アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 (1000レス)
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933: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:27 ID:EOmKTrqE0(15/63) AAS
昨日の未明から始まった敵の反撃は、包囲網の中のシホールアンル軍と、包囲外にいる敵部隊が連携して行っており、
これにグレンキア軍装甲軍団と米海兵軍団、そして、包囲網から救出された空挺軍団と第37機甲師団も部隊の再編制を
終えて戦列に加わり、敵の新たな反撃に対応していた。

「予報では、今日の昼辺りに一時、天候が回復するようだが……パイルさん、どう思うかね?」
「俺は記者だから天候の事を聞かれてもね」

パイパーに話を振られたパイルは、思わず苦笑しながら言葉を返す。

「その時にならんと分からんだろう。ここは、気象班の予測を信じるしかなさそうだ」
「違いない」

パイパーはやれやれと言った口ぶりでパイルに言いつつ、ハーフトラックのキャビンに乗った。
省15
934: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:28 ID:EOmKTrqE0(16/63) AAS
パイパー戦闘団が穴を完全に閉じた頃、グレンキア軍第19装甲軍団は、反撃作戦開始当初からアメリカ海兵軍団と共に敵反撃部隊の
退路を断ったが、その後、解囲を狙う包囲下のシホールアンル軍部隊の猛攻に耐え続けていた。

第19装甲軍団は、第12装甲擲弾兵師団、第17装甲擲弾兵師団、第34装甲師団の計3個師団で構成された機械化軍団である。
この3個師団に対して、包囲下のシホールアンル軍は、米第15、第29軍の猛攻を受けつつも、態勢を立て直した第1親衛石甲軍
所属の第3親衛軍団(第5、第6親衛石甲師団)と、第29石甲軍所属の第49軍団(第120、第204石甲師団、第108石甲化機動砲兵旅団)
を投入し、激戦を繰り広げた。
昨日の戦闘では、第19装甲軍団は敵に猛攻に対し、巧みな防戦を展開し、敵側の攻勢を頓挫させていた。
だが、第19装甲軍団の被害も思いのほか多く、第34装甲師団は基幹部隊である3個装甲連隊のうち、1個装甲連隊が激しい消耗の
末に解体され、残存する戦車と兵員が残りの2個連隊に吸収されたほか、師団全体の損耗率も32%に達している。
この他にも、第12装甲擲弾兵師団は損耗率が28%、第17装甲擲弾兵師団に至っては損耗率が34%に達するなど、非常に苦しい
省16
935: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:29 ID:EOmKTrqE0(17/63) AAS
その後、軍縮に伴って装甲擲弾兵隊は解体されているが、その名前が復活したのが、先にも話した1484年頃であり、アメリカ式の武器には
手榴弾と呼ばれる投擲装備や、装甲を施されたM3ハーフトラックがグレンキア軍に納入された事もあり、グレンキア軍上層部は、祖国独立の
ために奮起した装甲擲弾兵隊に因んで、機械化歩兵師団を装甲擲弾兵師団に改称している。
機械化歩兵もこれに応じて装甲擲弾兵と呼ばれる事になり、北大陸戦線では、アメリカ軍はもとより、かつては敵であったバルランド軍とも、
共に肩を並べてシホールアンル軍と戦い、成果を上げてきた。
第19装甲軍団は、今年の10月にグレンキア本土から送られてきた新参部隊ではあるが、指揮官クラスは既に前線を経験したベテランで
占められており、その訓練の成果は、反撃作戦開始の緒戦で遺憾なく発揮されている。
彼らは、ホーランド・スミス中将が期待した以上の働きを見せてくれたのである。

部下達は手慣れた動きで配置を終え、あとは敵の襲来を待つだけとなった。
事前砲撃を終えて前進中のシホールアンル軍石甲部隊を双眼鏡越しに見つめる。
省12
936: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:30 ID:EOmKTrqE0(18/63) AAS
「この怒りは、連中の血で贖ってもらう事にする……各隊、射撃準備!」

