イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」 (965レス)
イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/
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759: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/04/27(火) 11:55:24.35 ID:KczeNKWC0 …ここ数日不具合(?)で入れなかったのですが、どうやら直ったようですね……とりあえず次の投下は週末にでも… …あと、数日前イタリアの歌手「ミルバ」が亡くなりましたね……「ミーナ」「イヴァ・ザニッキ」と並ぶ女性カンタウトーレ(カンツォーネ歌手)として60年代ごろから一世を風靡した方で、オペラ並みのパワフルな歌唱力をもつ驚くような声量の持ち主でした… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/759
760: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/05/01(土) 03:36:53.24 ID:6azsiJke0 …とある日… 提督「おはよう、デルフィーノ」 デルフィーノ「おはようございます、提督…目覚めのカフェラテをどうぞ。ミルクはぬるめで砂糖ひとさじです♪」 提督「グラツィエ……ずいぶんと天気が悪いわね。気象通報は?」 デルフィーノ「はい、ここに持ってきてあります」 提督「ありがとう…どれどれ……」まだ起き抜けで歯を磨いただけの提督はナイトガウン姿のまま執務室の椅子に座ると、コーヒーカップ片手に気象通報のプリントアウトを読んだ…… 提督「……イオニア海に低気圧が接近、現在中心気圧980ヘクトパスカルでなお発達中。風は南西風、風力4から5…波高2メートルから4メートル…海況は今後さらに悪化する見込み。イオニア海並びにティレニア海南部に波浪注意報および航行注意情報……」そこまで読み通すと後ろを向き、執務室の窓から空を見上げた… 提督「……確かにこれは時化そうね」 デルフィーノ「はい…黎明哨戒から戻ってきたレオーネたちも「今日はひどくガブった」と言っていました」 提督「そうでしょうね……とりあえず駆逐艦は今日の出撃を取りやめ、哨戒は潜水艦の娘に任せましょう」 デルフィーノ「分かりました。それじゃあ私が伝えてきますか?」 提督「いいえ。代わりに出撃してもらう娘には苦労をかけるのだから、私が直接伝えることにするわ」 デルフィーノ「了解♪」 提督「アッチアイーオは作戦室?」 デルフィーノ「そうです」 提督「それじゃあ後で立ち寄ってあげないとね……」 …数十分後・待機室… 提督「おはよう、みんな……こんなお天気の時に出撃をお願いして悪いわね」 オタリア「仕方ないですよ。このうねりの中で駆逐艦を出撃させたって哨戒になりませんもの…私たち大型潜にお任せ下さい」 ガリレオ・ガリレイ「そういうことね」 コマンダンテ・カッペリーニ「それに提督がお天気を悪くしたわけじゃないんですから…謝らないで下さい♪」 トリチェリ(U)「その通りです……あ、前の哨戒組が戻ってきたみたいですね」 アクィローネ(「北風」)「…まったく、今日のお天気ときたらばっかじゃないかしら……ひどい時化になってきたわね」 トゥルビーネ(「旋風」)「頭からつま先までびしょ濡れだものね。あぁ、提督…おはようございます」 提督「ええ、おはよう…この天気の中ご苦労様。きっと冷えたでしょうし、お風呂に入っていらっしゃいな」 …身体のあちこちからポタポタと雫を垂らし、濡れた髪を額に張り付かせた姿で敬礼するトゥルビーネたちに答礼すると、慈しむような表情を浮かべてねぎらった… ニコロソ・ダ・レッコ(ニコ)「ああ、そうさせてもらうよ……もっとも、ドック脇のシャワーで潮気は軽く落としてきたけれどね」 提督「時化の具合はどう?」 アントニオ・ピガフェッタ「そうですね…これからもっと荒れてくる気がします」 提督「やっぱり……分かったわ、ありがとう」と、提督の足元にルチアがやって来て身体を擦り付けた…… ルチア「ワフッ…♪」 提督「あら、ルチア…でもこのお天気だから、お散歩はちょっと無理ね……ブラシをかけてあげるから、それで我慢して?」 ルチア「クゥーン……」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/760
761: ◆b0M46H9tf98h [saga] 2021/05/02(日) 02:10:21.90 ID:xvFzyd2e0 …午前中… 提督「んー、いよいよ雨脚が強くなってきたわね……みんな、お部屋や廊下の窓はちゃんと閉めた?」 ライモン「はい、ちゃんと閉めてきました」 提督「よろしい♪ アッチアイーオ、新しい気象通報は?」 アッチアイーオ「ええ、さっき来たわよ…1000時の気象通報によると「低気圧は進路を南東に変えアルジェリア沖を進みつつあり、本日1600時にはマルタ、ケルケナー諸島間を通過する見通し。北アフリカ沿岸、特にリビア・エジプト沖は荒天が予想される」だそうよ」 提督「了解…こんな時に作戦がなくて良かったわ」 レモ「でもこのお天気じゃあ外にも行けないし…レモたいくつー……」 アラジ「同感…うぅ、早く身体を動かしたい……」(※アラジ…中型潜アデュア級。大戦中の出撃55回を数えた「イタリア潜でもっとも作戦行動した艦」かつ、終戦まで無事に生き残った幸運の持ち主) ドリア「アラジたちは元気で何よりですね」 カヴール「ふふふっ、本当に…若いというのはいいことです」 提督「もう、二人ともお婆ちゃんじゃないんだから……」 ドリア「あら、提督…♪」 カヴール「何かおっしゃいましたか……?」 デュイリオ「うふふっ、提督は冗談がお上手でいらっしゃいます…♪」 提督「あー……いえ、何でもないわ」 チェザーレ「…やれやれ、これだけ若返っているのだから艦齢の事を気にすることもあるまいに……それはそうと、確かに少し退屈ではあるな」 ロモロ「提督、なにか映画とかないの?」 提督「うーん、こんな天気にふさわしい映画ねぇ…」 スクアーロ「…なら「パーフェクト・ストーム」なんてどう?」 提督「時化の時に時化の映画を見てどうするのよ……」 スクアーロ「気に入らない? だったら代わりにいい暇つぶしの方法でも教えてもらいたいわ」 提督「もう、分かったわよ…そうね、それじゃあみんなで順繰りにお話でもしましょう」 デルフィーノ「わぁ、提督のお話ですか。ぜひ聞きたいです……でも怖いのはだめですよ?」 提督「ええ、分かっているわ…そうね、どちらかと言えば「怖い話」ではなくて「不思議な話」かしらね…」 提督「これはジェーン…前に「交換プログラム」でここへ来たミッチャー提督ね…から聞いた話なのだけれど……」 …数年前・ノーフォーク沖… ミッチャー提督「…ふう、今回のUボート狩もどうにかうまくいったわね……ナイスハントだったわよ」 エンタープライズ「センキュー、マーム……うちの飛行隊がスコアを稼いだのはいいけど、ノーフォークが恋しいわ」 ミッチャー提督「そうね、まぁもうちょっとの辛抱だから…そろそろチェサピーク湾に入る頃だし、そうしたらハンプトン・ローズやニューポート・ニューズだってすぐ見えてくるわ」 エンタープライズ「ホーム・スウィート・ホーム(懐かしの我が家)ね」 ミッチャー提督「そういうこと……そうだ、戻ったらシーフードレストランでソフトシェルクラブでも食べに行くとしようか」 エンタープライズ「サウンズ・グッド(いいわね)♪」 …凪の海を航行するミッチャー提督の空母機動部隊は、北大西洋での深海棲艦「Uボート」のハントを終え、チェサピーク湾に入ろうとしていた… ミッチャー提督「ん…ヘイ、ワッツ・ザッ(あれはなに)? 方位グリーン(右舷)10、前方500ヤード……海面のところ」 エンタープライズ「確かに白波が立ってるわね…サメ?」 ミッチャー提督「いや、サメだったらあんなにくねくね動かないから……」 …双眼鏡の視界には白波を蹴立てて浮かんだり潜ったりしている何かのシルエットが収まっている…黒褐色の艶のある様子はカワウソかアシカのようでもあるが、それにしては馬のような頭とぎざぎざの背びれがあり、動きもちがう… エンタープライズ「ミネアポリスと駆逐艦たちからも見えるって言ってきてるわ…ねぇマーム、もしかしてあれって……」 ミッチャー提督「ええ…きっと「チェッシー」じゃないかしら」 エンタープライズ「ワーオ♪ 噂には聞いたことあるけどお目にかかるのは初めて…!」 ミッチャー提督「私もよ……っと、潜っちゃったわ」 エンタープライズ「もう?できればもっと見たかったわね……」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/761
