アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 (1000レス)
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590: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:05 ID:263ZQ54w0(1/225) AAS
こんばんは。お久しぶりであります。

>>581氏 SS投下お疲れさまです!
遂に・・・遂にNATOが動き出しましたか。
異世界側は、次々と現れるNATO軍に対して何を思うのか・・・

それでは、長い間お待たせしてしまいました。
SSを投下いたします。
591: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:08 ID:263ZQ54w0(2/225) AAS
第274話 暁から来たる刺客

1485年(1945年)12月9日 午前4時 シギアル沖北東312マイル地点

北洋の海は、本格化した冬によって氷点下近くにまで達していた。
海上をなびく風は弱く無く、波は風に煽られてやや高くなっている。
時折ふぶく突風は、極低温にまで達した冷たい海水を宙高く吹き散らしていく。
そこを、唐突に現れた巨大な物体が腹に応える音を立てながら、鋭い切っ先で冷たい海水を難無くかき分けていく。
物体はその巨体を上下させながら、早いスピードで海上を驀進していく。
真っ平らな甲板に、中央部に纏まった艦上構造物を持つ物体……
もとい、第3艦隊旗艦である正規空母エンタープライズは、周囲の正規空母、護衛艦艇群を率いながら、北洋の海を一路、
西に向かって進み続けていた。
省13
592: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:08 ID:263ZQ54w0(3/225) AAS
調理室内はしばしの間静かだったが、別の炊事兵が油の入った大鍋に、何かを続々と入れていく。
直後に、油がはぜる音が鳴って、室内が再び喧騒に包まれた。

「チーフ!ライスが炊けました!」

サムナーは別の部下からそう伝えられると、彼はその部下に顔を向けてから新たな指示を飛ばし始める。

「ようし、後はいつも通りの要領で頼む。本命も丁度出来上がった。後は……」

そこへ、スピーカーから総員起床の号令が流れ始めた。
艦内アナウンスを聞いたサムナーはニヤリと笑ってから、続きを口にする。
省11
593: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:09 ID:263ZQ54w0(4/225) AAS
「諸君、続けていいぞ」

ウィルソン大佐がそう言うと、1等兵曹はやや頷き、部下の主計兵達に目配せしてから作業を続けさせた。
司令部の幕僚達がテーブルの側に用意された席に付くと、主計兵達は置かれた皿に朝食を盛りつけ始めた。

「ほう。今日はヴィクトリーカレーか」

ハルゼーは、目の前に置かれた朝食を見るなり、上機嫌な声で主計兵に話しかけた。

「はっ。自分達が気合を入れて作ったカレーであります」
省12
594: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:10 ID:263ZQ54w0(5/225) AAS
「うむ、やはり美味い!」
「ええ。これぞまさにカレーライス。頭の中の眠気も打ち消してくれますな」

参謀長のロバート・カーニー中将も口元に笑みを浮かべながらハルゼーに言う。

「このフライされた豚肉も美味いぞ」

ハルゼーはスプーンで切ったカツを頬張りながらカーニーに返す。
揚げた豚肉……日系人からはカツと呼ばれる揚げ物もカレールーとライスに絶妙にマッチしており、口の中で感じる程良い柔らかさと
サクサクとした食感は、誰が食べても満足できる美味さであった。

「朝から食べるヴィクトリーカレーか……いやぁ、この艦に乗れて本当に良かったと思いますね」
省15
595: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:11 ID:263ZQ54w0(6/225) AAS
午前4時50分 空母エンタープライズ艦内 搭乗員待機室

エンタープライズ戦闘機隊の中隊長を務めるリンゲ・レイノルズ大尉は、部下の戦闘機パイロットと共にブリーフィングルームに入室し、
席に座ってから5分ほど経った時、室内に飛行長が入室して来るのを確認した。

「おい、飛行長だ」

彼は、それまで雑談を交わしていた部下にそう言うと同時に、最前列で待っていたエンタープライズ攻撃機隊(VA-6)指揮官
ユージン・リンゼイ中佐が口を開く。

「起立!」
省11
596: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:11 ID:263ZQ54w0(7/225) AAS
「本日早朝を持って、我がエンタープライズ航空群は、他の母艦航空隊と共同で、シホールアンル帝国首都ウェルバンル、並びに、
同地の東20マイルにあるシギアル軍港に攻撃を行う。第1次攻撃隊は、今より20分後の午前5時10分に発艦を開始する」

