アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 (1000レス)
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975: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:38 ID:EOmKTrqE0(47/63) AAS
「なんで……なんで、こんな事に」
「……いきなりの事で、あたしも何といえばいいか」
リリスティはカーテンで閉ざされた窓に体を向ける。
ヴィルリエも、いつもの飄々とした表情は失せ、苦渋に満ちた顔を覗かせていた。
「魔道参謀、皇帝陛下に、この事を今すぐ伝えて」
「は。直ちに」
リリスティはヴィルリエに命令を下す。それを受け取ったヴィルリエは部下に魔法通信を送らせるため、執務室から退出していった。
ヴィルリエと入れ替わりに、4人の衛兵が少佐の階級章を付けた士官に率いられながら入室した。
「次官。あとは我々にお任せください」
「……そうね。あとはお願い」
省11
976: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:42 ID:EOmKTrqE0(48/63) AAS
「次官。内容はどのように?」
「今読み上げるから、心して聞いて」
リリスティは、作戦室の一同にそう言うと、遺書の内容を読み始めた。
「この手紙が読まれている頃には、私は既に息絶えている事であろう。私は、この一連の敗北によって、帝国海軍は大規模な作戦行動力を喪失した上に、
帝都攻撃を許した責任を取り、自らの一命を持って、これらの敗北を償うことにした。あとに残される諸君らには誠に申し訳ないと思うが、これもひとえに、
私の作戦指導が招いた事である。また、ここ最近は自らの体と、精神に限界を生じていると痛感する事を何度も感じて来た。特に、帝都空襲の際に、
貴重な航空戦力を、陛下の直々の命とはいえ、意見具申すら行わずに、敵機動部隊に突入させ、無為に戦力を喪失させた事は、今思うにも、ただただ、
私が陛下に“怯えている”事に原因はあれども、それ故に、勇気を振り絞らなかった末に招いた事でもある。私はこれらを踏まえたうえで、戦力の
大量喪失の責任を感じると確信する。今や、帝国の危急存亡の折、貴重な戦力をこれ以上、無下に失う事は是が非でも回避しなければならない。
特に、陛下の勅命を受けて、圧倒的優勢な艦隊を自殺的に突入させ、未来のある将兵をあたらに失わせるような事は、是が非でも避けるべきであると、
省12
977: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:42 ID:EOmKTrqE0(49/63) AAS
「海軍総司令官の後任は、モルクンレル次官を……と、レンス提督は遺書の中で申されております。事ここに至っては、海軍総司令官というポストを
空席にしたままでは全軍の士気にも影響します。次官……不本意とは思いますが、レンス提督の申されているとおり、ここは次官に全海軍の指揮を
執って貰いたいと、私は思います」
「私も同意見です」
「私もであります」
幕僚達は、リリスティがレンス元帥の後を継ぐ事に同意し始めた。
だが、彼らの言葉に対し、リリスティは戸惑いを隠せなかった。
「なぜ……私が……私は、レンス提督とは幾度も意見を戦わせ、時には憎まれ口を叩きもしている。恐らく、私はレンス提督に恨まれこそすれども、
好意的に思われている事は無いと思っていた……でも………なんで、あたしに……?」
「それは、次官の才能を、レンス提督が常に認めておられたからであると、私共は確信しております」
省10
978: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:43 ID:EOmKTrqE0(50/63) AAS
「しかし!このような状況下でこそ、後任は素早く決めねばなりません。それでも躊躇われるのならば、今はひとまず、総司令官代行と言う形を取り、
その間、幾人か総司令官として適任者を選びましょう。その後、この候補者の中から総司令官に任命し、着任して頂くというのはどうでしょうか」