ポリースト中佐は、無線機のマイク越しに指示を下していく。
時折、別の部隊の情報も無線機から入って来るが、各連隊共に、敵と防戦中のようだ。

「こちら第1大隊、射撃準備よし!」
「こちら第2大隊、準備完了。いつでも行けます!」

指揮下にある3個大隊は、いずれもが射撃準備を完了していた。
敵の石甲部隊は、師団砲兵の弾幕射撃を浴びながらも、着実に前進を続けている。
見た所、6台ほどのキリラルブスが砲兵の射撃浴びて炎上している。
残りはそれを見捨てつつ、尚も前進している。
数は50台ほどで、その後ろに兵員輸送型と思われるキリラルブスも混じっている。
省12
937: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:31 ID:EOmKTrqE0(19/63) AAS
敵は尚も前進中であり、距離は徐々に詰まってきた。
最終的に、敵キリラルブスは45台までに撃ち減らされていたが、残りは部隊の展開する陣地まであと600メートルに迫った。

「戦車隊、撃ち方始め!」

ポリーストは戦車隊に命じた。
その次の瞬間、陣地の左右から発射炎が迸る。
真っ直ぐの形で突き進んでいたキリラルブス2台が側面を撃ち抜かれ、瞬時に爆砕された。

(あれは装甲強化型の最新型ではなく、砲身だけ強化した普通の奴だな)

ポリーストは、被弾炎上し、その場に擱座するキリラルブスを見てそう判断した。
キリラルブスは、正面装甲をかなり強化した最新型が前線に多数配備されているようだが、この敵部隊には、その最新型は配備されていないようだ。
だが、主砲はシャーマン戦車の正面を容易に撃ち抜く事が出来るため、油断は禁物だ。
省16
938: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:32 ID:EOmKTrqE0(20/63) AAS
事前に決められた作戦では、第1線陣地で敵に出血を強要した後、時期を見て第1戦陣地を放棄し、2キロ後方の第2戦陣地まで
後退する事になっている。
グレンキア軍は退路遮断のさい、南側に向けて8キロの縦深を確保しており、これを生かして敵反撃部隊の出血を強要し、敵の
解囲攻勢を防ぐ予定となっている。
昨日の戦闘では、第1線付近で激戦が展開され、陣地後退をするまでもなく敵を撃退したが、今回は昨日の戦闘で消耗が嵩んだ分、
前線の部隊が耐えられる時間が短いため、ポリースト中佐は敵をそこそこに叩いてから、速やかに第2戦陣地に部隊を移動させる事にした。
シホールアンル軍は、展開された煙幕に構うことなく、そのまま突っ込んできた。
まだハーフトラックに乗り込んでいない擲弾兵の一団は砲撃を受け、停車していたハーフトラックごと四散する。
また、あるキリラルブスは交代するハーフトラックに砲弾を撃ち込み、これを爆砕させることに成功した。
だが、この時点で部隊の大半は第2陣地に向かいつつあり、キリラルブス隊が第1陣地の散兵壕群に到達したときは、第1、第2大隊は
省20
939: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:32 ID:EOmKTrqE0(21/63) AAS
「装填完了!」

ラビクォス1等兵は弾を込め終え、姿勢を起こそうとしたが、唐突に同僚が仰け反り、仰向けの姿勢で塹壕内に倒れた。

「お……おい…」

ラビクォスは倒れた戦友に声をかけるが、この時、彼は絶句してしまった。
同僚は頭を撃ち抜かれており、その顔は無表情のまま凍り付いていた。

「クソ!」
省17
940: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:36 ID:EOmKTrqE0(22/63) AAS
シホールアンル兵は起き上がるや、そのままの勢いで塹壕内に暴れ込んだ。
赤ら顔の髭を生やしたシホールアンル兵が、魔道銃を棍棒替わりに振り回し、グレンキア兵を1人、2人、3人と殴り倒していく。
4人目の腹に銃床を叩き込み、体を折らせる。

「南大陸の蛮族ごときが!」

敵兵は侮蔑の言葉を発しながら、その後頭部を魔道銃で思い切り殴りつけようとするが、その直前に、別のグレンキア兵に側面から頭を
撃ち抜かれ、夥しい血とその他諸々を吹き出しながら戦死した。
キリラルブスが、塹壕で暴れる味方を掩護すべく、同軸銃でグレンキア兵を撃つが、混戦となっているため、シホールアンル兵までもが
まき添えを受けてたちまち射殺される。

「馬鹿野郎!味方ごと撃つ奴があるか!この間抜け!!」

指揮を執っていたある軍曹が、下手糞な援護射撃を行うキリラルブスを口汚く罵った。
省13
941: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:37 ID:EOmKTrqE0(23/63) AAS
「やめろ!離せ!!」

