[過去ログ] 【俺の妹】伏見つかさエロパロ20【十三番目のねこシス】 (807レス)
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572: 風(後編) 18/63 SL66 ◆Fy08o57TSs 2011/07/18(月)09:55 ID:8mgfk2k0(1/48) AAS
*  *  *
 ついに野点が開催される土曜日がやってきた。
 いつものように教室のやや後ろに座っていた俺は、二限目の講義が終わったので、教科書やノートを
バッグに仕舞い、うつむき加減で立ち上がろうとした。だが、

「高坂さん、いよいよ本日です。あやせさんとご一緒に午後二時半よりも少々早く拙宅へお出でいただけれ
ば幸いです」

 鈴を転がすような優しげな声がしたので、おもてを上げると、俺の眼前に保科さんが笑みを浮かべて立っ
ていた。いつの間に……。
 超絶美人のご令嬢と、名もなきよそ者。誰がどう見ても不釣り合いな組み合わせに反応してか、教室の
ざわめきが一気に拡大した。
省32
573: SL66 ◆Fy08o57TSs 2011/07/18(月)09:56 ID:8mgfk2k0(2/48) AAS
おお、ようやく規制が解除

では、引き続き『風』の残りを投下!!
574: 風(後編) 19/63 2011/07/18(月)09:57 ID:8mgfk2k0(3/48) AAS
「高坂さん。今しがた、あやせさんから電話がありましたけど、今はタクシーでこっちに向かっているそう
ですよ。到着したらすぐに着物の着付けをするとかで……。私も着付けのお手伝いをしますけど、大忙しで
すね」

「そ、そうですか……」

 招待状を保科さんから受け取った翌日に、件の招待状を見せた時のお婆さんの驚きときたら、まるで別人
の様だったからな。それだけで、保科さん一族のこの街でのステータスが分かろうかというものだ。

「はぁ……、ため息しか出ねえや……」

 単純な奴なら有頂天になるのかも知れないが、俺は到底そんな気分になれなかった。
 野点に招待されているのは、俺とあやせを除けば、相応な地位の者ばかりだろう。
 そんな中に、この地方の出身者ですらない只の学生が紛れ込んでいいはずがない。
省25
575: 風(後編) 20/63 2011/07/18(月)09:58 ID:8mgfk2k0(4/48) AAS
「頭はどうするかな……」

 いつぞや加奈子のマネージャーを装った時のように、オールバックにしようかと思ったが、やめておいた。
妙に大人ぶるよりも、年齢相応な姿の方が変に目立たなくて済むだろう。
 それよりも、清潔感が大事だ。髪は、今朝方シャンプーしたから、その点は大丈夫かも知れない。
 ついでに、靴下も下着も、真新しい物に替えた。

「さてと……」

 和服に比べれば、スーツの着替えなんて一瞬みたいなもんだ。ネクタイだって、高校の制服で結び慣れて
いるから、一発で、大剣と小剣の位置がぴったりと合った。

 俺は自分の両肩、腹部、脚部に目をやり、スーツ姿の自分を確かめた。安物の既製服だが、俺の身体に
ぴったりと合っており、雰囲気は悪くない。むしろ、ブランド品であっても、体型に合ってない物の方が
省25
576: 風(後編) 21/63 2011/07/18(月)09:59 ID:8mgfk2k0(5/48) AAS
ませんから、早め早めの行動を心掛けたいんです」

 もっともらしい理屈だったが、“敵状視察”のために早く出発したいんだな。

「じゃぁ、タクシーを呼びましょうか?」

 お婆さんの申し出に、あやせは「宜しくお願い致します」と即答した。
 俺は俺で、もう一度自室に戻り、財布や学生証の入った定期入れをスーツの内ポケットに入れた。
 取り敢えず学生証を見せれば、保科さんの同級生であることは主張できるだろう。
 それと、保科さんから受け取った招待状も、封筒ごとスーツの内ポケットに収めた。

「お兄さん早く! タクシーが来ましたよ」
省25
577: 風(後編) 22/63 2011/07/18(月)10:00 ID:8mgfk2k0(6/48) AAS
 あやせが、ポケットから財布を取り出そうとした俺を制止した。

「何だよ、いきなり」

「このまま下りて門をくぐったら、保科邸の規模がよく分からないかも知れません。ですから、タクシーに
乗ったまま、保科邸の周辺を見てみましょう」

 敵状視察というわけか。幸い時刻は二時過ぎだった。
 それに、言い出したら聞かないあやせに、敢えて逆らっても不毛だしな。
 俺が、無言で頷き、財布を内ポケットに入れ直すと、あやせは運転手に、

「では、お願いします。保科邸の周辺をちょっと一回りしてください」
省25
578: 風(後編) 23/63 2011/07/18(月)10:02 ID:8mgfk2k0(7/48) AAS
 かく言う俺自身も、あやせの家を伏魔殿と表現したこともあったな。お互い様か。

 門構えは、保科さんと出会った禅寺にも引けを取らない。いや、あの禅寺以上の規模だろう。白壁の塀の
高さは三メートル近くあり、侵入者を阻むのみならず、屋敷の中の様子を完全に隠蔽している。
 あやせの言う通り、これこそが、本当の伏魔殿なんだろうな。

