アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 (1000レス)
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506: カレアントの異世界戦争 2015/11/08(日)21:54 ID:rrOxNttA0(2/8) AAS
148X年6月からのべ三年とひと月に渡って戦われた<ルネリア戦争>は、多くのカレアント人にとって「出来ることなら綺麗さっぱり忘れてしまいたいくそいまいましい戦争」として記憶されている。
それはシホールアンルとの長く苦しい戦いが終わり、やっと平和な時代が来たと思ったそのとき、何の事前通告もなくいきなり異世界に召喚され、無理やり参加させられた戦争であった。
かつてのアメリカ合衆国と同じ立場に置かれたわけだが、カレアント公国にとって不幸だったのはこちらの戦争では敵国であるドルカヴ人民共和国はもちろんのこと、同盟国であるルケン民国までもがどうしようもなく下劣で不誠実で姑息だったことである。
前線で戦うカレアント軍兵士とその指揮官たちは命令に従わず、敵と遭遇すれば武器を捨てて遁走し、安全な占領地では所かまわず略奪と強姦を繰り返すルケン軍兵士を「いないほうがマシ」と評した。
カレアント公国の指導者たちは戦力が足りない、援助物資が足りない、誠意を見せろと言うくせに自分たちは同盟国としての義務を全く果たそうとしないザリコ・レッシ大統領以下のルケン民国首脳部を敵以上に憎悪した。
これは異世界に召喚されたカレアント公国がルネリア半島を舞台に行われた理不尽かつ不毛な戦争になんとか決着をつけ、もとの世界に帰還するまでの血と汗と涙で綴られた戦いの記録である。

カレアント暦1485年7月4日・ルケン民国マラリポ
『敵戦車接近!』
前進観測班からの無線連絡が入った途端、ネラ・マンストゥール中尉は飛び起きた。
ネラ中尉は27歳。
省10
507: カレアントの異世界戦争 2015/11/08(日)21:55 ID:rrOxNttA0(3/8) AAS
ドルカヴ軍が装備する戦車や大砲や小火器は、全てルネリア半島の北に位置するシーポ連邦から供与されたものなのだ。
さらに詳しく観察しようと身を乗り出すと、戦闘服の胸を押し上げる豊かな膨らみが土嚢の上で柔らかくムニュリと変形する。
むっちりと張り詰めた尻丘を浮き上がらせた戦闘服のズボンから飛び出したフワフワモコモコの尻尾が、緊張感からピンと伸びる。
敵は全部で16輌、戦車中隊と随伴歩兵による威力偵察だろうとネラは見て取った。
ネラは素早く首を振って上空に敵機の影がないことを見てとると、無線機のスイッチを入れた。
「全車行動開始、速やかに予定の射撃位置まで移動せよ」
林の中に隠れていた配下のM18戦車駆逐車4輌が一斉にエンジンを始動、偽装網を外してガトゴトと走り出す。丘を登りきる手前で停車した戦車駆逐車は砲身に俯角をかけ、稜線から砲塔だけを覗かせたダックインポジションをとる。
「全車射撃用意、徹甲弾装填。距離800で――キャアっ!?」
マイクを手にして指示を出していたところに突然体当たりを喰らい、意外とカワイイ悲鳴をあげて壕内に転げ落ちてしまうネラ。
「何するんですか少佐!?」
省21
508: カレアントの異世界戦争 2015/11/08(日)21:56 ID:rrOxNttA0(4/8) AAS
さて、ルケン・カレアント混成軍の陣地に迫るドルカヴ軍戦車隊であるが、彼らが装備しているのはシーポ連邦で開発、量産された三七式戦車である。
この戦車、カタログスペックだけならシャーマン戦車と同等だが、シーポ製兵器のポリシーとして安く、大量に作ることを優先させた設計のため、運用面での問題が多い。
搭載する48口径6ペリ(約76.5ミリ)砲は威力は十分だが砲塔は2人用で、車長が砲手を兼ねるため3人用砲塔のシャーマンに比べ発射速度で劣るうえ射撃中は周囲の監視がおろそかになる。
傾斜装甲を採用した車体は先進的だが小型化と低シルエット化にこだわり過ぎたため居住性は非常に劣悪で、長時間自走すると戦闘がなくても乗員が疲労困憊してしまう。
そんな欠点はあるものの、トータルして見れば手ごわい戦車であることに間違いない。
そんな三七式戦車が地響きを立てて接近する間に、4輌の戦車駆逐車は手際よく戦闘準備を整えていく。
車長が距離と包囲を観測し、砲手が照準を合わせ、装填手が弾庫から砲弾を取り出す。
弾頭に滑り止めキャップの付いたM62A1被帽徹甲弾が装填され、音を立てて尾栓が閉じる。
『準備完了!』
そして道路上を一列縦隊になって接近してくる敵戦車が距離800に達した。
省19
509: カレアントの異世界戦争 2015/11/08(日)21:58 ID:rrOxNttA0(5/8) AAS
もう少佐だろうがかまうものか、拳銃にモノを言わせてでも逃亡を押しとどめようと壕を出た途端、狙いすましたかのように飛来した戦車砲弾の爆発がネラを吹き飛ばす。
出ていったばかりの壕の中に背面宙返りで落下し、激しい勢いで叩きつけられたネラは全身を襲う形容し難い痛みに身悶えする。
さらに連続して至近弾が炸裂し、崩れてきた土嚢の下敷きになったネラは、遂に意識を失ってしまうのであった。
そして数時間後――
肌を刺す冷気で目が覚めた。
立ち上がったネラが周囲を見回すと、すでに日はとっぷりと暮れ、敵も味方も消え失せた暗闇の中に撃破された戦車の残り火がチロチロと不気味に揺れている。
肋骨を痛めたのか、深く呼吸をすると鈍い痛みが胸を刺す。
「そうだ、みんなは……」
痛めた足を引きずりながら、戦闘を開始した位置にそのまま留まっている4輌の戦車駆逐車のもとへとたどり着いたネラは、周囲に敵の気配がないことを確認して懐中電灯を点ける。
明りに照らし出された光景は、修羅場は充分経験したはずのネラでさえ一瞬気が遠くなるほどのものだった。
省27
510: 外パラサイト 2015/11/08(日)22:06 ID:rrOxNttA0(6/8) AAS
とりあえず投下してみました、好評だったら続きがあるかも。
外部リンク[php]:www.pixiv.net
511: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2015/11/09(月)00:10 ID:80wQOv0M0(6/6) AAS
あら!同盟国が異世界に召喚された話とは。
個人的にはこの戦争の裏話的な物を期待してたところですが……
まあこれはこれでまたいい物ですね。

