【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 5冊目 (775レス)
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697: [sage saga] 2016/11/24(木)23:17 ID:V3Gh3kBt(17/34) AAS
「...絶交よ。アンタなんか、もう...顔も見たくない」

 もう、真九郎の心の中に自分はいないという絶望的な事実に気が付いた

銀子は真九郎を睨み付け、絶交宣言をした。

 今の銀子の目には、真九郎がかつて自分達を攫った人身売買組織と

全く変わらない存在にしか見えなかった。
省6
698: [sage saga] 2016/11/24(木)23:17 ID:V3Gh3kBt(18/34) AAS
「帰ってよ!この人でなし!!」

「私利私欲の為にこれから多くの人を傷つけ、殺しまくるんでしょ!」

「出てって!出てけってばぁ!!」

 銀子に背を向け、感情任せにその拳に叩かれている真九郎。

 分かっている。
省12
699: [sage saga] 2016/11/24(木)23:17 ID:V3Gh3kBt(19/34) AAS
 高校から五月雨荘に戻るまで、携帯電話が鳴り止むことはなかった。

 着信履歴100件とメールが156通。

 我ながらよくもまあここまで酷いことを幼馴染みに出来た物だと

乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

 メールの内容を見ると、まだ間に合うから裏社会の闇に染まる前に
省7
700: [sage saga] 2016/11/24(木)23:18 ID:V3Gh3kBt(20/34) AAS
「正直な話、心が痛いですよ」

「銀子の俺への想いが分からないわけじゃなかった」

「だけど、いつかはこうなることはわかりきっていたのに...」

「もう、良いじゃないですか。真九郎さん」

「真九郎さんには私とちーちゃんと紫ちゃんがいます」
省13
701: [sage saga] 2016/11/24(木)23:18 ID:V3Gh3kBt(21/34) AAS
「次は〜○○〜○○行の電車が...」

 あれほど鳴り響いていた携帯電話のバイブレーションがいつの間にか

鳴り止んでいた。

 ホームに滑り込んできた電車が口を開け、乗客達を吐き出し始める。

「じゃ、また明日学校で」
省9
702: [sage saga] 2016/11/24(木)23:18 ID:V3Gh3kBt(22/34) AAS
五月雨荘

 紅真九郎が五月雨荘の自室に戻ったのは午後六時を少し過ぎた所だった。

 おんぼろになったドアを開け、自分の部屋に入ると、そこには

小さな天使がいて、自分にほほえみかけていた。

「真九郎!遅かったな。お帰りっ!」
省11
703: [sage saga] 2016/11/24(木)23:19 ID:V3Gh3kBt(23/34) AAS
「真九郎。今日はどうしたというのだ?」

「なにか良いことでもあったのか?」

「いや、むしろ逆...かな。だから、紫に...それを、忘れさせて欲しい」

 紫の笑顔に、銀子の泣き顔が重なり真九郎は声を詰まらせた。

 紫も今まで笑顔だった真九郎が泣き出しそうになるのを見ていられず、
省10
704: [sage saga] 2016/11/24(木)23:19 ID:V3Gh3kBt(24/34) AAS
七歳の紫に、今の真九郎が抱えている途方もない大きさの悩みを

正しく判断できるわけがなかった。

 崩月を継いだ上で、交わることのない表と裏の禁を破り、九鳳院の

一人娘を奪い取ろうとする、そんな大それたことに自分が愛する女を

巻き込もうとするのだ。
省10
705: [sage saga] 2016/11/24(木)23:19 ID:V3Gh3kBt(25/34) AAS
 午後7時 五月雨荘

 一時間近く泣き続けた真九郎は、泣き疲れてそのまま紫の胸に

抱きつきながら眠りに落ちてしまった。

「うんしょ、うんしょ。ううむ重いな、真九郎の体は」
 
 布団を敷き、その上に真九郎の体を引きずりながら乗せ、学生服を

剥ぎとりパジャマに着替えさせる。
省14
706: [sage saga] 2016/11/24(木)23:20 ID:V3Gh3kBt(26/34) AAS
一番怪しいのは言うまでもなく夕乃で、二番目に怪しいのはやたらと

