【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 5冊目 (775レス)
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690: [sage saga] 2016/11/24(木)23:14 ID:V3Gh3kBt(10/34) AAS
「ん?46万円ものツケをどう一括払いする算段をつけたかって?」

「えーっと杉原さんの一件で使ったヤクザの組があるんだけどさ...」

「そこの内部でちょっとしたゴタゴタがあったんだ」

「で、そのゴタゴタをなんとかしてくれって俺に直接連絡が来たんだよ」

「アンタ...なに勝手なことを...」
省12
691: [sage saga] 2016/11/24(木)23:14 ID:V3Gh3kBt(11/34) AAS
(あった...)

(一つだけ、あった)

 脳裏に浮かぶ、世界の裏を牛耳るどす黒いまでに大きなあの組織。

 不幸なことに自分はそこに務める悪党どもを知ってしまっている。

「まさか、真九郎...アンタ、悪宇商会と手を...」
省8
692: [sage saga] 2016/11/24(木)23:15 ID:V3Gh3kBt(12/34) AAS
「これ、今回の資料」

「うん。ありがとう」

 必死になり震えを隠そうとする銀子だったが、それは無理な話だった。

 いつもと変わらぬ風を装っている真九郎だが、その背後から漂ってくる

血腥い鮮血の匂いが、自分の知っている幼馴染がもう引き返せない所にまで
省12
693: [sage saga] 2016/11/24(木)23:15 ID:V3Gh3kBt(13/34) AAS
この時ばかりは、依頼者の所持する圧倒的暴力が頼もしく思えた。

 だが、銀子はあまりにも簡単な事を失念していた。

 真九郎が『崩月』だということを..

 そして、崩月はあと一人この学校にいるという事を....

 心の整理がつかない中、必死に真九郎に何が起ったのかを頭を
省14
694: [sage saga] 2016/11/24(木)23:15 ID:V3Gh3kBt(14/34) AAS
「なんでよ!!アンタあれだけ暴力が嫌いだったじゃない!!」

「揉め事処理屋を辞めるなら一緒にラーメン屋やっていこうって...」

「それなのに!どうして!!」

「どうして...私のこと、待ってくれなかったのよ...」

「銀子は、何も悪くないんだ。悪いのは全部俺だよ」 
省12
695: [sage saga] 2016/11/24(木)23:16 ID:V3Gh3kBt(15/34) AAS
 なぜなら、それは...

 真九郎が日の当たる世界を拒んだことに他ならないからだ。

 人の命が蝋燭の灯火のように軽く吹き消され、血と怨嗟と暴力の

屍山血河の世界こそが自分の身の置き場。

「分かった...崩月先輩に誑かされたんでしょ、ねぇ!」
省10
696: [sage saga] 2016/11/24(木)23:16 ID:V3Gh3kBt(16/34) AAS
「銀子の言いたいことは痛いほど分かる」

「でも、さ...」

「サラリーマンとか畑を耕す自分を俺は想像できないんだよ」

「まぁ、例外としてラーメン屋は選択肢にはいってたけどね」

「じゃあ、いまからでも...」
省14
697: [sage saga] 2016/11/24(木)23:17 ID:V3Gh3kBt(17/34) AAS
「...絶交よ。アンタなんか、もう...顔も見たくない」

 もう、真九郎の心の中に自分はいないという絶望的な事実に気が付いた

銀子は真九郎を睨み付け、絶交宣言をした。

 今の銀子の目には、真九郎がかつて自分達を攫った人身売買組織と

全く変わらない存在にしか見えなかった。
省6
698: [sage saga] 2016/11/24(木)23:17 ID:V3Gh3kBt(18/34) AAS
「帰ってよ!この人でなし!!」

「私利私欲の為にこれから多くの人を傷つけ、殺しまくるんでしょ!」

「出てって!出てけってばぁ!!」

 銀子に背を向け、感情任せにその拳に叩かれている真九郎。

 分かっている。
省12
699: [sage saga] 2016/11/24(木)23:17 ID:V3Gh3kBt(19/34) AAS
 高校から五月雨荘に戻るまで、携帯電話が鳴り止むことはなかった。

 着信履歴100件とメールが156通。

 我ながらよくもまあここまで酷いことを幼馴染みに出来た物だと

乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

 メールの内容を見ると、まだ間に合うから裏社会の闇に染まる前に
省7
700: [sage saga] 2016/11/24(木)23:18 ID:V3Gh3kBt(20/34) AAS
「正直な話、心が痛いですよ」