「でも、古くさいですね。防犯装置とかはどうなっているんでしょうか?」

 保科さん憎けりゃ、門まで憎いってか。あくまでケチをつけたいらしい。
 先日川原さんから教えてもらった鬼女伝説とか、保科家の婿が早世する噂を、あやせが知ったら大変だな。
 そんなあやせにちょっとうんざりした俺は、指を差さずに、顎を門の軒の方にしゃくってみせた。

「あれを見ろよ」
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579: 風(後編) 24/63 2011/07/18(月)10:04 ID:8mgfk2k0(8/48) AAS
 この門を徒歩でくぐる招待客なんて、俺たちぐらいなもんだ。

 てなことを、うだうだと思っていた矢先、門の脇にあった人一人が身を屈めて通れるだけの小さな木戸が
軋むような音とともに開いた。

「まぁ、まぁ、ようこそお出でくださいました」

 木戸から現れたのは、鴇色っていうんだろうか、わずかにくすんだ感じがする淡紅色の振袖をまとった
禅寺の君だった。

「ほ、保科さん?!」
省29
580: 風(後編) 25/63 2011/07/18(月)10:16 ID:8mgfk2k0(9/48) AAS
「もう! 晴れ着を変なところに引っ掛けたら、大変じゃないですかっ!!」

 あやせの振袖だって結構な品なんだろう。それだけに、彼女の当惑というか、不満はごもっともだ。

「でも、保科さんがやったようにすれば、大丈夫なんじゃねぇの?」

 郷に入っては郷に従うのがルールだ。俺は、むずかるあやせの手を引いて、ゆっくりと木戸をくぐって
いった。 
 木戸は、思ったよりも間口や高さがあり、俺もあやせも無難にくぐり抜けることができた。屈めていた身
を伸ばして周囲に目をやると、大きな門の袂に俺たち二人は立っており、俺たちの目の前には、ちょっと
悪戯っぽく笑っている保科さんが居た。

「いきなりでびっくりされたでしょうが、この木戸は、極々近しい者しかくぐらないんですよ。お二人は、
省30
581: 風(後編) 26/63 2011/07/18(月)10:17 ID:8mgfk2k0(10/48) AAS
「入り口は、ここなんですけど……」

「こ、ここって……」

 俺とあやせは思わず顔を見合わせたね。
 だって、保科さんが言う入り口ってのは、戸棚か何かの引き戸かと思うほど小さかった。

「ここは、さっきの木戸よりもさらに狭いですから注意してくださいね」

 言うなり、保科さんはその引き戸を開け、身を精一杯に屈めて、滑るように茶室の中へと入っていった。
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582: 風(後編) 27/63 2011/07/18(月)10:19 ID:8mgfk2k0(11/48) AAS
「て、おい、おい……」

 とんだ、おてんばだな。こんなんで野点で粗相でもされたら、たまんねぇ。
 だが、保科さんは、そんなあやせを微笑ましくさえ思うのか、涼やかな笑みを微かに浮かべながら炉が設
けられた一角に座り、炉の上で湯気を立てている茶釜の蓋を取り上げている。

「お湯を沸かしておいたんですか?」

「ええ、最近は炭火ではなく電気の炉ですから、準備も簡単なんです」

 にしても用意周到だな。
 保科さんも大学から戻って着替えとかが必要だったろうから、茶室で湯を沸かしていたのは、お手伝い
さんとかなんだろうか。
 おっと、余計なことを考えている場合じゃない。
省27
583: 風(後編) 28/63 2011/07/18(月)10:20 ID:8mgfk2k0(12/48) AAS
ことがございます」

「何でしょうか?」

 勿体をつけられて不服なのか、あやせの奴がまなじりを吊り上げていた。
 本当に、保科さんに対してはガキ丸出しだな。

「拙宅の野点は、茶事の様式で行われます。ご存知かも知れませんが、茶事とは少人数のあらかじめ招待
された方々で行う密接な茶会であり、一つの椀で同じ濃茶を回して飲んでゆくものです。ですから、あやせ
さんは、出されたお茶を軽く含むだけにして、茶碗を高坂さんに渡すようにしてください」

 『一つの椀で同じ濃茶を回して飲んでゆく』を聞いたあやせが目を剥いた。
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584: 風(後編) 29/63 2011/07/18(月)10:21 ID:8mgfk2k0(13/48) AAS
 保科さんに食らい付いたはいいが、保科さんの論が至極妥当だからか、気の強いあやせが口ごもってし
まった。
 こいつ、保科さんと俺とが間接キスするのが嫌だったんだな。不衛生云々は、単なる口実だったのか。

「困りましたねぇ……。一つの椀で同じ濃茶を回して飲んでゆくのは、茶事における鉄則とも言うべきもの
なのですが……」

 ぶーたれている、あやせに対しても、保科さんはあくまでも笑顔だった。

「……では、茶事様式が苦手なあやせさんは、野点が終わるまで拙宅のどこかで控えていただき、野点には
高坂さんだけが参加されるということに致しましょうか」

「そ、それは困ります!」
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585: 風(後編) 30/63 2011/07/18(月)10:22 ID:8mgfk2k0(14/48) AAS
「あやせさんは、椀のお茶を半分ほど飲んだら、椀の飲み口を懐紙で拭い、その椀を高坂さんにお渡しくだ
さい」

