[過去ログ] 【伝奇】東京ブリーチャーズ【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net (285レス)
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241: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:56 ID:J3g7vBWU(4/11) AAS
>「ボクが囮になります!皆さん、コトリバコに総攻撃!まずは『ケ枯れ』させましょう!」
橘音はそう皆に指示した。囮。つまり彼はコトリバコの攻撃が自分に向くと認識している。
攻撃される理由に、心当たりがあるのだ。
(ようそんなんで嬢ちゃんに駄目出ししたなぁ。自分が一番危険やって分かっとるんやないか)
橘音の――彼か、彼女か――その秘された覚悟をおぼろげに感じ取って、品岡は内心で苦笑した。
そしてそれだけだ。何も変わらない。そんなことは、妖怪にとっては、どうだっていいのだ。
「しゃあ!これだけ膳が揃ったんや。そろそろ品岡おじさんのカッコ良いとこ見せたらんとな。
荒事はヤクザの専売特許ってこと、教えたるわい」
省32
242: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:56 ID:J3g7vBWU(5/11) AAS
巨大な頭部に棘を突き刺していた品岡はその動きにハンマーごと振り下ろされ、アスファルトに墜落する。
受け身をとって転がりながら衝撃を吸収すると、その上から緑色の液体が降ってきた。
「ひえっ……」
咄嗟に後ろへ跳躍し、なんとか引っ被ることは避けられた。
そしてそれがとてつもなく幸運だったことに、溶かされていくアスファルトを見て痛感した。
「迂闊に殴りゃしっぺ返しが来るってことかいな……」
化学耐性の高い舗装材であるアスファルトがああも容易く溶けるほどの強酸。
酸というよりも『溶かす』という呪詛に近い。それもとびきり強烈な。
おそらくは、臓器を溶解させるコトリバコ本来の呪いを戦闘用に改造して使っているのだ。
悠長に分析している暇はない。コトリバコはその粘液を、あろうことか自らの口から吐き出してきた。
省28
243: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:57 ID:J3g7vBWU(6/11) AAS
>「ま……、まさか……!」
>「そのまさかみたいだね……!」
>「おいおいおいおい、ちょっと待て。冗談だろ」
「あかんやろ……反則ちゃうんかそんなん……」
戦場となった薬局周辺に集うようにして現れたのは、新手のコトリバコ――7体。
交戦中のハッカイと合わせて計8体のコトリバコ、イッポウからハッカイまでご丁寧に全種類が勢揃いだ。
>「てめぇら大増殖してんじゃねえ! せめて横一列か前後二列に並べ―――――ッ!!
敵が8体も好き勝手に動き回ったら処理落ちするから!」
「もっと良いグラボを買えええーーーっ!!」
省27
244: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:57 ID:J3g7vBWU(7/11) AAS
しかし祈はお花摘みに中座したわけではないらしい。
それが証拠に彼女が身体や手足をぐるぐる巻きにしている白い物体はトイレットペーパーではなく分厚い布だ。
同じものの予備も持ってきたらしき祈は布の山を地面に置く。
「……戦えるんやな、嬢ちゃん」
品岡は糾弾をやめて静かにそう言った。
少女は答えない。応答は、言葉ではなく姿勢で示した。
祈の姿が再び消える。風が巻き、再び彼女が出現したのはハッカイの真後ろだった。
その俊足で敵の後ろに回り込んだのだ。
>「……ごめんな」
祈はハッカイの後ろで何事かをつぶやき、その足元に蹴りを入れた。
省30
245: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:58 ID:J3g7vBWU(8/11) AAS
>「えっ、ちょ、ビジュアル的に無理! お断りします!」
「何言っとるんやあいつ……」
こんな時にも発動するあれはもはや「ノエル」という名の状態異常かもしれない。
脚を失ったハッカイが身をよじらせてタックルを仕掛ける。ノエルはそれを危なげなく退避した。
身体をささえられないハッカイは地面を滑り、その衝撃で右の豪腕が外れて転がった。
「通っとったんか、刃が!」
ノエルの斬撃線と同じ部位が切り離されている。
皮一枚を断ったと見えて、その実皮一枚を残して他を断っていたのだ。
げに恐るべきはその刃の冴え、雪女の妖力は伊達ではない。
省29
246: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)21:59 ID:J3g7vBWU(9/11) AAS
「なるほど確かにクソガキの癇癪から他の子供を守ってやるのも……大人の役目ですな」
尾弐と品岡は東京ブリーチャーズにおける『大人』……実年齢ではなく立ち回りとしての大人という立場だ。
無論そこには荒事担当というポジショニングの理由も含まれているが、それだけではないと品岡は思う。思いたい。
たとえ盃を交わしていなくとも、一方的に慕っているだけだとしても。
尾弐と品岡は義兄弟だ。――兄貴分の信頼には、応えるのが舎弟の身上だ。
「ほな、兄貴が三匹引き受けてくるっちゅうさかい……ワシは二匹ばかし相手にしようかね」
懐から煙草を取り出し、片手で火を点ける。
肺一杯に煙を吸い込んで吐き出した彼の眼前には、二体のコトリバコが凍結から復帰し動き始めていた。
牛程度の大きさの『イッポウ』とライトバンほどの『ロッポウ』。
イッポウはコトリバコの中においては最下位だが、それでも複数人を容易く殺める呪詛を持っている。
省33
247: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)22:00 ID:J3g7vBWU(10/11) AAS
――――ッ!!