「レンス提督のご意向に背く形ではあるが……モルクンレル次官が躊躇われるのならば、それも致し方ないと、私も思う」
それまで黙っていた、総司令部主席参謀長が口を開く。
「次官、魔道参謀の言う通り、一時的に総司令官代行に就任して頂きたいと、私は思います。その旨を皇帝陛下にお伝えし、早急に候補者を探しましょう。
私としては………第4機動艦隊のワルジ・ムク大将を候補にあげます」
「ムクか………確かに、彼なら総司令官の任を全うできるかもしれないわね」
リリスティは主席参謀長の言葉に頷きつつ、心中では
(ムクとはまた、上司と部下の関係に戻ってしまうかな)
省13
979: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:43 ID:EOmKTrqE0(51/63) AAS
「いや……このさい非常時であるから、例え中将であっても、その器があるのならば、飛び級をさせてでも総司令官に任命していい」
「飛び級ですか……他の将官連中から苦情が上がりそうですが」
主席参謀長は難色を示すが、リリスティは躊躇わなかった。
「構わない。総司令官代行の命令よ」
「……ならば、推挙するしかありませんな」
主席参謀長は諦めた表情を浮かべつつ、ヴィルリエの案を受け入れる事にした。
「この他にも、海軍総司令官に相応しいと思う者が居れば名前を挙げてもらいたい。そして、候補者が決まり次第、皇帝陛下にご報告する。次官……
いえ、総司令官代行。それで良いですね?」
「ええ、それで行く」
省17
980: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:44 ID:EOmKTrqE0(52/63) AAS
12月16日 午前9時 シホールアンル帝国ウェルバンル
リリスティ・モルクンレル大将は、皇帝陛下直々の命令で帝国宮殿に呼び出され、今は謁見の間の前で、紫色の礼服に身を包みつつ、制帽を
小脇に抱えながら入室を待っていた。
リリスティは、帝国宮殿に到着し、皇帝陛下の謁見を待つ中、心中では何故?と言う言葉を延々と吐き続けている。
(なぜ………なぜ、あたしが………)
リリスティは確かに、海軍総司令官代行という役目を担う事に同意した。
それは、亡きレンス元帥の意思でもあった。
だが、それは一時的な意味での話であったはずだ。
リリスティとしては、海軍の頂点にずっと居座るつもりなど毛頭なく、いずれは前線に復帰したいと考えていた。
こうして中央にいるのは、今後のために視野を広げるという意味合いもかねての事だ。
省11
981: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:45 ID:EOmKTrqE0(53/63) AAS
彼女は再び、心中で自問自答を続ける。
そこに、後ろから近づく足音が聞こえてきた。
その足音は、重々しくも、どこか安心感を与えるような物だ。
リリスティは、その足音に聞き覚えがあった。
「もしや……リリィか?」
その声にも、聞き覚えがあった。
リリスティは振り返ると、驚きの余り一歩後退してしまった。
「え……エルグマド閣下!?」
「おお、やはりリリィか。久しいな」
その初老の男性将官は、紛れもなく、ルィキム・エルグマド予備役大将であった。
省11
982: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:46 ID:EOmKTrqE0(54/63) AAS
謁見の間に入ると、皇帝であるオールフェス・リリスレイが玉座に座っていた。
この日のオールフェスは、いつもは肩肘に頬杖を置いた気楽な恰好ではなく、背筋を伸ばしたままの姿勢だ。
リリスティは、心なしか、オールフェスが緊張しているようにも思えた。
エルグマドとリリスティは、互いに横に並んだまま玉座の前まで歩き、赤い絨毯が途切れる一歩前の所で止まり、共に頭を下げた。
数秒ほどが経ち、オールフェスが口を開いた。
「両名とも、面をあげよ」
静かながらも、威厳のある声が響く。
2人の将官は顔を上げ、オールフェスに視線を合わせた。
「今回、陸海軍の首脳が相次いで死去、または辞職した事に関して、私としては非常に残念に思う反面、戦局の悪化に伴う重圧に、レンス提督と