762: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/05/05(水) 03:00:55.12 ID:h8r/BqSS0 提督「…とまぁ、そういった話を聞いたことがあるわ」 スクアーロ「チェッシー?」 提督「ええ、チェサピーク湾にいるっていう未確認生物ね……名前は「ネッシー」をもじって付けられたそうよ」 デルフィーノ「不思議なお話ですね…他にはありますか?」 提督「そうねぇ、それじゃあ今度はジュリアが数年前に経験した「スリル満点」のお話を……」 ライモン「提督、その前にお茶をどうぞ…お話をしていると喉が渇きますから」 提督「あら、ありがとう…」紅茶をひとすすりすると話を始めた… …数年前・地中海上空… P−3副操縦士(コ・パイロット)「機長、ウェイポイントに到着。針路120度に旋回します」 アントネッリ中佐「了解、針路120。ルイージ、MAD(磁気探知機)に感は?」 レーダー員「MAD、レーダー共に感なし…静かなもんです」 アントネッリ中佐「了解……それじゃあコーヒーでももらおうか。トーニ、ギャレー(簡易厨房)から持ってきてもらえるかな?」 機上整備員「了解。ただし、味の保証はしませんよ?」 アントネッリ「なに、構わないさ…それとミルクを少し」 副操縦士「後でおれのも持ってきてくれよ…おれのは砂糖も入れてな」 機上整備員「分かってますよ、大尉は甘党ですからね」 副操縦士「そりゃあ…隊長が横に座っている中でずっと飛ばしてみろ。緊張して変な汗が出る」 アントネッリ「おや、私が横に座っているだけで緊張するようじゃ検定には合格させてやれないな」 副操縦士「こりゃあ手厳しい…」 アントネッリ「当然さ。深海お化けの潜水艦が対空機銃を撃ち上げて来ることだってあるんだ…隣に飛行隊長が座っているくらいでおたおたしているようじゃあダメだろう。違うかな?」 副操縦士「おっしゃるとおりです…精進しますよ」 アントネッリ「よろしい、向上心がある……一点追加だ♪」 機上整備員「お待たせしました、隊長」 アントネッリ「ん、ありがとう……飲み終えたら操縦を代わろう」 副操縦士「お願いします」 …と、急に操縦席のディスプレイに赤い警報ランプが灯ると、それまで「ビィィ…ン」と単調な音を立てていたターボプロップエンジンの一基が火を噴いた… アントネッリ「右翼、四番エンジンから出火」 副操縦士「四番エンジンを停止、プロペラをフルフェザーにします!」ピッチ角を変更しエンジンを停止させている間にも、次々と警報が点灯し、機の自動音声やアラーム音が鳴り響く… アントネッリ「よーし、操縦を交代だ…トーニ、席に着いてくれ」 機上整備員「了解!」 アントネッリ「よし、それじゃあ基地に連絡しよう…緊急事態を宣言」 副操縦士「スクォーク7700(トランスポンダ・緊急時コード)?」 アントネッリ「そうだ…第三エンジンは?」 副操縦士「第三エンジン出力低下、燃料ポンプに異常」 アントネッリ「……左翼のエンジンは?」 副操縦士「現状では問題なし」 アントネッリ「よし…なら針路を変えてトラーパニに戻ろう」 副操縦士「了解」 アントネッリ「…しかし、この機が双発の「アトランティック」じゃなくてよかったな」(※ブレゲー・アトランティク…フランス・ブレゲー社製の対潜哨戒機。イタリア海軍でも主力の対潜哨戒機として運用されていたが「ATR−72・ASW」に交替されつつある) 副操縦士「やれやれ「深海棲艦の脅威に対抗するため」P−3Cを貸与してくれたアメリカさんには感謝ですね……」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/762
763: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/05/06(木) 01:51:18.63 ID:rXWJJ1lC0 アントネッリ「まったくだな……コントロール、こちら「アルチェーレ(射手座)2」…第四エンジンから出火、第三エンジン出力低下。現在高度3000フィート、針路120、速度260ノット。緊急事態を宣言する」 戦術管制「こちらコントロール。アルチェーレ、何か支援できることはあるか…どうぞ?」 アントネッリ「アルチェーレよりコントロール、針路290への変針を要請」 戦術管制「こちらコントロール、針路290への変針を許可する…他には?」 アントネッリ「こちらアルチェーレ、今のところ飛行は安定しているが、エンジン二基で飛行しているため上昇は難しい…こちらの航路から他機をどけてもらえると助かる。それから燃料を積み過ぎているので空中投棄の許可願う…なお第四エンジンはすでに停止、鎮火を確認しているので投棄に際し引火の危険性は少ないものと思われる。どうぞ」 戦術管制「…アルチェーレ、こちらコントロール。燃料投棄を許可」 アントネッリ「了解…それからトラーパニ以外に着陸することも検討しているが、着陸可能な代替飛行場があれば教えて欲しい。どうぞ」 戦術管制「了解、少し待て……」 副操縦士「…今ごろ向こうじゃあ大騒ぎでしょうね」 アントネッリ「そうだろうな…」 戦術管制「アルチェーレ2,こちらコントロール…着陸可能な飛行場はパレルモ、シニョネッラ、コーミゾ、それとカターニアだ」 アントネッリ「了解、これから検討する……君ならどこがいいと思う、アドリアーノ?」 副操縦士「そうですね…まずパレルモはあり得ません。パレルモまで飛ぶんだったらトラーパニに降りたってほとんど距離は変わりませんよ」 アントネッリ「それから?」 副操縦士「コーミゾは距離的にはいいですし、滑走路も一本だけとはいえ2500メートルありますが…今日の風向きではアプローチするのに不向きです」 アントネッリ「よし…じゃあカターニアは?」 副操縦士「カターニアも滑走路はたっぷり2500ありますし、滑走路も08と26の二本がありますが…この時期のカターニアじゃあ旅客機がうようよいますから、それをどかしてもらってアプローチするとなったら時間がかかります」 アントネッリ「それじゃあシニョレッラだったら?」 副操縦士「そうですね、シニョネッラなら「第41ストルモ・アンティソマージビリ(対潜航空団)」の連中と米軍が展開している軍用飛行場ですから、管制も手慣れていますし備えもばっちりあります。滑走路も充分ですし、距離的にもトラーパニに飛ぶより断然近いです」 アントネッリ「満点の回答だな…それじゃあシニョネッラに向かい、いざというときはカターニアへ降りるとしよう」 副操縦士「了解」 アントネッリ「…こちらアルチェーレ。コントロール、聞こえるか?」 戦術管制「こちらコントロール、聞こえている。 アルチェーレ、候補地は決まったか? どうぞ」 アントネッリ「こちらアルチェーレ、候補はシニョネッラ海軍航空基地、もしシニョネッラの受け入れが難しいようならカターニアに着陸したい。どうぞ」 戦術管制「了解、シニョネッラだな…すぐ問い合わせるのでそのまま飛行を続けてくれ」 アントネッリ「了解」 …数分後… 戦術管制「アルチェーレ、シニョネッラはそちらの受け入れが可能だ…また、訓練飛行中の空軍機をチェイス(随伴)機としてそちらに向かわせた。機種はMB−339で、合流予定時刻は十分後。そちらから見て四時方向から接近の予定」 (※アエルマッキ・MBー339…イタリア空軍の高等ジェット練習・軽攻撃機。イギリスの「BAeホーク」などと同じように小型かつ軽快で、イタリア空軍アクロバット・チーム「フレッチェ・トリコローリ」の機体としても用いられている) アントネッリ「了解」 …十分後… 空軍機「こちら「ジェメリ(双子座)01」…アルチェーレ1、聞こえるか?」 アントネッリ「アルチェーレ1よりジェメリ01へ、感度明瞭…来てくれて感謝するよ」 空軍機「なに、そちらがお困りだって聞いたものでね……このままシニョネッラまで送っていく予定だが、何かご注文は?」 アントネッリ「ご丁寧にどうも…それじゃあ機体右側および下面を見てもらって、オイル漏れや損傷がないか確認して欲しい。どうぞ」 空軍機「了解。お安いご用だ……あー、目視ではオイル漏れおよび損傷は見られない。どうぞ」 アントネッリ「了解、それじゃあこれから減速して着陸態勢を取ってみるので、脚およびフラップが正常に作動するか確認して欲しい…どうぞ」 空軍機「了解。やってくれ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/763
764: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/05/10(月) 01:58:00.75 ID:hpQTwtRS0 アントネッリ「よーし…それじゃあ着陸態勢だ、準備はいいか?」 副操縦士「もちろんです」 アントネッリ「よろしい……フラップ!」 副操縦士「ダウン!」 アントネッリ「ランディングギア(降着脚)!」 副操縦士「スリー・グリーン(異常なし)!」 アントネッリ「なるほど、計器は「異常なし」って言っているようだな……ジェメリ、どうだ?」 空軍機「こちらから見る限り異常はない、大丈夫だ」 アントネッリ「作動液漏れも?」 空軍機「見えないな」 アントネッリ「分かった、ありがとう」 空軍機「どういたしまして…そちらが降りるまでお見送りしていくよ」 アントネッリ「それはどうも」 戦術管制「アルチェーレ、こちらコントロール…そちらは間もなくこちらのコントロールを離れ、シニョネッラのタワー(管制塔)が最終誘導を行う」 アントネッリ「了解。コントロール、ここまでの支援に感謝する」 戦術管制「こちらコントロール、礼はちゃんと降りてからにしてくれ」 アントネッリ「了解だ…シニョネッラ・タワー、こちらアルチェーレ1。 間もなくアプローチに入る」 基地管制塔「了解、こちらタワー。アルチェーレ、そちらを確認。高度5000からランウェイ27にアプローチせよ。風は230度から0.3メートル」 アントネッリ「アルチェーレ了解。ランウェイ27にアプローチする……」 副操縦士「機長、また問題発生です。ILS(計器着陸システム)受信機が消えました、反応ありません!」 アントネッリ「…シニョネッラ・タワー、本機のILS受信機が故障、計器進入できなくなった。VFR(目視飛行)で着陸したい」 管制塔「了解、VFRでのランディングを許可」 副操縦士「くそ、このじゃじゃ馬め……えぇい、直りやがらないか」スイッチを切ったり入れたりしている副操縦士… 機上整備士「軽く引っぱたいたら直るかもしれませんよ?」 アントネッリ「…やれやれ、前に私は「飛行機は女性だ」って言ったはずだぞ。せっかく金の翼(ウィングマーク…パイロット徽章)を付けていても、それじゃあモテないな」 副操縦士「そんなこと言ったって…ILSがダウンしたとなると、グライドスロープに乗せるのも手動って事になりますよ? それでなくてもエンジンが「双発半」ってところなのに……」 アントネッリ「なに、こんなのは自転車と同じさ。一度飛ばしたら、身体が覚えているよ……タワー、こちらアルチェーレ。着陸進入灯を確認した」 管制塔「こちらタワー、了解。 そちらの降下角は3度。進入角適正、グライドスロープに乗っている…そのままアプローチせよ」 アントネッリ「了解……少し出力を高めにして着陸するぞ」 副操縦士「了解」 …次第に迫ってくる灰色の滑走路と、次第に緊張の度合いを高めている操縦室や基地の雰囲気とは反対に、穏やかでのんびりした様子の日差しと地中海……すでに滑走路の両脇と誘導路上には消防車や救急車が待機している… 副操縦士「……高度300フィート」 アントネッリ「よし、出力を絞る……ようそろー…」 副操縦士「高度100…50…30……」 アントネッリ「よーし…まだだ、まだ……着陸!」最後に軽くふわっと迎え角を取ると、主脚が軽く「ドンッ…」と滑走路に触れた… 副操縦士「ブレーキ!」 …停止したエンジンがある中でプロペラピッチを変更してリバーサーを使うと、出力の差で機首が振れ地上偏向してしまう可能性があるので、リバーサーはかけない……滑走路の先を見据えつつブレーキペダルをいっぱいに踏むアントネッリ……すると、まるで停止する気がないようにぐんぐん滑走を続けていたオライオンが次第に速度を落とし、滑走路の半分を過ぎた辺りでしずしずと止まった… 副操縦士「と、止まった……」 アントネッリ「…ふぅ♪」 機上整備士「はぁ……寿命が縮まるかと思いました」 アントネッリ「そうか? …で、午後のフライトはどうする?」 副操縦士「勘弁して下さいよ…!」 ……… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/764