シホールアンル兵は怯える声でそう叫ぶが、グレンキア兵は持っていたトミーガンで彼を射殺した。

「野郎!」
「八つ裂きにしてしまえ!!」

残った2人が仲間をやられた怒りに駆られ、魔道銃を向けようとするが、グレンキア兵はトミーガンを向け直して2人に発砲した。
2人のうち、1人が体を撃ち抜かれ、悲鳴を上げながら倒れるが、トミーガンは早々に弾切れを起こし、もう1人は撃たれずに済む。
距離が近い事もあり、グレンキア兵はすぐに走り寄って、最後の1人を弾切れになったトミーガンで殴り倒そうとした。
振り上げられたサブマシンガンの打撃を、最後の1人は魔道銃を掲げて受け止めた。
余りにも重い衝撃に、シホールアンル兵は両腕が痺れたが、何とか耐えた。
しかし、安堵する暇もなく、シホールアンル兵はグレンキア兵に膝で腹を蹴られる。
省18
942: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:38 ID:EOmKTrqE0(24/63) AAS
午後1時15分 第12装甲擲弾兵師団戦区

ポリースト中佐は、陣地の向こう側から現れ始めたシホールアンル軍部隊を見据えながら、罵声を放っていた。

「あのクソッたれ共!懲りずにまた来やがったか!」

第12装甲擲弾兵師団は、午前8時よりシホールアンル軍の解囲攻勢を2度受けており、2度とも撃退に成功したが、グレンキア軍の損害も少なくない。
ポリースト中佐の指揮する第32装甲擲弾兵連隊は、既に損耗率が33%を超えており、特に第1大隊は通常編成の半数しか戦力が残っていない。
連隊を支えてくれていたシャーマン戦車中隊も、今では6両を残すのみとなっている。
師団全体の損耗率も35%に達しており、このままでは敵の攻勢を受け止められぬ可能性も大いにある。
連隊の将兵は、口にこそは出さないものの、明らかに疲れ切っており、その表情は暗く、興奮と緊張で強張っていた。
連隊がこの攻勢に耐えきれぬ場合、決死の反撃が水泡に帰す可能性もないとは言い切れない。

(そうなったら、俺達は海兵軍団と共に逆包囲され、殲滅される。何としてでも食い止めやるぞ!)
省13
943: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:39 ID:EOmKTrqE0(25/63) AAS
「……畜生め!」

ポリーストは、敵部隊を見つめ続けているうちに、その後方に別の連隊規模の敵集団が続いていることに気づき、無意識に罵声を放った。

「2個連隊投入してきやがったか……あいつら、持てるだけの戦力を叩きつけて戦線を突破するつもりだ!」

シホールアンル軍は、第12師団の戦区にあるだけの戦力を動員したようだ。
敵戦力は約2個連隊であり、前方の戦闘集団の背後1マイルほどの所に、別の戦闘集団が後続している。
戦闘用キリラルブスの数は40台程と、思いのほか少ない。
度重なる戦闘で払底し、残っていた予備を合わせているのだろう。
そして、その背後を行く兵員輸送型キリラルブスはかなり多く、先の戦闘の損害なぞ知らぬとばかりに、雪原を驀進し続けている。
師団砲兵は尚も阻止砲火を浴びせ続けるが、敵の勢いは止まらない。
敵の砲兵は、グレンキア軍砲兵隊との撃ち合いで壊滅したらしく、グレンキア軍陣地に野砲弾が降り注ぐ事はなかった。
省13
944: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:40 ID:EOmKTrqE0(26/63) AAS
「友軍であるアメリカ軍も、北側から敵の攻勢を弾き続けていると聞く。異界から来た戦友達も頑張っているんだ……例え死んでも、
貴様らは絶対に通さん!」

ポリーストは、時折入る報告を思い出しながら、覚悟を決める。
アメリカ海兵軍団の戦区にも、シホールアンル軍はありったけの部隊を動員して猛攻を仕掛けているという。
アメリカ海兵隊2個師団と、包囲網から救出されたアメリカ軍部隊は損害を出しつつも、これを撃退し続けているようだ。
先の戦闘では、ポリースト中佐の指揮車両も戦闘に加入し、彼自身が車載機銃を乱射して敵の進撃を阻んでいる。
防戦に次ぐ防戦で、ボロボロになった擲弾兵連隊がどこまでやれるかは分からないが、異界の戦友の為にも、自らの命を差し出す覚悟はできていた。