威圧感はあるが自分を奥の院から出してくれた恩人の紅香である。

 3,4に環や闇絵が続くものの、あの二人はなんだかんだ言って

真九郎には優しい気がするから外しても良いだろう。

 となると、真九郎を泣かせた犯人は...
省16
707: [sage saga] 2016/11/24(木)23:20 ID:V3Gh3kBt(27/34) AAS
  夕乃とは対照的にどこまでもうじうじした散鶴の泣きべそに苛立つ

紫だが、散鶴もそれは同じで真九郎とは対照的に威圧的で偉そうな

紫に反感を覚えていた。

 はじめはいつも自分に対して威張っている紫に対するちょっとした

仕返しのつもりだった。
省10
708: [sage saga] 2016/11/24(木)23:21 ID:V3Gh3kBt(28/34) AAS
「おにーちゃん、おねーちゃんにコクハクしてたよ」

「世界で一番おねーちゃんがダイスキですって!」

「う、嘘だ!真九郎がそんなこと夕乃に言うはずがない!」

「嘘じゃないもん!」

「嘘だ!」
省11
709: [sage saga] 2016/11/24(木)23:21 ID:V3Gh3kBt(29/34) AAS
「なっ、何を言うか!真九郎と私は相思相愛で...」

「でも今すぐケッコンは無理だよね」

「そっ、それは...」

「うっ、ぐすっ...だ、黙れ散鶴!し、真九郎が一番好きなのは、この...」

「おにーちゃん、おねーちゃんを下さいっておじいちゃんに言ってたよ」
省11
710: [sage saga] 2016/11/24(木)23:21 ID:V3Gh3kBt(30/34) AAS
「うわああああああん!夕乃と散鶴の大馬鹿ものーっ」

「何してるんだ紫!どうしたんだよ!」

 この時、真九郎は紫が自分と夕乃の間にあったことを知った事に

気が付いてしまった。

 そして、紫の大号泣にいかに自分が浅はかで最低なことを崩月家の
省9
711: [sage saga] 2016/11/24(木)23:22 ID:V3Gh3kBt(31/34) AAS
〜夕乃の視点〜

 明日の真九郎さんのお弁当の仕込みをしているときに、電話が鳴った。

 おそらく電話の主はおじいちゃんの友達か、町内会の人だろう。

「ちーちゃ〜ん。お電話出て〜」

「はーい」
省12
712: [sage saga] 2016/11/24(木)23:22 ID:V3Gh3kBt(32/34) AAS
「ふふふ...おにーちゃんはおねーちゃんの恋人。だから...」

「紫ちゃんはもうウワキ相手だね」

「散鶴ッ!」 

 妹を押しのけ、電話の受話器を取る。

「紫ちゃん?!紫ちゃん!!」
省12
713: [sage saga] 2016/11/24(木)23:23 ID:V3Gh3kBt(33/34) AAS
「おねーちゃん!行っちゃダメ!行っちゃやだよぉ!」

 妹が、あの泣き虫だった妹が賢明に通せんぼうをして、私の目の前に

立ちふさがった。

「ちーちゃん...良い子だから、ね?そこをどいて」

「やだぁ!」
省14
714: [sage saga] 2016/11/24(木)23:23 ID:V3Gh3kBt(34/34) AAS
 理解できないが故に、散鶴の抱いている感情は最も正しい。
 
 人権すらない『道具』を人として扱い、この先の人生を共に過ごす事が

どれだけのリスクと危険を犯さなければならないのか。

 それを自覚できないまま真九郎は紫を、これから彼女が独り立ちが

出来る歳まで守っていく役目を担おうと言うのだ。

 紫と散鶴を天秤にかけたとしても、絶対に散鶴を選ぶのが夕乃の本心。
省9
715: 2016/11/27(日)07:20 ID:DCGibjW7(1) AAS
乙です
まさに修羅場ですね
続き楽しみにしてます
716: [sage saga] 2016/12/01(木)01:05 ID:qO1WsCuS(1/43) AAS
〜紫の嫁入り 中編〜

 
 散鶴の涙に大きく自分の心を揺さぶられながらも、夕乃はそれでも

懸命になって、なんとか妹を説得しようと試みた。

 だが、どう考えても今すぐに散鶴を説得できる力を持った言葉や

想いが中々浮かばない。
省7
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