[過去ログ] 【伝奇】東京ブリーチャーズ【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net (285レス)
1-

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
233: 尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE 2017/02/02(木)00:01 ID:/PrPsy7k(2/5) AAS
>「た……、た、助けて……。助けて……ください……」

尾弐達の進行方向の先に在る薬局の中から、フラフラと白衣を着込んだ女性が歩き出て来たのである。
やはり呪いに侵されており、その衣服は赤色で染まっているが……それでも女はまだ生きていた。

「ちっ……!」

けれど、尾弐がその女を助ける為に動く事は無かった。
むしろ小さく舌打ちをしてから右腕を横に伸ばし、一同に背中を見せて壁となり、
女の元へ寄る事を制止をしてみせたのである。

>「……この妖気!皆さん、来ますよ!」
>「あ……あ……、ああああああああ……!ひっ、ひぎっ……あぁ、ぎ……ぎゃあああああああああ―――ッ!!!」
>「祈ちゃん、見るな!!」
省18
234: 尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE 2017/02/02(木)00:01 ID:/PrPsy7k(3/5) AAS
「ったく、無茶しやがって……あいよ、了解だ大将」

尾弐は、那須野が無事にコトリバコの怪異を往なした事を確認すると、
その無茶な行動に対して苦々しい表情を浮かべたが……けれど、それを止める事はせずに、那須野の指示に対して是と答える。
それは、長い付き合いであるが故の、尾弐からの那須野への信頼であると言えよう。
頭脳労働担当である那須野が『囮となる事が出来る』と言った以上、それは可能な事なのだろうと、尾弐はそう判断したのである。

>「何考えてんだこのキツネ仮面がぁ! いきなり目立とうなんて思わなくていいから!」

だが、それはそれとして那須野の行動が無茶な事には変わりない。
尾弐が知る限り、彼の探偵は荒事向きではない為、ノエルが心配するのもまた当然と言えよう。

「そう思うなら、さっさとアレをどうにかしようぜ色男。
 目立つ間もなく凍らせて砕いてかき氷みたいにすりゃあ、那須野の出番も無くなるだろ」
省28
235: 尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE 2017/02/02(木)00:02 ID:/PrPsy7k(4/5) AAS
>オギャアアァアァアァアァアァァァァ……
>オォオォオォオオ……オ……オギャアアァアァァアァアアアア……!!!

>「ま……、まさか……!」
「おいおいおいおい、ちょっと待て。冗談だろ」

けれども、状況はここで悪化する。
コトリバコの怪物がその口腔から垂れ流す泣き声。それが、いつの間にか『増えて』いたのだ。
其れも、一つ弐つではない。
増えた泣き声は――――合わせて七つ。

>「あ、あれぇ〜?これは……死んだ、かなぁ……?」
>「てめぇら大増殖してんじゃねえ! せめて横一列か前後二列に並べ―――――ッ!!
省26
236: 尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE 2017/02/02(木)00:03 ID:/PrPsy7k(5/5) AAS
そんな祈を見て、尾弐は思う

(ああ――――弱くて、脆いな)

それは侮蔑でも罵倒でもない。尾弐という妖怪が抱いた、ただの感想である。
弱さを補う戦い方も、敵対している妖壊に抱く懺悔の心も、尾弐は持っていない。

弱さは強さで塗り潰す。
鬼という種族にはそれが出来る性能が有った。
妖壊に対する慈悲の心も無い。
例えどの様な理由があれ、殺人を犯した存在は許される事は無く、救われる必要も無く、
ただただ地獄の底まで落ち込むべきだと、尾弐はそう考えているからだ。

そうであるが故に、己の弱さを認め敵対者への憐憫の心を持つ祈は、尾弐にとっては脆弱な存在であり。
省29
237: 2017/02/05(日)21:41 ID:6xaCxAXX(1) AAS
ここが廃れたのは誰のせい?
238: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:54 ID:J3g7vBWU(1/11) AAS
品岡の施術、尾弐の護符、二段構えの呪詛対策はこれで完了した。
少なくとも今日のうちに祈がコトリバコの標的になることはあるまい。そう言い切るだけの信頼を彼ら同士が持っている。
ならば事態は巧遅よりも拙速、あとは出撃を待つばかり――