765: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/05/14(金) 01:51:03.89 ID:9Xa7PuwX0 アヴィエーレ「……それで、結局原因は何だったんだい?」 提督「聞くところによると燃料に不純物が混じっていたとかなんとか…あの時はまだまだマルタ辺りにも深海棲艦が出ていたから、あちこちの航空基地は突貫工事で増設していたし、そのせいだったみたい……とにかくその件でジュリアは「非常時に冷静かつ的確に行動した」ということで功労賞をもらったのよね」 アヴィエーレ「へぇ…それにしてもずいぶん細かい部分まで知っているんだね、提督?」 提督「えぇ、何しろジュリアがベッドの中で「ちょっと寝物語にお話ししようか…」って話してくれたから」 ドリア「まぁ、ふふふっ♪」 ガリバルディ「提督らしいわね……♪」わざと大仰にウィンクを投げるガリバルディ… 提督「あら、でも仲のいい士官同士でそういう話は結構するものよ……失敗しそうになった話とか、ちょっとしたおふざけの話とか…」 エウジェニオ「失敗談ねぇ……提督は何かある?」 提督「私? それはもう失敗だらけよ…もっとも、背筋が凍るほどのものはあまりないから、そういう面ではツイているのかもしれないけれど」 ライモン「提督は失敗だらけなんかじゃありませんよ。運がいいことは本当ですけれど」 提督「そうね、ライモンを始めみんなに出会えたんだもの…確かに運がいいわ♪」 ライモン「///」 カヴール「提督のお話は面白いですね、他にも合ったら拝聴したいですね。 …どのみちこのお天気では鎮守府の中で缶詰でしょうし」 提督「そうねぇ……」 カヴール「例えばトゥーロンのエクレール提督とはどのような…?」 提督「さてはカヴールったら……最初からその話が聞きたかったんでしょう」 カヴール「はて、何のことでしょうか…私には分かりかねます♪」 提督「もう……まぁいいわ、それじゃああの「パリジェンヌを気取ったプロヴァンスの田舎娘さん」の話をするとしましょうか♪」 ……… …しばらくして… 提督「ふぅ……クロワッサンと揚げタマネギの話だけでこんなに盛り上がるとは思わなかったわ」 カヴール「面白いお話を拝聴させていただきました…♪」 提督「それなら良かったわ…ところで、誰かそろそろ変わってくれないかしら? 私はトークショーの司会者じゃないのよ?」 デュイリオ「そうですね、でしたらわたくしが一つ昔話をするといたしましょう。 神様は人間を救いたいと……」 オタリア「……大型潜水艦オタリア以下四隻、鎮守府近海の哨戒から帰投いたしました!」 提督「あぁ、お帰りなさい。みんなお疲れ様…って、びしょびしょじゃない……!」 カッペリーニ「まぁまぁ、潜水艦なんていつもこんなものですよ…それにひどいときは潜航していましたから」 提督「それにしたって……ほら、ほっぺただってこんなに冷たい…」 カッペリーニ「あ…っ///」 提督「いまは簡単な報告だけでいいから、とにかく暖まっていらっしゃい…それとお昼にはスープを作ってあげるわね♪」 トリチェリ「ありがとうございます…ではお風呂に行ってきます」 提督「ええ。お湯は好きなだけ使えるのだから、ゆっくりしてくるといいわ」 ガリレイ「なんとも素晴らしいことね…それでは、ガリレオ入浴してきます♪」 提督「ええ、行ってらっしゃい……それじゃあその間に作っておくとしましょう」 エリトレア「はいっ、今日は茸入りのクリームスープにでもしましょう♪」 提督「いいわね…♪」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/765
766: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/05/18(火) 01:51:11.65 ID:z/mKo+iM0 …午後・待機室… ライモン「雨、止まないですね…」 提督「そうね…それどころか、気象通報によるとこれからが一番ひどくなるみたい。雷も鳴っているし……」南から吹き付ける風にあおられて窓ガラスに「ざぁっ…!」と打ち付ける激しい雨と、ゴロゴロと地底から響くような遠雷の音が聞こえている… ルチア「クゥン、ヒュゥ……ン」 提督「あぁ、ルチアったら可哀想に…怖いわよねぇ。よしよし、大丈夫大丈夫……」ルチア用の古毛布を取ってきてフードのようにかぶせ、横に座り込んで頭を撫でてあげる提督……と、壁の電話が鳴った… ライモン「はい、こちら待機室…アオスタさんですか、どうしました? …了解、提督に伝えますね」 提督「……何かあった?」 ライモン「はい。作戦室のアオスタさんによると、民間船の救難信号をいくつかキャッチしたそうです。 もっとも、いずれもわたしたちの管区ではなく、すでに対応する管区が受信確認しているそうですから……」 提督「…救援に駆り出されることはなさそうね」 ライモン「はい」 提督「どのみちこの天気で民間船の救助となると、駆逐艦では危険すぎるわ…最低でも軽巡クラスは必要になるわね」 (※イタリア王国海軍の軍艦、特に駆逐艦はサイズの割に兵装が過大で、また高速を求めたために安定が悪かった…実際マエストラーレ級「シロッコ」等は荒天下で転覆している) ライモン「必要となればいつでもおっしゃって下さい。いつでも出られますから」 提督「ありがとう、でもその必要はないはずよ……とはいえ、これじゃあやることもないわね」 ライモン「そうですね…」 提督「仕方ないから部屋の片付けでもするわ…」 ライモン「それはいい考えですね♪」 …執務室… 提督「……ところで、フォルゴーレたちはちゃんと戻ったの?」 ライモン「はい、フレッチアがうんと雷を落としていました」 提督「ならいいけれど…元気なのは結構だけれど、この嵐の中で庭に出てはしゃぎ回るのはちょっとね……」 ライモン「まぁ、彼女たちはみんな「嵐の申し子」みたいなものですから……フレッチア自身も口では「あの大馬鹿たちを連れ戻してくるわ」と言いながら、実際の所は楽しげでしたから…」 (※フレッチア級・フォルゴーレ級…ほぼ同型の駆逐艦グループで、艦名はいずれも「雷」「稲妻」「閃光」「電光」など、雷や放電現象に由来する) 提督「やれやれね。さてと、それじゃあ棚の整理でもするとしましょうか…」私用の本棚から次々とファイルや雑多な資料、書籍を取り出しては執務机やその前に据えてある(普段は秘書艦の娘たちが使う)応接テーブル、椅子の上などに並べていく…… デルフィーノ「失礼します……あ、私も手伝います♪」 提督「あら、ありがとう…でも、スクアーロたちと一緒じゃなくていいの?」 デルフィーノ「はい。だって私は秘書艦ですから……それにスクアーロお姉ちゃんってば、私が怖がるのを知っていて恐怖映画を見せようとするんですよ?」 提督「もう、スクアーロったら意地悪ね…それじゃあ一緒にお片付けを手伝ってもらえる?」 デルフィーノ「はいっ♪」 提督「グラツィエ…それじゃあ本はこっち、資料はこっち……これはいらないパンフレットだからゴミ箱に…と」 ライモン「提督、これはどうしましょうか?」 提督「それは要るわ…とりあえず判断に困るようなものはそっちの「保留」の方に置いておいて?」 ライモン「分かりました」 デルフィーノ「提督、しおりが出てきました」 提督「あぁ、そんなところにあったのね……この間から見つからなくって探していたの」 デルフィーノ「見つかって良かったですね…って、写真もありましたよ♪」 …一冊の本の間からひらひらと舞い落ちた写真を拾い上げたデルフィーノ…写真はどこかの公園の噴水の前で、提督を中心にして十人ほどが笑みを浮かべている… 提督「どれ? あぁ、それならここに赴任する前ローマで撮った写真ね。そのとき集まることが出来た仲のいい知り合いと出かけたときに撮ったの」 ライモン「…この写真に写っている全員が、ですか?」 提督「えぇ、まぁ…ローマにいたときはちょっと「親しい間柄」になっている知り合いが多かったものだから///」 ライモン「………」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/766
