[過去ログ] 【腐女子カプ厨】巨雑6441【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net (1002レス)
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156: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)05:53 d AAS
 素面の時であったなら、多分呼んでやらなかったのだろう。今更そんな改まって、照れくさい、なんて気持ちもあったからだ。
 だがあの時の俺はあいつのことで頭がいっぱいな馬鹿だった。
 だから泣きそうな顔でそんないじらしいことを乞うてきたあいつを、愛しいなんて思ってしまって、名前くらいどれだけでも呼んでやろう、なんてことも思ってしまって――
「っ、ぎ……ぎん、とき……」
「!!土方……!」
「あっ、い、いく、いかせて、銀時っ、ぎんときっ、ぁ、ぎんっ……ぎんとき……!」
「ああ、もう、おまえ、おまえ……!」
「だめ、もうっ、ぎんとき、だめ、ぇ……」
 実際自分でも引いちまうような甘える声であいつの名前を連呼しながら、絶頂に達したのだった。
 こんなに気持ちのいい思いは、もう二度とできないのではないかと思った。
省12
157: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)05:56 d AAS
 馬鹿なやつ。とてもかわいい。
 この瞬間だけは、あいつに抱かれているのか俺が抱いてやっているのかが、分からなくなってしまう。
「あー……だめ…すげぇ、よかった……」
「んっ…」
 最後の一滴まで注ぐように腰を振ってから、万事屋の性器はずるりと俺の中から出ていった。
 あいつの形に広がったままなのだろう後ろから、出されたものが溢れてゆく。
 肩で息をする万事屋が一旦俺から身体を離し、シーツの上に座り込んだので、俺も痺れる身体をなんとか叱咤して起き上がった。
 そして胡坐をかくあいつの股間へ、顔を埋めた。
 出すものを出したばかりのあいつの性器を、舐めて綺麗にしてやるためだ。
 しかし俺の舌先は、目的の場所まで届かなかった。
省17
158: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)05:56 d AAS
「まだ時間あるから、もうちょっとだらだらしてようぜ」
「ん」
「……とろっとろ泣いてる土方くん、可愛かったなぁ……」
「……泣いてねぇ」
「いや泣いてたよ。いつになく泣いてたよ」
「目から水が垂れただけだ。泣いてねぇ」
「それを泣いてるっつーんだよ、ばか」
「んむっ」
 万事屋の太い親指が、俺の唇をむにむにと揉むようにいじくった。
 そうやって俺の口を塞いだまま、
省7
159: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)05:56 d AAS
 実際それは当たりだった。次も、その次も、そのまた次も、万事屋は酷く優しく俺を抱いた。
 それは優しかったが優しくなかった。
 少なくともそれまでの半分暴力みたいな激しい抱き方が俺に筈っと優しくて、まるで処女でも抱いているかのような優しい抱き方の方が俺にはよっぽど酷かった。
 ゆっくりじっくり時間をかけて身体と理性を溶かされて、自分が何者でもなくなったような気分にさせられて――そうしてわけも分からず泣くしかできなくなってしまう俺の頭や頬撫でながら、万事屋は本当に嬉しそうに笑うのだ。

「土方、お前はなにもしなくていーからね、全部俺がやってやるから、気持ちよくなってるだけでいいんだぜ、な、土方、お前のこと大事にさせて――」

 一方的に与えられるだけのセックスなんて、恐怖以外の何ものでもない。
 優しいあいつは俺のケツをぶっ叩くことが好きだったあいつよりも、ずっと恐ろしいサド野郎だ。

 結局俺が、
「……なぁ、そろそろこういうのにも飽きただろ?たまには前みてぇにやらねぇか?」
 と持ち掛けることができたのは、そうして抱かれるようになって1ヵ月もの時が経ってからのことだった。
省1
160: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)05:57 d AAS
 1ヵ月。俺はそれまでと変わらず暇ができればあいつと会い、ホテルになだれ込んではあいつと『優しい』セックスをした。本当はすぐにでも言ってしまいたかったし、言うべきだった。