>「これ以上の対策は、はっきり言って蛇足でしょう。ボクも護符の類を考えましたが、クロオさんの刃物に勝るものは作れません」
>「それに何をしたところで無駄なときは無駄ですから。やられるときはやられます、なので『もうこれはアカン』と思ったら――」
>「皆さん、踊ってください」

橘音の提案した最後の対策、その突拍子もない言葉にブリーチャーズは異口同音に困惑した。
しかし橘音は都合4つの沈黙も意に介さず、大真面目に謎ステップを踏んで追従するよう促してくる。
アキレス腱がよく伸ばせそうな足の動きは一見珍妙のようで、軽やかに踏み切れば確かに舞踊と言えなくもない。

>「わかりました?んじゃ、全員でやってみましょうか。はい、クロオさんもムジナさんも恥ずかしがらないで〜」
省30
239: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:55 ID:J3g7vBWU(2/11) AAS
直近の被災現場、東京都稲城市はまさに震源地の如き地獄絵図を展開していた。
各所を封鎖する黄色いテープ、ひっきりなしに往復する救急車と警察車両、倒れた母を呼ぶ子供の鳴き声――
安全帽にサージカルマスク姿でカメラを抱えるマスコミが、路肩の野次馬に矢継ぎ早に質問を投げかけている。
道中で確認したSNSでは、現場の惨状が加速度的に広められており、早いものはYoutubeにすら動画が上がっていた。

>「こいつぁヤベェな……商店街一帯、呪詛まみれじゃねぇか。まるで黄泉比良坂だ」

血反吐と吐瀉物にまみれたアスファルトを踏み締め人の海の中を行く、五人の男女達。
妖狐、ターボババァ(孫)、雪女(男)、鬼、のっぺらぼう(元)のオカルトリカル・パレード。
橘音の幻術によって警察の案内を受けるブリーチャーズに、野次馬達のカメラは集中する。

「おうおう!なに撮っとんねや!見せモンちゃうぞゴラアアアア!!」

最後尾に引っ付いていたいかにもヤクザな人相の悪い男が唾を散らしながら野次馬たちに食って掛かる。
省31
240: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:55 ID:J3g7vBWU(3/11) AAS
橘音の声に足を止めた祈を、ノエルが素早く抱き寄せる。
彼らの足元数メートルの位置までの地面が赤黒い死の色に濡れた。

「"中"になんか居るで!」

破裂の勢いか、はたまた自ら跳躍したのか――原型を留めぬ亡骸のかたわらに、一つの小箱が落ちた。
複雑な木目で織られたそれは、寄木細工と呼ばれる工芸品だ。
一見してただの薄汚い小箱であるが、頬を叩くような圧力を伴う凄まじい妖気がそこから放たれていた。

>「付喪神化していますね」

「あれが鞍馬山からパクられたっちゅうコトリバコの本体でっか……!」
省33
241: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:56 ID:J3g7vBWU(4/11) AAS
>「ボクが囮になります!皆さん、コトリバコに総攻撃!まずは『ケ枯れ』させましょう!」

橘音はそう皆に指示した。囮。つまり彼はコトリバコの攻撃が自分に向くと認識している。
攻撃される理由に、心当たりがあるのだ。

(ようそんなんで嬢ちゃんに駄目出ししたなぁ。自分が一番危険やって分かっとるんやないか)

橘音の――彼か、彼女か――その秘された覚悟をおぼろげに感じ取って、品岡は内心で苦笑した。
そしてそれだけだ。何も変わらない。そんなことは、妖怪にとっては、どうだっていいのだ。

「しゃあ!これだけ膳が揃ったんや。そろそろ品岡おじさんのカッコ良いとこ見せたらんとな。
 荒事はヤクザの専売特許ってこと、教えたるわい」
省32
242: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:56 ID:J3g7vBWU(5/11) AAS
巨大な頭部に棘を突き刺していた品岡はその動きにハンマーごと振り下ろされ、アスファルトに墜落する。
受け身をとって転がりながら衝撃を吸収すると、その上から緑色の液体が降ってきた。

