【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 5冊目 (775レス)
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716: [sage saga] 2016/12/01(木)01:05 ID:qO1WsCuS(1/43) AAS
〜紫の嫁入り 中編〜
散鶴の涙に大きく自分の心を揺さぶられながらも、夕乃はそれでも
懸命になって、なんとか妹を説得しようと試みた。
だが、どう考えても今すぐに散鶴を説得できる力を持った言葉や
想いが中々浮かばない。
省7
717: [sage saga] 2016/12/01(木)01:06 ID:qO1WsCuS(2/43) AAS
内気で人見知りの妹。
まだ物事の分別がつかないけど、あの子は自分によく似ていてどこか
危ういくらいにまで思い込む癖がある。
これは散鶴自身の純粋さの裏返しともとれるし、同時に一番の弱点でもある
だから自分と異なる他人と打ち解けられない。打ち解けられないけど、
省8
718: [sage saga] 2016/12/01(木)01:06 ID:qO1WsCuS(3/43) AAS
「ちーちゃんは私よりも真九郎さんを幸せにしたい?」
「...うん」
「そっか。真九郎さん、優しいもんね。独り占めしたいよね?」
「...うん...」
「でもね、ちーちゃん。それはお姉ちゃんも紫ちゃんも同じなんだよ」
省7
719: [sage saga] 2016/12/01(木)01:07 ID:qO1WsCuS(4/43) AAS
「ちーちゃん。ちーちゃんは何が怖いの?」
「紫ちゃん」
「どうして?」
「だって...乱暴だし、いつも偉そうで...上から目線でイヤなんだもん...」
「でも、でも...おにーちゃんはそんな紫ちゃんが私より好きで...」
省6
720: [sage saga] 2016/12/01(木)01:07 ID:qO1WsCuS(5/43) AAS
その上、自分と同じ歳くらいで大人のように振る舞い、自分の全ての
何段階も上を行く紫が、真九郎が夕乃を愛するのと同じ次元で互いの将来を
誓うという事実をどうしても散鶴は認められない。認めたくなかった。
だって、それを認めてしまえば...自分は一生紫や夕乃のおこぼれに
あずかりながら、指をくわえて真九郎の側にいることしか出来なくなると
省8
721: [sage saga] 2016/12/01(木)01:07 ID:qO1WsCuS(6/43) AAS
そう、崩月夕乃は最初から自分が真九郎に最も相応しいと思っている。
好きな男を自分の手元に縛り付ける為にはなんだってする。
流石に大切な家族を犠牲には絶対させないが、それ以外のことなら
真九郎を自分の側から離さない為なら何だってする覚悟がある。
真九郎が望むなら、七面倒くさい表と裏の利権が絡み合う紫と自分との
省10
722: [sage saga] 2016/12/01(木)01:08 ID:qO1WsCuS(7/43) AAS
「散鶴。真九郎さんの側にいたければ崩月の修行をちゃんとしなさい」
「いつまでも弱虫の貴女には何も魅力なんか生まれっこありません」
「修行したら、おにーちゃんは私のこと好きになってくれる?」
「もうとっくに真九郎さんはちーちゃんのこと、大好きになってますよ」
「そっか...えへへ」
省14
723: [sage saga] 2016/12/01(木)01:08 ID:qO1WsCuS(8/43) AAS
午後八時
一方、九鳳院紫は騒ぎを聞きつけた闇絵と環の取りなしによって
一旦二人が落ち着くまで、それぞれ預かるという形で引き離されていた。
紫は闇絵、真九郎は環。
「ううう...真九郎のバカ、大馬鹿ものぉ...」
ポロポロと涙を流しながら、闇絵に抱きしめられた紫はぼんやりと
省10
724: [sage saga] 2016/12/01(木)01:08 ID:qO1WsCuS(9/43) AAS
崩月夕乃。
かつて飛行機事故で家族を失った真九郎を自分が生まれる前から
8年もの間、ずっと真九郎と寝食を共にし、絆を育んでいた女。
そして、その崩月の力に紫は何度も窮地を助けられてきた。
だから、婉曲な見方をすれば紫は夕乃に恩を受けていることになる。
その夕乃こそが、今回の紫が我を忘れて取り乱すような事態を
省2
725: [sage saga] 2016/12/01(木)01:09 ID:qO1WsCuS(10/43) AAS
九鳳院紫は紅真九郎を愛している。
それは生を受けたときから、光当たることなく一生を終える宿命の紫に
