[過去ログ] 残業とその解消 (369レス)
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324: 2006/08/12(土)18:56 AAS
過労死の社会医学――心身システムのエルゴロジカルな危機 1
 
 日本政府は近年、アメリカとの貿易摩擦・構造協議の過程で、日本の労働時間が他の先
進資本主義諸国に比して著しく長いことを認め、労働時間短縮をマクロの政策課題とした。
宮沢内閣が1992年6月に決定した経済計画『生活大国5か年計画――地球社会との共存をめ
ざして』は、「労働時間の短縮は、勤労者とその家庭にゆとりをもたらし、職業生活と家
庭生活、地域生活との調和を図り、『生活大国』の実現を目指す上での最重要課題の一つ
である。また、国際的に調和のとれた競争条件の形成にも資するものである」として、19
91年の年間2016時間(所定内1841時間、所定外残業175時間)を96年までに1800時間にす
ると公約し、93年6月には労働基準法を改正して94年4月から施行することにした(2)。
省12
325: 2006/08/12(土)18:57 AAS
過労死の社会医学――心身システムのエルゴロジカルな危機 2

 労働組合のナショナルセンターである日本労働組合総連合会(連合)などは、近年、労
働時間短縮を積極的に要求するようになった。しかし、日本の労働者の多くは、「企業社
会」「会社主義」とよばれる長時間労働・残業を当然とするシステムに組み込まれている。
個々の家計では、残業減少による収入減への不安がある。バブル景気崩壊後の93年春闘で
も、時間短縮要求よりも、正社員の雇用確保と賃上げが優先された(3)。

 日本の労働時間の法的規制は、労働基準法によって与えられている。1988年に改正・施
行された労基法では、「第4章労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇」において、「使
用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならな
い。使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を
省7
326: 2006/08/12(土)19:00 AAS
過労死の社会医学――心身システムのエルゴロジカルな危機 3

 1992-93年、労働省と中央労働基準審議会は、アメリカからの貿易摩擦がらみの「外圧」
と、連合など労働運動からの「内圧」におされて、新たな労働基準法改正を準備した。93
年6月に国会で議決され、94年4月から実施されることになった改正労働基準法では、法定
週40時間制への移行、つまり第32条の文字通りの実施を唱っている。

 しかし、1993年3月末で期限のきれるはずであった週46時間制猶予措置でさえ、バブル
崩壊後の不況を口実にした中央労働基準審議会での経営者側の抵抗と、時の政権党自由民
主党の要請で、1年間実施が延長された。その猶予措置による週四六時間制適用労働者は、
運輸・通信業や中小企業など約2300万人、雇用労働者全体のほぼ半数にのぼる。94年から
の改正労働基準法でも、中小企業などに対する週44時間の猶予措置が、97年3月まで設け
省10
327: 2006/08/13(日)10:00 AAS
長時間労働の経済史学――勤勉・滅私奉公は日本人の国民性か? 1
 
 個々のケースはさまざまであっても、一般的にいえば、過労死が生じる社会的背景は明
らかである。先進工業国のなかでは異常に長い日本の労働時間、会社主義のせいである。
一人の人間にとって、生きる時間は有限である。1日は24時間、1年は365日で8760時間、
人生はせいぜい60-80年である。
 人間にとっての時間の意味は、社会史研究の隆盛もあり、近年、物理学・哲学ばかりで
なく、社会科学や歴史学・人類学においても研究されてきた。労働時間の歴史的変遷につ
いても、欧米の歴史学・社会科学は、新しい知見を提供してきている。
 例えば古代ローマの暦には、年に175日の宗教的休日があり、市民が生産労働にたずさ
省16
328: 2006/08/13(日)10:02 AAS
長時間労働の経済史学――勤勉・滅私奉公は日本人の国民性か? 2

 ヨーロッパやアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでは、これに対す
る職人・労働者と市民社会の抵抗が、労働組合運動や工場法による労働時間規制を生み出
した。1889年の第2インタナショナル創立時に8時間労働日実現が世界の労働者の合言葉に
なり、メーデーが始まった。1919年の国際労働機構(ILO)設立で8時間労働日・週48
時間労働が決議されて以後、先進工業諸国の労働時間短縮が進んだ。
 今日では、市民社会を定着させたドイツやフランス・北欧諸国では年1500-1600時間、
イギリス・アメリカで年1800-1900時間の水準になり、1日7-8時間労働、週休2日・週5日
労働、年次有給休暇・長期連続休暇・育児休暇、所定外残業時間制限・残業50-100%割増
賃金などの法的規制と制度が、当り前になった。労働時間短縮と自由時間獲得、休養・レ
省13
329: 2006/08/13(日)10:03 AAS
長時間労働の経済史学――勤勉・滅私奉公は日本人の国民性か? 3

