[過去ログ] 【腐女子カプ厨】巨雑6439【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net (505レス)
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425: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:20 d AAS
(今日もリヴァイさんは整った顔してるなぁ……)
 いっそ自分なんか撮らずにリヴァイをモデルにしたほうがいいんじゃないか。ああ、自分で自分を撮ることは無理か。もったいない。
 寝ぼけた頭で、エレンはそんなことを考えてふわりと笑った。
「幸せそうな顔をしているところ悪いが、そろそろ出ないと間に合わない」
リヴァイが布団にくるまったエレンを揺する。体が動くと頭が冴えてきた。
「……! え、あ、…………え? リヴァイ、さん?」
「おはよう、エレン」
 日が昇る前で外はまだ暗い。跳ね起きてベッドサイドの時計を確認すると時間は早朝の四時前だった。寝坊したかと思ったが、そこまで寝過ごしてもいない。
「な、なんでここに?」
「マスターキーを借りた。起きたらいつもメールが来るのに今日はなかったからな」
省7
426: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:21 d AAS
 着替えている間、リヴァイの視線はずっとエレンに向けられたまま。
 顔を洗って頭がハッキリしてきたエレンはそこでふとした違和感に襲われた。また気づいてしまった。決して気づきたくなかったのに、また。
(……好きな相手が目の前で着替えてたら多少はこう、なんか、むらっとくるよな、)
 エレンは水に濡れたリヴァイにドキドキしたことを思い出す。リヴァイは眉ひとつ動かさずにエレンが着替え終わるのを待っている。
 その姿はただのカメラマンだ。恋人ではない。
 なんの反応もされないということは、エレンを全く意識していないのだろう。
 一方通行になってしまったかもしれない気持ちの整理はまだつかない。
 だってまだ昨日気づいたばかりだ。しかもつき合ったのだって最近のこと。
 なにか、ほんの僅かにでもリヴァイが焦るような仕草をしてくれていたのなら、エレンはまだ信じることができるのだ。
 それなのに、思う通りにならない現実に奥歯を噛み締める。
省17
427: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:21 d AAS
 リヴァイのカメラがカシャカシャと連続して鳴った。
 その音が鳴り終わるとリヴァイはカメラから手を離す。

「一旦休憩にしよう」

 エレンにもその言葉は届いていたが、足がその場から動かなかった。なぜかは自分でもわからない。
 ただ、なんとなく。その場にしゃがみこんで、朝日できらきらと光る水面を見つめた。
 ひんやりと冷たい空気に包まれて、感じる太陽が暖かくて気持ち良い。
「寒かっただろう。風邪をひく」
 背後から誰かくる気配がして、上から声が降ってきた。
 振り返るとリヴァイがブランケットを持って立っている。
 それ以上言葉を発さずに前方に回り込んできたリヴァイは、地面に膝をついてエレンと視線の高さを合わせ、持っていたブランケットをエレンの肩にかけた。
省21
428
(1): (ワッチョイ 13b8-G+K4) 2016/04/06(水)21:21 0 AAS
>>312
風呂入ってたで
この場で状況を大きく動かせる存在といえばゆみうよな
土壇場で来てくれるとおもろいんやけど
429: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:21 d AAS
 キスされたことを疑問に思うよりも先に、リヴァイはあんな顔をしないと自分とキスもできないことに気づいてしまう。
 好きでもない男とキスするなんてエレンだって御免だ。
 絶対にしたくない。それをさせてしまったのは仕事のためか、昨晩の償いのつもりか。
 どちらにせよ、このキスでエレンは確信した。
(本当にもう、好きじゃないんですね)
 昨日思った通りだった。
 痛い痛いと心臓が悲鳴を上げている。
 なんで気づいてしまったんだろう。
 なんで好きになってしまったんだろう。
 リヴァイみたいな人に好きだと言われれば意識しないなんて無理だ。仕方ない。
省14
430
(1): (ワッチョイ 0bc8-RFax) 2016/04/06(水)21:21 0 AAS
