アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 (1000レス)
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659: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:37 ID:263ZQ54w0(56/225) AAS
(これが化け物エンジンの力って奴か……全く、気に入ったぜ!)

マーチスは微笑みながら、狙いを巡洋艦に定めた。
敵艦から距離2000メートルに達した所で、高度は50メートルほどに降下している。
突入を図るスカイレイダー隊を脅威に感じたのだろう、敵巡洋艦から対空砲火が放たれた。
瞬時に、高射砲弾の炸裂が前方で起こる。
砲弾炸裂の振動が伝わり、愛機が揺れ動く。
マーチスは臆した様子もなく、尚も下降を続けていく。
50メートル付近から緩やかに下降した第1小隊は、敵艦から1200メートルに達した所で高度9メートルまで下降し、そこで水平飛行に移った。
敵巡洋艦は高射砲のみならず、魔道銃までも撃ち上げてきた。
前方からカラフルな色の光弾が吹き荒ぶ。うち、数発が風防ガラスの至近を通り過ぎていく。
省14
660: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:38 ID:263ZQ54w0(57/225) AAS
(主砲6門となると……敵はオーメイ級、またはミルビ・ヌレイ級巡洋艦か)

マーチスは敵巡洋艦の艦級を推定する。
その時、唐突に敵巡洋艦が左……第1小隊に向けて急回頭し始めた。

「!!」

マーチスは敵の行動にハッとなる。同時に、彼は新たな命令を口に出していた。

「第1小隊、雷撃中止!反転せよ!!」
省15
661: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:39 ID:263ZQ54w0(58/225) AAS
しかし、敵艦の予想外の動きは、不利を完全に覆すまでは行かなかった。
敵艦が回頭しつつある中、第2小隊の投下した魚雷が次々に空振りとなる。全弾外れになるかと思いきや、艦尾付近に高々と水柱が立ち上がった。

「お……!」

マーチスはその瞬間、しめた!と口に発していた。
敵巡洋艦は第2小隊の攻撃を完全にかわし切れず、右舷後部付近に魚雷1発を受けてしまった。
そして、敵艦はスピードを着けながら左斜め……入り江の出入り口に向けて突進していた。
それは一瞬の出来事であった。
敵艦は舵を破壊されたのか、艦首を左斜めに向けながら……あろうことか、入り江の入り口、それも左側の防波堤部分の激突してしまったのだ。
出入り口の大きさは約180メートル。
それに対して、敵巡洋艦の全長は160メートル前後である。
省13
662: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:40 ID:263ZQ54w0(59/225) AAS
「よし……再突入だ!」

マーチスは再び、機首を敵巡洋艦に向け始めた。
敵艦との距離は2000メートルまで離れていたが、そこから再び距離が詰まり始める。
先行していた2、3、4番機が敵駆逐艦に向かっている。
狙われた敵駆逐艦は懸命に回避運動を行っていた。

「いいぞ。そのまま敵を攪乱してくれ」

マーチスは部下の奮闘を祈りつつ、敵巡洋艦への接近を続けた。
高度は再び10メートル台まで下がり、そこから更に下がり続ける。
入り口部分の防波堤に激突した敵巡洋艦は、後部付近から黒煙を噴き上げ、艦尾をやや下げている。
艦首は激突の衝撃で潰れており、とても航行できる状態ではないはずだが……驚くべきことに、敵は満身創痍の状態になっても、
省16
663: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:40 ID:263ZQ54w0(60/225) AAS
そして、2本の白い航跡が敵巡洋艦めがけて伸び始めた。
マーチスは機銃を撃つことも忘れ、増速しながら敵艦の真上を通り過ぎた。
敵艦からの追い撃ちが放たれたが、マーチスは機を蛇行させながらそれをかわした。
少し間を置き、彼は港の入り口付近に顔を向けた。

「……よし!」

そこには、期待通りの光景が広がっていた。
マーチス機の雷撃を受けた敵巡洋艦は、黒煙を吐きながら左舷側に大きく傾いている。
敵艦は後進しつつ、出入り口付近から艦体をどけようとしていたが、それが災いしてか、敵艦はちょうど、出入り口の真ん中付近で
停止して沈みかけていた。

彼は魚雷命中の瞬間を見ていなかったが、敵巡洋艦は左舷後部と中央部に魚雷を受けてしまった。
省11
664: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:41 ID:263ZQ54w0(61/225) AAS
同日 午前8時40分 ウェルバンル北東5マイル地点

シギアル港周辺で激戦が繰り広げられている中、TG38.3より発艦した戦爆連合78機は、一路ウェルバンル北西40マイル付近に
ある秘密工場群へと向かっていた。
空母イントレピッド攻撃隊に属しているカズヒロ・シマブクロ少尉は、左手に見える異世界の大都市に思わず見入ってしまっていた。