 こういうのはあまり好きではないから、前と同じようにやって欲しいのだと。
 だがそうやって寝るようになってからのあいつはあまりにも幸せそう過ぎて、俺には中々切り出すことができなかったのだ。
 最近のあいつは昼間往来で俺と出くわした時にさえ、とろりと相好を崩すのである。
 ヤってる最中にするような顔すんな馬鹿、と罵ってやりたくとも、誰が何を聞いているかも分からない場所でそんなことを言えたわけもない。
「よう税金泥棒、奇遇だなぁ。ちょっと銀さんに奢ってみない、米俵とか米とか米とか」
 絡んでくる時の台詞だっていつも通り色気もクソもないものである筈なのに、肝心のそれを言う声がふわふわと浮ついてしまってた。
 まるで睦言を囁く声だった。俺みたいないい年こいた男を捕まえてかわいい、かわいい、と頭がいかれたような文句を繰り返す声と、おんなじだ。
「また米も食えねぇような生活送ってやがるのかよ、ダメ人間」
 俺の声も、つられて上擦ってしまってはいないだろうか。ベッドの上であいつに甘える時のような声になってしまってはいないだろうか。
省8
161: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)05:58 d AAS
 見上げた、というのは俺がベッドの上に仰向けで寝転がっていて、あいつがその上に覆い被さっていたからだ。
 いつものホテルのいつものベッドの上で、行為の真っ最中だったのである。
 例によってあいつが満足するまで必要以上に解された穴に、あいつの性器の先っぽが押し付けられた瞬間のことであった。
 言うなら言うでこんな土壇場ではなく、もっと早く言うべきだったのではないか。
 そう思わないでもなかったが、待ち合わせ場所で合流した時やホテルへ向かう道中、部屋に入ってからあれやこれやしている時に、とあいつともっとゆっくり話が出来そうなタイミングはことごとく逃してしまっていたのだから仕方がない。
 挿れられてしまったらどうせ俺はろくな言葉を喋れなくなってしまうのだし、この挿入直前こそが最後のチャンスだと思うとどうしても言わずにはいられなかったのだ。
「……確かにそういうの好きだったけど。え、なに……なに土方くん、お前までああいうの好きになっちゃった?自分からヤろうって言うほど?」
「別に……ああいうのが特別好きってこっちゃあ、ないんだが」
 嘘だ。正直好きだ。
 他の奴とだなんて死んでもごめんだが、万事屋とするああいうのは普通に好きだ。
省7
162: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)05:59 d AAS
 そんな不安を覚えてしまうほどに、俺を見下ろす万事屋の両目は必死だった。
 セックスの最中に見慣れた必死さではない。
 小さな子供が愛情を乞うてくるような、どこか痛々しい必死さだったのである。
「……、」
 そうだな、確かになんも問題ねぇな、今のまんまでいい、今日もせいぜい『優しく』俺を抱けばいい、好きにしろよ、万事屋――なんてことを一瞬、本当に言ってしまいそうになったのだが、すんでのところで飲み込んだ。
 やっぱり俺には怖かったのだ。
 一方的に俺だけが溶かされてゆくようなセックスも、あいつとの距離感がおかしなことになってゆくことも。
「だってお前……こういうのはなんか、違うだろ」
 これ以上変にあいつにのめり込んでしまいそうになることが、俺にはどうしても怖かったのだ。
「は?」
省11
163: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:00 d AAS
 そしてあいつは、俺が恥ずかしいと思う間もなく、
「〜〜っ!?」
 腰から下を中途半端に浮かされた身体を斜め上から串刺しにするように、猛った性器を一息に根元まで突き入れてきたのだった。
「あ、ゃ、あ゛……あ゛、ぁ……!」
 それはこの1ヵ月間、優しくあやされるように抱かれ続けてきた俺には過ぎた刺激であった。
 信じられないことに、挿れられただけでイってしまったのである。
 胸にぶちまけてしまった精液を塗りこめるように俺の乳首を弄りながら、万事屋は皮肉気に口の端を釣り上げた。
「そんなによかった?」
「は……ぇ……?」
「お前、すげぇ気持ち良くてたまりません、って顔してる。みっともねぇよ」
省12
164: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:00 d AAS