767: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/05/23(日) 02:45:04.02 ID:VpTt/Sbu0 デルフィーノ「…でも意外ですねぇ」 提督「何が?」 デルフィーノ「だって提督のことですから、きっと目も覚めるような美人さんばかりとお付き合いしているものとばかり思ったんですよぅ」 提督「あぁ、そういうこと……」 デルフィーノ「はい」 提督「…確かに私の知り合いには顔だけ見ると「美人」に含まれない人も多いかもしれないわね…でもね、彼女たちにはそれぞれ素敵ないいところがあって、私はそれが好きでお付き合いしていたの♪」 ……… …一年前・ローマ… カンピオーニ大佐(提督)「うーん…いい気持ち♪」 栗色の髪をした士官「そうねぇ……ここから眺めている分にはローマもいいものね」 ぽっちゃりした士官「確かに。ローマは観光ならいいけれど、実際に過ごすとなるとねぇ…」 細身の美人士官「言えてるわ…物価も高ければ渋滞もひどいし、おまけにほこりっぽいんだもの……嫌になっちゃうわよね、フランカ?」 提督「ええ、まったく♪」 …ローマを望む郊外の丘で寝転んだり座ったりしている提督たち…そして提督の左側にはくっきりした目鼻立ちの美人が座って提督の髪を指先でもてあそび、右隣にはそれと対照的な、黒と白の地味な服を着たやせこけた女性が座っている……そのやせっぽちの士官は野暮ったくカットした黒髪と大きなレンズの丸眼鏡のせいで、まるでティム・バートンが描くキャラクターか何かのように見える… 美人士官「それにしても昨日はあんなに冷え込んだのにね…洗濯屋さんから冬物のコートを慌てて取ってきたのが馬鹿みたいだわ」 やせっぽちの士官「仕方ないわ。秋の天気は我が国の首相と同じくらい変わりやすいのよ…」 一同「「くすくすっ…♪」」 提督「…ふふっ、相変わらず冗談が上手なんだから♪」 やせっぽちの士官「ありがと、フランチェスカ……」 …昼時… 提督「はい、どうぞ。あり合わせの材料を挟んだだけだけれど、結構上手く出来たと思うから、良かったら食べてみて?」 …細いバゲット風のパンに、薄切り牛肉やアーティチョークのピクルス、あるいはマリナーラソースやガーリック風味のオリーヴ、白身魚のフライなどを挟んで、それを柳のバスケットに入れて持ってきた提督… 勝ち気そうな士官「へぇ、それじゃあお一つ…」 美人士官「では私も遠慮せずにいただくわ。 …ん、ボーノ(おいしい)…さすがはフランカね♪」それぞれサンドウィッチを手に取り、色づいた木々の葉や古代ローマの遺跡を眺めながら頬張った… 提督「ふふ、ありがと♪」 栗色髪の士官「本当に料理が上手よねぇ……っと、いけない!」うっかりマリナーラをスカートにこぼしてしまい、慌ててハンカチを取り出しこすろうとした… ぽっちゃりした士官「あぁ、だめ! こすったら染みついちゃうわよ…ちょっと貸して?」自分のハンカチを二つに折ると、片側を手元の「ペレグリーノ」(無糖の瓶入り炭酸水)で湿らせ、こぼれた部分にあてがって挟むようにすると、上から湿った方で「とんとんとん…っ」と叩いた… ぽっちゃり士官「こうすれば……ほぉら♪」しばらく叩いてハンカチをどけると、クリーム色のスカートの染みがほとんど見えなくなっていた… 栗色髪の士官「まぁ、ありがとう♪」 ぽっちゃり士官「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)…こういうのだけは得意なんだから、任せてよ♪」 ……… … 提督「…とまあ、みんなそれぞれいいところがあって……この頬杖をついている女性(ひと)は話が上手だからお店でおまけしてもらえたり」 デルフィーノ「それじゃあこのお姉さんは?」 提督「あぁ、アデーレね…彼女は記憶力が抜群で、どんなにくだらない事でも聞けばだいたい覚えているの……ローマでは借りていた部屋の鍵を無くしたときに見つけてくれたことがあるわ」 ライモン「みなさん色んな特技をお持ちなんですね……」 提督「もちろん得意なことのある女性もいたけれど、それよりもまず「一緒にいて気持ちのいい女性」かどうかね…だから顔は美人でも性格の悪い人とはあんまり付き合わなかったわ。反対に心根のいい女性とは、容姿とか関係なしによくお付き合いしたものよ♪」そう言うとちょっといやらしい笑みを浮かべ、わざとらしくウィンクしてみせた… デルフィーノ「……提督ってばえっちです///」 提督「そうね…毎日お盛んな貴女ほどじゃないけれど♪」 デルフィーノ「///」 提督「それで、その後は私の部屋に行こうって話になって……」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/767
768: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/05/25(火) 02:40:21.34 ID:QNjW4uNI0 …夕刻・提督が借りているアパートの部屋… 提督「…ちょっとここで待っててね、部屋を片付けてくるから」キーリングを取り出して鍵を開けると、笑みを浮かべて手で押しとどめるようなジェスチャーをした… 美人士官「ふふ、そう焦らなくたっていいわよ……ちゃんと待っていてあげるわ♪」 やせっぽちの士官「そうそう。フランカが「一人遊び」で使った玩具をしまう間くらい待っていてあげるもの……」 提督「もう。私は基本的に道具を使わない主義よ…忘れた?」 やせっぽちの士官「そう言えばそうだったわね…」 ぽっちゃり士官「ほら、いいから早く片付けてきなさいよ♪」 提督「あぁ、そうだったわね……」いそいそと部屋に入ると、クッションの形を整えると洗濯物を浴室のカゴに放り込んで目隠しのタオルをかぶせ、それから部屋の上空に向けて軽く香水を吹いた…… …数分後… 提督「ふぅ、お待たせ…」 美人士官「待つって言うほど待ってないわ……もう入ってもいいのね?」 提督「ええ、どうぞ♪」 栗色髪の士官「それじゃあお邪魔します…なんだ、きちんとしているじゃない♪」 提督「表向きだけはね……さ、どうぞかけて? それと椅子が足りないから、ベッドに腰かけてくれて構わないわ」 美人士官「それじゃあ私はベッドでいいわ…どうぞ皆は椅子を使って?」 やせっぽちの士官「それはご親切に……でも私は身体が骨張っているから、椅子だと腰が痛くなるの。だからベッドにするわ」 ぽっちゃり士官「反対に私はご覧の通りでしょ? 椅子なんかに座った日には椅子が壊れるか、肘掛けの間に挟まって抜けられなくなっちゃうのがオチね……と言うわけでベッドに座らせてもらうわよ、フランカ♪」ぽっちゃりとした丸っこい顔にえくぼを浮かべ、ベッドに腰かけた… 提督「ねえ、何も皆してベッドに座ることはないじゃない……これから夕食にするけれど、飲み物は何がいい? あるのは白、赤、カンパリ、アプリコットリキュールがほんの一口、まだ開けてないグラッパが一瓶…あとはミネラルウォーターに炭酸水、紅茶、コーヒー……冷蔵庫にオレンジとレモンがあるから、絞ればオレンジジュースとレモネードもできるわ」 やせっぽちの士官「それじゃあ赤ワイン…」 勝ち気そうな士官「私も赤で」 美人士官「私はカンパリソーダを♪」 ぽっちゃり士官「白があるなら白をもらうわね」 栗色髪の士官「じゃあカンパリオレンジにしてくれる?」 提督「了解、それじゃあ今から何か作るわね…と言っても残り物か、すぐ作れるものばかりだけれど♪」 …提督は部屋を片付けるついでに、お出かけの時に着ていた栗色のタートルネックを着心地のいいロングワンピースに着替えていたが、その上にエプロンをつけた……それぞれにグラスを渡すと、少し手狭な台所に戻って忙しく立ち回り始める… ぽっちゃり士官「良かったら何か手伝おうか?」 提督「そうねぇ、それじゃあそこにフォークとナイフ、スプーンがあるから並べておいてもらって……とりあえずはそれくらいかしら」 ぽっちゃり士官「ん、分かった♪」肉付きのいいおばさん体型ではあるが、動きはバレリーナのように軽やかでテキパキしている… 提督「…それからおつまみ代わりにアンティパスト(前菜)をどうぞ♪」冷蔵庫に残っていたルッコラやトマトを適当に切ったりちぎったりして器に盛り、残っていた瓶詰めのオリーヴと固ゆでの卵をスライスして散らした… 美人士官「ねぇフランカ、夕食はまだ待てるから一緒に座りましょう……ね?」 やせっぽちの士官「…と、狼が舌なめずりをしながらいいました」 ぽっちゃり士官「ぷっ…♪」 勝ち気な士官「あっははは…傑作♪」 美人士官「もう……そんなつもりじゃないわよ?」 提督「ふふっ、もうちょっとだけ待っててね…はい、お待たせ♪」自分のグラスを持ってくると椅子に腰かけてフォークを手に取った… 栗色髪の士官「それじゃあいただきますか……」 提督「ええ、召し上がれ♪」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/768
769: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/05/29(土) 03:52:42.43 ID:nFNXQIHz0 美人士官「相変わらず料理が上手ね、フランカ」 提督「グラツィエ♪」 ぽっちゃり士官「本当にね……このパスタも本当に美味しいわ。こんなに美味しい料理をごちそうになったら食べ過ぎちゃって、ますます太っちゃうわよ♪」そう言うと肌つやのいい頬にえくぼを浮かべ、派手なウィンクを投げてみせた… 提督「ふふーん♪ …実はね、そのレシピは私が母親に教わった「とっておき」の一つなの」 勝ち気そうな士官「へぇ……つまりフランカは今日の夕食が「とっておき」だと思ってるわけか」 提督「さぁ、どうかしら?」ワイングラスを軽く揺さぶりつつ、意味深な笑みを浮かべる提督… 美人士官「そうね、少なくとも私は期待……しているわよ?」 提督「ふふっ、もう…貴女にそんなことを言われたら、みんな胸が高鳴っちゃうわよ?」 美人士官「さぁ……それは私との関係にもよるんじゃないかしら」テーブル越しに腕を伸ばし、人差し指と中指で提督の首筋を軽く撫でた… 提督「…んっ///」 やせっぽちの士官「……食事中はお行儀良くって聞いたことがない?」 美人士官「あら、妬いちゃったかしら…フランカ、もう一杯ワインをいただくわね♪」 栗色髪の士官「明日は勤務じゃないの?」 美人士官「ふふふ、明日は休み……それに車も駐車場に停めてあるし」 栗色髪の士官「さすがに作戦課ともなると手際がいいわね…」 美人士官「そういうこと……ところで貴女は?」 栗色髪の士官「私も明日はお休みよ。何しろ土曜日だもの♪」 勝ち気そうな士官「あーあ、佐官クラスにもなるとお休みが多くて結構ですね…私みたいな中尉クラスは「貧乏暇なし」ってやつなのに」 やせっぽちの士官「……それは貴女が魚市場の人間みたいに喧嘩っ早いせいね。仕方ないわ」 栗色髪の士官「ふふっ…♪」 勝ち気そうな士官「ふんっ、言ってくれるよ…まるで新月の晩みたいに暗いくせしてさ♪」口ではそう言いつつも、大きく腕を広げておどけた態度を取っている… 提督「さぁさぁ、言い合いはそこまで……ドルチェ(デザート)を持ってくるわね♪」 勝ち気そうな士官「いいね。