しかし残念ながら、こっちは米軍スレなのでちょいと合わないですかな。
折角投稿して貰いましたが、本当に申し訳ありません。
512: 2015/11/09(月)14:37 ID:lgBbnjGU0(2/2) AAS
スレ違いなんだけどなんだけど
いつも思うが外伝はなかなかやるのう
513: 2015/11/09(月)22:37 ID:yvkC6Nw.0(1) AAS
外伝乙です

両国とも農業国とか日本が工業化した半島以下かい!37式もT-34-85より格下みたいだし・・・最高の凡作シャーマンがすごく思えてきた(笑)

色々と気に成る話なので続き期待!
514: 外パラサイト 2015/11/11(水)19:44 ID:rrOxNttA0(7/8) AAS
レスありがとうございます。
実はもう一つ思いついたネタでストーリーを作っているのですが、シーポ連邦メインの話なのでご指摘のとおりスレ違いになっちゃいますね。
そこでヨークタウン氏の許可をいただけるようでしたら、次の話を【架空の軍隊がファンタジー世界に召喚されますた】スレに投下したいと思います。
515: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2015/11/11(水)21:34 ID:d9aNrI4Q0(1/2) AAS
おお、新しいのが出来ているのですな。
いいですよ。是非見たいです。

あと・・・おまけとして米海軍の水上打撃部隊(戦艦4隻とか)も巻き添えにしてええですぞ(やめい
516: 外パラサイト 2015/11/12(木)20:55 ID:rrOxNttA0(8/8) AAS
【架空の軍隊がファンタジー世界に召喚されますた】スレに「カレアントの異世界戦争」第2話を投下しました
図々しいお願いを快諾してくれたヨークタウン氏に千の感謝を
517: 2015/11/15(日)04:06 ID:JwsydDgM0(1) AAS
インビステウ大陸にあるフリンデルト帝国やロスヴェミト島の国家って出番あるの?
まあ、どちらもシホールアンルより劣るらしいから出たとして何が出来るわけでもないだろうけど
518: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2015/11/19(木)17:45 ID:d9aNrI4Q0(2/2) AAS
モチベ崩壊しすぎてやばそう・・・
誰か別の新作おねしゃす(人間の屑
519: 2015/11/20(金)08:20 ID:9/HsxjMw0(1/4) AAS
な、なんだってー!!!(AAry