 するとあいつは恐らく無意識に、それから逃れようとでもするかのようにちょっとだけ、腰を引くのだ。
 そしてまた、引いた分だけずん、と小刻みに奥を突いてくる。
 そんなことを何度も繰り返されてしまえばたまらない。
 口からは濁点交じりの聞き苦しい嬌声が漏れて止まらず、馬鹿になってゆく体ははしたなく大股に足を開いたまま、ただ甘く痺れていた。
 勃起した性器が先走りを垂らしながらみっともなく揺れる様を、見せつけようとでもするように。
 我がことながら大した淫売だ。そんな俺を、あいつはどんな顔で見ていたのだろうか。
 1ヵ月より前のあいつだったなら、満足げに口の端を釣り上げていたに違いない。
 でもあの時のあいつはきっと、そんな顔をしちゃいなかった。
 両目に張られた厚い涙の膜のせいですっかり視界が滲んでしまい、あいつの表情を確認することはできなかったが――だが、
「馬っ鹿……おめー、ほんと馬鹿っ……こんな、やらしく、なっちまって……!」
省10
165: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:01 d AAS
「あ」
 そしてぎんっぎんに勃起していた筈のあいつの性器は急にしゅんと縮こまり、ずるりと俺の中から出ていってしまったのだった。  たまらず俺は、声を荒げた。
「馬鹿てめー俺ァまだイき足りてねぇぞ!なに萎えさせてんだ馬鹿!」
「ば、馬鹿お前、ダメ!そういう慎みのないこと言っちゃダメです!!」
「いい年こいた男に慎みもクソもあるか!」
「そりゃそうだけど、そうなんだけどぉぉぉぉ」
 そうして益々ぐりぐりと頭を振る万事屋はとくれば、まるきり聞き分けのない駄々っ子なのである。
 いい年こいてるのはてめーも同じだろうが、何してんだてめーはよ。
 そう声にして呟くのも億劫だったので、代わりに俺はさっきからこっしょこしょと人の胸をくすぐってくる無作法な天パを雑に撫でてやった。
「なに。お前結局なんなの。俺をどうしてーんだよ、わけ分かんねぇ」
省5
166: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:02 d AAS
「なんか俺に……なんていうの、人にあんま見せるようなもんじゃないとこ?弱みになっちまうようなもん?見せてくれたみたいで。
 それにお前、俺がどんなことしてもほぼほぼ全部受け入れてくれたじゃねぇか。口では文句ばっか垂れてたけど。そういのも、俺ァ、嬉しかったなぁ……」
 ぼそぼそと呟きながら万事屋は目を逸らし、しまいにはまた俺の胸に顔を埋めて隠してしまう。そのまま殆ど聞こえないような声で
「まあ俺も性癖が性癖だから、そういうの関係なしに楽しんでたところもあったんだけど」
 と呟いていたような気もしたが、聞かなかったことにしてやった。
 あいつの頭を撫でてやる手が余計に乱暴になってしまうのを止めることはできなかったが。
 残念な天パはもはや爆発したようになっている。
「なのに……なのになんで今更、おめーのこと大事にしてやりたくてたまらなくなっちまったかなぁ」
「万事屋……?」
「……こんなに好きになるなんて、思ってなかったんだよなぁ」
省9
167: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:03 d AAS
 嬉しいだなんてことを、思ってしまっていた、ようなのだ。
「……万事屋……」
 どうしよう。
 どうしよう。
 どう、しよう。
「お前に散々っぱら変態行為働いてきたこと、すげぇ後悔しちまってるし、お前にろくでもねぇことばっか仕込んで……お前を風呂屋の姉ちゃん顔負けのとんでもねぇ淫乱にしちまったのが俺なんだと思うと、なんかちょっと死にてぇって思う。
やり直せるなら最初からやり直してぇよ。最初からお前のこと、もっと大事に大事に抱いてやりたかった。他人にこんな、ここまでずっぷりはまっちまうほど惚れたことなんて、ねぇから俺は……
やり方が、よく分かってなかった。いい年こいてこれだぜ、笑えてくるわ。いや笑えねーか、笑えねーな」
 のそりと起き上った万事屋は、万事屋らしからぬ弱々しい声で万事屋らしからぬことを呟きながら、そっと俺の頭を撫でてくる。
 その手はあまりにも、ぎこちない。俺にふり払われることを恐れてでもいたかのようだ。
省10
168: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:03 d AAS
