【小説版】提督「鎮守府一般公開?」 (32レス)
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16: 2022/02/24(木)23:41 ID:er2aAZLw0(1/9) AAS
続きです
17: 2022/02/24(木)23:43 ID:er2aAZLw0(2/9) AAS
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「…そんなことがあったんですか」
静かにため息をつく榛名。苦笑交じりに、金剛が後を引き取った。
「今も司令官室を掃除してたらたまにBB弾が出てきマスよ」
「まあでも……提督が昔から私たち艦娘のことを本当に慮ってくれていたのはよく分かりました」
「私もあの時は嬉しかったデース」
「そ、そうか」
満更でもなさそうに頭をかく提督。
「ですが、相手も悪いとはいえ、提督も提督ですよ?」
榛名は少し強めに言った。鋼鉄の頃、榛名は、有能だが融通の利かない若い士官が孤立するのを幾度となく見てきた。そういった類は特に甲板士官に多いきらいがあったが、それで将来を閉ざしてしまうのは、目の前の提督には是非とも回避してほしいという願いが榛名にはあった。
省9
18: 2022/02/24(木)23:44 ID:er2aAZLw0(3/9) AAS
「……御召艦だった榛名としては、陛下の心痛は察して余りあります。今度陛下にお会いしたら謝って下さいね」
「そんな機会があればの話だな」
旧制防衛大学の頃ならまだしも、戦時下の今では、閲兵式や観艦式を行うような余裕は軍にはおろか政府側にもない。ましてや俺が陛下からご褒章や感状を賜ることはまずないだろうな……と提督は密かに嘆息した。
「ふぅ……そもそも何の話だったデス?」
「とにかく、問題は会場の警備の人員を集めることですよ」
「憲兵隊もやはりあの時のことを根に持ってるだろうし……素直に協力してくれるとは……」
「もう何年も経つんですからほとぼりも冷めたんじゃないでしょうか?」
「いやぁ…それはないだろ…」
「とにかく頼んでみないことには分かりませんよ。提督、憲兵隊に電話してみてください」
「気が進まんなぁ…」
省1
19: 2022/02/24(木)23:47 ID:er2aAZLw0(4/9) AAS
***
その頃、港町憲兵分遣隊。珍しく鳴った外線を、分遣隊長がタイミングよく受けた。
「はい、こちら港町憲兵分遣隊です……は?鎮守府?」
鎮守府、と聞こえた瞬間、この分遣隊の副官を務める憲兵中尉は事務机から顔を上げ、分遣隊長を務める憲兵大佐は受話器を置いて通話を終えた。
「隊長、今のは鎮守府からですか?」
「提督おん自らだ。あまりにも畏れ多くて切っちまった」
「あの提督が?まったく、どの面を下げて…」
この二人にとって、例の鎮守府とのトラブルは苦い記憶となっていた。あの後、実際に海軍大臣次官から陸軍大臣次官を通じて東北憲兵隊司令官へ、非公式にではあるが遺憾の意が伝えられ、それを受けた憲兵司令官から訓告処分がなされたからだ。……怒りの矛先を向ける先を誤ったと言われれば自分達も立つ瀬がないのは自覚しているが、それでもあの後、鎮守府との関わりは無意識に避けるようになったというのが憲兵分遣隊の実情であった。
「……それにしても、一体何の用だったんでしょうね」
「分からん。……ただ、えらいへりくだった物腰だったな」
省16
20: 2022/02/24(木)23:49 ID:er2aAZLw0(5/9) AAS
***
鎮守府。
「って切りやがった!!まだ何も言ってないのに切りやがったぞこの野郎!!」
思い切り受話器を電話機に叩きつける提督。
「ダメでしたか…」
残念そうにする榛名に、さもありなんと頷く金剛。
「榛名か金剛が掛けてくれたら良かったのに!」
「だとしても、結果はいずれ同じだったはずデス」
「困ったなあ、どうしよう…」
いよいよ打つ手なしと見て、頭を抱える鎮守府のトップ3であった。