頭部を棘つきスレッジハンマーで痛打されたロッポウは、しかし頑丈な頚部によって仰け反ることはなかった。
炎上していたイッポウも地面を転がって火を消し、こちらへ飛び掛かってきている。
前方と背後、挟み撃ちの形になり品岡に逃げ場はない。
果たして、二つの巨大質量の激突は品岡をペシャンコに潰す……ことはなかった。
品岡の周囲に紫電が走り、イッポウとロッポウは見えない壁に阻まれた。
「流石橘音の坊っちゃん、よう効きよるわ」
――禹歩による簡易結界。
だが踏ん張りが必要なハンマーを振るっていた品岡に軽いステップを刻む余裕などあるはずもない。
靴の中。脚の全ての指を形状変化で足そのものに変え、禹歩を刻ませた。
省30
248: 品岡ムジナ ◆VO3bAk5naQ 2017/02/07(火)22:01 ID:J3g7vBWU(11/11) AAS
「……小賢しい糞餓鬼やなぁ。ええけどな、学ぶことは子供の特権や言うやろ。
勉強しとけ。最初に言うたように、ワシが自分に教えるんは大人の怖さや。いくつかあるからよう聞いとけ」
イッポウへ向けて人差し指を立てる。
「ひとつ、年上には敬意を払えや。ワシは自分の三倍は生きとる大先輩やぞ」
ぼこん、とくぐもった音を立ててイッポウの身体が膨らんだ。
イッポウ自身の意志によるものではない。奇声に困惑の色が交じる。
品岡は二本目の指を立てた。
「ふたつ、妖怪同士の戦いで、一発入れたら終いなんてことあるわけないやろ」
省26
249: 2017/02/08(水)01:04 ID:BkweUXHp(1) AAS
あ、糞出るわ
ブリュッセル
250: 那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI 2017/02/09(木)19:46 ID:jX3DFzkh(1/5) AAS
「あらよっと!」
一転して激しい戦闘の坩堝と化した商店街を、縦横に橘音が跳ねる。
>えぇっ!? 囮って……弱いくせに何言ってんの!?
>何考えてんだこのキツネ仮面がぁ! いきなり目立とうなんて思わなくていいから!
ノエルの悲鳴にも似た言葉が示す通り、橘音がからっきし荒事の不得意な化生であることは周知の事実である。
実際、今の橘音にコトリバコを物理的にケ枯れさせる手段はない。
が、『斃せない』は『対抗手段がない』と同義ではない。
獣由来の身のこなし、瞬発力ならば橘音も他のメンバーと大差ない。そして、そこに自分の今回の役目がある。
>ったく、無茶しやがって……あいよ、了解だ大将
省28
251: 那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI 2017/02/09(木)19:47 ID:jX3DFzkh(2/5) AAS
「えぇ〜?いいじゃないですかぁ、ボクもたまには目立ちたいんです〜」
そんなとぼけたことを言う。ノエルの氷結技能を信頼しきっているからこその弁だ。
正直、戦況は不利である。この状況では、メンバーの誰もが自らを護ることだけで手一杯に違いない。
だというのに、ノエルは橘音のことを案じてくれている。橘音だけではない、ノエルは全員のことを見ているのだろう。
先程も、ノエルが全員の得物に氷の属性付与をしているのが見えた。
メンバーのサポート担当という自分の役目を把握し、それを忠実に実行している証拠だ。
普段は(非常時も)とぼけた言動でいまいち頼りない印象のノエルだが、その実彼の援護射撃には隙がない。
今も、八体のコトリバコが彼の冷気によって凍り付き、その動きを止めたばかりだ。
……とはいえ。
――さすがに、このままじゃキツイですね……。
省34
252: 那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI 2017/02/09(木)19:47 ID:jX3DFzkh(3/5) AAS
>な、ぐがっ―――!?