……いや、ほんとは構いまくりなんだけどね!そんなん死ぬほど悲しいけど、でもお前がもう会ってくれなくなるより全然マシっつーか……ほんとはやだけど……」
「む、むぐぅ、うぅー!」
 しょんぼりと項垂れてしまった万事屋は、しかし俺の口を塞ぐ手の力を一切緩めようとしなかった。よっぽど俺から「別に俺はそこまでお前のこと好きじゃねーし」だとか「おうこれからもよろしく頼むわ肉ディルド」みたいな台詞を聞くのが怖かったのだろうと思う。
 冗談じゃない。誰がそんなことを言うものか。
 大体俺は、そりゃそこそこの距離を取っていたかったし、必要以上にのめり込むのもごめんではあったものの、身体だけの関係だなんて。
 そんなこと、思ったことも、なかったのに。
「ごめん土方時間ちょうだい。お前とのことちょっと、自分ん中で折り合いつける時間が必要そうだ。しばらく距離置いてみようぜ、その間に俺またお前に喜んでもらえるようなプレイも考えておくから。
恥ずかしかったり痛かったりするやつがいいんだよな、お前?……ほんとはもう、そんなことしたくねーんだけどね!」
「ぷぁっ、お、おい、万事屋!」
 ようやく俺の口を解放した万事屋は、慌ただしくベッドから滑り降りて下着を履いた。
省10
169: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:04 d AAS
 ベッドの上で思わず漏らしてしまった呟きは、誰に聞かれることもなく暖房の音に紛れて消えた。
「……、」
 現状を維持したいなら俺はあいつを追うべきではなかったし、あいつの気持ちの整理が付くまでこちらから連絡を取るべきでもなかった。
 そうすれば全てが丸く、俺が望む形に収まるのだ。適度な距離に適度な理解。
 のめり込み過ぎてはいないものの、情が全くないわけでもない、今までそうであった筈の関係に。
 だがそれは、俺ともっとどうにかなりたいのだと。
 半分泣いてるような面で告白してきたあいつの気持ちを無碍にしてまで、維持しなければならないものであるのだろうか。
 あいつにのめり込むのが怖いだなんて理由であいつを傷付けっぱなしにするくらいなら、ちょっとくらいのめり込んでしまってもよいのではないのか。
 そんな理由のせいであいつを追うこともできないのなら、そんなものなど捨ててしまってもよいのではないか――そんなことを、どうやら俺はそれなりに、本気で思ってしまっていたらしかった。
 怖いけれど。これ以上あいつとの距離が狭まり過ぎて、頭の中があいつでいっぱいになってしまうかもしれないってのは、とんでもなく恐ろしいことではあるけども。
省10
170: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:06 d AAS
 そんなこんなで、現在である。
 時刻は午後6時少しすぎ。こんな時に限って攘夷浪士どもは大人しく、接待の予定なぞも入っていない。
 近藤さんまでもが「休める時に休んでおけよ」と変に気を回してきて、夜に片付けようと思っていた書類を取り上げていってしまう始末だ。今夜の俺は、もの凄く暇なのだった。図ったように、お誂え向きに。
「……」
 今日一日、俺は何度かあいつに電話をしようと試みた。試みただけで、まだ実際に掛けられてはいなかった。
 いくらディスプレイに表示された番号を睨み付けたところで勝手に電話は繋がってくれないし、都合よくあっちから掛かってくるということもない。
 つまりあいつと話そうと思うなら、俺は俺の意志で通話ボタンを押さなければならないのだ。
 しかしこれが中々勇気がいる。上手くあいつと話すことができるのだろうか。余計に話が拗れてしまうのではないだろうか。
 胸の中を占める何とも言えない不安たちが、通話ボタンの上に乗っかった指先を鈍らせてしまっていた。
 だがいつまでもこんなことをしていても仕方がない。時間が解決してくれるようなことでもないのだ、腹を括ると決めただろう、土方十四郎。
省9
171: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:07 d AAS
「あれ、副長お出掛けですか?飲みにでも?いいなぁ、たまには俺も連れてってくださいね」
「ああ?あぁ……連れてって欲しけりゃちったぁ真面目に働けよ」
「俺はいつだって真面目ですよ。……ていうか副長、今から行くのって本当に飲み屋ですか?」
「は?」
「なんか、出入りの時みたいな顔してますけど」
「ああ……まぁ、似たようなもんだな」
