃんの目的に、天気なんてどうでもよいです」 くーちゃん「トンネルの中に、雨も晴れもありません。 くーちゃんは、幹を手で触れながら、ゆっくりとお腹を。頭を。ほっぺをぺたりと、くっつけます。 全身で、大楠さんの息吹を感じました。 大楠さんが、やさしいのか、さみしいのか、それもわかりません 目を閉じてくーちゃんは、いつものように、トンネルの中へ入ってゆきました。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/274
275: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:19:57.06 ID:RYXcxsNH0 じんわり、じんわり、暗闇だらけの瞼の裏に、うっすらと世界が広がってゆきます。 トンネル独特の風の音。土の香り。 トンネルの中のくーちゃんは、トンネルを見るために、ゆっくりと目を開きました。 そこは、ハナちゃんが描いていた世界に、とても似てました。 少しだけ違いはありますが、匂いや温度は、とても近いです。 そして、そこで感じたのは 確かな孤独でした。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/275
276: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:35:32.08 ID:RYXcxsNH0 くーちゃん「何千年も、大楠さんは見てきたんですね」 くーちゃん「たくさんの植物さんとの出会いと別れ」 くーちゃん「土砂崩れで埋まってしまった、たくさんのお友達。 くーちゃん「そして」 くーちゃん「大楠さんを、切る、切らないかの人の争いです」 くーちゃん「くーちゃん、かみさまなんてしんじてません。でも」 くーちゃん「大楠さんは、神様にさせられてしまったのですね」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/276
277: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:37:18.75 ID:RYXcxsNH0 くーちゃん「ながくいきてたから、勝手にされたんです」 くーちゃん「とても、とても長い時間です」 くーちゃん「それは、きっとくーちゃんたち人間には、想像できないほど」 くーちゃん「くるしかったですよね。神様、しんどいです」 くーちゃん「いつも、勝手に期待されます。願い事なんて叶えられないのに、勝手に願われます」 くーちゃん「すごく、すごくわかります」 くーちゃん「くーちゃんたちは、よくにています」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/277
278: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:39:33.54 ID:RYXcxsNH0 くーちゃんは、トンネルにいる意識の中 いつもならそこにとどまって、そのトンネルを全身に感じてました。 でも、同じ場所にとどまってては、大楠さんの芯に触れられません。 今まで知らなかったトンネルの深淵へ向かって、くーちゃんは進むことにしました。 足に力を入れてみました。 ぐっと、右足が踏み出せました。 続けて、左足も、踏み出します。 歩けば歩くほど、曖昧な体の感覚が、確かなものに変わってゆきました。 孤独の風のようなもの、トンネルを進むくーちゃんを包んでゆきます。 とても苦しくて、辛くて、頭が割れそうになりました。 でも、どこか帰ってきた感覚もあるんです。 居心地が悪いわけじゃないんです。 まるで、ずいぶん昔からのお友達と、再会した気分でした。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/278
279: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 19:44:20.35 ID:RYXcxsNH0 くーちゃん「誰にも、わかってもらえないですね」 くーちゃん「人間に、あなたの言葉、聴こえませんもん」 くーちゃん「くーちゃんにも、大楠さんの言葉、わかりませんけど」 トンネルの奥まで、くーちゃんは進むことにしました。 一歩一歩、重たくて、苦しくて、その場で何度もうずくまりたくなりました。 くーちゃん「あの、大楠さん、もしかして」 くーちゃん「きてほしい、とゆうきもちと」 くーちゃん「誰もきてほしくないとゆう、二つのきもち、あるですか?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/279
280: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 20:06:52.50 ID:RYXcxsNH0 くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 くーちゃん「そですよね。こたえられませんよね」 キラッ ポチャ、ポチャッ くーちゃん「なにかみえます」 くーちゃん「水たまり。でしょか」 くーちゃん「」ソッ ピチャ ドロッ ズブッ くーちゃん(冷たくて、どろりとしていて、指が奥まで沈んでしまいそうです) くーちゃん「これは、水たまりでなく」 くーちゃん「沼、ですね」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/280
281: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 20:08:35.90 ID:RYXcxsNH0 くーちゃんは、沼に濡れた指先を見つめながら、顔を上げました。 その沼の中に、一本の木が生えています。 茶色くすすけてて、幹からいくつも、皮が剥がれています。 他には、茶色だったり緑色だったり、様々な葉っぱも、幹に張り付いてます。 胸の奥が切なくなるような、どことなく焦げた香りもしました。 くーちゃんはこの木が、あの大楠さんと、同じなんだと、直感しました。 どうなんでしょうね。トンネルの奥の奥まで入ったのは、初めてだったので。 少なくとも、くーちゃんは 今すぐ、大楠さんを抱きしめたくなりました。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/281
282: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 20:11:16.86 ID:RYXcxsNH0 くーちゃん「大楠さん」 くーちゃん「くーちゃん、旅に出るとき、感じてました」 くーちゃん「この旅は片道切符です」 くーちゃん「この沼に入ったら、もう戻れません」 くーちゃん「でも、それでよいです」 くーちゃん「一緒に沼に入れる人間がくーちゃんだけなら」 くーちゃん「あなたにくーちゃんのすべてをささげましょう」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/282
283: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 20:14:25.33 ID:RYXcxsNH0 くーちゃんは、沼に、一歩足を踏み入れます。 冷たく、ぬめっとした感触が伝わり、今にも全身が飲み込まれてしまいそうです。 足もずぶずぶと、深く沈んでゆきます。 きっと、両足を突っ込んでしまえば、しばらくしないうちに、完全にくーちゃんは沈んでしまうでしょう。 一歩、一歩、歩きます。 大楠さんを抱きしめられるところにたどり着けるまで、沈み切るわけにはいきません。 十歩ほど、進んだところで くーちゃんは思い切り沼を蹴るように前方へと体を放り出し 目の前の大楠さんにガバッと、抱き着きました。 森の香りと、焦げた香りと、海の香りがしました。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/283
284: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga] 2024/02/13(火) 20:16:42.53 ID:RYXcxsNH0 くーちゃん「大楠さん。これで、さみしくないです」 ずぶずぶ くーちゃん「…ちから、ぬけてきました」 くーちゃん「あ、大楠さんも沈んでますね」 くーちゃん「そですよねっと、沼から体を浮かし続けるのは、難しいですよね」 くーちゃん「あ」 くーちゃん「そうです。大楠さん、大切なこと、忘れてました」 くーちゃん「おともだち、しょうかいします」 くーちゃん「ハナちゃんです」 くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」 くーちゃん「ハナちゃん?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1706698259/284
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