うーむ
520: 2015/12/04(金)20:32 ID:RdMeM99M0(1/21) AAS
すいません、新作じゃなく外伝ですが投下して宜しいでしょうか?
521: 2015/12/04(金)22:02 ID:RdMeM99M0(2/21) AAS
1時間以上経っても反応なし……ともあれ投下します
タイトルは『背負いもの』
久しぶりの投下になります、短いですが皆様しばしのお付き合いを
522: 『背負いもの』 2015/12/04(金)22:04 ID:RdMeM99M0(3/21) AAS
外伝『背負いもの』

レンク公国エンデルド
戦争景気に沸き立つこの港湾都市、その一角にある革製品を商う店『ムーズレイ商店』。各国の軍人たちに人気のこの店の奥にある工房で、二人の男が肩を並べてあるものを眺めていた。
閉店時間は過ぎており、店内にも工房にも彼ら以外の人の姿はない。営業中は職人たちの手によってけたたましい音とともに布地を縫い合わせていたシンガー社製のミシンも今は動きを止め、その磨き上げられた金属パーツで窓から差し込む陽光を反射している。

「で、こいつがその客が置いてった『もの』か」
「ああ、兄貴。……しかし、これが本当に軍用の背嚢なのかい? 正直言ってかなりヘンテコだ」

二人の男――この商店を経営するボズとウォルツのムーズレイ兄弟――の目の前にはカーキ色のキャンバス地で作られた奇妙なものがあった。
一枚の正方形の布地の上辺と下辺に二枚の長方形の布地が縫い合わされ、縦長の十字型を成している。さらに正方形の布地には何本ものストラップが縫い付けられており、そのうちの二本、上側の長方形の布地が縫い付けられた側にアルファベットの"V"の字を成すように縫い付けられたそれは他のものと比べて長くて幅が広く、二股になった先端にはそれぞれ金具が取り付けられている。

「アメリカ軍の軍用背嚢だな、バルランドやカレアント、ミスリアルでも使われてる」
「こいつがそうなのか……話には聞いてたが、実物をこうして見るのは初めてだな」
省1
523: 『背負いもの』 2015/12/04(金)22:06 ID:RdMeM99M0(4/21) AAS
この世界に召喚され、そして南大陸諸国とシホールアンル、マオンド両国との戦争に参戦したアメリカ合衆国はこの戦争中、同盟国の軍隊に様々な装備を大量に供与し続けた。その実情はシホールアンル帝国が自国の新聞で「南大陸の軍隊は兵士以外は全てアメリカ製」と揶揄するほどである。
この供与されたアメリカ製装備は、それまでお世辞にも優秀とはいえない装備でシホールアンル帝国軍と苦しい戦いを強いられてきた南大陸各国軍の兵士たちから大いに歓迎され、彼らの士気と戦闘能力を大きく高めるのであるが、何事にも例外は存在するとの言葉通りに全く歓迎されなかった装備も存在した。
例えば携行性には優れるもののその不味さから不評であったKレーションは南大陸各国の軍隊でもその不味さにより様々な『伝説』を残し、この世界の人々にアメリカ料理に対する偏見を植え付けることとなる。また陸軍兵士や海兵隊員から信頼を寄せられていたM1ヘルメットはカレアントの獣人たちから「アメリカの兜は頭に合わない」「耳が痛くなる」などと酷評され、この結果カレアント公国軍の技術者たちがかの女王陛下直々の命により国産ヘルメットの開発に乗り出す羽目になっていた。

そしてこのM1910ハバーサックもまた、そういった装備の一つであった。
アメリカ合衆国が第1次世界大戦に参戦した時に大量に生産されたこれは軍用背嚢としてはかなり奇妙なデザインをしている。大抵の背嚢が袋や鞄に背負うためのストラップが付いた形をしているのに対し、これは平たい布に何本かのストラップが付いた形をしているのだ。
その使い方は大雑把に言えばまず本体である正方形の布の部分の上に荷物を並べて包み、縫い付けられている固縛用ストラップで解けないようにしっかりと縛る。そしてこれを"Y"の字を成すように縫い付けられている長2本(完成時には肩ベルトとなる)短1本、合計3本の連結用ストラップ(マニュアルでは『サスペンダー』と表記されている)で銃剣や水筒を取り付けたカートリッジベルトと連結する。
最後にこうして背嚢としての体裁を整えたハバーサックに様々なもの、ブランケットキャリアーと呼ばれる野営用毛布携行用の運搬具や食器入れなどを連結すると野戦装備一式の完成となるのだが、これを身に着けて訓練や戦闘を行った兵士たちからは当然のように不平不満が噴き出している。