 あやせが、言われた通りに飲み口を懐紙で拭い、それを俺の方にそっと差し出してきた。
 あやせから受け取った茶碗には、細かい泡が微かに残ったお茶が、椀の底の方に溜まっていた。

「高坂さんは最後の方ですから、残ったお茶をゆっくりでいいですから、全部飲んでください。飲み終えた
ら、わたくしがその茶碗を引き取りに伺います」

「分かりました」

 俺は保科さんが点ててくれたお茶をゆっくりと味わった。なるほど。濃い茶というだけあって、先日、
禅寺で飲んだものよりも格段に濃厚な味わいだ。しかし、変な苦味は全くない。おそらく最上級の抹茶を
使い、かつ保科さんの点て方が上手なのだろう。
省25
586: 風(後編) 31/63 2011/07/18(月)10:23 ID:8mgfk2k0(15/48) AAS
拙宅に高坂さんも着用できそうな着物がありますが、それに着替えられてはどうでしょうか?」

「せっかくですが、もう時間が……」

 時計を見ると、野点の時間まで、あと八分程しかない。

「お兄さん、何をぐずぐずしているんですか!」

 いち早く茶室の外に出ていたあやせが、俺と保科さんが未だに出てこないのでヒスを起こしていた。
省31
587: 風(後編) 32/63 2011/07/18(月)10:24 ID:8mgfk2k0(16/48) AAS
「急ぎましょう」

 既に俺たちを除く他の招待客は席に着いていて、炉から離れた末席とでも言うべき場所に、都合三人が座
れそうな場所が空いていた。

「お嬢様。お待ちしておりましたぞ」

 保科さんが緋毛氈に座っている来客たちに近づいていくと、そのような声がそこかしこから聞こえてきた。

「いえ、お嬢様だなんて……。それに本日は未熟者のわたくしではなく、先生にお茶を点てていただきます
ので、わたくしはこちらの方で目立たぬように控えさせていただきます」
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588: 風(後編) 33/63 2011/07/18(月)10:25 ID:8mgfk2k0(17/48) AAS
したら、俺はこいつに速攻でブチ殺されちまう。

「和尚様、これ以上、わたくしのお客様を困らせないでください。こちらの殿方は、わたくしの同級生であ
る高坂京介さん、そしてそのお隣の可愛らしいお嬢さんは、高坂さんの妹さんの高坂あやせさんです」

「お嬢様のご学友でしたか……。そうすると、優秀な方なんですね」

 和服姿の品のよさそうな老婦人がにこやかに頷きながら、そう言ってくれた。
 優秀ね……。今の大学に合格できたのは、ほとんどまぐれと言ってよい。大学受験だけに限れば、運がよ
かったというだけのことだ。それでも、

「ありがとうございます。今の大学に合格できて、この街で暮らせるのは、本当にありがたいことだと思い
ます」
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589: 風(後編) 34/63 2011/07/18(月)10:26 ID:8mgfk2k0(18/48) AAS
「高坂さん、よくご存知ですね」

「いえ、たまたま知っていただけですよ」

 あやせが「へぇ〜」と応答する前に、間髪いれず保科さんが突っ込んできた。麻奈実の実家でも作って
いたから知っていただけなんだよな。これで、保科さんの俺への心証はア〜ップ! 保科さんは俺とは住む
世界が全く違う人だが、それでも心証は悪くなるよりよくなった方がいいからな。

 しかし、出鼻をくじかれたあやせは、これで保科さんへの敵意を一段と増したに違いない。恐る恐る横目
で伺うと、眉をひそめて俺を睨んでいやがった!
 どうやら、保科さんとは正面切って戦うことはできそうもないから、腹いせも兼ねて、まずは俺を叩こう
ということか。
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590: 風(後編) 35/63 2011/07/18(月)10:28 ID:8mgfk2k0(19/48) AAS
 その茶碗は、市長の夫人らしい初老の女性に手渡された。二人は一言も言葉を交わさずに、茶碗を受け渡
し、初老の男性と女性は、軽く頷き合うかのように礼をした。

 控え目な動作の中に、空気そのものを重く高密度にするような緊張があり、何も分かってない若造の俺も
背筋を伸ばし、居住まいを改めた。

 茶の湯って、やっぱすげぇな。
 怠惰な俺の日常とは正反対の世界だぜ。

 その女性は、ゆったりとした自然な動作で茶碗を傾けて濃い目に点てられているであろう茶を一服すると、
先ほどの男性と同じように、懐紙で茶碗を拭い、その茶碗を掌の上で少しだけ回していた。

 後は、その繰り返しだった。どうすればいいのか、俺にも分かった。多分、あやせも分かっているだろう。
 要は、相手に敬意を抱いて茶碗を受け取り、又は受け渡す。受け取った茶碗の茶は、後の人のことを慮っ
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