[過去ログ] 【ひとっ走り】能力者スレ【付き合えよ!】 (1002レス)
前次1-
抽出解除 レス栞 あぼーん

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
312
(1): 柳小猿+小狐◆5CR8PxLmeE 2015/03/12(木)19:23 ID:Om7F0pYV0(1/6) AAS
「―――ほんとうに、酷いですね。」

水の国・交叉の街アトラヴェル。
そこの旧市街と呼ばれる区画に足を踏み入れ、その惨状に僅かに侮蔑を含んだ声音で、その少女はそんなことを呟く。
そこは幼い少女の言葉通り、とてもじゃない限り人が住めないような場所だった。
先程歩いていたまさしく『大都市』といった風の景観の場所と同じ街だとは思えない位である。
最初に綺麗な側面を見てしまったが故に、辿り着いた旧市街に対する少女の不快感は上昇する。

「ここの時点で既に荒廃としているようですが……『あちら』は一体どうなっているのでしょうか。」

そう言いつつ歩く少女の姿は、そこではかなり目立つ格好だっただろう。
2つのお団子を模している黒髪は、夕陽に照らされ僅かに赤味を帯びている。
省9
317
(1): 柳小猿+小狐◆5CR8PxLmeE 2015/03/12(木)21:37 ID:Om7F0pYV0(2/6) AAS
>>313

「……!誰ですか。」

不意に肩でうたた寝をしつつあった小狐が何かに気付いたようにきゅう、と鳴く。
それから数拍置いて聞こえてきた声に、少女もハッと目を見開けば、武器を構え声の方向へと視線を動かす。
本来ならば特攻してでも相手に詰め寄っていたかもしれないがその姿に若干の躊躇いを覚える。
その女の姿は少女自身の得物を振るうには、些か不相応な相手に思えたのだ。

「……冷やかしではないです。あなたこそ、手足の不自由な方が悠々と過ごせるほど、ここは治安の良い場所ではないようですけど。
それに、わたしの目的地はここではありません。少し、似た場所を様子見したいと思っただけですので。」

構えていヌンチャクを降ろし、相手へと淡々と返答する。
幼い容貌と声音とは裏腹に、口調はあまりにも冷めきっているだろう。
省5
321
(1): 柳小猿+小狐◆5CR8PxLmeE 2015/03/12(木)22:19 ID:Om7F0pYV0(3/6) AAS
>>319

「ふざけてますね、とても。」

物見遊山客、その言葉に対する言葉がこれである。
文面だけでは辛辣に聞こえるかもしれないが、少女の反応は呆れてせいで脱力したという方が正しい。
自身が思っていたよりも大分マシなようなこの街の評価に対しての、拍子抜け感も相俟っていたが。

「……勝手にしてください。」

もうこの女性には何を言っても聞かなそうだと判断した上での承諾の返事。
こちらとしても手足の不自由な人間を置いていくのは流石に良心が痛むのは確かだし。
ぷい、と不機嫌そうにそっぽを向く少女。
省8
325
(2): 柳小猿+小狐◆5CR8PxLmeE 2015/03/12(木)22:50 ID:Om7F0pYV0(4/6) AAS
>>323

「その通り、わたしと小狐は本当に小さな島国から来ました。名前を知る人なんて早々いないと思いますよ。」

女性の足は意外にも速く、少し驚いた表情を見せる。
だがそれも束の間。すぐに目線を前方へと戻し澄ました声で答える。
実際、他国と交流もせずに半ば鎖国状態にある故郷だ。知っている者がいるとすればそれは余程地理の勉強をしているのではないだろうか。

「……わたしはリウ、柳 小猿(リウ・シャオエン)と申します。リウが姓、シャオエンが名です。
 そしてこちらは小狐(シャオフー)。わたしの友人であり旅のパートナーです。…ところで、クリシュさん。」

一応、名乗られたら名乗り返すのが社交辞令だろう。
自分自身の名前と小狐の自己紹介も軽く済ませておく。
と、不意に相手の名を呼び、語りかける。
省1
327: 柳小猿+小狐◆5CR8PxLmeE 2015/03/12(木)22:59 ID:Om7F0pYV0(5/6) AAS
/>>325の最後に付けたし!途中で送信してしまいましたごめんなさい!

