[過去ログ] 【妄想】ショタ小説を書こう!【創作】 (761レス)
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395: 今夜、君の立つキッチンで・1 2008/12/25(木)09:47 ID:c2F4kb9w0(1/10) AAS
>>394
お言葉に甘えて……。

『今夜、君の立つキッチンで』
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 いつ眠りについたのかも分からない時に見る夢は――決まってこの思い出の光景を僕に見せる。

 いつもはっきりとは思い出せないけど、それはおそらく自分の子供の頃の光景なんだろう。
 思い出の中の光景(それ)は、いつも午後の陽光に包まれている――淡く暖かい光の中、たくさんの観葉植物達に
物憂げなまなざしを向けている子供の光景が見える。
 そんな子供の隣にはもう一人、男の子がいる。それがリッコだ。
省19
396
(1): 今夜、君の立つキッチンで・2 2008/12/25(木)09:48 ID:c2F4kb9w0(2/10) AAS
 どうして思い出せないのだろう? 僕はこんなにも、知りたいというのに。
 その瞬間――僅かに、記憶の一部分だけが再生された。

『やくそだよ、キトラ』
『うん。やくそくだよ、リッコ』―――

 はっきりとその部分だけを聞き取ることが出来た――しかし何を約束しているのかは、結局分からなかった。
 やがては白く霞みゆく夢に、僕はこの眠りからの覚醒を自覚する。
 今日もまた、このことを思い出すことは叶わなかった。そして現実の僕も目が覚めてしばらくすれば、この夢を
見ていたこと自体、忘れてしまうのだ。
 だから僕は目覚め行く意識の中で、いつも神様に祈るのだ。
 どうか、この次もまたこの夢を見せてください。そして次こそは思い出させてください――と。
省13
397: 今夜、君の立つキッチンで・3 2008/12/25(木)09:50 ID:c2F4kb9w0(3/10) AAS
【 1−2 】

 若芽色づく五月の始め――ほんの1週間前に、彼女・エドナは眠るよう天に召された。彼女の葬儀は村長をはじめと
する地元の村人達数人によってしめやかなに行われ、見上げるほどに大きく見渡すほどに広いこの屋敷にはキトラ一人
だけが残された。
 少年の姓ともなっている“マクスウェル家”とはキトラの祖父ドレル・マクスウェルが、ライターの開発・製造販売
で労働者階級から成り上がった新興貴族の家系であった。
 その発明品である『ライター』は、『近代を象徴する歴史的発明品』として称えられ、瞬く間に全世界へ浸透――
マクスウェルの名を不動のものとさせた。
 しかしかの家の不幸は、これより始まる。
 折りしもベラトリア・ルドベキア・ワスレモコウ、そしてフリージアの四国による大戦が続いていた激動の最中――
省21
398: 今夜、君の立つキッチンで・4 2008/12/25(木)09:51 ID:c2F4kb9w0(4/10) AAS
【 1−3 】

 それこそが――“マクスウェル家の呪い”それであった。

 あの事故は――そしてドレルの死は、かの虐殺兵器によって死んでいった者達の呪いとして、まことしやかにささやかれ
るようになったのだ。
 そしてそれを期に、マクスウェル家には様々な不幸が降りかかるようになる。
 祖父の死を始まりにその二年後。キトラの妹が病から息を引き取った。喘息から起こる呼吸停止によるショック死――
それが彼女の死因であった。まだ4歳であった。
 そしてそのさらに三年後――今度は父母が供だって他界した。晩餐会の帰り、道を踏み外した馬車が橋から転落する
という交通事故がその原因であった。
 相次ぐ家族の死は、益々もって“マクスウェル家の呪い”それを後ろ押す形となり、屋敷に勤めていた使用人達も
省15
399: 今夜、君の立つキッチンで・5 2008/12/25(木)09:53 ID:c2F4kb9w0(5/10) AAS
【 1−4 】

 葬儀の中での記憶は全くといっていいほど無い。ただ泣いていたように思う。
 泣いて泣いて泣きくれて――そんな逃避の酩酊からおぼろげに覚醒した時、キトラは己が一人ぼっちになったことを
受け入れた。もう泣くまいと誓った。これからは一人で生きていかなければならないのだと覚悟した。
 奇しくもそれは、マクスウェル家三代目当主キトラ・マクスウェルとしての誕生でもあった。
 ゆえに、台所で不意に感情が溢れそうになるのを察知してキトラは足早にそこを後にした。
 泣いてもしあの頃の自分に戻ってしまったのなら、もはや一人で生きていくことなど出来ないであろう。ただ衰弱
して、死を待つだけだ。
 一時期はそれも考えた。しかしそのつど思い出されるエドナとの思い出にキトラは踏みとどまった。ここで悲観に
くれて死を迎えるということは、自分を育ててくれたエドナへの侮辱となる。使用人達が我先に屋敷を出て行く中、
省12
400: 今夜、君の立つキッチンで・6 2008/12/25(木)09:57 ID:c2F4kb9w0(6/10) AAS
「メイドが、来たど――――ッッ!!」