スミスは指示棒の先端を敵地から、味方機動部隊の位置までなぞらせた。

「味方艦隊から敵地までは300マイルだ。道中、シギアルから50マイル圏内に居る敵の洋上監視艇に攻撃隊は発見されるが、
首都に侵入しているミスリアルの魔道士が通信妨害魔法を使って首都近辺、並びにシギアル港周辺の魔法通信を一定時間遮断するため、
奇襲はまず成功するだろう」

スミスは顔を地図からパイロット達に向ける。

「つまり、第1次攻撃隊は、首都やシギアル周辺に点在する敵ワイバーン群の迎撃を気にせずに攻撃できるという訳だ」
省12
597: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:12 ID:263ZQ54w0(8/225) AAS
「もし、首都の味方が敵の魔法通信妨害に失敗した場合、第1次攻撃隊は最初から、緊急発進した敵ワイバーン隊とぶつかる事になります。
そうなりますと、戦闘機隊はまだしも、護衛する攻撃機隊が危険に晒される恐れがあります。そのような事態に至った場合、艦隊司令部は
どのような対応をお考えでありますか?」
「それを今から説明する所だ」

スミスは淀みない口調で説明を始めた。

「今回、我が艦隊は3つのカテゴリーに沿って行動する事になる。まず、カテゴリーAは第1次攻撃隊の奇襲に成功した時だ。この場合、
第3艦隊は航空隊の反復攻撃をもって、シギアル、ウェルバンルの重要拠点並びに、在泊艦船を撃滅する。次に、カテゴリーBだが、
これは首都の魔法通信遮断作戦が失敗した場合、第1次攻撃隊は進撃途上中なら攻撃隊を分離し、第2次攻撃隊の戦闘機隊と合同して
ファイターズ・スイープを挑み、以降は強襲を行う。そして、敵戦力の覆滅が可能ならば攻撃を続行し、損害が大きければ攻撃を中止し、
戦艦を主力とする水上砲戦部隊を編成し、突入させてシギアル港の破壊を試みる予定だ」
省12
598: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:13 ID:263ZQ54w0(9/225) AAS
「よろしい。では」

スミスは幸運を祈ると言おうとしたが、唐突にブザー音が鳴り響いた。

「お……何だ?」

リンゲは首をかしげながら、室内に設置されているスピーカーに目を向けた。

「……おはよう諸君」
省14
599: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:14 ID:263ZQ54w0(10/225) AAS
「以上だ。それでは……この作戦に従事する全将兵の幸運を祈る!」

直後、ハルゼーの放送が終わった。
その瞬間、室内では爆発的な歓声が沸き起こった。

「OK!首都に居座るシホット共にきつい目覚まし時計をプレゼントしてやろうぜ!」
「ああ!それもとびっきり強力な奴をな!!」

誰もが顔を上気させ、現地での活躍を誓い合った。

「士気も上がったところで、ブリーフィングを終了する。諸君、必ず……帰還せよ。これは命令だ!分かったな!」
省13
600: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:14 ID:263ZQ54w0(11/225) AAS
まだ夜も明けきらぬ中、整備員が所々で照らされるライトの明かりを頼りに、出撃前の最終チェックを行っている。
そこに、発艦準備に取り掛かる攻撃隊パイロットが自らの愛機に駆け寄っていく様が見て取れる。
様々な色の服を着た整備員達は、甲板のあちこちで入念な準備を進めていく。
操縦席で最後の調整に当たっていた整備員は、パイロットが近付くなり機体の状況を一通り説明しつつ、最後の点検を順次終えていく。
コクピットに座っていた機付き整備員も、パイロットに愛機を引き渡すため、手慣れた動きでコクピットから出て、パイロットが入れ
替わりにコクピットに入っていく。