>>412
なんか1回しかDLできないとか見た気がするんやけど
早売りの人は気をつけた方がええかもな
431: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:21 d AAS
 好き合ってもないのに、付き合う意味があるのかと考えて何度か別れましょうとメールを作成したけれど、送信することはできず、未送信のままエレンの携帯電話に溜まっていく。
(だって。付き合っていればまたオレを好きになってくれるかもしれない)
 そんなことあるわけない。この関係を望んだのはエレンだけだ。
 リヴァイは早く自由にしてあげなければならない。分かっているのに、できなかった。
 だからせめてリヴァイの気苦労が減るように。
 前よりも真剣に(前も真剣だったけれど)撮影に打ち込む。リヴァイとの距離は常に一歩あけた。
 そのことを意識した状態でいると、不意にリヴァイから近づいてきた時にビクリと体が跳ねてしまって、そういう時は大体、咳をして誤魔化す。
 エレンをモデルにして良かったと思われたくて。仕事の汚点にはしたくなかった。
 カメラマンとモデルの関係が拗れるといい写真を残すことは難しくなる。もうしてはいけないことをたくさんしてしまったから、これ以上は失敗できない。
 名前だけの『恋人』を見るたびに痛む胸に気づかないふりをして、自分の気持ちに蓋をした。
省14
432: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:22 d AAS
 いっそ嫌いになれれば楽になれるのにそれすらできず。
 ただ、心臓がズキズキ痛み、その痛みで意識を保っていた。

 最後の撮影は海浜公園で行われた。
 リヴァイからの指示はなく、公園の中を自由に回っていればいいとのことだったので、好き勝手に動くことにする。
 最初はこれでいいのかという戸惑いが強かったけれど、一時間もそれを続けていれば戸惑いも吹っ切れて一人の散歩を楽しむようになる。
 数時間、一応カメラを気にしてゆっくりとした動きで公園内をぐるぐる回り、最終的にたどり着いたのは浜辺だった。
 今日もまた晴天で風もなく、穏やかに波を打つ海が広がっている。
 海水浴の季節にはまだ早いので人もあまりいない。
「すっげーきれい!」
 元々海が好きだった。
省14
433: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:22 d AAS
 このタイミングで思いっきり笑顔でカメラを見たらきっと驚くに違いない。両手をパンパンと合わせて簡単に砂を落とした。
 そのままぐるん! となんの予告もなく、上半身を回して、横から写真と撮っていたリヴァイに向けて全開の笑顔を見せた。
 カシャカシャカシャカシャカシャ……
 何度もシャッター音が聞こえてきて、仕掛けたのは自分だったけれどそんなに撮られると恥ずかしくなる。
「そんなに撮らないでくださいよー!」
 カメラに両手の平を突き出して顔との間に遮りを持たせると、ようやくシャッター音が止まる。
 リヴァイの手からカメラが離れ、ネックホルダーにぶら下がって胸のあたりでぷらぷら揺れていた。
「どうしたんですか?」
 自然体の写真を撮りたかったのに、カメラ目線なんかしたから気に障ったのだろうか。でもそれならそれで注意されるはずだし、そもそもシャッターはあんなに切られることはない。
「お前……っ、その顔は反則だろ……」
省7
434: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:22 d AAS
 その言葉にエレンがはっと息を飲んでいる間に、少し離れた場所にいるスタッフに告げれば、スタッフからは歓声がわき上がる。
 口々に「お疲れさまです!」と言い、拍手が起きた。
 なんとも呆気ない終わり方だった。
 そうは思ってもリヴァイが終わりだと言えば撮影は終わりで、同時にエレンの役目も終わってしまう。
 その後、リヴァイは簡単なデータの確認、他のスタッフは機材の後片づけをしてから、都合のつく者全員で簡単に打ち上げに行くことになっている。
 先にそのことを聞かされていたエレンも参加する予定だった。
 ちなみに本打ち上げはまた後日あり、今日は一旦のお疲れ会といったところらしい。
 普段ならばやることがないエレンは先に帰宅となるも今日は暇を潰さなければならない。
 砂で汚れた手足を洗い、汗ふきシートで体を拭くとスッキリした。