「休みの時にまで無茶なことばっかせんでくださいよ」
「しねーようるせーよ」
「あいてっ」
 会いに行くしか、ないではないか。
省15
172: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:07 d AAS
 言い逃れがきかないくらいばっちりと、目が合った。その途端、反射のようにごくりと一度、喉が鳴る。
 心臓の音もうるさくて、多分頬はそこそこ赤くなっている。顔が熱いから、鏡を見なくても分かる。
 一度深く息を吸ってから、俺はあいつに向かって片手を挙げた。
 そして万事屋、と、あいつを呼――ぼうと、したのだが。
「――!?」
「あ、ちょっと銀さん!どうしたんですか急に!」
「ほっとけヨ新八、どうせトイレアル」
 あいつはひらりと身を翻し、そのまま目にも止まらぬ速さでどこぞへと走り去っていってしまったのだった。
 あまりにも豪快に、傷付いただなんて思う暇もなく、俺は避けられてしまったのである。
「あれ、土方さん?珍しいですね、こんな時間に会うなんて」
省16
173: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:08 d AAS
 なにやら慌てた様子のメガネに一瞥をくれることもなく、チャイナはずい、と俺との距離を詰めてくる。
「昨日銀ちゃんと会ってたの、オマエなんだロ」
「え?あ、ああ、まぁ……うん……?……なに、あいつわざわざ俺と会うとか言って出掛けてんの?」
「んなもんわざわざ聞かなくても分かるアル。銀ちゃん、めっちゃうきうきしてたもん。オマエと会う時はいっつもそうヨ。ダダ漏れアル」
 チャイナはやれやれと言わんばかりに肩を竦め、メガネは曖昧にははと笑った。
「いつもは帰ってきてからもふわっふわのうっきうきヨあの天パ。よっぽどオマエと会うのが楽しいんだロナ。でも昨日は死ぬほどしょんぼりして帰ってきて、今日も一日中へこんでたアル。
オマエ、とうとう銀ちゃんのことふったのか?新八もそうなんじゃないかって言ってたヨ」
「あ、い、いや土方さん、別に銀さんは何も言ってませんからね。誰が好きだとか誰と会ってるだとか、そういうの一言も言ったことないです。ダダ漏れのもろバレだから勝手にこっちが察しちゃっただけで」
「そ、そうか……そっちの方がなんかアレなようにも思うんだが……」
 というかこんな子供たちにまで察せられてしまうほどあからさまだったあいつの好意に、どうして当の俺が気付くことができなかったのか。
省7
174: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:09 d AAS
 あいつの傍にはそんな人間たちがちゃんといてくれるのだというその事実が、何故だか無性に嬉しかった。
 この気持ちはどこから来るものなのだろう――そういうことに決着をつけるためにも、俺は、
「……会いに来た。あいつに」
 俺がそう言うと、チャイナとメガネはあからさまではないものの、しかしほっと息を吐いた。
 うっかり口の端が緩んでしまいそうになるのを、唇を噛んでやり過ごす。
「でもお前ら、今日は鍋なんだろ。楽しみにしてたんじゃねぇのか」
「鴨は逃げませんよ。明日まで持ちますし」
「デモナー、デモナー、わたし今日は鍋食べる気満々だったからナー。カモがダメなら代わりにカニでもいいから食べたいナー、チラッ、チラッ」
「たかり方まであいつに習ってんのかよ、てめーは。ほら」
「キャッホー!!」
省10
175: (スプッ Sdb8-xmDs) 2016/04/08(金)06:09 d AAS
「……おう。腹いっぱい食べてこいよ」
「はい!」
「任せろアル!」
 カニを目指して駆けてゆく子供たちの背中が人混みに紛れてしまうまで見送ってから、俺も万屋への一歩を踏み出した。
 ほどなくして、俺は万事屋の玄関前へと辿り着いた。なんの障害があるわけでもなく、あまりにもあっさりと。
 横開きの戸の向こう側は、うっすらと明るいようだった。どうやらあいつはちゃんと家に帰っていたらしい。
 もしかすると適当な飲み屋にでも逃げ込んでいるのではないか、と思わないでもなかったのだが。
「……」
 インターホンを押そうかと思ったが、やっぱり止めた。
 代わりに俺は、寒さにかじかむ指先を叱咤して玄関の戸を引いた。案の定鍵はかけられていなかった。
省9
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