 ところが日本の労働時間については、系統的な歴史研究・社会科学研究はほとんどない。
また実際の労働時間の歴史も、欧米の研究から見いだされた公式通りには進んでいない。
日本は、近代化・工業化という意味では世界史に類のない長期の高速の経済成長を達成し、
一人あたり国民所得でも世界でトップクラスの経済大国になった。しかし労働時間の面で
は、労働省の公式統計でも、ドイツ・フランスより年500時間(3か月)、イギリス・アメ
リカより年200時間(1か月)多い水準に留まる。日本経済の成功、国際競争力の秘密は、
「ウサギ小屋の働き中毒」、福祉の貧困・低賃金・長時間労働ではないかと、疑いの目で
みられている。
 欧米には、日本の労働時間の歩みに着目した、二つの異なる研究がある。一つはウィー
省9
330: 2006/08/13(日)10:04 AAS
長時間労働の経済史学――勤勉・滅私奉公は日本人の国民性か? 4

 しかし、経済発展・生産性向上と科学技術進歩・脱産業化が労働時間短縮をもたらすと
いうリンハルト教授の仮説には、有力な反証もある。世界最大の工業国アメリカ合衆国の
労働時間は、ニューディール期に週40時間法を制定し、黄金の1950年代には週4日22時間
労働とレジャーの時代の到来が夢見られた。しかし実際は、1967年の1787時間から87年の
1949時間へと、20年間に163時間(1月分)も労働時間が増加した。これを分析したハーバ
ード大学ジュリエット・ショア教授の『働きすぎのアメリカ人』は、1992年にアメリカで
ベストセラーになった。ロボット導入・コンピュータ化・サービス化が進んでも、労働時
間が逆に増大した実例である(15)。
 この点からすれば、ドイツやフランスやスウェーデンのように、労働組合が時間短縮を
省3
331: 2006/08/13(日)10:06 AAS
長時間労働の経済史学――勤勉・滅私奉公は日本人の国民性か? 5

 日本の長時間労働については、「勤勉な国民性」で説明する、もうひとつの有力な見解
がある。カリフォルニア大学のトマス・スミス教授の説はその一つで、日本人の集団主義
・勤勉性が、欧米とはちがったタイプの労働時間の歴史をもたらしたという。
 スミス教授によれば、江戸時代の日本の農民は、マックス・ウェーバーが初期プロテス
タントに見いだしたのと似たような天職・禁欲・勤勉倫理をもち、多種多様な農作業を計
画的におこない、農業技術の改善に努めた。ウェーバーのいう「資本主義の精神」と異な
るのは、その時間所有の単位が、プロテスタント風の自立した個人ではなくイエやムラの
集団であり、二宮尊徳の勤勉道徳も村落共同体や若者組の掟として広まった、という。
 これが明治の殖産興業過程にも受け継がれ、欧米では工業化過程で労働運動の労働時間
省6
332: 2006/08/13(日)10:19 AAS
長時間労働の経済史学――勤勉・滅私奉公は日本人の国民性か? 6

 こうした「国民性による長時間労働」という考えは、日本国内でもきわめて有力である。
日本に古くから伝わる「早起きは三文の得」という格言や、「しばしも休まず槌打つひび
き……仕事に精出す村の鍛冶屋」とうたう童謡「村の鍛冶屋」は、このスミス教授の見解
を補強する。日本政府の御用学者のなかには、日本人の労働は欧米とは違って疎外されて
いないから過労死するほど働くのだ、と唱える者さえいる。人間の死こそ究極の疎外に他
ならないのに。
 スミス教授は明言していないが、「日本的勤勉」は「アジア的勤勉」にもつながり、ロ
ンドン大学森嶋通夫教授の「儒教資本主義」論、ボストン大学ピーター・バーガー教授の
「東アジア資本主義」論とも一脈通じる(17)。儒教倫理や集団主義が、ウェーバー的西欧
省5
333: 2006/08/13(日)10:20 AAS
長時間労働の経済史学――勤勉・滅私奉公は日本人の国民性か? 7

 例えば、江戸時代の農民は「百姓と胡麻はしぼりとるだけしぼれ」と強搾取におかれた
ようにイメージされるが、また実際にも当時の社会階層のなかで身分的に搾取されていた
が、それでも農業生産力の拡大に伴い、休日を多くとるようになった。「村の遊び日」と
いわれる祭りや休養のための休日が、幕末には年40日ほど、多い所では80日もあった。江
戸や大阪の町人・職人は、「一六(いちろく)」といって、月に1と6のつく日に休む習慣
があり、明治維新直後の政府の暦にも、それはとりいれられた。明治の官吏や商家の記録
でも休みが多く、勤勉とはいえない。明治初期に来日した西欧人の観察では、日本人を勤
勉どころか「怠けもの」と見る記録が圧倒的である。
 日本の長時間労働の起源は、西欧と同様に明治の殖産興業期の工場の労働条件に求めら
省14
334: 2006/08/13(日)23:21 AAS
働けー!
335: 2006/08/14(月)21:41 AAS
労働時間の経営学――会社主義と企業社会による組織された競争 1