腹立たしいことにいつの間にか自分より前方にきていた相手にそう問いかける。
その声の響きには初対面時と同じく少女の緊張感が滲んでいるようだった。
331
(1): 柳小猿+小狐◆5CR8PxLmeE 2015/03/12(木)23:22 ID:Om7F0pYV0(6/6) AAS
>>328

「…で……ません。」

女性の言葉を無言で聞いていた少女…もとい小猿。
何かをぼそりと呟いたかと思えば、その場で立ち止まってしまう。
女性との距離が空こうがお構いなしだ。少しの間直立したまま動かず、小狐が何かに気付いて小猿の顔を覗きこんだ瞬間、

「―――どうでもよくなんか、ない!」

僅かに声を荒んだ叫び。それはまるで、大きな怪我を負ったような、傷付いたような小さな叫び。
小さくても恐らく彼女の耳には届いただろう。
だってパートナーの小狐が目を丸くして驚く位、怒気を込めた声だったから。
冷たい口調から垣間見る感情ではなく純度100%の彼女の心中を表現したものだったから。
省6
337
(2): 柳小猿+小狐◆5CR8PxLmeE 2015/03/13(金)00:17 ID:H3UHVmVP0(1) AAS
>>334

冷たい目だった。

「……なん、ですか。」

振り返ったクリシュティナの目は驚くほど冷たいものだった。
思わず声を掛けるのに戸惑う。それでも辛うじて声を出す。あくまでも負けじと意固地になって。
だけど相手はそんなこと気にしない。気にしないでこっちに来るのだ。
甲高い杖の音がやけに耳の中を反響し続ける。

真正面に経った彼女の姿がなぜか恐ろしく感じられて一歩後ずさる。ひやりと背中に冷たい汗が落ちた気がした。
省15
373
(1): 柳小猿+小狐◆5CR8PxLmeE [sage saga] 2015/03/13(金)14:43 ID:2+lj2K090(1/3) AAS
>>347

『―――。』

小狐は何も言わない。鳴き声一つあげることもない。
小さな瞳の奥に潜むその感情は…怒り。相手の傲慢な態度へのものではない。寧ろ相手の言っていることは正しいのだ。
そう。その男を殺す理由は極めて私怨であり、それは小猿と小狐のエゴでしかない。
どうしようもない。主人の醜い感情の行き場は主人の心の中の何処にもないのだと。

名前を不意に呼ばれれば、今まで微動だにしなかった小猿の小さな身体がびくりと震える。
ハッと息を呑んだのち小狐がこちらを向くのが気配で分かった。
僅かに顔をあげてみればやはりクリシュティナは冷たい表情のまま。
何か言わなければ。そう思った。
省10
379
(1): 柳小猿+小狐◆5CR8PxLmeE [sage saga] 2015/03/13(金)19:24 ID:2+lj2K090(2/3) AAS
>>377

はあっと荒い呼吸を一つ。
散々喚き散らしていたおかげで、ようやく落ち着いてきたのだろうか。
息を整えようとした時、女の口から出てきた言葉に訝しげな表情を浮かべる。

「わたしがわたしの殺意を肯定せず、に?……何を言って―――…、」

相手の言うことがよく分からない。そう言おうとした途端、振り上げられた手に、ぎくりと身体を強張らせる。
無意識にぎゅっと目を閉じた。何故だかぶたれたらどうしようなんて考えが頭をよぎった。
…しかし、そんな痛みは幾ら待ってもやって来ない。

「……あ、」
省12
381: 柳小猿+小狐◆5CR8PxLmeE [sage saga] 2015/03/13(金)20:06 ID:2+lj2K090(3/3) AAS
>>380

「……え?」

そこで漸く異変に気付いた。
なんと、いなかったのだ。あの女性が…クリシュティナが。それも忽然と。
ぽかんと目を丸くなった状態で口から出てきたのはなんとも間抜けで年相応な声。
慌てて周囲を見回すがあの目立つ風貌の女性の姿は何処にも見当たらない。大人一人が隠れられるようなスペースも、なかった。
ただ、微かな甘酸っぱいような香りと未だに残っている抱擁の際の人肌の温もりしか彼女の痕跡はなかった。

「……小狐、あの人は。」
『きゅ?』

恐る恐る足許にいる小狐にクリシュティナの所在を確かめてみるが小狐が簡単に教える訳もない。
省9
525: 柳小猿+小狐◆5CR8PxLmeE [sage saga] 2015/03/15(日)19:37 ID:qfhP+oOI0(1) AAS
「……ふあ、」

昼の国のある街に小猿と小狐は足を伸ばしていた。
鉄仮面と揶揄される小猿も欠伸をするときには流石に子供らしく見えるのか。
いつになく何処となく眠そうなというか…寝惚けている雰囲気ではある。逆に小狐の方はきっちりと起きているようだ。

理由はここへ来るまで間…鉄道やらの乗り物に乗っている際の移動中、余程気疲れが溜まっていたのか、ほとんど寝て過ごしていたのが原因であろう。
目的地に着いた際に小狐が起こしてくれた為、乗り過ごすという最悪な事態からは免れた…が。
寝起き特有(尤も小猿だけかもしれないが)偏頭痛に悩ませるハメに。
内側からぐわんぐわんと響いてくる、地味に嫌な頭痛を気力で振り払いつつ小猿と小狐は街の中を回ってゆく。
水の国のものに比べれば、簡素な印象を与える噴水のある広場に立てられた時計は、丁度10時の針を指していた。
省9
前次1-
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.035s