曰く、背嚢としては明らかに容量不足、しかも荷造りをするのが非常に面倒
曰く、固縛用ストラップがすぐに緩むせいで荷造りした荷物がぽろぽろ落ちる
曰く、ブランケットキャリアーを連結すると座れなくなる
省2
524: 『背負いもの』 2015/12/04(金)22:07 ID:RdMeM99M0(5/21) AAS
今兄弟の目の前にあるのはその欠陥品だった。
もの自体はアメリカ製、それも金具の錆び具合や布地のくたびれ具合から見てかなり前に製造したものを長期間倉庫で保管していたものらしい。使用されたのはアメリカ軍ではなくミスリアル王国軍らしく、所々に持ち主の名前が黒インクで書き込まれ、上蓋にはミスリアル王国の国章が大きくスタンプされている。
そして持ち主に支給されてからはそれなりの期間使われていたらしく、布地自体は保管に伴うしわや折り目が取れてしなやかになっているが、ほころびやかぎ裂きの類がとても少ないところを見ると、この背嚢の持ち主がこれを背負って戦った回数はさほど多くはないようだ。

「で、こいつを一晩で改造してくれってか?」
「ああ、袋型に作り直して、両側には大きめの物入れを追加。底は厚手の革で強化して、上蓋にも革を貼り付ける。他にも色々あるけど、細かいことはこいつに書いてある」

ハバーサックを両手でひねくり回し、金具や縫い目を仔細に観察するボズ。最近は店の経営や接客に専念しているため昔のように自らの手で革や布地を切ったり針や糸を扱うことはほとんどないが、やはり職人の血が騒ぐらしい。
そんな兄の問いかけに応えつつ客から受け取ったメモを渡すウォルツ、ボズはそれに目を通しながら考えをまとめ始める。

「ふむ、単体で使えるようにはしなくていいのか、それはありがたい。……上蓋はそのままにして革を……ふむ……物入れは一から作らなきゃならんな……ああそうだ、中蓋がいるな。となると上蓋もいじらんといかんか……そういえば物入れにも蓋が要るな……トグル、いやスナップボタン……」

自分の世界に入り込み、ぶつぶつと呟く兄を黙って見つめるウォルツ、彼にとっては久しぶりに見る光景だ。
525: 『背負いもの』 2015/12/04(金)22:08 ID:RdMeM99M0(6/21) AAS
(久々に兄貴の『アレ』が始まったか。昔から新商品や新しいデザインやらを考えだすとこうなっちまうんだよなぁ……とりあえず準備だけでもしておくか)

心のなかでそう独語すると、作業に必要になりそうな道具や材料を揃えるべくその場を離れるウォルツ。行き先は工房の隣にある倉庫(盗難対策のため頑丈な造りをしており、分厚い扉には複数の錠が取り付けられている)だ。
そして彼が倉庫にあった材料と道具箱を抱えて戻ってくると、そこにはしわの寄った数枚の紙切れにちびた鉛筆で一心不乱にデッサンを書きなぐる兄の姿があった。どうやらアイデアがまとまったらしい。

「ああ来たか……まずはこいつを見てくれ、本体の改造はこんな感じだ。それとこいつが物入れでこっちがその蓋だ。俺は本体の方に手をつけるからお前はまず物入れの方をを頼む。出来上がったら知らせてくれ」

早口でそう言いながら紙切れを押し付け、替わりにウォルツの持っている道具箱を半ばひったくるように受け取ると取り出したチョークでハバーサックのあちこちに線を引き始めるボズ。一方ウォルツはため息を一つつくと手渡されたメモに目を通しつつ作業台の上に布地を広げ、定規とチョークで線を引き始めた。
静まり返った工房に二人の職人の出す物音が響く。布地を切るハサミの出す音、その布地を縫い合わせるミシンの作動音、そして顔を寄せあって話す二人の声。しばらく現場から遠ざかっていたとはいえ、元々は腕の良い職人である二人が力を合わせたおかげで程なくしてハバーサックの改造は終わり、アメリカ製の出来損ないの背嚢はこの世界の職人の手によって見違えるような姿となっていた。
作業台に載った自分たちの力作を眺める二人、やがてボズが口を開く。その目にはいぶかるような色が見える。

「しかし理解できないな。なんで背嚢なのに袋型じゃないんだ? 荷物を布で包むのは分かる、だがなぜその包みをこんな妙な形で背負うようにしたんだ? だいたいストラップ3本で締め付けた程度じゃ歩いてるうちに包みが解けるのは当たり前だぞ。アメリカ人は何を考えてこんなものを軍用の背嚢にしたんだ?」
「こいつを預けた軍人さんも言ってたよ『アメリカ軍の連中と付き合いがあるんだが、彼らの考え方が未だによくわからん』って。とりあえず考え事は後にしてさっさと後片付けを済まそうや兄貴、だいぶ暗くなってきた」
省4
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