それじゃあ私はそれをいただいて帰るとするかな…もし停めておいたヴェスパがコソ泥に盗まれていなきゃね」 やせっぽちの士官「あら、ヴェスパ(スズメバチ)がヴェスパに乗るとは驚きね……フランチェスカ、私もドルチェをいただいたらお暇するわ」 提督「分かったわ。二人とも気をつけて帰ってね?」 やせっぽちの士官「ええ、でも彼女がいるから大丈夫。向こう見ずで見境なしにかんしゃく玉を破裂させるのが悪い癖だけれど…」 勝ち気そうな士官「人を鉄砲玉みたいに言うな!」 やせっぽちの士官「ごめんなさい…確かに貴女は鉄砲玉じゃないわ。 …鉄砲玉なら雷管を叩かないかぎり飛び出さないもの」 勝ち気そうな士官「このっ、口先だけは上手な……フランカ、とっととドルチェを持ってきてよ! この女と来たら食べ物か飲み物が口の中に入っていない限り、この世の終わりまでずーっと皮肉を言い続けるつもりなんだから!」 提督「ふふふっ…了解♪」 …食後… 美人士官「さ、いらっしゃい…♪」 提督「ええ…って、私のベッドよ?」ワイングラスを片手にしたままベッドに腰かけ、相手の肩にもたれかかっている… 美人士官「ふふふ、そうだったわ…」 提督「……ねぇ、アウローラ///」 美人士官「どうしたの、フランカ?」 提督「ん…♪」 美人士官「ん……ちゅっ♪」 提督「ん、んっ、んっ……んんぅ、ちゅっ、ちゅぅぅ…っ♪」 美人士官「んっ、んむっ、ちゅっ……♪」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/769
770: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/06/06(日) 02:16:02.90 ID:/FUgEzhX0 提督「あっ、ふあぁ……あふっ♪」 美人士官「ん、んっ…んんっ♪」 …腕を伸ばして飲み干したワイングラスをベッド脇の小机に置くと、そのまま指と脚を絡め合い、長いキスをする……白くほっそりした美人士官と、ほのかにクリーム色を帯びた豊満な提督は好対照で、揺らぐ炎のようにベッドの上で脚が交差する… 美人士官「フランカ……フランカ…っ♪」 提督「アウローラ…はむっ、ちゅぅ……っ♪」 美人士官「ふぅっ、んんぅ…っ、はう…っ……♪」 提督「……指、入れるわね♪」ちゅぷ…♪ 美人士官「ふぁぁぁっ、あっ、あっ、ああぁ…っ!」 提督「んふふっ、アウローラったらそんな大声を出して……他の部屋に聞こえちゃうわ」 美人士官「だって、フランカの指がっ……んあぁぁっ♪」 提督「ふふふ、アウローラったら相変わらずここが感じやすいのね…それじゃあもう一本……と♪」くちゅり…っ♪ 美人士官「あぁぁぁんっ♪ フランカ、フランカぁぁ…っ♪」提督の綺麗な人差し指につづいて、中指が花芯に滑り込む……そのまま第二関節までするりと入れて優しく指を動かすと、がくがくと腰が跳ねた… 提督「私はここよ……んっ♪」身体は重なり合ったまま顔だけ少し離すと、提督のずっしりとした髪の房が胸元にこぼれる…それからまた顔を近寄せていき、舐め取るように唇を交わす… 美人士官「はぁ、はぁ、はぁ…っ♪」厚手のストッキングと黒の下着をずりおろしてはいるが、粘っこい蜜がまとわりついて染みを作り、提督が指を動かすたびに湿っぽい音が響く… 提督「……それじゃあ、行くわね」 …金色をした提督の瞳が熱っぽい輝きを帯び、頬や胸元に赤みが差す……脚を曲げ伸ばししたり身体をくねらせたりしてランジェリーを脱ぎ、それをベッドの足元に放り出すと、ゆっくりと身体を重ねていった… 美人士官「はぁぁぁ…んっ///」 提督「んんぅ…♪」 栗色髪「……あんなの見せられたら、こっちまで変な気分になるわよね///」 ぽっちゃり「…じゃあ、私たちもする?」 栗色髪「え、ええ……///」 ぽっちゃり「分かった…それじゃあ最初はキスから♪」 栗色髪「んっ…はむっ、んちゅっ、ちゅぅ…っ、んふぅ……っ♪」食卓の椅子に腰かけた栗色髪の士官と向かい合わせになるようにして、ぽっちゃりした方がまたがった… ぽっちゃり「大丈夫? 潰れてない?」 栗色髪「だ、大丈夫だから……来て…ぇ///」 ぽっちゃり「了解…椅子が壊れないといいけど♪」ぐちゅぐちゅ、にちゅ…っ♪ 栗色髪「んふぅ、んんぅ、んむぅぅ…っ!」 …数十分後… 栗色髪「ぷはぁっ…! はぁ、はぁ…んはぁぁ……///」 美人士官「はふっ、はひぃ……っ♪」 ぽっちゃり「はぁぁ、こんなの久しぶりに味わったわ…でも、まだ身体がうずくのよね♪」 提督「あら、奇遇ね……私ももっと甘い声を聞きたい気分なの♪」 ぽっちゃり「そう…それじゃあ、と……♪」椅子を降りると提督と美人士官が寝転がっているベッドへとにじり寄り、提督を押し包むようにのしかかった……たぽたぽと揺れる胸とお腹の肉が提督の肌にぺたりと吸い付き、甘い蜂蜜めいた匂いと汗ばんでしっとりした肌触り、それに身体の熱が伝わってくる… 提督「んんっ、暖かくて……それに柔らかい♪」 ぽっちゃり「お布団にちょうどいい?」 提督「ええ…こんな布団があったら一日中ベッドから出ないわ♪」 ぽっちゃり「一日中はさておき……一晩中なら出来るわよ♪」赤ちゃんのような丸っこい可愛らしい手で、提督の秘部をなぞった… 提督「あん…っ♪」提督もお返しとばかりに、ぽよぽよと柔らかい乳房を「ぎゅむっ♪」と揉みしだいた… ぽっちゃり「あうんっ……このぉっ♪」 提督「ふふっ…んぅっ、あんっ…ふあぁあぁんっ♪」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/770
771: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/06/08(火) 01:39:02.21 ID:VzmfaJYu0 …翌朝… ぽっちゃり「おはよう、フランカ……おはようってば♪」 提督「おは…ふあぁぁ……///」あくびをもらし、口元に手を当てた… ぽっちゃり「ふふ、寝起きの顔も可愛いわよ……目は覚めた?」 提督「ふわ…ええ、まぁどうにか……」 …寝ぼけまなこのまま洗面台に向かうと水道をひねる……水道の調子はいつも通りイマイチで、蛇口をひねるとゴロゴロと音を立て、水が間欠泉のように勢いよく出たり弱まったりする……提督は眉をひそめ、古代ローマの水道に比べてこれでは「さして進歩がない」どころか退化していると思いながら顔をゆすいで歯を磨き、うがいをした… ぽっちゃり「はい、コーヒー…それと、勝手だけれどシャワーを使わせてもらったわ」 提督「ええ、どうぞ遠慮なく……タオルの場所は分かった?」 ぽっちゃり「もちろん♪ 勝手知ったる他人の家…ってね♪」 提督「なら良かったわ……そうそう、帰る時になったら教えて? せっかくだし送るわ」ベッドに腰かけるとコーヒーのマグを受け取る… ぽっちゃり「ありがとう…でもまずはフランカがスッキリしてからね♪」 提督「そうね。…あ、朝食はどうする? パンとカフェオレくらいで良ければ用意するけれど」 ぽっちゃり「お気遣いどうもね…でも大丈夫、帰ってから食べたっていいし、トラットリア(軽食堂)に寄ったっていいんだから」 提督「分かったわ」 美人士官「うぅ…ん♪ こんな朝早くからどうしたのよ……?」 ぽっちゃり「あら、眠り姫のお目覚めね……ついでにこっちも起こしてあげるとしますか♪」 栗色髪「ん、んふぅ……あぁ、おはよ…///」 ぽっちゃり「おはよう♪ ほら、フランカが送ってくれるっていうから、着替えちゃいましょう」 栗色髪「あぁ、はいはい…あれ、ブラはどこに脱いだっけ」 美人士官「これじゃない?」 栗色髪「ああ、それ……ねぇ、アウローラ。これ、貴女のストッキングじゃない?」 美人士官「あら、ありがとう…フランカ、良かったら貸してあげましょうか?」 提督「あら、それってどういう意味かしら?」 美人士官「ふふふっ、分かっているくせに…♪」 …しばらくして… 大家のおばさん「あら海軍さん、おはよう。今日はお休み?」 提督「おはようございます、おばさん…ええ、お休みです♪」 大家「それは良かったわね……そうそう、後でおかずをおすそ分けしてあげるわね」 提督「ふふ、嬉しいです。おばさんのお料理は美味しいですから♪」 大家「ありがとね、そう言ってくれるとこっちも張り合いがあっていいわ……ところで、昨夜は楽しかった?」ひそひそ話をするような様子で口元に手の甲を寄せると、邪気のないウィンクを投げた… 提督「もう、おばさんってば……♪」 大家「冗談よ。それにしても今まで色んな士官さんに部屋を貸してきたけれど、貴女は一番いい店子だわよ」 提督「グラツィエ……それではちょっと彼女たちを送ってきますので」中庭の一部を使った駐車スペースに停めさせてもらっている「ランチア・フラミニア」に乗り込もうとした… 大家「ええ「彼女たち」をね♪」 提督「もう、そっちの「彼女」じゃありませんって…♪」 ……… … 提督「……今思えば我ながら「奔放な生活」だったとは思うけれど、何だかんだで結構楽しかったわね」 デルフィーノ「それを聞くと、提督がここに飛ばされたのも仕方ない気がしますねぇ」 ライモン「でも、そのおかげでわたしは提督と出会えたわけですけれど…///」 提督「そうね…おかげで私もライモンたちに出会えたんだもの。幸運に感謝しなくちゃ♪」 ライモン「そうですね///」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/771