 日本の労働時間を規定する政治舞台とアクターとしては、第1に、企業内での経営者と
労働者とのミクロな労使関係、第2に、業界・財界および労働運動・社会運動・世論の動
向、第3に、政府の労働政策や政府内での労働省の位置と役割、第4に、日本政府・日本企
業と外国政府・海外市場の関係、が重要である。

 第4の対外関係を挙げるのは、奇異に思われるかもしれない。しかし、戦前から戦後に
日本の労働時間が年3000時間台から2000時間台へと大きく変化したのは、アメリカ占領軍
による労働改革、とりわけ労働基準法制定と労働基本権公認の産物であった(19)。

 また、最近の日本の労働時間短縮への最大の圧力は、佐々木毅東京大学教授のいう「横
からの入力」「健全野党としてのアメリカ」、欧米諸国との経済摩擦である。1985年のプ
省12
336: 2006/08/14(月)21:43 AAS
労働時間の経営学――会社主義と企業社会による組織された競争 2

 第1の企業内でのミクロな労使関係は、日本的経営とよばれ、日本経済の効率と生産性
向上を生んだすぐれた生産システムとして、世界から注目されている。これについては東
京大学社会科学研究所編『現代日本社会』全7卷が「会社主義」をキーワードとして分析
しているほか、日本国内でも国際的にも、多くの研究と論争がある。筆者自身は、第2次
世界大戦後の「法人資本主義」のもとで、アメリカから輸入された経営理論と伝統的家族
主義的経営が結びついた「組織された競争システム」「ウルトラ・フォード主義」と位置
づけてきた(22)。

 長時間労働は、会社に忠誠を示し残業しなければ周囲からスポイルされるこの会社主義
と、それが社会全般をおおった企業社会により再生産されている。とりわけ重要なのは、
省9
337: 2006/08/14(月)21:46 AAS
労働時間の経営学――会社主義と企業社会による組織された競争 3

 労働省の「労働時間短縮に関する意識調査」(1989年10月)において、「残業・休日労
働が減少しない理由」としてあげられたのは、「所定労働時間内では仕事が終わらない」
「仕事の繁閑が激しい」「取引先の仕事や顧客へのサービス」「取引先からの発注に時間
的余裕がない」の順であった。「年次有給休暇を取得しにくい理由」は、「周囲に迷惑が
かかる」「病気等有事への備え」「仕事がたまり後で忙しくなる」「仕事が多く人手不足」
「休暇をとりにくい職場の雰囲気」などである。

 省力化による人手不足、小集団チーム制・ノルマ制、会社への忠誠を重視する昇進・昇
格制度、取引先との系列・下請け関係の存在など、総じて「日本的経営」のシステム全体
が、法律で認められた権利である有給休暇の未消化、違法な不払いサービス残業、ひいて
省12
338: 2006/08/14(月)21:49 AAS
労働時間の経営学――会社主義と企業社会による組織された競争 4

 労働組合があっても、1日24時間労働を何の疑問もなく労使協定で認め、労働基準監督
署が24時間労働協定をそのまま受理してしまうところに、現代日本社会における「働き中
毒病」の異常性・深刻さが、象徴的に集約されている。

 そして、最高裁判所までが、日立製作所武蔵工場の労働者田中秀幸氏が残業拒否を理由
に解雇された事件で、労使協定の範囲内での残業命令には従わなければならないという決
定をくだした。有給休暇の取得時季についても、会社側の裁量権・時季変更権を判決で認
めている(24)。

 第2の業界・財界レベル、労働組合など利益集団レベルで労働時間に作用するのは、業
界の過当競争と、日経連や労働組合の政府への働きかけである。
省14
339: 2006/08/14(月)21:52 AAS
労働時間の経営学――会社主義と企業社会による組織された競争 5

 政府の力を借りずに業界全体で労働時間を短縮するには、すでに週35時間労働協定を獲
得したドイツの金属労組のように、産業別労働組合がストライキを含む強力な闘争で時短
にとりくむ必要があるが、日本の労働組合の組織率は25%以下、民間では労使協調の大企
業組合が中心である。しかもその組織はいわゆる企業内組合で、同業他社との競争には組
合自身が協力する場合が多い。

 戦後日本の労働組合は、日本政府と財界の「欧米に追いつき追いこせ」の目標に合わせ、
長時間労働の代償を経済成長の分け前としての賃金上昇で補うスタイルに慣れてしまった。
「賃上げか時間短縮か」の選択を迫られると、なかなか時間短縮の方に向かわない。

 それでもナショナルセンターである連合は、若い世代の自由時間志向の強まりのなかで
省9
340: 2006/08/17(木)02:15 AAS
残業代をゼロにしろ
341: 2006/08/24(木)00:07 AAS
AA省
342: 崔 朝鮮 2006/10/05(木)20:36 AAS
へぇ〜
343
(1): 2006/10/09(月)22:22 AAS
ノー残業デー
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