 車には着替えも準備してあるので、スタッフに鍵を借りて空いた時間の内に着替えてしまう。大きなワゴン車で窓にはカーテンがかかっていた。
省14
435: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:22 d AAS
「おおー、めちゃくちゃいいね。モデル、エレンで大正解!」
「そうだな。あいつが引き受けてくれてよかった」
 外から聞こえてくる会話にエレンは嬉しくなった。
 リヴァイがエレンをモデルにして良かったと他者と話している。彼らはエレンがここにいることを知らない。つまり、これは本音だ。
 頑張って良かった。
 この言葉を聞けただけで満足できる。自然と口元に笑みが浮かんだ。傷つきすぎた心臓に鎮痛剤が打たれた。
「わたしのアドバイス通りにして良かったよね」
「…………」
「なにその間は。エレンが引き受けてくれたのってわたしのお陰じゃん!」
「……まあ、そうなんだが」
省21
436: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:23 d AAS
 好かれようと努力したことも。
 付き合うことになった時の喜びも。
 なにも、なにも。リヴァイは感じていなかった。思っていなかった。
 全てエレンの一方通行で、全てエレンだけが感じ、望んだことだった。
 それが分かってしまえば全てが簡単に繋がるのだから笑えない。
 最初から、この想いが叶うはずなかった。
 それならば尚更、距離を取ったことはいい判断だったんだ。
 あれ以上近づいていたら、嫌いにランクダウンしてしまっていたかもしれない。
(……馬鹿みたいだ、)
 リヴァイの言葉を信じた自分も。エレンに告白されて後に引けずに我慢して付き合っていたリヴァイも。
省21
437: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:23 d AAS
「先生さようならー!!」
「おう、また明日な!!」
 勢いよく手を振る少女に向かってエレンも同じように大げさに両手を上げて手を振った。その隣にいる母親は笑いながらエレンに向かって頭を下げている。
 彼女は母親にしてはまだ若かった。エレンと同じ年代だと聞いたことがある。
 自分ももしも早く結婚をしていればあれくらいの年代の子供がいたのだろうか。
 子供の手を引いて帰っていく親の姿を見るたびにエレンはそう考えていた。
 シガンシナ地区にある小さな保育所がエレンの勤務先だった。
 住宅街の傍にあるこの保育所に預けられるのは先ほどの母親のように両親が共働きをしている家庭や母子、または父子家庭の子供も多い。
 あまり各家庭の事情を詮索するつもりはないし、エレンとしては子供と触れ合えればそれでよかった。
 昔から子供が好きだったから今の職業は天職だと彼自身は思っている。
省11
438: (ワッチョイ 9fd9-G+K4) 2016/04/06(水)21:23 0 AAS
>>430
フライングしてダメやったとか悲しいしな
発売日まで待つほうが懸命やな
439: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:23 d AAS
 スピードをつけたおかげで抱き着くというよりは彼女の突進を身体で受け止め、思わずよろめいてしまう。
「こら走るなよ。危ないだろ?」
「だってエレンが呼んだから」
「エレンじゃなくて先生って言いなさい。ったく」
 そうは言いながらもエレンは笑いながらミカサを抱きあげた。
 そして慣れた様子で彼女を抱き上げると、先ほどまでミカサが遊んでいた場所まで連れて戻る。
 ミカサは毎日最後まで残る園児だった。彼女の父親は毎日迎えが遅く保育所が閉まるぎりぎりの時間にならないといつも迎えに来ない。
 駅からここまで走って来る時もあるらしく、冬でも額に汗を浮かべて迎えに来ることもあった。
 すまないと頭を下げる彼のことをエレンも他の保育士も迷惑だとは思ってはいなかった。
 詳しくは知らないが父親と母親は彼女がこの保育所に預けられる前に離婚をしてしまったのだと聞いている。
省18
440: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:23 d AAS
 ため息をつきながらエレンはミカサが組み立てた積み木の上に最後のひとつを乗せる。
 三角形の積み木を乗せれば家のような形が出来上がった。