772: ◆b0M46H9tf98h [saga] 2021/06/14(月) 02:56:21.09 ID:lYmtJ9450 …夕食後・バーカウンター… ニュース番組「……低気圧は勢力を弱めつつありますが、依然として海上は風力4〜6程度の風が吹き荒れ、波浪注意報も発令されています。また、リビア沖で数隻の貨物船から救難信号が発信され、現在海軍と沿岸警備隊が救助にあたっているとのことです…」 ガリバルディ「…この時化の中で難航だなんて、聞くだけでもいただけないわ」 提督「そうね…気象通報によると、この低気圧もあと数時間で通り過ぎるっていう話だけれど……」 ザラ「嵐が無事に過ぎ去って、こっちにまで救援要請が回ってこないで済めばいいわね」 提督「そうねぇ…ポーラ、もう一杯だけ注いでもらえる?」 ポーラ「はぁ〜い♪」 フィウメ「それにしても、時化というとポーラ姉さまの件を思い出しますね」 ザラ「ああ、アレね……おかげでしばらくは鎮守府のワインセラーが一杯だったもの、貴女には感謝してるわ」 ポーラ「えへへぇ、それほどでも…♪」 提督「…というと?」 ゴリツィア「ああ、そう言えばあの時はまだ提督の着任前でしたね……」 ……… …提督の着任以前・とある悪天候の日… ポーラ「こんな天気に出撃もないですよねぇ……」白く逆巻く波頭と灰色がかった海面を艦橋から見下ろし、身体の水平を保ちながらコーヒーをすすっている… ポーラ「…戦隊旗艦より各艦へ、大丈夫ですかぁ? 減速が必要なら言って下さいねぇ?」 ジュッサーノ「こちらジュッサーノ、滅茶苦茶がぶっている以外は大丈夫です。ただ、この状況ですから一番砲塔は使用不能です」 バルビアーノ「バルビアーノ、同じく……」 カドルナ「駆逐隊を連れてこなくて良かったわね…この時化ぶりじゃあひっくり返っちゃうでしょうし」 ディアス「同感…軽巡の私たちでさえこの有様なんですから」 ポーラ「それでも戦果があれば良かったのに、空振りですものねぇ…とにかく帰ったら暖かいお風呂ですねぇ♪」ギリシャ海軍からの「敵艦複数見ユ」の通報を受け、低気圧の隙間を縫ってどうにか出撃したものの、誤報と分かりげんなりしているポーラたち… ジュッサーノ「賛成、ところで……」 ポーラ「ん? ジュッサーノ、ちょ〜っと待って下さいねぇ……」艦の無線に鎮守府からの通信が入ってきた… ポーラ「えぇ、と……鎮守府より「…そちらの位置から針路275度、距離およそ30浬の地点で貨物船「ワン・スイ・グランド」号より救難信号。可能ならば救援されたし…」ですかぁ…」 …その当時はまだ予備扱いで、司令官となる提督が着任していない鎮守府の「艦娘担当官」としては、任意とは言え管区司令部の要請はなかなか断りにくい… カドルナ「……距離的には行けなくはないですが、これからさらに時化るそうですよ?」 ポーラ「ん〜…とはいえ見捨てるわけにも行きませんねぇ……とりあえず行ってみましょ〜う」 ジュッサーノ「了解」 …一時間半ほどして… ジュッサーノ「…これは大変ね」 ポーラ「そうですねぇ……」 …ポーラたちが双眼鏡を向ける先では、船体をグレイに塗った一万トンクラスの貨物船が難航していて、貨物甲板の40フィートコンテナ数個が荷崩れを起こしかけて傾いている……そのコンテナは濃いブルーの地に「WAN SUI」と白フチ付きのロゴが入っていて、他の文字が青文字なのに対して「A」と「U」だけが赤文字になっている… ポーラ「こちらイタリア共和国海軍、重巡「ポーラ」より貨物船「ワン・スイ・グランド」へ、聞こえますか? 状況を教えて下さい、どうぞ?」 貨物船「こちら「ワン・スイ・グランド」聞こえます…本船は二時間ほど前に三角波を受けてコンテナが荷崩れを起こし、同時に機関の一基が損傷、浪に対して船首を保つのがやっとの状態です…どうぞ」 ポーラ「了解、今から救援を行います…」 ジュッサーノ「ポーラ、気象通報ではこれからますます時化るって……!」 ポーラ「分かってます…ここは私が曳航を試みてみますからぁ、ジュッサーノたちは安全のために先に戻って下さいねぇ」 ディアス「冗談でしょう? いくらポーラが重巡だからって、一隻だけで貨物船を港まで曳航するなんて無理です」 ポーラ「ポーラはぁ〜「港まで」曳航するなんて言ってませんよぉ…このまま嵐が収まるまで、曳航状態で一緒にいてあげるつもりですから♪」 カドルナ「そんなのだめです、敵潜のいい的にされます!」 ポーラ「こんな時化の最中に魚雷を撃てる潜水艦なんていませんよぉ……それに「誰かが助けに来てくれる」ってとっても嬉しいことだって、ポーラはよ〜く知っていますから…ね?」 ジュッサーノ「…分かりました」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/772
773: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/06/19(土) 13:39:09.99 ID:gYeCE8mI0 …十数分後… ポーラ「ポーラより「ワン・スイ・グランド」へ、これより曳索を投げます…どうぞ」 貨物船「了解、受け入れ準備完了…投げて下さい!」 ポーラ「それでは、トーレ、ドゥーエ、ウーノ……それっ!」 …ポーラは浪に振り回される貨物船と衝突しないよう絶妙な位置に艦を寄せ、後甲板の旗竿の辺りから小アンカーの重りをつけたロープを投げ縄のように振り回してから放った……ロープには丈夫な鋼鉄製ワイヤーが繋がれていて、がちゃんと派手な音を立てて船首甲板に落ちたアンカー付きロープを目立つ黄色の防水外套を着込んだ貨物船の乗員たちが、つるつると滑る甲板上で悪戦苦闘しながらもどうにか受け取ってたぐり寄せ、ワイヤーを結びつける…白い波飛沫で時々船員の姿が隠れる中で数分ばかり待っていると、無事に曳索を結びつけたらしく船員が手を振った… 貨物船「こちら「ワン・スイ・グランド」…無事に曳索を結びつけました、どうぞ!」 ポーラ「こちらポーラ、了解…それではこのまま「ヒーブ・ツー」しましょ〜う」 (※ヒーブ・ツー(heave to)…日本語では「踟躊(ちちゅう)」という。帆船時代からある荒天下での操船法で、最低舵効速力を維持したまま波に二十度ほどの角度を保つやり方) 貨物船「了解、感謝します!」 ポーラ「沿岸警備隊の救難ヘリももうじきやって来ますから、それまで頑張って下さいねぇ?」 貨物船「こちら「ワン・スイ・グランド」了解」時折船体に叩きつける波音が鉄鍋を叩くように「がぁぁ…ん!」と響き、喫水線下の赤く塗られたバルバス・バウが水面に露呈してはまた海面下に突っ込み、そのたびに派手な波飛沫が揚がる… ポーラ「うーん、あとはこのまま時化が収まってくれるのを待つばかりですねぇ…」 ……… … ザラ「……それから救難ヘリが来て乗組員を助けた後も、ポーラは数時間貨物船を曳航したままでその海域に留まったのよ」 フィウメ「それから曳船がやって来て曳航を代わったんですが、後でその事を聞いた海運会社の社長さんが「無事に船とクルーを救ってくれたお礼に、何でも好きなものを寄付したい」って言って…」 ゴリツィア「それでポーラは「それじゃ〜あ、鎮守府の食卓を豊かにするためにワインを寄付してくれませんか〜?」って…」 ポーラ「そうなんですよぉ……でもポーラはぁ、せいぜい数ケースだろうと思っていたんですけれどぉ、届いてみたらなかなかのワインがここのセラー一杯になるくらいあって…えへへぇ♪」 ザラ「なんでも向こうのエライ人いわく「船員と船を救ってもらったお礼がワインなら安いものだ」だって……額が額だけに、海軍最高司令部にはああだこうだ言われたけれど「艦娘」個人への寄付は認められているからって押し通したのよ」 提督「なるほど……でも確か前に聞いたときは「とある社長さんが乗っているクルーズ船を救助した」って言っていたような…」 フィウメ「くすくすっ。まぁ、このエピソードは話すたびに設定が変わるんですよ…特にお酒を飲んでいる時は♪」 提督「それじゃあきっとすごい尾ひれが付いているに違いないわね……まぁ、よくあることだけれど♪」 ザラ「ふふふっ♪」 ポーラ「えへへぇ…♪」 提督「面白い話を聞かせてもらったわね……それじゃあ、お休み」 ザラ「お休みなさい」 …翌日… 提督「さてと…それじゃあ、あの嵐でここの庭先がどうなったか確認しないと。それに海面の流木なんかは回収しないと出撃に差し障るし……」 アッチアイーオ「ええ…とにかくあの様子じゃあ無茶苦茶になっているに違いないわ」 提督「そうね、まずは様子を確かめて…それから片付けが必要なら皆にも手伝ってもらいましょう」 …軍用ブーツに濃緑色の作業つなぎを着て、胸ポケットにセーム革の手袋を押し込んだ「作業スタイル」の提督……アッチアイーオも青みがかった黒色のウェットスーツ風の「艤装」をまとい、足元を丈夫な革長靴で固めている… デルフィーノ「私も手伝いますよ、提督っ」イルカらしい濃灰色と淡灰色のツートンカラーでまとめられたボディスーツを着て、しなやかで長い濃灰色の髪をポニーテールに結い上げている… 提督「ええ。頼りにしているわよ、二人とも♪」 デルフィーノ「はいっ♪」 アッチアイーオ「ええ、任せておきなさい」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/773
774: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/06/22(火) 03:26:31.42 ID:R14M7mbl0 …鎮守府・庭… アッチアイーオ「……だいぶ荒れたみたいね」 提督「そうねぇ、これでもここは波が穏やかな場所なわけだし…そう考えると昨日の時化は相当だったのね」 …鎮守府が面している海は数キロほど離れた西側の岬と、鎮守府のレーダーが据えてある東側の小さな岬に挟まれた緩やかな三日月型の湾になっていて、内湾ほどとは言わないまでも波穏やかなはずだった……が、浜や西側の波止場周りにはかなりの漂着物が流れ着き、あるいは波打ち際に漂って寄せ波に洗われている… デルフィーノ「とにかくこれじゃあ浜辺でのんびりも出来ないです」 提督「その通りね…アッチアイーオ、手が空いている娘がいたら呼んできてもらえる? それと来る時は「必ず丈夫な手袋と靴で来ること」って」 アッチアイーオ「了解」青みがかった艶のある黒髪をなびかせて駆けだしていった… 提督「さぁて、それじゃあ出来るものから片付けていきましょうか♪」 デルフィーノ「はい♪」 …数分後… ドリア「あらまぁ、これはまたずいぶんと色々なものが打ち寄せられたものですね?」 