「これが……今戦っている敵国の首都か。雰囲気自体が本当に違う」

今見える敵国首都……ウェルバンルは、今までに見てきたニューヨークやサンフランシスコ、デトロイトといった都市と比べて建物の
作りも違っていた。
首都の真ん中あたりには、一際巨大な建造物が鎮座している。
出撃前の説明で聞いた帝国宮殿というのが、あの建造物なのだろう。

「今頃、あそこにいるかもしれん皇帝さんとやらは、歯噛みしながら俺達を見ていのかな」
省9
665: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:41 ID:263ZQ54w0(62/225) AAS
同日 午前8時58分 ウェルバンル北西38マイル地点 スティンヒントル 

ウェルバンルから北西30ゼルド(60キロ)北西にあるスティンヒントルは、古来から通商の拠点として栄えた町であったが、その町の離れに、
不思議な建物が建ち始めたのは1478年1月の頃であった。
ある日、住民が町の離れにある何もない空き地に、外地から来たと思しき作業員が何かの建物を作り始めているのを目撃してから、2年ほどで巨大な
建造物がいくつも出来上がっていた。
そして、スティンヒントルの住民達は、帝国中枢の呼び掛けに応じて、その建物の中で何かを作る作業に従事したが、作業場から出るときはいつも、
何を作ったのか、友人と何を話したのかが常に記憶に残っていなかった。
だが、作業員達はそれを不快気に思う事もなく、来る日も来る日もこの建物の中で仕事を続けてきた。
そして、今日もその日常が始まると、誰もが思っていた。

「司令!見張り所より狼煙が上がっています!」
省10
666: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:42 ID:263ZQ54w0(63/225) AAS
シホールアンル軍は、極秘裏に秘密兵器の開発を行い続けてきた。
開発した秘密兵器は様々だが、その1つは、かのフェイレを基に作ろうとした大威力の戦略級爆裂魔法計画で、もう1つは魔法防御の施された
陸上装甲艦計画である。
この2つのうち、1つは実用化寸前にフェイレが逃亡し、その後、アメリカ軍の水上打撃部隊に救出されたことで頓挫している。
もう1つの陸上装甲艦計画は順調に開発、建造が完了し、実用化されている。
運用当初は期待通りの働きをしたものの、これまた、米軍の水上部隊に迎撃されて、建造した全ての陸上装甲艦が撃破され、全滅するという
悲運に見舞われている。
他にも、計画、開発されている物はあったが、その1つが空中艦隊計画であった。
シホールアンル帝国は、様々な特徴を持つ魔法石が取れる資源国でもあるが、帝国本土北部にあるパリマ・インシト鉱山は、帝国の中でも聖地と
される地にある鉱山であり、今までは余りにも峻険な地に存在する鉱山のため、開発が思うように進まなかった。
省20
667: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:43 ID:263ZQ54w0(64/225) AAS
艦“下部”の武装は、主砲だけでも16ネルリ連装砲が艦橋寄りの前部に1基、後部に1基の計4門設置されており、艦の下方にも大口径砲の
火力投射ができるようにされている。
ヴェルティンルは主砲以外にも、多数の両用法や魔道銃を装備しており、艦上部には連装両用砲を8基16門に魔道銃58丁設置し、艦下部に
両用砲7基14門、魔道銃32丁を設置している。
艦の全長は126グレル(254メートル)、全幅17グレル(34メートル)と、フェリウェルド級戦艦より若干小型だが、
重量は32000ラッグ(48000トン)と、ネグリスレイ級戦艦よりも重くなっている。
艦の防御性能自体は14ネルリ相当のものに留まっているが、艦下部の武装を施したため、思った以上に重くなってしまった。
だが、その威容はまさに驚異的であり、空中軍艦としては最強の攻防性能を誇っているとも言えた。
浮遊石を基に製造された魔法石の調子も良く、昨日の浮遊試験では、想定されていた天井ギリギリの位置まで見事に浮遊し、この艦が
飛行可能である事を証明していた。
省12
668: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:44 ID:263ZQ54w0(65/225) AAS
今日出航する2隻の空中軍艦の他に、出港準備を行っている艦はおらず、残り6隻は未だに、機関部の最終調整すら終わっていなかった。
一応、残り6隻の巡洋艦、駆逐艦も建造は終わっているのだが、これらの艦は、12月後半から1月下旬にかけて順次、北方の拠点に異動する
予定であったため、乗員すら乗り組んでいない状態だ。
米軍機の反復攻撃が予想される今となっては、これらの6隻が大空を飛ぶ事は、確実に無いと言った方が正しかった。