 ミカサはその周りに小さなぬいぐるみを並べる。どうやら積み木の建物が彼らの家らしい。
「どれがお父さん?」
「クマさん。それでウサギさんがお母さん」
 並べたぬいぐるみを一つひとつ指さしながらミカサはエレンに家族たちを紹介していく。
 それを眺めながらエレンはミカサに相槌を打っていた。
「ワンちゃんがお兄ちゃんでネコちゃんが妹」
「そうか、たくさんいるな」
「うん、みんなが寂しくないように。家族は沢山いたほうがいいから」
省9
441: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:24 d AAS
「……エレン?」
 先ほどよりも強く、きつく抱きしめる彼の腕にミカサは困惑を示す。
 はっ、と我に返りエレンは慌てて腕の力を緩めた。
 身体を離すことはなく、腕の中にミカサを閉じ込めたままエレンは彼女の顔を覗き込む。
「そうだよな、こうやっていれば寂しくなんてないもんな」
 やはりミカサだけはエレンにとって特別だった。
 どうしても構ってやりたくなってしまうし、他人事として見られない。
 出来ればずっと傍にいてやりたいと思う。
 この保育所から巣立った後も、自分がもしもこの子と一緒に暮らせればきっと寂しい想いなんてさせない。
 彼女とこうして迎えが来るまでの時間を二人きりで過ごしている間、何度もそういった想いが過っている。
省8
442: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:24 d AAS
 がらっ、と扉が開く音がする。
 エレンとミカサ、二人揃ってそちらのほうを見やれば一人の男がそこに立っていた。
 今日は額には汗は浮かんではいない。チェックのマフラーを巻きグレーのスーツを着た男は彼らの姿を見て鋭い瞳をほんの少し和らげた。
 どきり、と心臓が大きく高鳴った。ミカサよりも彼のほうへと視線が釘付けになり、外せなくなってしまう。
 穏やかに見つめる視線は自分に向けられたものじゃないことは知っている。
 それでも今は勘違いもしてしまいそうになる。
 いや、実際してしまっていた。彼がそんな眼差しで自分を見つめているものだと思うと胸がさらに苦しくなる。
「お父さん」
 ミカサは彼に向かってそう叫ぶ。その声にエレンは現実に引き戻された。
気付いた時にはミカサはぬいぐるみを手放していた。
省14
443: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:25 d AAS
 エレンがいつも最後まで残ってミカサの相手をしていることはリヴァイも知っていた。
 この時間帯に残っているのは大抵エレンしかいない。
はじめはあまり話すこともなかったが、機会が増えれば自然と会話も増える。
 しかもエレンは女性ではなく男性だったから余計に距離も縮まったのかもしれない。
 子供を放っておいて仕事に行くなんて、という女性からの視点ではなく同じ男性として同情をしてくれるエレンにリヴァイはいくらか救われているのだというは話をリヴァイ本人から直接聞いたこともあった。
 付き合いが深くなれば連絡先も交換をするし、対応に関しても贔屓とまではいかないが少し甘くもなってしまう。
 リヴァイは仕事が終わってから急いで保育所までやって来てはくれるが、それでも最終の預かりの時間を過ぎてしまうことも何度かあった。
 そういった時もエレンは文句も言わずにミカサの相手をしている。
 事前にリヴァイから連絡を貰えば彼女と一緒に夕飯まで食べることさえもたまにあった。
 本当は公私混同なんてしてはいけないことなのだが、エレンはリヴァイに対して甘かった。彼だけは特別だ。
省17
444: (スプッ Sd9f-G+K4) 2016/04/06(水)21:25 d AAS
 同時に抱くのはやはりミカサに対しての罪悪感だった。
 彼女の父親のことを父親として見ることをしていない。
 一人の男として意識をしている。
 その為にミカサのことも多少なりとも利用していた。
 悪いとも思うしいけないことだともちろん自覚はしている。
 でもそれを止められない自分がいることもまた事実だ。人として最悪だ、エレンは彼らの姿を見送る度に自分を蔑んだ。
 幼いミカサは恐らく気付いてはいないはずだ。
 エレンが自分の父親のリヴァイに恋情を抱いていることを、まだ彼女は知らない。

 エレンはゲイだ。

 いつから、という明確な時期はない。
省11
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