エンタープライズの飛行甲板には、弾薬を搭載し、暖機運転を終えたF8Fベアキャット24機、AD-1スカイレイダー24機が翼を
折り畳んだ状態で駐機している。
エンタープライズの第1次攻撃隊はこの48機で構成される事になっている。
エンタープライズの左隣800メートルを航行する空母ヨークタウンも、F8F、AD-1計48機、それに加えて、誘導役のS1Aハイライダー1機が
省16
601: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:16 ID:263ZQ54w0(12/225) AAS
ハルゼーが眉を顰めながらそう呟いた時、ひと際大きな波がエンタープライズの艦首に踏み潰され、ドーンというやや大きな動揺と共に
飛行甲板最前部が海水で洗われた。
これと同様の光景は、第3艦隊のあちこちで見られており、エンタープライズの右舷側斜めを航行する戦艦アイオワなどは、艦首付近が海水に
覆われて派手に水しぶきを上げる程であった。
ハルゼーは無言のまま、その場で発艦の機会が巡るのを待ち続けた。

午前5時10分になると、幾らか艦の動揺が収まってきたように思えた。

「お……これは、予報通りになるか?」
「ほんの少しですが、揺れが小さくなってますね」
「ラウスもそう感じるか」

ハルゼーはニヤリと笑いながら、心中では予報官の正確な天候予測に賛辞を送っていた。
省11
602: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:16 ID:263ZQ54w0(13/225) AAS
命令が発せられたあと、TG38.1、TG38.2、TG38.3の各艦が群旗艦からの命令を受け取り、その後、一斉に風上に
艦首を向けていく。
大小さまざまな艦が一斉回頭していく様はとても見応えがあり、各艦のレーダー員は平静さを装いながらも、心中では見事な艦隊運動を
誇らしげな気持ちで見つめていた。
エンタープライズは、僚艦であるヨークタウン、ワスプ、軽空母フェイト、戦艦アイオワを始めとする護衛艦群を従えながら、輪形陣を
組んだまま、風上に向けて鮮やかな転舵を終えた。
飛行甲板最前部から強い風が流れる。艦の速力は30ノットを超えており、発艦に必要な合成風力を得ていた。
エンタープライズ所属の第1次攻撃隊参加機は、最前列のF8Fから次々と車輪止めが取り払われ、まずは1番機がやや前方に出て
発艦指示を待つ。
リンゲ・レイノルズ大尉は、コクピットの風防ガラスを開け、艦橋の発着艦シグナルを見つめ続ける。
省15
603: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:18 ID:263ZQ54w0(14/225) AAS
「うむ。誰が見ても心地良いほどの発艦だったな」

ハルゼーは笑みを浮かべながら、何度も頷いた。
続いて2番機、3番機と、次々と発艦を終えていく。
この時、空にはいつの間にか朝焼けの光が見え始めていた。

「長官。夜明けですな」

参謀長のカーニー中将が東の方向を指さしながらハルゼーに言う。

「ワオ……予想以上に速い夜明けだな。気象班の知らせでは、夜明けは6時から7時半あたりだと聞いていたがな」
「これが例の、早明けというやつでしょう。この世界特有の……」
省16
604: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:19 ID:263ZQ54w0(15/225) AAS
攻撃機隊の発艦は、朝焼けのグラデージョンが徐々に鮮やかさを増していく中、順調に続けられていく。
6番機の発艦時には、既に編隊を組んでいた艦載機隊が爆音を響かせながらエンタープライズの上空を飛び去り、その下を6番機が
重い3発の爆弾を抱えながら、勇躍出撃していった。
それから程なくして、爆撃チームの最後のスカイレイダーも発艦を終えた。
艦隊上空でTG38.1から飛び立ったF8F、AD-1Aは徐々に編隊を組んでいく。これらの数は計146機にも上り、これにヨークタウンから
発艦したS1Aが誘導に当たる予定だ。
そして、TG38.2、TG38.3からも攻撃隊発艦終了の報告が入った。

「長官、第1次攻撃隊が進撃を開始しました」

カーニー少将が上空を指差しながらハルゼーに伝えた。
上空を見上げたハルゼーは、その壮大な光景に胸が熱くなった。
省4
605: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:19 ID:263ZQ54w0(16/225) AAS
1485年(1945年)12月9日 午前6時20分 シホールアンル帝国首都ウェルバンル