「ひえっ……」

咄嗟に後ろへ跳躍し、なんとか引っ被ることは避けられた。
そしてそれがとてつもなく幸運だったことに、溶かされていくアスファルトを見て痛感した。

「迂闊に殴りゃしっぺ返しが来るってことかいな……」

化学耐性の高い舗装材であるアスファルトがああも容易く溶けるほどの強酸。
酸というよりも『溶かす』という呪詛に近い。それもとびきり強烈な。
おそらくは、臓器を溶解させるコトリバコ本来の呪いを戦闘用に改造して使っているのだ。
悠長に分析している暇はない。コトリバコはその粘液を、あろうことか自らの口から吐き出してきた。
省28
243: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:57 ID:J3g7vBWU(6/11) AAS
>「ま……、まさか……!」
>「そのまさかみたいだね……!」
>「おいおいおいおい、ちょっと待て。冗談だろ」

「あかんやろ……反則ちゃうんかそんなん……」

戦場となった薬局周辺に集うようにして現れたのは、新手のコトリバコ――7体。
交戦中のハッカイと合わせて計8体のコトリバコ、イッポウからハッカイまでご丁寧に全種類が勢揃いだ。

>「てめぇら大増殖してんじゃねえ! せめて横一列か前後二列に並べ―――――ッ!!
 敵が8体も好き勝手に動き回ったら処理落ちするから!」

「もっと良いグラボを買えええーーーっ!!」
省27
244: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:57 ID:J3g7vBWU(7/11) AAS
しかし祈はお花摘みに中座したわけではないらしい。
それが証拠に彼女が身体や手足をぐるぐる巻きにしている白い物体はトイレットペーパーではなく分厚い布だ。
同じものの予備も持ってきたらしき祈は布の山を地面に置く。

「……戦えるんやな、嬢ちゃん」

品岡は糾弾をやめて静かにそう言った。
少女は答えない。応答は、言葉ではなく姿勢で示した。
祈の姿が再び消える。風が巻き、再び彼女が出現したのはハッカイの真後ろだった。
その俊足で敵の後ろに回り込んだのだ。

>「……ごめんな」

祈はハッカイの後ろで何事かをつぶやき、その足元に蹴りを入れた。
省30
245: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:58 ID:J3g7vBWU(8/11) AAS
>「えっ、ちょ、ビジュアル的に無理! お断りします!」

「何言っとるんやあいつ……」

こんな時にも発動するあれはもはや「ノエル」という名の状態異常かもしれない。
脚を失ったハッカイが身をよじらせてタックルを仕掛ける。ノエルはそれを危なげなく退避した。
身体をささえられないハッカイは地面を滑り、その衝撃で右の豪腕が外れて転がった。

「通っとったんか、刃が!」

ノエルの斬撃線と同じ部位が切り離されている。
皮一枚を断ったと見えて、その実皮一枚を残して他を断っていたのだ。
げに恐るべきはその刃の冴え、雪女の妖力は伊達ではない。
省29
246: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:59 ID:J3g7vBWU(9/11) AAS
「なるほど確かにクソガキの癇癪から他の子供を守ってやるのも……大人の役目ですな」

尾弐と品岡は東京ブリーチャーズにおける『大人』……実年齢ではなく立ち回りとしての大人という立場だ。
無論そこには荒事担当というポジショニングの理由も含まれているが、それだけではないと品岡は思う。思いたい。
たとえ盃を交わしていなくとも、一方的に慕っているだけだとしても。
尾弐と品岡は義兄弟だ。――兄貴分の信頼には、応えるのが舎弟の身上だ。

「ほな、兄貴が三匹引き受けてくるっちゅうさかい……ワシは二匹ばかし相手にしようかね」

懐から煙草を取り出し、片手で火を点ける。
肺一杯に煙を吸い込んで吐き出した彼の眼前には、二体のコトリバコが凍結から復帰し動き始めていた。
牛程度の大きさの『イッポウ』とライトバンほどの『ロッポウ』。
イッポウはコトリバコの中においては最下位だが、それでも複数人を容易く殺める呪詛を持っている。
省33
247: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)22:00 ID:J3g7vBWU(10/11) AAS
――――ッ!!