ドガァァァァァァッ!!!
尾弐のうめき声と、その直後の轟音に、橘音は咄嗟に振り向いた。
見れば、尾弐が軽自動車の激突を喰らい、商店街の店舗の壁面に叩きつけられている。
「クロオさん!」
思わず叫ぶ。ブリーチャーズ随一の頑強さを誇る尾弐だ、致命傷には至っていないようだが、それでも少なからぬダメージであろう。
解せないのは尾弐の様子だ。百戦錬磨の尾弐が自動車の投擲などというモーションの大きな攻撃に対処できない筈がない。
いつものように左腕で払いのけるなりすればいいだけの話だ。尾弐の膂力はそれを充分可能にする。
何かに気を取られていた?いや――
省36
253: 那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI 2017/02/09(木)19:48 ID:jX3DFzkh(4/5) AAS
『イッポウ』はムジナが見事な騙しのテクニックでケ枯れさせた。次の相手は『ロッポウ』だ。
『ニホウ』『サンポウ』『シッポウ』は尾弐が引き付けている。
『ハッカイ』は祈とノエルを当面撃滅すべき対象と認識したらしい。
では。
オギャアアアアアアアア!!!!!オオオオオオオギャアアアアアアア――――――――――ッ!!!!
『チッポウ』は自分の担当だ。
腕を振り上げ、時に口から溶解液を吐き出して攻撃してくるチッポウから身を翻しながら、橘音は戦場を奔る。
とっくに息は上がり、身体も鉛のように重い。息を喘がせながら駆ける姿は、ただ闇雲に逃げ回っているようにしか見えない。
グオッ!!
チッポウの右腕が、まるで蟻でも叩き潰すかのように振り下ろされ、アスファルトが砕け散る。
省32
254: 那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI 2017/02/09(木)19:48 ID:jX3DFzkh(5/5) AAS
「うああああああああああああああああああ――――――ッ!!!」
子獲りの呪いに侵食され、橘音は叫び声をあげた。
その効力は強力無比、凶悪無双。解呪の方法はなく、一度受ければ待っているのは死、それ以外にない。
コトリバコに抱きつかれた橘音も例に漏れず、ほどなく目鼻や耳、口から出血し、下腹部を破裂させて死に至るのだろう。
と、思ったが。
「ぎゃああああ〜っ!死ぃ〜ぬぅ〜っ!呪いで死んでしまうぅ〜っ!」
橘音は舌を出してさも苦しそうに喉を掻きむしる仕草をし、身体をくねらせた。
だが、その苦しみようはいやに芝居がかっており、わざとらしい。
ひとしきり苦悶するそぶりを見せた後で、橘音は徐にコホンと空咳を打つと、
省30
255: 2017/02/09(木)21:36 ID:r3Ee2gmW(1) AAS
あー、
そういう設定気持ち悪いから本気でやめて
256: 多甫 祈 ◆MJjxToab/g 2017/02/13(月)23:26 ID:lXVFlz2X(1/4) AAS
>「あれぇ〜? おっかしいなあ〜」
コトリバコの赤ん坊『ハッカイ』に飛び乗り、妖怪にしか見えぬ霊的な継ぎ目を余すことなく切り刻んだノエル。
その後、コトリバコの赤ん坊から飛び降りてヒーローの如く三点着地を決めて見せた彼が呟いたのはそんな言葉であった。
背後でコトリバコの赤ん坊が爆発四散でもしているかと思えば、そんな事はない。
「……へ?」
祈は瞬間、呆けた。
別段、爆発を期待していた訳ではないのだが、あんなにカッコ付けといてそれはないだろ、という顔になる。
切り刻まれたコトリバコの赤ん坊はと言えば、全身から緑色の体液や血を撒き散らしているものの
依然として戦闘続行可能な様子であった。
と言ってもそれは見る者が見れば、もはや蛇腹切りにされた胡瓜の如く、
省33
257: 多甫 祈 ◆MJjxToab/g 2017/02/13(月)23:30 ID:lXVFlz2X(2/4) AAS
「尾弐のおっさん!!」
祈は思わず叫んだ。
油断した。祈はコトリバコ達が氷漬けにされている筈の場所に目を向け、
何もいないことに今ようやく気付く。祈は他のコトリバコは全てノエルが凍結させ、動きを封じたものと思い込んでいた。
そして何よりハッカイのコトリバコだけに目を奪われすぎていたのだ。
既に他のコトリバコの赤ん坊達は、氷の呪縛を解いて行動を開始しており、
ダメ押しとばかりに尾弐へと『シッポウ』が向かう。助けに向かうべきでは、と祈の本能が告げた。
>「ムジナアアァァァ!!!! この3匹は俺が一人で片付ける!!