その日、シホールアンル帝国皇帝オールフェス・リリスレイは予定よりも早い時間に目が覚めた。

「……ふぅ。目覚めは悪くないな」

彼は、瞼を開けた後にすぅっと眠気が覚めていくのを感じるなり、軽い口調で呟いた。
就寝した時刻は12月9日を迎えてから1時間も経った午前1時頃であり、眠る直前までは、危機的状況に陥っている地上戦の報告を
受けて少なからぬショックを受けていた。
現在、シホールアンル帝国を取り巻く状況は加速度的に悪化している。
海軍はレビリンイクル沖の決戦で大敗し、シェルフィクル工場地帯は砲爆撃によって壊滅状態であり、陸軍は反攻作戦が頓挫し、逆に
反撃部隊が連合軍側の逆襲を受けて、重囲に陥っている有様だ。
偉大なる帝国軍が、悪夢と思い込みたくなる程の大敗を立て続けに起こしている状況は、オールフェス自身に相当なストレスを感じさせていた。
省12
606: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:20 ID:263ZQ54w0(17/225) AAS
オールフェスはそう言ってから、マルバ侍従長の肩を叩いた。

「それでは、予定よりお早めに朝食を摂られますか?」
「いや……予定通りでいい。俺はそれまで、あたりを軽く散歩するよ」
「畏まりました。では、また後ほど……」

マルバ侍従長は恭しく頭を下げると、侍従長室に戻っていった。

侍従長室は、オールフェスの寝室からさほど離れていない場所にある。
中に入ったマルバは、室内で今日の予定を打ち合わせていたメイド長と、2人の主任メイドに顔を合わせる。

「陛下は、今しがた起床された」
「あら…予定より少し早いですね」
省13
607: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:22 ID:263ZQ54w0(18/225) AAS
マルバは、オールフェスを幼少期から見て来たが、ここ数年のオールフェスの変貌ぶりは、明らかに痛々しいと感じる程であった。
しかし……今日は久方ぶりに、愉快そうな表情を浮かべるオールフェスが見られそうである。

「もしかしたら、今日は何かの祝い事が起きるかもしれぬな。メイド長、念のため、昼と晩に用意する食材をいつもよりも多めにしよう。
酒類も余分に出すかもしれないな」
「承知いたしました。朝食に関しては、今準備している分でよろしいですね?」
「うむ。それで良い。お前達も……お昼以降は忙しくなるかもしれぬが、そこは心しておくれよ」

マルバの指示を受け取った2人の主任メイドも、心地よく返事した。

同日 午前6時30分 ウェルバンル東地区

まどろみの中に、見慣れた光景が現れた。
何度も、何度も見た同じ光景……
省9
608: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:22 ID:263ZQ54w0(19/225) AAS
「そうですねぇ」

レイリーは腕組したまま、変わらぬ呑気な口調で相手に言葉を返していく。

「ですが、僕はやるつもりですよ」

彼は右手をテーブルに置き、そこに置いていた数枚の紙を相手に寄せていく。

「敵首都に迫る同盟国……アメリカ海軍機動部隊の艦載機を、わが種族最強の魔法を使って援護する……これほど素晴らしい物は無い。
と、私は断言しますね」
「禁呪指定を受けた危険な魔法を使ってでもか?」
「そうです。それに……我々は過去に、シホールアンルに屈辱的とも言える方法で国に攻め込まれ、危うく亡国というところまで
追い詰められた。貴方も最前線に立って戦闘を指揮していたから覚えているはずです」
「無論さ。あの時の恨みは絶対に忘れん……」
省11
609: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/17(日)23:23 ID:263ZQ54w0(20/225) AAS
相手は無言のままレイリーを見据えた。

「…………」
「ハルゼー提督率いる第3艦隊の艦載機集団が、無事に帝都に辿り着くには、相手の目と耳を潰すしか方法はありません。そのためにも、
大規模魔法通信妨害魔法……ハヴィエナは必要不可欠です」
「……艦隊の総力だけでウェルバンルやシギアルは叩き潰せるはずだ。敵の主力が、西のシェルフィクルに出向いているのならば、なおの事
可能だと思うが?」
「可能ではあると思います……ですが、首都近郊にはやはり、それなりの戦力を配置するはずです。情報にもある通り、シホールアンルは
“出せる限りの航空戦力、艦隊をすべて抽出した”のです。それは即ち、出したくない戦力……首都近郊に有している親衛航空軍団や最低限……
旧式とはいえ、戦艦を有する有力な艦隊は残しているでしょう。強襲ともなれば……ハルゼー提督の機動部隊は、この敵戦力とまともに
かち合う事になります」
省19
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