「敵戦闘集団、400グレルまで接近!」
「さて、もうすぐで狩りの時間だ」

ポリーストは据わった眼付きで前方を睨みつつ、マイクのスイッチを入れようとした。
省10
945: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:40 ID:EOmKTrqE0(27/63) AAS
「私はグレンキア軍第12装甲擲弾兵師団、第32装甲擲弾兵連隊を指揮するウェロース・ポリースト中佐だ」
「OK。俺は海兵隊航空隊のボイントン中佐だ。ポリースト中佐、今から航空支援を行うから、目標を指定してくれ」
「了解!」

地上部隊の指揮官との会話が一旦途切れた。

グレゴリー・ボイントン中佐は1934年の海兵隊入隊時から、長らく海兵隊航空隊の戦闘機パイロットを務めてきたベテランパイロットである。
太平洋戦線に参加し始めたのは1943年1月下旬からであり、この戦争で長らく指揮官を務めるVMF-214と、当時は母艦航空隊への採用を
一時見送られ、落ちこぼれとなったF4Uコルセアと巡り合えたのもこの時からだ。
海兵隊現役パイロットの中でも最古参の戦闘機パイロットである彼は、部下達から「親父」というあだ名を頂戴している。
そして、その「親父」は、着任当初は未熟であったVMF-214のパイロットをめきめきと鍛え上げ、2月下旬にカレアント領上空で行われた
空戦で敵ワイバーン2騎を撃墜してから、彼と、「ブラックシープ」の活躍は始まった。
省16
946: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:41 ID:EOmKTrqE0(28/63) AAS
ボイントン中佐はそう返事するや、部下達に指示を飛ばしていく。
敵部隊は、第12装甲擲弾兵師団の戦区に広がるような形で展開している。このうち、ポリースト中佐の率いる第32装甲擲弾兵連隊の戦区には
かなりの数の敵が迫っており、敵部隊が第32連隊を集中して叩いている事がよく分かる。
第12師団に所属している第35、第36装甲擲弾兵連隊の戦区にも敵は迫っていたが、数はせいぜい1個連隊程度かそれ以下でしかない。
その敵部隊は、主力部隊の攻撃をしやすくするための助攻役を担っているのだろう。

「敵はこの下の戦区に向けて兵力を集中している。全中隊は、目の前のシホット共を集中攻撃!シホット共のケツを吹き飛ばせ!」
「「了解!」」

レシーバー越しに威勢の良い返事が響く。
“親父”の命令を聞いた部下達は、これまでの鬱憤を晴らすために派手に暴れるつもりのようだ。
ボイントンは、直率する第1中隊を率いながら、暖降下しつつ、敵キリラルブスに向かった。
省15
947: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:43 ID:EOmKTrqE0(29/63) AAS
ボイントン隊が戦場に到着してから15分ほどで、シホールアンル軍前進部隊は隊列が乱れ、バラバラの状態で後退し始めていた。
後続の1個連隊も、前進部隊の惨状を見て後退し始めたが、そこにもVMF-214のコルセア隊が殴りかかっている。
地上から、ブラックシープの暴れっぷりをじっと見つめていたポリーストは、敵の余りの惨状ぶりに喜ぶどころか、同情の念すら抱き始めていた。

「ここまで一方的になるとはな……アメリカ軍が敵でなくて良かったと思うばかりだ」

彼は、口を震わせながらそう独語する。
視線を陣地の近くに向ける。
つい先ほどまでは、師団砲兵の阻止砲火も無視しながら、着実に前進していたキリラルブスが、コルセアの銃爆撃を受けて多くが、その残骸を晒している。
残骸の周囲には、兵員の死体も散らばっており、ろくに攻撃が出来ぬ上に、空から一方的に叩かれた敵の無念さを如実に表している。
視線を遠くに向けると、これまた多数の兵員輸送型キリラルブスが擱座しており、炎上して煙を上げている物も少なくない。
制空権を失った軍隊の悲惨さを表す光景が、ポリーストの目の前で広がっていた。
省13
948: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:45 ID:EOmKTrqE0(30/63) AAS
それを見たのか、上空を行くF4Uの中には幾度かバンクしながら飛び去ったり、顔が見えるほどの超低空で部隊の上を通過し、パイロットが
ガッツポーズをする姿も見受けられた。
48機のコルセアが、潮が引くように去ってからさほど間を置かぬうちに、無線機に新たな連絡が入った。