ギレイル将軍に職務を任せすぎたという責任を、私自身、痛感している。2人の高官が相次いで離脱するのは、帝国の未来を暗示しているようで、
省12
983: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:47 ID:EOmKTrqE0(55/63) AAS
「総司令部で決めた意向にそぐわぬ形になるが、そこの所は、どうか理解してもらいたい。だが……今は非常時だ。帝国存亡の危機にある今、
陸海軍を任せられるのは……貴君らしかいない」
オールフェスは言葉を区切ると、最初はリリスティを、次に、エルグマドの顔を見る。
「私はここに、リリスティ・モルクンレル提督と、ルィキム・エルグマド将軍両名を、海軍、ならびに、陸軍総司令官職に任ずる。そして、同時に……
両名に対し、帝国元帥の称号を与える事を宣言する」
オールフェスの言葉が室内に広がる。
室内には、重苦しい空気が充満していたが、オールフェスはそれに構うことなく、玉座の隣で待たせていた侍従を呼び寄せた。
2人の侍従は、オールフェスの前に歩み寄る。
オールフェスは、侍従が持っていた元帥剣を手に取り、まずはエルグマドに手渡す。
シホールアンル帝国軍では、元帥に任命されると、必ず帝国宮殿で、皇帝から元帥剣を手渡される。
省15
984: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:48 ID:EOmKTrqE0(56/63) AAS
「………何か申したいことがあるか?」
「いいえ、ございません」
リリスティは、幾分張りを感じさせる声音で、オールフェスに返した。
「先にも申した通り、戦況は芳しくない。しかし、戦争はまだ続いている。栄えある終戦を迎えるためにも、私は、両名の率いる軍の活躍を、切に願う物である」
オールフェスは、言葉の最後の部分を強調する。
「今日は急の呼び出しにもかかわらず、この帝国宮殿に来てくれたモルクンレル提督、並びに、エルグマド将軍に深く感謝する。今日はこれにて以上だ」
省13
985: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:48 ID:EOmKTrqE0(57/63) AAS
「どう?肩の調子は?」
ヴィルリエは、リリスティの肩を指差しながら聞いてきた。
「どうもなにも、次官と違って、総司令官という仕事は、えらい重圧を感じる物ね。この階級章の重みは、想像以上……と言った感じかな」
「その割には、口調が軽いまんまね」
「重くする必要はないからいいの」
ヴィルリエの無粋な突っ込みに、リリスティはやや顔を膨らませて言い返した。
リリスティの肩の階級章は、それまでの3つ連なった紋章と違い、十字に交わる2つの剣と盾が重なった大きな印が1つだけ付いている。
この印こそ、シホールアンル帝国軍元帥の階級章である。
「それにしても……まさか、陸軍総司令官にエルグマド閣下が就任されるとは思わなかったなぁ」
「リリィ、それ何回目よ」
省13
986: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:49 ID:EOmKTrqE0(58/63) AAS
「こりゃ、レンス元帥も大変だったろうなぁ」
「色々と、陰口を叩いていた頃が恥ずかしいかな?」
「そりゃ、まぁ………」
リリスティは過去に自分を恥じてか、思わず口ごもってしまった。
「ほう……随分とお疲れのようじゃな」
唐突に出入り口の扉が開き、面白い物を見たと言わんばかりの口調で誰かがそう言った。
休憩室の机でだらけていた2人は、慌てて立ち上がった。
「え、エルグマド閣下!」
「失礼しましたぁ!」
「ハッハッハ!まぁまぁ、そう固くならんでよろしい。ささ、席に座ってくれ」
省11
987: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:50 ID:EOmKTrqE0(59/63) AAS
「先の会議でも言ったが、現状の軍編成では、敵の進撃を食い止めることなど、夢のまた夢だ。皇帝陛下としては、私にこの状況を何とかしろと
縋ってきたようだが、幾らわしでも、無理な物は無理だ」
「海軍も同様です。第一、連合国海軍……特にアメリカ海軍との戦力差は隔絶しています。できる事と言えば、沿岸部の掃海ぐらいですが、