21: 2022/02/24(木)23:50 ID:er2aAZLw0(6/9) AAS
***
「本当に助かりました!ありがとうございます!」
憲兵将校二人に挟まれるようにして真新しい海岸通りを歩きながら、陸軍潜水艦・まるゆは、眩しそうに二人を見上げて礼を言った。
「いやいや礼には及ばないよ。鎮守府への道案内くらい訳はないさ」
憲兵大佐が柄にもなく優しげに応える。
「工廠を出るとき、技術将校殿が『困ったことがあれば憲兵隊を頼れ』って言ってくれたんです。その通りにしてよかったです!」
「お役にたてて何よりだよ」
憲兵中尉も、いつになく優しい気持ちになってまるゆに応えた。
憲兵隊という男だけの世界の中に、予期せず入り込んできた陸軍の艦娘。そんな状況に何かしら思うところがあるのか、憲兵大佐が憲兵中尉にそっと耳打ちをしてくる。
「それにしても、我が陸軍もひそかに艦娘を建造していたとはな……」
省11
22: 2022/02/24(木)23:52 ID:er2aAZLw0(7/9) AAS
鎮守府近くの防波堤で、重雷装巡洋艦の木曾が、腰を下ろしていた。身にまとうマントが、穏やかな潮風に揺れている。
「暇だな…」
鎮守府の雷巡ファミリーの末妹である彼女は、非番のときはよくこの防波堤に来て海を眺める。大井や北上、球磨や多摩といった姉達とはまた異なる性格を持つ彼女は、少女の年相応に騒いだりはしゃいだり、はたまた誰かへの憧れを持つこともなく、一歩下がって周りの幸せを眺めている方が性に合っていた。
沖合を見ると、午前中の哨戒を終えた大井と北上が、波頭を上げて入港してくる。木曾に気づいて手を振ってくれる二人の姉に手を振り返しながら、木曾はぼんやりと考え事をしていた。
……これじゃ、鋼鉄の頃と何も変わんないな。
やや自嘲気味にそう思いつつ、木曾は、出港時以外は波止場に繋留されていた半世紀以上前の自分の姿を思い返していた。
今の自分に不満を持っているわけではない。少女の身体を与えられて生まれ変わった運命を迷惑に思っているわけでもない。青臭いが人として信頼し得る提督のもと、姉妹達を始め、軍艦旗を背負って共に戦った少女達との再会、新たに課せられた役割……一度は海に没して朽ち果てた己自身に、再び陽の光が当たるようになったのは本当に幸せな事だと思う。
だが、鋼鉄としてではなく、少女として第二の生を与えられたということに、木曾が戸惑いを感じ続けているのは、木曾自身が否定しようのない事実でもあった。
重油の代わりに食事とパフェ。防弾装甲の代わりにセーラー服とマント。電探の代わりに……透き通る翠色の瞳。
持て余しているんだろうか、俺は。この身体を。この新たな運命を。
省4
23: 2022/02/24(木)23:55 ID:er2aAZLw0(8/9) AAS
少し息を乱した木曾の耳に、横合いから若い男の声が無遠慮に割り込んで来た。
「あれ?あそこの波止場に座ってるの、もしかして鎮守府の艦娘じゃないですか?」
振り返ると、陸軍の憲兵将校二人……と、スクール水着の少女が、いつの間にかすぐそばに来ていた。どうやら、鎮守府に用があってやって来ているものらしいが、それにしても、いったいどういう組み合わせなんだろうか?
「本当だ、服装からして間違いないな」
顔だけそちらに向けて眉をひそめる木曾。そうとは知らずか、スクール水着の少女が能天気な声を上げた。
「えっ?鎮守府の艦娘さんですか!?」
キラキラと目を輝かせるスクール水着が、まるで憧れの異性でも見るように、眩しい視線を木曾に向けている。
「……お前、何者だ?」
警戒心を含んだ声でストレートな疑問を投げかける木曾。
「はい、まるゆは陸軍の潜水艦です!」
省34
24: 2022/02/24(木)23:55 ID:er2aAZLw0(9/9) AAS
今日はここまで お休みなさい
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