「ならば……せめて、この2隻だけでも大空に浮かべ、無事に逃げ切って見せる!必ず……!」

ハヴォンソは断固たる決意を心中で現しつつ、艦の上昇を待ち続けた。

「味方の迎撃隊が現れました!敵艦載機に向けて突入していきます!!」

建造ドッグの右端に作られた見張り台から、伝声管越しに報告が伝えられた。
省12
669: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:44 ID:263ZQ54w0(66/225) AAS
「敵ワイバーン視認!距離4000!12時方向!」

イントレピッド戦闘機隊第3小隊の3番機を務めるケンショウ・ミヤザト少尉は、耳元のレシーバーに流れる声に耳を傾けながら、戦闘
準備を整えていた。

「ケビン!今の聞いたな?」
「勿論です!いつも通りにペアでやりましょう!」

44年11月から相棒を務める、ケビン・フィリッツ1等兵曹が快活の良い声音で答えた。
イントレピッドに所属する20機のF8Fは、一斉に増槽タンクを切り離すや、増速して敵ワイバーンとの距離を詰めていく。
前方に敵ワイバーンが見え始めた。
数はざっと見て20騎足らず。

「ん……?」
省14
670: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:45 ID:263ZQ54w0(67/225) AAS
相棒のケビンがとっさに伝えてくる。ケンショウは操縦桿を左に倒しつつ、旋回上昇に移る。
上方よりワイバーンの放った光弾が注がれてくるが、回避運動を行ったケンショウ機にあたらない。
ケンショウが反撃を行おうとしたとき、敵ワイバーンはケンショウ機のすぐ右を飛び抜けて急降下していく。

「……」

ケンショウは無言のまま、新たなワイバーンの攻撃をかわしつつ、攻撃の機会を探る。
機会は程なくして訪れた。
ケンショウ機に突っかかったワイバーンは、急降下をやめて緩やかに旋回上昇に入り始めた。

「そこだ……!」

彼は小さく叫ぶと、愛機の機首をそのワイバーンに向け、一気に下降し始めた。
機首のプラット&ホイットニーR2800-34W、2300馬力エンジンは、F6Fよりも軽くなったベアキャットの機体をあっと
省16
671: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:46 ID:263ZQ54w0(68/225) AAS
「ああ、幸先良しだ」

ケンショウも確かな手応えを感じつつ、再び戦闘空域に戻り始める。
空域からはさほど離れていないため、すぐに戦闘の様子を見ることができた。

「おいおい……速度はこちらが上とはいえ、機動性抜群のワイバーンが、空戦開始早々押されまくっているとは」
「あのワイバーンの連中、動きが明らかにおかしいですよ」

空戦開始前から敵編隊の動きを見ていたケビンが当然とばかりに、ケンショウに行ってくる。

「ありゃあ、半数以上が新米ですぜ」
「……頑張っている奴もいるようだが」
省14
672: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:47 ID:263ZQ54w0(69/225) AAS
緩めていたスロットルを再びフルにし、機首の大馬力エンジンを力いっぱい唸らせる。

「ケビン!攻撃隊に敵機だ!」
「な……了解!!」

増速した2機のF8Fは、スカイレイダーの後方から食い下がる4機の飛空艇に向かっていく。
同時に、無線機で攻撃隊指揮官機に敵機接近を知らせる。
ケンショウ、ケビンペアが敵機に迫るよりも、敵機がスカイレイダーに攻撃を開始する方が早かった。

「あ……畜生!」

スカイレイダーの編隊が攻撃を受け、編隊の一部が崩れる。
光弾の集中射を受けてしまったのか、スカイレイダーの1機は胴体から黒煙を吐きつつ、機首を下にして落ち始めていた。
別の1機も同様に煙を吐きながら、急速に高度を落としていく。
省14
673: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:48 ID:263ZQ54w0(70/225) AAS
ケンショウは散開したドシュダムの内、旋回上昇に入ったドシュダムを追跡した。

「下降した奴は自分が追います!」
「周囲に気を付けろよ!」

ケビンと別れたケンショウは、自分も戒めるように、相棒に注意を促した。
上昇に移ったドシュダムは、ケンショウのベアキャットが追跡してくるのに気付くや、すぐに反転、下降を行い始める。

「逃がさんぞ……!」

ケンショウも後を追い、愛機をドシュダムの後尾に付ける。
旧世界のソ連製戦闘機、I-16戦闘機に似た、全体的にこじんまりとしている敵飛空艇は、思いの外巧みな動きで最新鋭戦闘機で
あるF8Fの追尾を振り切ろうとする。
その動きはキレがあり、ケンショウも動きに翻弄されてなかなか射点に付けない。
省14
674: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:49 ID:263ZQ54w0(71/225) AAS
「なっ!?」