デュイリオ「全くですねぇ…庭の花木もずいぶんと風に痛めつけられたようですし」 カラス「アー…」 …肩に革の当てが付いているベージュ色のセーターを着て、そこにペットのカラスを止まらせているデュイリオ……一応脚には紐が付けられているが、デュイリオのカラスは賢いため、飼い主であるデュイリオの頬に顔を寄せたり羽ばたいてみたりする程度で大人しくしている… アラジ「さぁ、どんどん片付けちゃおうよ♪」中型潜アデュア級の「アラジ」は出撃55回とイタリア潜一の出撃数を誇ることからとても活発で、数分とてじっとしてはいられないほどの性格をしている……提督たちの傍に駆け寄ってくると、さっそく流れ着いた流木を動かそうとしたり漁網の切れ端を引き上げたりしている… シーレ「そうね、とっとと片付けないと」 …吸着機雷を敵艦船の船底に取り付ける水中工作用スクーター「人間魚雷」こと「SLC(マイアーレ)」を使ったコマンド作戦で幾度も大戦果を挙げたアデュア級の殊勲艦「シーレ」…そのシーレが同じくSLC搭載潜となっていたアデュア級の「ゴンダル」やペルラ(真珠)級中型潜の「イリデ(虹・アヤメ)」「アンブラ(琥珀)」たちと一緒にやって来て、さっそく腰の左右と背中側に付けたSLC格納筒…のような形をした小物入れからペンチやら大ぶりのカッターナイフやらを取り出した… ライモン「提督、遅くなりました…!」 提督「あら、ライモン……さっきまで当直だったでしょうに、休まなくていいの?」 ライモン「はい。なにしろレーダー画面の写っているディスプレイをずっと見ていた後ですから…外で身体を動かしたい気分なんです」 提督「ありがとう、一緒に頑張りましょうか……それじゃあこれからモーターランチを出して波止場周りの漂流物を回収する班と、砂浜と庭を片付ける班に分かれることにします。 …海岸の班は、足元に尖ったものが落ちていないか気をつけて作業するように!」 ……… …しばらくして… 提督「ふぅぅ……これでどうにか出撃が出来るようになったわね」 …提督を始め数人は鎮守府のモーターランチとカッターに分乗して、流木や旗付きのブイ、ゴミと海藻が絡まった漁網、空の発泡スチロール容器やポリタンク、古い浮き輪と言ったものをしゃくいあげては波止場に積みあげた……そうして二時間近く経ち、もはや腕を伸ばすのも、たも網を繰り出すのもおっくうに感じるようになった頃、ようやく鎮守府のドックに続く海面が綺麗になった… ガッビアーノ「きっと漂うものはいつかどこかに流れ着く、そういう運命(さだめ)なのだろうね……」小さい身体にしては妙に世捨て人のような雰囲気をかもし出しているガッビアーノ(カモメ)級コルヴェットの「ガッビアーノ」が、黄色い目を遠くに向けて言った… チコーニャ「ふぃー、疲れましたねぇ…提督、良かったらチョコレートでもどうですか?」一方で姉妹艦のチコーニャ(コウノトリ)はよく柳のカゴにお菓子や何かを入れて、みんなに持ってきてあげている事が多い… 提督「気持ちは嬉しいわ。 でも、全部終わってからにしましょうね」 チコーニャ「分かりました」 提督「よろしい。それじゃあ分別の方も頑張りましょう♪」流木などの自然物とブイやポリ容器といった人工物は分別して、後で軍のトラックが回収しにくるまでゴミ置き場に置いておく… チコーニャ「了解です」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/774
775: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/06/28(月) 01:57:17.25 ID:2diIYsi60 …しばらくして・食堂… 提督「それにしても、あの流木は結構な量よね……一回で回収しきれるかしら?」 カヴール「ああ、そのことでしたらご心配には及びませんよ」 提督「?」 ディアナ「……ここに漂着したもののうち、プラスチック容器のような人工物は軍のトラックに回収してもらいますが、流木はよく乾かして冬場の暖炉や、外にある直火用グリルの焚き付けに使うのでございます」 提督「そう言えばここには暖炉があったわね…」 …食堂の北側の壁にはレンガ造りの暖炉がしつらえられていて良い雰囲気をかもし出していたが、春に着任した提督はまだ火が燃えている様子を見たことがない… ドリア「ええ。秋から冬にかけてはそこで焼き栗をしたり…あるいはアルミホイルに包んだジャガイモを灰に埋めておいて焼きジャガイモにしたりもできますよ♪」 提督「あら素敵…♪」 ライモン「それに実際問題として、どうしても冬場は冷えますから…ここはいいところですが、唯一暖房の効きに関してはあまり良くありませんので」 提督「うーん……まぁこれだけの歴史的建物となると、そのあたりはどうしてもね…」 …鎮守府の暖房は各部屋にグリルのような「ラジエーター」の付いているセントラルヒーティング式であることだけは知っていたが、実際のところはまだ経験のない提督……とはいえライモンの意見にうなずいている艦娘たちを見れば、おおよその想像はついた… チェザーレ「うむ。 ここの暖房は古代ローマと同じ方式でな、裏手に湧いている例の温泉から冷める前の湯や蒸気から暖気を取って循環させているのだ……おかげでいくら動かしておこうが一チェンテージモもかからぬ」 (※チェンテージモ…リラの下にある通貨単位で、日本で言う「銭」にあたる。複数形はチェンテージミ) 提督「言われてみれば施設の書類にそうあったわね…」 ドリア「ただ、ここの源泉は割とぬるいものですから、その熱だけではそこまで暖かくないのが欠点でして……私のような老嬢には堪えます」そう冗談めかすと、口元に手を当ててころころと笑った… 提督「またまた…こんなに張りのあるお婆ちゃんがいてたまるものですか♪」つん…っ♪ ドリア「あんっ…もう提督ったら、おいたが過ぎますよ?」 提督「ふふ、ごめんなさい…♪」 アッチアイーオ「でも、冬場の事を考えるともう少し暖かい寝具が欲しいところね……今度布団でも買おうかしら」 提督「あら、私と一緒に寝るのじゃだめ?」 アッチアイーオ「な、なに言ってるのよ…///」 デュイリオ「そうですよ、提督…それじゃあわたくしがお邪魔できないではありませんか♪」 提督「ふふっ、それもそうね…♪」 アッチアイーオ「はいはい、色ボケ同士で仲良くやってちょうだい…」 デュイリオ「あら、色ボケだなんて……わたくしは単に身体を持て余しているだ…け♪」 アッチアイーオ「だーかーら、そういうのが色ボケだって言ってるのよ!」 デュイリオ「あらあら、アッチアイーオったら怒っても可愛いですわね…♪」大柄なデュイリオはアッチアイーオを抱きしめ、胸元に顔を埋めさせて頭を撫でた… 提督「それにしても秋、ねぇ……美味しいものが増える時季よね」 ドリア「そうですね」 提督「…シルヴィアおばさまは、今年も「あれ」を送ってきてくれるかしら……」 ライモン「提督「あれ」ってなんですか?」 提督「え、あぁ…いいのいいの、気にしないで」 ライモン「はい、提督がそうおっしゃるのなら……」 提督「ええ……みんなのことを考えて、今年は多めに送ってくれるよう頼んでおいた方がいいわね…」 ライモン「?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/775
776: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/07/02(金) 02:26:31.37 ID:8wx2Ryv00 …昼下がり… 提督「さてと、それじゃあシルヴィアおばさまに電話しておこうかしら……」携帯電話を取りだして実家の番号をダイヤルすると、耳元に「ルルルル…ッ」と呼び出し音が響く… …同時刻・クラウディアの寝室… シルヴィア「ん、あむっ…ん、ふ……♪」 クラウディア「あ……んぅっ……んちゅっ…♪」 …窓から爽やかな秋風がさあっと室内を通り抜けていく中、ベッドで甘い接吻を交わしているクラウディアとシルヴィア……クラウディアは白くて豊かな身体に良く似合う、黒いレースに紅の花模様をあしらった下着姿で、表から帰ってきたばかりのように見えるシルヴィアは、クリーム色のタートルネックセーターと茶色のズボンで、刈り取った雑草と土の匂いをさせている… クラウディア「ちゅ、あむっ……ん、電話?」 シルヴィア「ぷは…そうみたいね。私が出るわ……」 クラウディア「いいじゃない、電話なんて放っておけば…ね?」一階の廊下で鳴り響いている電話に出ようとベッドから降りたシルヴィアの後ろから腰にしがみつき、甘えたような声をあげる… シルヴィア「私だってそうしたいけど、何度もかかって来る方が興ざめでしょう……すぐ済ませてくるから」 クラウディア「もう、分かったわよ…それと戻ってくるときには、ちゃんと着替えてきてね?」 シルヴィア「いきなり「キスしたい」って言ってベッドに連れ込んだのは貴女でしょうが…」かすかな苦笑いを浮かべつつ一階に降りると、受話器を取った…… シルヴィア「もしもし、カンピオーニですが……あぁ、フランカ。 相変わらず元気そうね…」壁に斜めにもたれかかるようにして、提督の声を聞く… シルヴィア「そう、それはよかったわ…それで、どうしたの? …え、ああ……もちろん今年も送るつもりよ。 ええ「艦娘」の娘たちがたくさんいるのは分かっているから、今年は多めにしてあげるわ……」 クラウディアの声「……シルヴィア、いったい誰だったの?」 シルヴィア「フランカよ、クラウディア。 …ええ、クラウディアも相変わらずよ……いま降りてきたわ」 クラウディア「ねぇシルヴィア、フランカからの電話ですって?」下着の上にあっさりしたガウンだけ羽織って、いそいそと階段を降りてきた…… シルヴィア「ええ、可愛いフランカからよ……いま代わるわ」 クラウディア「…チャオ、フランカ♪ ええ、私よ…元気にしているかしら? そう、良かったわね……鎮守府の娘たちも変わりはない?」胸元に手を当てて弾む呼吸を落ち着かせながら、提督と話をするクラウディア…… クラウディア「ああ、そうなのね。良かったわ……そうそう、そう言えばこの間ミラノでファッションショーがあって、いくつか試供品をもらったから、そっちに送るわね…鎮守府の娘たちもお洒落がしたいでしょうし。 それと去年のモードだけれど、秋冬物の服なんかもついでにね♪」 クラウディア「え…いいのいいの♪ 艦娘の娘たちはきっといつもは灰色ばっかりでしょうから、たまにはお洒落を楽しませてあげて?」 クラウディア「ええ、貴女もね……それじゃあシルヴィアに代わるわ♪」電話越しにキスの音を送ると、シルヴィアに受話器を渡した… シルヴィア「それじゃあそういうわけで、今度の週末には送れると思うから…ええ、またね」さっぱりした言い方ながら、愛情を込めて通話を終えた… クラウディア「相変わらずそうで何よりね♪」 シルヴィア「そうね……それと、今年は「あれ」を多めに送って欲しいって」 クラウディア「あら、いいじゃない…我が家の秋の風物詩だものね♪」 シルヴィア「ええ……」そう言うとクラウディアの腰に手を回しつつ、親指であごを持ち上げて顔を軽く上向かせる… クラウディア「あ…っ///」土と草の素朴な匂いに交じって、ふっと爽やかな香水の香りが鼻腔をくすぐった… シルヴィア「……続きをしましょうか」 クラウディア「…ん♪」 シルヴィア「それじゃあベッドに行くとしましょう……せーの!」かけ声をかけると反動を付け、ひょいとクラウディアを抱きかかえた… クラウディア「ひゃあん…っ♪」 シルヴィア「ちょっと、そんなに暴れないで……落っことしちゃう」 クラウディア「ええ、分かったわ…///」そのままシルヴィアのうなじに手を回し、下からシルヴィアの整った顔を見つめる… シルヴィア「……よろしい」ぷるっとしたクラウディアの唇に口づけすると、足元を確かめながら階段を上っていった…… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/776