それもまた、いつまで出来る事やら」
リリスティは溜息を吐いた。
「このようなポストなぞ、なりたくなかったものだ。リリィもそうであろう?」
「ご明察の通りです」
リリスティがそう答えると、エルグマドも深いため息を吐きつつ、気晴らしに水を飲む。
「望まぬ頂点を、ほぼ強引に押し付けられたわしらだが、それでもやれるべき事はやるしかない」
「と、言いますと。やはり、現有戦力で徹底抗戦するしか、方法はありませんか」
省11
988(1): ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/30(金)20:51 ID:EOmKTrqE0(60/63) AAS
SS投下終了です
989(1): 2016/09/30(金)21:48 ID:Pbx6.li60(6/6) AAS
レンス元帥…今までお疲れ様でした。
そして再び登場したエルグマド閣下。
穏健派(?)で現実が見えている閣下とある意味帝国側の主人公であるリリィが元帥になったんですね。
未だに諦めていない皇帝陛下ともう終戦後のことを見据えてるお二方…。
ある意味どう動いていくか少し読めなくなりました。
990(1): 2016/09/30(金)22:40 ID:9R7ffzTs0(28/29) AAS
投下乙
やはり首都周辺の部隊は広報部隊も兼ねていいところの人達を集めてしまった結果ですね
敗戦直前の薄暗い雰囲気を醸し出しています
今回新しく就任した2人はカール・デーニッツ、鈴木貫太郎ポジションに近いといった感じでしょうか
そしてレンス元帥の息子が一番被害者じゃないですかいやだー!
アメリカから哀悼の意を送ろう。鈴木貫太郎首相みたく
嫌味にしか聞こえなさそうだけど
皇帝陛下の言うように首都に連合軍が来るまでは時間がかかるかもしれない
だが国民はそれまで持ちこたえることができるかな?
首都包囲でレニングラード化フラグが
991(1): 2016/10/01(土)01:17 ID:w2nCsok60(11/11) AAS
投下お疲れ様です。
未だまだ「戦争」を諦めきれないオールフェスと、現実が数字以上に
見えている二人の元帥。
徹底抗戦というても海軍はまともに活動できないし、陸軍も末期戦
以上の終末感が漂う状況じゃあどうにもならんですわいね。
この世界でベルリン包囲が再現されるか、レニングラードの悪夢の
ような状況がいでくるのかどちらにせよ帝国の明日は暗いですね。
立憲君主じゃなく、絶対君主制以上の独裁国家なシホールアンル帝国
だとまともに終戦工作出来るのかしら、ホント。
992(2): 2016/10/01(土)11:31 ID:Auftw5ow0(1) AAS
>>988
乙彼様です。
リリスティは海軍トップになっても言動は変わらず、ぽややーんな方ですねw
こういう方が戦後の政治で上手く国を立て直すのかもしれませんが
オールフェスは末期の旧日本軍を連想させますが、
それと旧日本軍が違うのは講和など終戦迎えるためにいろいろと動いてる派がいたから
ポツダム宣言までいけたのですが、F世界ではオールフェスが敗北を認めて降伏宣言は難しいのかもしれませんね。
政治体制が違い過ぎるってのもあるが、国民がただ避難するだけで皇帝非難があまりないってのも驚きですからね。
ですが、そろそろでしょうかね。
アメリカ側の最新鋭の初期型ジェット戦闘機の登場などWW2戦後の冷戦幕開けに伴う当時の最新兵器のオンパレード
省1
993(2): 2016/10/01(土)18:43 ID:ppPQaMN.0(3/4) AAS
投稿 乙です
本土&首都決戦なら国民総動員で血みどろの消耗防衛戦しかないような気がしてきましたね。
爆弾抱えて少年兵や老人兵が戦車に突撃するナチスドイツ末期の鬱な展開しか浮かばないという状況下。
原子爆弾投下されないあたりまだマシというべきか余計悲惨というべきか。
994(2): 2016/10/02(日)12:15 ID:grkVvGho0(1) AAS
乙です。
不利な末期戦で軍のトップとして任命される…ある意味
「敗戦後の生贄用」
な場合もあるのでお二方の今後が心配で仕方ない。
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