「こちら第1海兵航空団VMB-117のハリントン少佐だ。地上部隊の指揮官、聞こえるか?」
「……こちら第12装甲擲弾兵師団、第32装甲擲弾兵連隊のポリースト中佐だ。航空支援に来てくれたのか?」
「ああ、そうだ。今、そちらの陣地から高度3000付近の上空に居る。恐らく、陣地の前で逃走している地上部隊が居るようだが、それが敵か?」
「ああ、そうだ」

ポリースト中佐は会話を交わしつつ、上空に顔を向けた。
空は先ほどよりも晴れ渡っており、鉛色の雲は少なく、青空が多くなっている。
その雲の近くに、一群の航空機が飛行しているのが見える。
省18
949: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:46 ID:EOmKTrqE0(31/63) AAS
12月12日 午後8時 第1親衛石甲軍司令部

シホールアンル軍第1親衛石甲軍の指揮官であるルイクス・エルファルフ大将は、司令部天幕の中で、机に広げた地図を見据えながら
状況報告を聞いていた。

「閣下……我が第1親衛石甲軍は今日一日の空襲により、かなりの損害を受けました。解囲攻勢に出ていた第3親衛軍団の損害は特に深刻で、
第5、第6親衛石甲師団共に、稼働するキリラルブスは僅か。兵員の損耗も限界を超えております」

参謀長のウリィンキ・ヴェフル少将は、平静さを装っていたが、その口調は震えているようにも思える。

「第20石甲軍の第56軍団も同様であり、解囲攻勢の失敗は明らかとなりました」
「……分断された第20石甲軍との連絡も確保できず、挙句の果てに、包囲網からの突破も失敗……か」
省12
950: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:50 ID:EOmKTrqE0(32/63) AAS
エルファルフは、冷めたい口調で参謀たちに言う。

「戦って死ぬか……敵に降伏するか……だな」
「ライバスツ閣下はどのように判断されますかな」

エスフォレウヲ大佐の問いに、エルファルフは首を振って答える。

「俺にもわからんが……どちらにせよ、命令に従うまでさ」

「現時点で、我が軍集団は各軍共に、損耗が大きすぎます。敵が航空支援を受けられる状態となった今、包囲網の突破も不可能となっています」
省19
951: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:51 ID:EOmKTrqE0(33/63) AAS
「司令官、軍集団司令部より魔法通信が入りました」
「内容は?」
「は……少々お待ちを」

エスフォレウヲ大佐は、部下の通信員が魔法通信を受信し、その内容を書き記すのを待つが、途中で、通信員の筆が止まった。
その魔導士は一瞬、目を大きく見開いたが、気を取り直して内容を書き記していく。
どういう訳か、その魔導士は目に涙を浮かべていた。
通信員は目を赤く腫らしたまま、紙をエスフォレウヲ大佐に渡す。

「閣下。軍集団司令部より命令です…………」
「どうした?内容を読んでくれ」
「………第76軍を除く第34軍集団所属の各軍は、直ちに連合軍との交戦を取りやめ、降伏するべし。全責任は、本職が取る……
省11
952: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2016/09/21(水)18:52 ID:EOmKTrqE0(34/63) AAS
エルファルフは、彼の言葉を心底残念そうな心境で聞き、そして、彼の言葉を否定した。

「君の認識は間違っているな」
「な……何故です!?」
「君は忘れたのか?首都ウェルバンルが、その敵に侵入を許してしまったことを」
「あ……あ……ぁ」
「帝国東海岸の制海権は、アメリカ海軍に奪われた。例え、君の言うとおりにここで敵を拘束しても……アメリカ軍はそれを尻目に、
首都の近くに上陸作戦を行う事もできる」

エルファルフは、俯きがちだった顔を上げ、ヴェフル参謀長を真っ直ぐ見据えた。

「包囲までされた上に、戦力の多くを消耗した我々には、敵を拘束する事すらできん。徹底抗戦などは無意味だよ」
「閣下………閣下………私は……ぐっ!」
省7
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