「銀子の俺への想いが分からないわけじゃなかった」

「だけど、いつかはこうなることはわかりきっていたのに...」

「もう、良いじゃないですか。真九郎さん」

「真九郎さんには私とちーちゃんと紫ちゃんがいます」
省13
701: [sage saga] 2016/11/24(木)23:18 ID:V3Gh3kBt(21/34) AAS
「次は〜○○〜○○行の電車が...」

 あれほど鳴り響いていた携帯電話のバイブレーションがいつの間にか

鳴り止んでいた。

 ホームに滑り込んできた電車が口を開け、乗客達を吐き出し始める。

「じゃ、また明日学校で」
省9
702: [sage saga] 2016/11/24(木)23:18 ID:V3Gh3kBt(22/34) AAS
五月雨荘

 紅真九郎が五月雨荘の自室に戻ったのは午後六時を少し過ぎた所だった。

 おんぼろになったドアを開け、自分の部屋に入ると、そこには

小さな天使がいて、自分にほほえみかけていた。

「真九郎!遅かったな。お帰りっ!」
省11
703: [sage saga] 2016/11/24(木)23:19 ID:V3Gh3kBt(23/34) AAS
「真九郎。今日はどうしたというのだ?」

「なにか良いことでもあったのか?」

「いや、むしろ逆...かな。だから、紫に...それを、忘れさせて欲しい」

 紫の笑顔に、銀子の泣き顔が重なり真九郎は声を詰まらせた。

 紫も今まで笑顔だった真九郎が泣き出しそうになるのを見ていられず、
省10
704: [sage saga] 2016/11/24(木)23:19 ID:V3Gh3kBt(24/34) AAS
七歳の紫に、今の真九郎が抱えている途方もない大きさの悩みを

正しく判断できるわけがなかった。

 崩月を継いだ上で、交わることのない表と裏の禁を破り、九鳳院の

一人娘を奪い取ろうとする、そんな大それたことに自分が愛する女を

巻き込もうとするのだ。
省10
705: [sage saga] 2016/11/24(木)23:19 ID:V3Gh3kBt(25/34) AAS
 午後7時 五月雨荘

 一時間近く泣き続けた真九郎は、泣き疲れてそのまま紫の胸に

抱きつきながら眠りに落ちてしまった。

「うんしょ、うんしょ。ううむ重いな、真九郎の体は」
 
 布団を敷き、その上に真九郎の体を引きずりながら乗せ、学生服を

剥ぎとりパジャマに着替えさせる。
省14
706: [sage saga] 2016/11/24(木)23:20 ID:V3Gh3kBt(26/34) AAS
一番怪しいのは言うまでもなく夕乃で、二番目に怪しいのはやたらと

威圧感はあるが自分を奥の院から出してくれた恩人の紅香である。

 3,4に環や闇絵が続くものの、あの二人はなんだかんだ言って

真九郎には優しい気がするから外しても良いだろう。

 となると、真九郎を泣かせた犯人は...
省16
707: [sage saga] 2016/11/24(木)23:20 ID:V3Gh3kBt(27/34) AAS
  夕乃とは対照的にどこまでもうじうじした散鶴の泣きべそに苛立つ

紫だが、散鶴もそれは同じで真九郎とは対照的に威圧的で偉そうな

紫に反感を覚えていた。

 はじめはいつも自分に対して威張っている紫に対するちょっとした

仕返しのつもりだった。
省10
708: [sage saga] 2016/11/24(木)23:21 ID:V3Gh3kBt(28/34) AAS
「おにーちゃん、おねーちゃんにコクハクしてたよ」

「世界で一番おねーちゃんがダイスキですって!」

「う、嘘だ!真九郎がそんなこと夕乃に言うはずがない!」

「嘘じゃないもん!」

「嘘だ!」
省11
709: [sage saga] 2016/11/24(木)23:21 ID:V3Gh3kBt(29/34) AAS
「なっ、何を言うか!真九郎と私は相思相愛で...」

「でも今すぐケッコンは無理だよね」

「そっ、それは...」

「うっ、ぐすっ...だ、黙れ散鶴!し、真九郎が一番好きなのは、この...」

「おにーちゃん、おねーちゃんを下さいっておじいちゃんに言ってたよ」
省11
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