頭部を棘つきスレッジハンマーで痛打されたロッポウは、しかし頑丈な頚部によって仰け反ることはなかった。
炎上していたイッポウも地面を転がって火を消し、こちらへ飛び掛かってきている。
前方と背後、挟み撃ちの形になり品岡に逃げ場はない。
果たして、二つの巨大質量の激突は品岡をペシャンコに潰す……ことはなかった。
品岡の周囲に紫電が走り、イッポウとロッポウは見えない壁に阻まれた。

「流石橘音の坊っちゃん、よう効きよるわ」

――禹歩による簡易結界。
だが踏ん張りが必要なハンマーを振るっていた品岡に軽いステップを刻む余裕などあるはずもない。
靴の中。脚の全ての指を形状変化で足そのものに変え、禹歩を刻ませた。
省30
248: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)22:01 ID:J3g7vBWU(11/11) AAS
「……小賢しい糞餓鬼やなぁ。ええけどな、学ぶことは子供の特権や言うやろ。
 勉強しとけ。最初に言うたように、ワシが自分に教えるんは大人の怖さや。いくつかあるからよう聞いとけ」

イッポウへ向けて人差し指を立てる。

「ひとつ、年上には敬意を払えや。ワシは自分の三倍は生きとる大先輩やぞ」

ぼこん、とくぐもった音を立ててイッポウの身体が膨らんだ。
イッポウ自身の意志によるものではない。奇声に困惑の色が交じる。
品岡は二本目の指を立てた。

「ふたつ、妖怪同士の戦いで、一発入れたら終いなんてことあるわけないやろ」
省26
249: 2017/02/08(水)01:04 ID:BkweUXHp(1) AAS
あ、糞出るわ

ブリュッセル
250: 那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI 2017/02/09(木)19:46 ID:jX3DFzkh(1/5) AAS
「あらよっと!」

一転して激しい戦闘の坩堝と化した商店街を、縦横に橘音が跳ねる。

>えぇっ!? 囮って……弱いくせに何言ってんの!?
>何考えてんだこのキツネ仮面がぁ! いきなり目立とうなんて思わなくていいから!

ノエルの悲鳴にも似た言葉が示す通り、橘音がからっきし荒事の不得意な化生であることは周知の事実である。
実際、今の橘音にコトリバコを物理的にケ枯れさせる手段はない。
が、『斃せない』は『対抗手段がない』と同義ではない。
獣由来の身のこなし、瞬発力ならば橘音も他のメンバーと大差ない。そして、そこに自分の今回の役目がある。

>ったく、無茶しやがって……あいよ、了解だ大将
省28
251: 那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI 2017/02/09(木)19:47 ID:jX3DFzkh(2/5) AAS
「えぇ〜?いいじゃないですかぁ、ボクもたまには目立ちたいんです〜」

そんなとぼけたことを言う。ノエルの氷結技能を信頼しきっているからこその弁だ。
正直、戦況は不利である。この状況では、メンバーの誰もが自らを護ることだけで手一杯に違いない。
だというのに、ノエルは橘音のことを案じてくれている。橘音だけではない、ノエルは全員のことを見ているのだろう。
先程も、ノエルが全員の得物に氷の属性付与をしているのが見えた。
メンバーのサポート担当という自分の役目を把握し、それを忠実に実行している証拠だ。
普段は(非常時も)とぼけた言動でいまいち頼りない印象のノエルだが、その実彼の援護射撃には隙がない。
今も、八体のコトリバコが彼の冷気によって凍り付き、その動きを止めたばかりだ。
……とはいえ。

――さすがに、このままじゃキツイですね……。
省34
252: 那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI 2017/02/09(木)19:47 ID:jX3DFzkh(3/5) AAS
>な、ぐがっ―――!?

ドガァァァァァァッ!!!

尾弐のうめき声と、その直後の轟音に、橘音は咄嗟に振り向いた。
見れば、尾弐が軽自動車の激突を喰らい、商店街の店舗の壁面に叩きつけられている。

「クロオさん!」

思わず叫ぶ。ブリーチャーズ随一の頑強さを誇る尾弐だ、致命傷には至っていないようだが、それでも少なからぬダメージであろう。
解せないのは尾弐の様子だ。百戦錬磨の尾弐が自動車の投擲などというモーションの大きな攻撃に対処できない筈がない。
いつものように左腕で払いのけるなりすればいいだけの話だ。尾弐の膂力はそれを充分可能にする。
何かに気を取られていた?いや――
省36
1-
あと 33 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.142s*