 突如として玄関のドアが押し開かれたかと思うと、そんな叫び声がホールに響き渡った。
「えッ?」
 すでに階段の一段目に足をかけていたキトラは、その声に両肩を跳ね上がらせ振り返る。
 そこには――両腕を広げ、両開きのドアを開けたままの人影がひとつ。
「……誰?」
 瞳をしかめたまま、それを凝視するキトラ。ドアから差し込む朝日が逆光となって、その人影の主を確認することが
出来ない。
 やがてそんなキトラの声に応えるよう、
「おい、メイドが来たぞっ。これからは、オイラがキトラのメンドー見てやるからな!」
省6
401: 今夜、君の立つキッチンで・6 2008/12/25(木)09:58 ID:c2F4kb9w0(7/10) AAS
【 2−1 】 

 丘を越え、坂を滑り、道を駆け――少年・リッコはマクスウェル邸を目指し急いでいた。
 リッコは今、ある決意を胸に秘めていた。
 それこそは、マクスウェル家に赴き、そこの小さき当主・キトラと供に在ろうという決意。
 かのキトラはリッコにとって幼なじみであり、そしてかけがいのない親友であった。
 今より10年前――かのキトラ達・マクスウェル家は、ここシランの片田舎へと越してきた。
 目立った産業も工業もないそんな辺鄙な場所では、かの家族の登場は当時、大きな話題となった。
 もっとも話題になったのはやはり、当時まことしやかに囁かれていた、“大量虐殺に加担したマクスウェル家”の噂
それであった。
 現在も然ることながらあの頃の世情はまだ、お世辞にも落ち着いているとはいえなかった。連日戦争による死傷者の
省19
402: 今夜、君の立つキッチンで・8 2008/12/25(木)09:59 ID:c2F4kb9w0(8/10) AAS
【 2−2 】

 そもそも、使用人風情のリッコが無断で貴族の家の庭に入っていくこと事態、大変に無礼ではあるのだ。しかしリッコはまだ、
そんな分別もつかない子供であった。そしてまた、新しい友達の予感に踊る心を抑えられない、純粋な子供であったのだ。
 庭を抜け、その敷地の端にポツンと立った温室の中にリッコはキトラを見つけた。
 そうして何臆することなくリッコはその中へと入り――そんな自分の登場に驚くキトラと初めて対面を果たした。
 リッコ自体その時のことはあまり覚えていないのだが、当時を語るキトラは、『友達になろう』と手を伸ばしてくれたリッコの
姿がとても可愛かったと話してくれた。
 ともあれ、こうしてリッコとキトラは友達になった。
 それからというものリッコは毎日のようキトラの元を訪れては、野に山にと共に遊びまわった。
 面倒見が良くて優しいキトラは、いつもリッコの面倒を見てくれた。
省20
403: 今夜、君の立つキッチンで・9 2008/12/25(木)10:01 ID:c2F4kb9w0(9/10) AAS
【 2−3 】

 一族の事業に追われ、年に数度しか会うことのなかった両親以上に、彼女の存在は大きく、そして暖かいものであった。
 そんな彼女が亡くなった時の――あの時のキトラの姿は、今でも思い出すたびにリッコの胸を締め付ける。
 彼女の亡骸にすがり、泣き、取り乱し――しまいにはその悲しみのあまりに衰弱して、後の葬儀すらまともに出席できない
ありさまであった。
 その時だって、リッコも黙ってそれを見ていたわけではない。
 自分なりに彼を気遣いながら、その時もリッコはキトラへと声を掛けた。慰めた。それでキトラは落ち着くものだと思っていた。
いつものように。

 しかし――そんなリッコの声・想いなど、微塵としてその時のキトラに届くことはなかった。

 それどころか、そんなキトラにはリッコの存在さえ見えてはいなかったのだ。自分などそこにいないかのよう取り乱し、泣き暮れた
省16
404: 今夜、君の立つキッチンで・9 2008/12/25(木)10:02 ID:c2F4kb9w0(10/10) AAS
 キトラと供に在ろうという決意は自分だけのものだ。そんな自分勝手な理由から両親に迷惑は掛けられない。――だからこそリッコは、
二人に『親子の縁を切る』ことを継げた。
 そんな決心と明日の出発をつげる我が子に、一方の両親は何も言わなかった。そして今朝の出発にだって見送りにすら現れなかった。
 しかしリッコは、それを両親の愛だと理解した。
 もし『行くな』と言葉を掛けられたなら、リッコは今朝のよう決意も新たにここを出ることは叶わなかっただろう。
 両親の口から発せられるその言葉には、マクスウェル家に関わることで生じる“村での孤立”、そしてかの忌まわしき“呪い”に
触れようとしている我が子への不安――それらが込められている。
 父母からそれを聞けば、リッコは二人の身を案じ、罪悪感を抱いた旅路を余儀なくされたことだろう。そしてこれから立ち向かう
マクスウェル家の呪いに畏怖し、今後の自分の行く末に不安を抱いたことだろう。
 それを案じたからこそ、両親は“何も言わなかった”。
省20
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