> テメェは、絶対にこの3匹と他の連中をヤり合わせねぇように動けえええぇぇ!!!!!!」
だが、尾弐の地の底から響くような怒号が、祈の耳にも届く。
省26
258: 多甫 祈 ◆MJjxToab/g 2017/02/13(月)23:42 ID:lXVFlz2X(3/4) AAS
そこまで考えた所で、思い至る。違和感があることに。
そこから、『自分が相手をするべきはゴホウではなくハッカイの方である』、という答えに祈は行き着く。
祈が知る限り、ノエルは弱い妖怪ではない。
尾弐のような剛力やタフネスを備えたバリバリの戦闘系妖怪ではないにせよ、
先日の八尺様戦では、尾弐が駆け付けるまでの間、
八尺様の音を追い越すほどの猛攻をほぼ一人で凌ぎきったその技の冴えや戦闘勘、実力は疑いようがない。
また今日に至っては強大な呪いの塊であるコトリバコ達を全て凍てつかせ、
僅かな間とは言えその動きを奪ったほどに強大な妖力をも備えている。
そんな男が、逃げ回るに終始している。それが違和感の元だった。
思えば今日のノエルは張り切り過ぎではなかっただろうか。
省30
259: 多甫 祈 ◆MJjxToab/g 2017/02/13(月)23:51 ID:lXVFlz2X(4/4) AAS
「こっちだ、コトリバコ!」
ハッカイは起き上がって必死にノエル探そうとしたものの、
そのノエルが見つからなかったことで、手近な場所にいる祈へと完全にターゲットを変えたようだった。
左腕だけで器用に這いずり、それなりの速度で祈を追ってくる。
ハッカイを仲間たちから引き離すため、祈は敢えてぎりぎりの速度で走り、コトリバコに追わせた。
尾弐も品岡も、橘音もノエルも、恐らくは目の前の状況に手いっぱいであろうし、
なるべくハッカイの目がそちらに向かないようにせねばならないと思ったのだ。
コトリバコの呪詛によって、祈の目の前で女性が血反吐を吐いて亡くなった時、
その凄惨な姿を見ないよう祈の前に立ち塞がってくれたのは尾弐であり、
目を覆ってくれたのはノエルであり、そして背後から制止の声をかけてくれたのは意外にも品岡であった。
省40
260: 多甫 祈 ◆MJjxToab/g 2017/02/14(火)00:00 ID:87guBi3q(1/2) AAS
(賢い……)
完全に閉じ込められた形だった。
外に出ようとすれば粘液が飛んでくる。仮に上手く粘液を躱して外に出られたとしても、
先程のように上から大量の粘液を降らされたらどうしようもない。
また、この足場では十分な速度を出すことはできないだろうし、
ハッカイに接近し攻撃に転じるのすら一か八かの賭けになる。
祈が近づいて攻撃するしかできないこと、そして粘液に触れれば死に直結するダメージを負うことを、
十二分に分かった上での行動だった。
そもそも、祈は決定打に欠けている。
なんとかハッカイの手足を千切り飛ばすことはできても、
省43
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