敵機の予想外の動きに、ケンショウは驚いたが……不思議にも、極端に驚くほどでもなかった…が、

「まさか……!」

敵機の視界が急速に後方に流れた。
ベアキャットは、ドシュダムをオーバーシュートしてしまったのである。
戦闘機乗りにとって、未だに戦意旺盛な敵に対して、最もやってはいけない行動の1つを、ケンショウは今しがた、敵に目の前でやって
しまったのである。
脳裏に、ドシュダムの光弾に貫かれ、爆散するベアキャットの姿がよぎった。
ケンショウは考えるよりも先に、体を動かした。

『ドシュダムの照準器に、間抜けなベアキャットの姿が綺麗に納められ、光弾の発射ボタンに手がかかる』
省7
675: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:49 ID:263ZQ54w0(72/225) AAS
しかし、この時……攻守は逆転していた。
ドシュダムの射撃は、ベアキャットに居た位置を貫いたが、当の敵機はそこにはいなかった。
ケンショウは激しいGに体を押し付けられながらも、愛機の姿勢を元に戻した。

(今の動きは……!)

彼は、自分が今やった、機体を捻りこませるような機動がなぜ出来たのか理解できなかったが、どういう訳か、ドシュダムの背後は捉えられている。

反撃のチャンスである。

ケンショウは無言で20ミリ機銃を放った。
機銃弾はドシュダムの胴体に突き刺さるかと思ったが、敵もやり手なのだろう。
即座に機体を右に傾け、水平旋回でよけようとする。
だが、ドシュダムが機銃弾を避ける事は叶わなかった。
省13
676: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:50 ID:263ZQ54w0(73/225) AAS
ワイバーンと飛空艇の迎撃を退けた攻撃隊は、敵秘密工場まであと5マイルという距離まで接近していた。
TG38.3攻撃隊指揮官兼エセックス攻撃隊指揮官を務めるアール・ガラハー少佐は、秘密工場の中を見た瞬間、思わず自らの
目を疑ってしまった。

「何だいありゃあ……工場の中に軍艦があるぞ!?」

信じ難い事であったが、それは確かに軍艦であった。
左右横開き式に開いた天井からは、明らかに船と思しき物体が鎮座している。
前部甲板と後部甲板には、立派な連装式の主砲塔が設置されており、艦上構造物も配置されている。
それは紛れもなく、戦艦その物であった。
そして、更に驚くべき事がこの軍艦で行われていた。

「しかも……少しずつだが、浮いている!?」
省13
677: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:51 ID:263ZQ54w0(74/225) AAS
スカイレイダーは飛空艇の襲撃で2機が撃墜されたものの、未だに46機が残っている。
そのうち、エセックス隊、イントレピッド隊の30機、ボクサー隊の16機という具合に二手に分かれて進撃が続く。
秘密工場の周囲に予め配置されていたのか、あちこちから高射砲の物と思しき発砲炎が見えた。
高度4000付近で編隊を組みながら進むスカイレイダーの周囲に砲弾が炸裂する。
数は少なくない。

「敵が盛んに撃ってきたな……む、工場の中の敵艦も撃ってきたぞ」

ガラハーは、工場の中からも発砲炎を確認する。
唐突に、1発の高射砲弾が至近弾となり、機体のあちこちが金属的な音を立てる。
高射砲弾の破片が機体を叩いたようだが、致命傷には至らず、機首の大馬力エンジンは会長に回り続けている。

「小隊毎に散開!工場を四方から包め!」
省16
678: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/07/26(火)15:51 ID:263ZQ54w0(75/225) AAS
艦長が号令を発するや、左舷側に設置されている高射砲が砲撃を開始した。
高射砲はこの艦に配備されて以来、1発の試射も行っていない。
それに加えて、搭載されている砲弾は高射砲弾が少々で、主砲弾や魔道銃用の魔法石は全く搭載されていない。
ヴェルティンルが使える武器は、この高射砲のみである。
とはいえ、全く応戦できないよりはマシであると、ハヴォンソは心中で呟いた。
ドック護衛にあたる地上部隊も、高射砲弾を盛んに撃ち放っている。
だが、敵機は数機ずつに散開し、建造ドックを押し包むように向かってきた。
高射砲の射撃は尚も盛んに行われる物の、2機を撃墜しただけに留まる。
そして、遂に左舷側から進入しつつあった敵編隊が急降下を始めた。
上空に敵機の放つ異様な轟音が響き渡る。対空部隊は高射砲のみならず、魔道銃も撃ち始めた。
省16
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