生きることの素晴らしさや、自分では抗うことの出来なかった運命を
意図も容易く、我が身を省みることなくぶち壊してくれたただ一人の
男だからだ。
省7
726: [sage saga] 2016/12/01(木)01:10 ID:qO1WsCuS(11/43) AAS
理由は分かっている。
真九郎ほどいい男は他にいない。
自分の他にも彼と一緒に添い遂げたいと願う女が沢山いることも
理解している。
夕乃、銀子、切彦...環と闇絵はまぁ、アレだが。
省9
727: [sage saga] 2016/12/01(木)01:10 ID:qO1WsCuS(12/43) AAS
「少女よ。君は...恋は素晴らしいと話していただろう?」
いつまでも泣き続ける紫を見かねたのか、闇絵は少しだけ紫の中にある
懊悩を解きほぐしてやろうかと思い、その腰を少し上げた。
紫も、その鷹揚な態度にいつもの自分を若干取り戻したのか、
どうしても晴れない自分の心のもやもやを少しずつ打ち明け始めた。
省9
728: [sage saga] 2016/12/01(木)01:11 ID:qO1WsCuS(13/43) AAS
「どうしてだ!!なぜ、闇絵はそんなことを言える?」
「君の倍ほど生きていれば、いくらでもそういうことは言えるさ」
「楽もあれば苦もある。山もあれば谷もある」
「君も少年も、今が一つの山場といえるな」
「歩け。考えろ。そうして答えをいくつも出して人は前に歩くのだ」
省5
729: [sage saga] 2016/12/01(木)01:11 ID:qO1WsCuS(14/43) AAS
家を飛び出し、電車を乗り継ぎ五月雨荘の最寄り駅に着いたのが午後八時。
「真九郎さん...」
そしてこれから紫に対し、自分の中ではっきりとさせたいことを頭の中で
整理しながら、夕乃は五月雨荘へと急いでいた。
真九郎が巻き込まれた紫のいざこざの一応の顛末を夕乃は知っている。
省6
730: [sage saga] 2016/12/01(木)01:11 ID:qO1WsCuS(15/43) AAS
真九郎はそういう物事の裏を見ないで、ただ単に紫という少女の
境遇があまりにも哀れで、助けられずにはいられないという理由で
無謀な賭けに出て、奇跡的に成功したに過ぎない。
だから夕乃は紫に九鳳院の道具としてではなく、一人の自分という
『個』としての本心とこれからどうしたいのかを見定めなければならない。
省9
731: [sage saga] 2016/12/01(木)01:12 ID:qO1WsCuS(16/43) AAS
「真九郎...戻っているのか?」
「ああ」
「そうか」
環と闇絵。
二人のそれぞれの助言を得た紫と真九郎は部屋に戻り、どちらが
省3
732: [sage saga] 2016/12/01(木)01:12 ID:qO1WsCuS(17/43) AAS
「真九郎。さっきな、散鶴から電話があったんだ」
「散鶴の奴、真九郎が自分と夕乃の男だと私に言い放ったんだ」
「うん」
「それでな、散鶴は真九郎が夕乃に愛の告白をした」
「崩月の家の人間はそれを祝福したとも言っていた」
省5
733: [sage saga] 2016/12/01(木)01:13 ID:qO1WsCuS(18/43) AAS
「ああ。勿論だ」
「ふふ、信じるとも。真九郎は私に嘘をついた事は一度も無いんだからな」
「聞かせてくれ、真九郎。夕乃をどうして選んだのかを...」
「...俺は、ずっと悩んでた」
「最初は夕乃さんに押し倒されて、そこから体の関係でずるずるいって」
省9
734: [sage saga] 2016/12/01(木)01:13 ID:qO1WsCuS(19/43) AAS
「なぁ...紫。俺は、どうすりゃいいんだよ」
「...ごめんなぁ。真九郎。お前はそんなに私を想ってくれていたのか...」
「つくづく私は果報者だな。お前に謝るのは私の方だ。すまぬ」
「はぁ...しかし夕乃は本当に重くて面倒くさい女だな」
「そんなにガチガチに縛れば真九郎が潰れてしまうではないか」
省7
735: [sage saga] 2016/12/01(木)01:14 ID:qO1WsCuS(20/43) AAS
「真九郎。お前はまだ、私に恋をしているか?」
「ああ。ずっと恋しているし、もうとっくに惚れてるよ」
「そうかそうか。ふふん、夕乃の奴め。詰めが甘いな」
「まぁこの調子だと、真九郎にあやつも泣かされた筈だ」
「そして、真九郎が夕乃を泣かせられるたった一つの理由、それは」
省5
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