[過去ログ] 煩悩の十二国記*十四冊目 (1002レス)
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114: 頑丘×珠晶 1/8 2011/02/09(水)11:18 ID:MOZ5hrMs(1/8) AAS
夜も更け、あとは寝るだけと言う時に、主上から呼び出しが来た。なにか、しただろうか。まず、自分が今日一日したことを振り返ってしまう。なにか、お気に触る事をしたか。
登極したころは、よくひっぱたかれた。自分の言いたい事がうまく言えず、言えないうちに主上が癇癪を起こす。小さな身体で思いっきり背伸びをして手を振るので、怒らせたと思った瞬間、身を屈める癖がついた。
しかし、三年もすると何も言わなくなった。ただ、主上の後に立っているだけ。始めはひっぱたかれる回数が減ったなと嬉しかったが、しばらくして気がついた。主上は自分を見ていないということに。
…それでいいんだとも思った。自分は、主上ほど頭も良くない。物は言えないくせに、言いたい事が募ると涙が浮かぶ。そして結局は、言いたい事の半分も言えない。
自分でも嫌になる。そして多分主上も嫌なのだ。こんな麒麟は。
「失礼します」
「入りなさい」
主上の寝室に頭を下げて入る。顔を上げると中央の円卓の椅子に座った主上と部屋の片隅に杖身の頑丘がいた。
取りあえず、主上に頭を下げる。…下げたまま上げれない。先程から考えても、今日自分が呼び出されるほどの事をしたか。
「顔を上げなさい」
省11
115: 頑丘×珠晶 2/8 2011/02/09(水)11:20 ID:MOZ5hrMs(2/8) AAS
珍しい雰囲気に、きょとんとなる。いつもの呼び出しなら既に怒鳴り声が響いている所だ。主上がふうっと息を吐き、机についてた腕を伸ばした。軽く伸びをする。
「こっちに来なさい」
呼ばれて近付く。椅子の横に立ち、慌てて跪いた。跪いてもまだ自分の方が視線が高い。やはり、小さい。そう思う。主上が自分に向き直った。
「手を出しなさい」
そういわれ、両方の手を差し出す。主上の手が触れた瞬間、引っ込めた。
「…なにしてんのよ」
主上の手が催促するよう目の前に差し出される。恐る恐るその上に手を乗せた。
「大きい手ね」
驚いたように言われ、また引っ込めようとして、主上の手が軽く握り込んでそれを止めた。
「…こんなふうに、あんたを見た事もなかったわね」
省22
116: 頑丘×珠晶 3/8 2011/02/09(水)11:21 ID:MOZ5hrMs(3/8) AAS
その瞬間、珍しく頑丘が横を向いて吹き出した。
「頑丘っ!」
「すまん…」
肩が震え、供麒を支える腕も震える。
「お前、どんだけ怖がられてんだ…」
「だから、謝ったんでしょーがっ!」
頭越しのやりとりにきょとんとなる。しばらくして、珠晶が顔を赤くしたままそっぽを向いた。
「こんなに怯えさせてたなんて知らなかったのよ。」
手出して。そう言われ、また手を出す。珠晶の右手に左手を取られ軽く握られた。
「…小さい」
省28
117: 頑丘×珠晶 4/8 2011/02/09(水)11:23 ID:MOZ5hrMs(4/8) AAS
勢いも加減も知らない。
「痛くなかったか?」
指先を珠晶の口に入れ、どっか噛んだ所がないか調べようとする指に噛み付いた。
「…っ?!」
慌てて口の中から指を引き、指先を確かめる。犬歯の痕がついてる。
「お前は、獣か」
呆れたように軽く指を振って、そのまま珠晶の腰に回した。
頑丘の座った前に、立ち膝で立たされた珠晶が睨んでそっぽを向いた。
「騎獣みたいに扱わないで」
確かに。小さく笑って、背中に回した手で自分の方に抱き寄せた。
省31
118: 頑丘×珠晶 5/8 2011/02/09(水)11:24 ID:MOZ5hrMs(5/8) AAS
言葉の正しい使い方を教えようとして、頑丘が天井を見上げたのを見て止めた。
「…見えない所が、引き裂かれてるとか?」
「いやいや…もう、そっから離れていい」
手で顔を覆ったまま、次第に口端が上がる。敵わん。多分、こいつには、生きてる間、敵わん。
ふと、珠晶の身体が寄り掛かって来た。二人して床の上にしゃがみ布団にくるまってる。
「どうした」
「どこにも行かないで」
この十日間辛かった。どこに行ったかと心配した。捨てられたかと悲しかった。
「わかった。」
肩に腕が回される。軽く引き寄せられ安心したように溜め息が出た。
省28
119: 頑丘×珠晶 6/8 2011/02/09(水)11:26 ID:MOZ5hrMs(6/8) AAS
自覚はなかったのだろう。首を傾げる。
「気分がいいのかしら」
「そいつは、良かった」
今度は、頑丘が珠晶の唇を塞いだ。穴が開いた痛みが消えたのだろう。さすがに十日ほど辛そうだった。歩き難そうで、すぐ癇癪を起こした。
最大の癇癪は、穴をあけた物が道具だったと知った時だ。部屋中のものが飛んで来た。落ち着いたのを見計らって、玄君からの心配りだと聞いて座り込んで泣いた。
恥ずかしいのか、悲しいのか。わからずに泣いた。
その身体を抱き締めて、宥めた。今度はちゃんとしてやる。最初から全部だ。その言葉に肩に顔を埋めたまま泣いた。
「口、あけろ」
「どのくらい?」
「…ちょっとでいい」
省24
120: 頑丘×珠晶 7/8 2011/02/09(水)11:28 ID:MOZ5hrMs(7/8) AAS
いきなり、身体を放されてきょとんとなる。なんか叱られる様な事を言った?頑丘の手が珠晶の小さな肩を両側から押さえた。
「あのな」
「なによ」
いや…と、ふと頑丘が視線を逸らした。多分、こいつはなんも考えていない。自分の言葉で男の我慢が吹き飛ぶとか、なんも考えずにものを言っている。
「頑丘?」
下から覗き込まれ、少し腹が立った。どこまで翻弄する気だ。この小さな妖魔は。
「きゃっ?」
いきなり鼻に噛み付かれ、珠晶は悲鳴を上げた。
「なにすんのよっ?!」
「続きだ」
省36
121: 頑丘×珠晶 8/8 2011/02/09(水)11:30 ID:MOZ5hrMs(8/8) AAS
「分かったから…噛むな」
左手を珠晶に咥えられたまま、頑丘が苦笑いしてそばに置いていた壷を見せた。
「覚えているか?」
頷く事が面倒で、軽く噛んだ歯に力を入れる。一瞬眉を潜めたが、都合がいいかと続ける。
「多分、今日も辛いぞ」
目がゆっくりと覚醒してくる。瞳でなんで?と聞いた。辛いのは最初だと言われた。
「俺が…穴をあけるから…で分かるか?」
首を傾げる。
「小さいんだ、まだお前のは」
はふっと手から口が離れた。手の甲に綺麗な半円ができている。
省27
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