777: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/07/05(月) 02:08:23.59 ID:+epZ4/2X0 …数日後… 提督「ふわぁぁ…いいお天気……」 …執務室で雑多な書類を片付けると軽く伸びをして、窓際に歩み寄って外を眺めた提督……冷涼な秋風が鎮守府を吹き抜け、暖かい日差しとほどよく交じりあう…海は波もなく穏やかで、真夏のような目に痛いほどの輝きはないが、きらきらときらめいている……と、デルフィーノが入口から顔を出した… デルフィーノ「提督、正門に宅配業者の方が来ましたよ」 提督「了解…今行くわ」 デルフィーノ「はい」 …鎮守府・正門… 提督「どうもご苦労様です」 宅配業者「どうも…えーと、荷物はこれですね。あて名に間違いがないようでしたら、ここにサインをお願いします」 提督「あて名は…大丈夫ですね。はい、どうぞ」 宅配業者「ありがとうございました♪」帽子に手を当てて軽く会釈をするとイヴェコのトラックに乗り込み、正門前の広い部分でUターンさせて走り去った… 提督「さてさて、この大きな箱は冷蔵品みたいね…と言うことは……♪」冷蔵扱いになっているのは人の一人くらいは簡単に入りそうな大きな木箱で、差出人が実家の「シルヴィアおばさま」になっているのを見て笑みを浮かべた… ガリレオ「あら、ずいぶんと嬉しそうね?」当直にあたっていたガリレオと、その弟子であるトリチェリが台車を用意する… 提督「ふふーん…まぁね♪」 トリチェリ「何が届いたんですか、提督?」 提督「すぐに教えてあげるわ……さ、運びましょうか」他にも鎮守府のみんなが頼んだものなどを積んで、ゴロゴロと台車を押していく提督たち…そしてルチアも尻尾を振りながら横についてくる… …食堂の外… 提督「さてと、それじゃあこれを運び入れないとね……いい?」 トリチェリ「もちろんです♪」 ガリレオ「当然♪」 ディアナ「こちらも受け取りの準備は整っておりますよ」庭へと出るドアを兼ねた食堂の大きな窓を開け放っている… 提督「それじゃあ行くわよ、せーの…っ!」いそいそと箱に近づくと膝を屈め、力を込めて持ち上げようとする提督……が、重い箱はびくともしそうにない… ガリレオ「もう、提督ったら珍しくせっかちじゃない……ほら、私とトリチェリで運んであげるから♪」 トリチェリ「そうですよ…さ、先生♪」 ガリレオ「ええ、そっちは頼むわね…そーれっ♪」大きくかさばるので二人がかりで持ち上げているが、いともたやすく箱を運び入れた… 提督「はぁ、ふぅ……さすが艦娘ね…私なんて腕が抜けそうだったのに……」 ディアナ「…ところで、こんなに大きな箱ですが…中身はいったい何でしょうか?」 デルフィーノ「私も気になります♪」 提督「ふふーん、よくぞ聞いてくれました……デルフィーノ、ルチアを抑えておいてね♪」そう言うと木箱のふたにバールを差し込み「えい!」とこじ開けた… ガリレオ「これはこれは……すごいわね♪」 トリチェリ「わぁ…♪」 ディアナ「まぁ…」 デルフィーノ「もう、早く私にも教えて下さいよぅ♪」首輪に付けているリード(綱)をつかんでルチアを押さえながら、首を伸ばして箱の中身を見ようとするデルフィーノ… ルチア「ワフッ、ワンワンッ…!」一方デルフィーノに押さえられているものの、尻尾を振りながら箱に近づこうとするルチア… 提督「…ふふ。毎年秋になるとおばさまが送ってくれるのだけれど、今年から鎮守府に着任したわけだから「みんなの分も送って欲しい」って頼んでおいたの♪」 デルフィーノ「ですから何をです?」 提督「それはね…じゃーん♪」箱の中から取りだしたのは大きな肉の塊で、濃い赤身と外側の白い脂身が綺麗に分かれている…… ロモロ「お肉ね!」 レモ「わぁ…美味しそう♪」くつろいでいた「ロモロ」と「レモ」も目を輝かせてやって来た… 提督「毎年秋になると、おばさまは散弾銃を持ってイノシシ猟をするのだけれど…そのお肉ね」ビニールがかけてあるイノシシの腿肉を、軽く平手で叩いた… ディアナ「それにしても相当な量でございますね……おおよそ一頭分くらいでしょうか?」 提督「そのくらいはあるはずだから、しばらくはうんと楽しめるわよ。 …もちろんルチア、あなたもね♪」 ルチア「ワンッ!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/777
778: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2021/07/10(土) 03:42:19.82 ID:USquDalD0 …翌日・厨房… 提督「さて、それじゃあどう調理しようかしら?」 ディアナ「部位によって調理法を変えるのがよろしいかと存じますが……それと、今日はどの部分を使うことに致しましょうか?」 提督「そうねぇ…やっぱりあばら肉か腿肉かしら。 固い部分は今日からゆっくり煮込んで、明日以降に食べればいいし、レバーなんかは香味野菜と一緒に調理して、レバーペーストにすればパンのお供に出来るものね」 エリトレア「それはいい考えですねぇ♪」 提督「でしょう? …と言うわけで、まずは「ローストで香ばしく」なんてどうかしら?」 ディアナ「それはよろしゅうございますね…♪」 提督「良かった♪ そうと決まれば、必要なものを用意しないと……」 ディアナ「何を用意すればよろしいでしょうか?」 提督「シンプルなローストとなれば、まずはいい塩だけれど…確か岩塩があったはずよね?」 ディアナ「はい、ございます」 提督「なら塩は大丈夫ね……ローズマリーとオレガノは?」 ディアナ「乾燥ものが少々」 提督「それで充分よ…黒胡椒」 エリトレア「ありますよ♪」胡椒は粒のものを買い、必要な分だけ食料庫から取り出してきては、そのつどオリーヴの木で出来たペッパーミルで挽くようにしている… 提督「ニンニク」 エリトレア「それもあります」 提督「よろしい。あとは付け合わせに茸のソテーでも添えれば充分素敵なご馳走になるけれど……在庫はあったかしら?」 ディアナ「いえ、茸は数日前に使い切ってしまいましたので…」 提督「そう言えばそうだったわね……」 リットリオ「だったら私が買いに行きますよ…提督っ♪」ひょいと顔をのぞかせたリットリオは可愛らしい秋めいた色あいのスカーフとブラウス、それにひらりと広がった朽葉色のスカートをまとい、ウェーブがかかった髪を後頭部で巻き髪スタイルにしている… 提督「リットリオが買ってきてくれるなら助かるわ……ちょっと待ってて」 …そう言うと鉛筆を取り、厨房に置いてある「メモ用紙」(たいていは期限切れの回覧文書や前日の天気予報をプリントアウトした紙、広告の裏紙などを適当な大きさに切りそろえたもの)にさらさらと買い物のリストを書いた… 提督「…それじゃあお願いね。お金は後で渡すわ」 リットリオ「はいっ♪ ヴェネト、ローマ、良かったら一緒にお買い物に行きませんか?」 ヴェネト「わぁ、嬉しいです♪」 ローマ「私もいいんですか、リットリオお姉様?」 リットリオ「もちろんですよ、だって二人とも私の妹ですし…♪」パチリとウィンクをすると「チンクエチェント(二代目・フィアット500)」のキーが付いているキーリングを人差し指に引っかけてくるくると回した… 提督「気をつけて行ってらっしゃいね?」 リットリオ「もう、大丈夫ですよ…それじゃあ行ってきます♪」二人の妹を連れて真っ赤なフィアットに乗ると、ギアレバーの隣にあるチンクエチェント独特の「エンジン始動レバー」を引いてエンジンを回し、空冷エンジン独特のバタバタいう音を残し「近くの町」に向けて車を走らせていった… 提督「それじゃあこちらはその間に、下ごしらえと行きましょうか…!」服の袖をまくるとよく研がれた大ぶりの包丁を持ち、大きなあばら肉を解体するべく構えた… ディアナ「では、僭越ながらわたくしも手伝わせていただきます」 エリトレア「私もですよっ」 提督「それじゃあ左右を押さえておいてね……ふんっ!」包丁の背に片手をあてがいつつあばら肉の骨と骨の間に刃を入れると、ぐっと引き切っていく…良く研いでいる包丁だけあってすっと刃が入っていくが、さすがに野山を駆けまわっていた猪の肉だけあって、いつもよりは力がいる… エリトレア「わぁ、さすが提督…見事に切れましたねっ♪」 提督「ふふーん…これでもおばさまに多少は教わったんだもの、これくらいは出来ないとね。 …さ、それじゃあ味を付けていきましょうか♪」 ディアナ「よしなに…♪」専用のヤスリで岩塩を削り、胡椒はペッパーミルで粗挽きにする…それにオレガノ、ローズマリーを合わせたものを手に取り、ひんやりと冷たい肉の表面にすり込んでいく… 提督「これが意外と重労働なのよね……ふぅ」大きな肉の塊を相手に、少々汗ばんでいる提督…一つ息をつくと、肉の脂や塩のついていない腕の真ん中辺りで額を拭った…… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/778
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